- 病院から「退院後の行き先を考えておいてください」と言われたが、何から手を付ければいいのか
- いつまでに病院を出なければならないのか、急に追い出されるのではないか
- 病院の中で、誰に相談すればいいのか分からない
- 親にはまだケアマネジャーがいないし、要介護認定も受けていない
- 老健なら入れると聞いたが、退院してすぐに入れるものなのか
- 特養は待つと聞き、有料老人ホームは高いと聞いて、身動きが取れない
- 遠くに住んでいて、平日に病院へ通えない
- 行き先が間に合わなかったら、いったんどこで過ごせばいいのか
上記のような悩みに答えます。
親の退院後の施設探しは、施設の紹介会社や介護メディアが、行き先の種類や探す手順、相談できる窓口まで丁寧に紹介しています。けれども、入院のすぐあとから病院の中で退院支援がどう進んでいるのか、病棟ごとの入院料の日数の上限が何を意味するのか、行き先が決まらないときにどこでつなぐのかは、施設を紹介する側からは書かれにくいところです。そこで、相談先・行き先の種類・探す順番という基本を押さえたうえで、病院の退院支援の流れと日数の上限の読み方、つなぎの選択肢まで、厚生労働省の診療報酬の通知と介護保険法などの条文で確かめながら整理しました。
入院中に退院後の行き先を決めるよう言われたら、まず病院の入退院支援の担当(社会福祉士や看護師で、医療ソーシャルワーカーと呼ばれることが多い人)に会い、退院の見込みの時期と、退院後にどれだけ医療の管理が要るかを聞いてください。次に、担当のケアマネジャーに入院を知らせ、いなければ地域包括支援センターに相談して要介護認定の手続きを進めます。行き先は、医療の必要度と期限から、在宅・老健・介護医療院・有料老人ホーム・特養の順に絞り、間に合わないときは老健やショートステイでつないで時間を作ります。
2026年10月時点の制度で確かめています
最初に会うのは退院支援の担当

退院後の行き先を言われたら、施設を調べ始める前に、病院の入退院支援の担当に面談を申し込んでください。病棟の看護師に「退院の相談をしたいので、入退院支援の担当の方と話したい」と伝えれば、取り次いでもらえます。
入退院支援加算1を届け出ている病院には、入退院支援の部門に専従の看護師か社会福祉士が置かれ、各病棟にも専任の看護師か社会福祉士が置かれています。この人たちが、病院の側で退院の段取りを受け持つ担当です。通知の言葉では「社会福祉士」「看護師」ですが、病院では医療ソーシャルワーカーと呼ばれることが多く、部署の名前も「地域連携室」「患者支援センター」など病院ごとに違います。届け出ていない病院もあるので、まずは誰が窓口なのかを病棟で聞くところから始めます。
出典:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(厚生労働省・PDF)
最初の面談で聞いておきたいのは、次の5つです。
- 退院の見込みの時期を、いつごろと考えればよいか
- 退院後も続く医療の管理(薬・処置・リハビリ)は何か
- 入院前と比べて、歩く・食べる・トイレがどこまでできるか
- 病院が考えている退院先の候補と、そう考える理由
- ケアマネジャーや次の行き先へ、病院から情報を渡してもらえるか
退院の見込みの時期が分かれば、どこまで時間をかけて探せるかが決まり、医療の管理と体の様子が分かれば、受け入れてもらえる行き先の種類が決まります。施設の名前から探し始めると、入ってから「この処置はうちでは続けられない」と言われる行き違いが起きることがあります。
たとえば、肺炎で入院した父が、点滴が終わって状態が落ち着いたと言われた場合、退院の時期の話と同時に、入院前より足が弱っていないか、食事の形が変わっていないかを聞いておくと、家に戻れるのか、リハビリの場が要るのかの見当がつきます。同じ父でも、たんの吸引や胃ろうの管理が続くなら、その処置を受けてもらえるかが行き先を選ぶ最初の条件に変わります。
聞いた内容は1枚の紙にまとめ、兄弟やケアマネジャーと同じ紙を見ながら話すと、伝言のずれが減ります。
病院の中で進む退院支援の流れ
退院支援は、家族が言われる前から病院の中で始まっていることがあります。入退院支援加算1を届け出ている病院では、入院後の早い時期に、退院が難しくなりそうな患者を見つけ出し、家族と話し合い、退院支援計画を作る流れが決まっています。
厚生労働省の通知では、加算1の病院は、退院困難な要因のある患者を原則として入院後3日以内に把握して抽出します(加算2は原則7日以内)。患者や家族との話合いは原則として入院後7日以内(療養病棟は14日以内)、病棟の看護師と入退院支援の職員などが共同で行うカンファレンスも入院後7日以内、退院支援計画の作成に着手するのも入院後7日以内です。計画は文書で患者か家族に説明して交付され、計画に沿って転院先や介護サービスとの連絡調整が進みます。
出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(厚生労働省・PDF)
「退院困難な要因」として通知が挙げているのは、認知症や誤嚥性肺炎などの病気、緊急入院、要介護認定が未申請か区分変更の申請が未了と疑われること、生活のしかたを組み直す必要があるほどの体の動きの低下、排せつに介助が要ること、必要な介護を十分に受けられる状況にないこと、退院後も医療処置が要ること、入退院を繰り返していること、家族や親族と連絡が取りにくいことなど、17の項目です。このうち、家族や親族と連絡が取りにくいことと、認定の変更申請が未了と疑われることは、2026年6月に施行された改定で加わりました。
退院支援計画には、退院が難しい要因と課題、目標、予想される退院先、退院後に使うと見込まれる福祉サービスなどが書かれます。家族にとっては、病院がいまどの行き先を想定しているかを文字で確かめられる手がかりになります。計画の説明を受けたら、予想される退院先がなぜそうなっているのかを担当に聞き、家族の考えと違えばその場で伝えてください。
退院が近づくと、ケアマネジャーや在宅の医療の担い手も加わって病院と在宅の側が集まる話合い(退院前カンファレンスと呼ばれることが多い場)が開かれることがあります。家族が同席できるかは病院ごとに違うので、日程を早めに聞いておきます。
たとえば、母が転んで骨折し、救急車で入院した場合は、緊急入院で、体の動きが落ちていて、ひとり暮らしで介護の担い手がいない、と複数の項目に当てはまる可能性があります。病院から連絡が来る前でも、入院から数日のうちに家族の側から担当を訪ねれば、話合いの場に加われるかを早く確かめられます。加算1を届け出ていない病院では、この日数の決まりはそのまま当てはまらないので、退院の相談はいつ誰とするのかを病棟で聞いてください。
入院料の日数の上限の読み方
病棟の種類によっては、入院料を算定できる日数に上限があります。ただし、これは「その病棟の入院料を何日まで算定できるか」の決まりであって、「その日までに退院しなければならない」という期限ではありません。
地域包括ケア病棟の入院料は、入院した日から起算して60日を限度に算定します。回復期リハビリテーション病棟は、病気やけがの種類ごとに算定の上限日数が決まっています。回復期リハビリテーション病棟は、日常の動作を良くして寝たきりを防ぎ、家庭に戻ることを目的とした病棟です。回復期リハビリテーション病棟から別の病院の回復期リハビリテーション病棟へ転院した場合は、上限日数は転院前の日数と通算されます。
| 病棟 | 病気・けがの種類 | 入院料を算定できる日数の上限 |
|---|---|---|
| 地域包括ケア病棟 | 入院した日から起算 | 60日 |
| 回復期リハビリテーション病棟 | 脳血管疾患・脊髄損傷・頭部外傷などの発症後・手術後、義肢装着訓練 | 150日 |
| 回復期リハビリテーション病棟 | 高次脳機能障害を伴う重症の脳血管障害・重度の頸髄損傷・頭部外傷を含む多部位外傷 | 180日 |
| 回復期リハビリテーション病棟 | 大腿骨・骨盤・脊椎・股関節・膝関節の骨折や二肢以上の多発骨折、廃用症候群、股関節・膝関節の置換術後、急性心筋梗塞などの心大血管疾患 | 90日 |
| 回復期リハビリテーション病棟 | 大腿骨・骨盤・脊椎・股関節・膝関節の神経・筋・靱帯の損傷後 | 60日 |
出典:診療報酬の算定方法(医科点数表・厚生労働省・PDF)/基本診療料の施設基準等 別表第九(厚生労働省)
一般病棟や療養病棟の日数の扱いは、この表では取り上げていません。親がいまどの病棟にいて、その病棟の入院料にどんな日数の決まりがあるのかは、入退院支援の担当に聞くのが確実です。療養病床は、医療法で、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させる病床と定められていて、一般病床とは役割が分かれています。
上限日数は入院料の算定の決まりであって、退院日そのものを決めるものではありません。退院の時期は、病院の担当に直接確かめてください。
たとえば、脳梗塞で急性期の病院から回復期リハビリテーション病棟に移った父なら、脳血管疾患の区分(150日)に当たることがあります。リハビリの進み具合を見ながら、家に戻るのか、老健でリハビリを続けるのかを、上限に近づく前に話し始めると、探す時間に余裕が生まれます。同じ父でも、廃用症候群などの別の区分に当たる場合は、上限日数が変わります。どの区分に当たるかは病気やけがの内容で決まるので、担当に確かめてください。
ケアマネと地域包括をすぐ呼ぶ

病院の担当と話したら、次は介護の側の相談相手を呼びます。担当のケアマネジャーがいれば入院したことをすぐ知らせ、いなければ親の住む地域の地域包括支援センターに相談してください。
ケアマネジャーの事業所は、介護サービスを使い始めるときに、入院が必要になったら担当ケアマネジャーの氏名と連絡先を病院に伝えるよう、利用者と家族に求めることになっています。ケアマネジャーが入院を早く知るほど、病院とケアマネジャーとの間で、入院前の暮らしの様子や退院後に要るサービスの情報のやり取りが始まります。ケアマネジャーの報酬の仕組みにも、入院した日のうちか翌日・翌々日に病院へ情報を渡すことや、退院の前に病院の職員と面談して情報を受け取り、ケアプランを作ることが組み込まれています。
出典:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準4条(e-Gov法令API)/指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準(厚生労働省)
2026年6月からは、診療報酬に、入退院支援加算1を届け出ている病棟がケアマネジャーと連携したときの新しい区分(介護支援等連携指導料2)も加わりました。これを算定する病院は、担当ケアマネジャーが決まっている患者なら原則として入院日から7日以内に入院の事実を伝え、退院が見込まれる7日前までに退院後のケアプランに要る情報を渡すことを院内の決まりにしています。要介護認定をまだ申請していないと思われる患者には、ケアマネジャーの事業所や地域包括支援センターへの相談を勧めることも、その決まりに入っています。新しい仕組みなので、病院によって対応が違います。家族の側から連絡を入れておくほうが確実です。
| 親の状況 | 連絡する先 | 伝えること・頼むこと |
|---|---|---|
| 担当のケアマネジャーがいる | 担当のケアマネジャー | 入院したこと・病院と病棟・入退院支援の担当の名前 |
| 要介護認定はあるが、状態が大きく変わった | 担当のケアマネジャー | 区分変更の申請を出すかの相談 |
| 認定を受けていない・ケアマネジャーがいない | 地域包括支援センター | 入院中であること・退院の見込みの時期・認定の申請の相談 |
| 要支援で、地域包括支援センターが担当 | 地域包括支援センター | 入院したこと・退院後のサービスの見直し |
地域包括支援センターは、介護保険法で、地域の高齢者の暮らしの状況の把握や、保健医療と福祉の情報の提供、関係機関との連絡調整などの総合的な相談支援(介護保険法115条の45第2項第1号)などを行う場として、115条の46で定められています。設置するのは市町村で、委託もできるため、名前(「高齢者あんしんセンター」など)や担当する区域は地域によって違います。※お住まいの市区町村で確認してください。
出典:介護保険法115条の45(e-Gov法令API)/介護保険法115条の46(e-Gov法令API)
要介護認定の申請に対する処分は、介護保険法で、申請のあった日から30日以内にしなければならないと定められています。ただし、心身の状況の調査に日時がかかるなど特別な理由があるときは、市区町村が見込みの期間と理由を通知して延ばすことができ、実際に結果が出るまでの日数も市区町村によって違います。入院中に申請を進めるときの訪問調査の進め方は、病院の担当と地域包括支援センターの両方に、退院の見込みの時期を伝えたうえで相談してください。
たとえば、ひとり暮らしの母が入院し、それまで介護サービスを使っていなかった場合、病院の担当に会ったその日のうちに地域包括支援センターへ電話すると、認定の申請と退院後の相談を同時に始められます。すでに要介護1の認定がある父が入院して歩けなくなったなら、新しく申請するのではなく、担当ケアマネジャーに区分変更の相談をする話になります。認定の区分が変わると、使える在宅サービスの量や、特養の入所の対象かどうかも変わります。
状態と期限で行き先を絞る
行き先は、施設の名前ではなく、親に要る医療の管理の重さと、退院までの時間と、家で介護を担える体制の3つで絞ります。医療の管理が重いほど、受け入れられる行き先は限られ、時間が短いほど、すぐ動ける行き先を優先する形になります。
行き先の候補は、法律でそれぞれの役割が分けて定められています。老健は、心身の機能の維持回復を図り、居宅で暮らせるように支援が必要な要介護者に、看護や医学的管理の下の介護と機能訓練を行う施設です。介護医療院は、主として長期にわたり療養が必要な要介護者に、療養上の管理や看護を行う施設です。特養の入所は原則として要介護3以上で、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は介護保険施設には当たりません。
| 行き先 | 法令の定めから見た向く状態 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 自宅(在宅サービスを組む) | 家族と在宅サービスで介護と医療の管理を担える | 夜間の体制・訪問看護の要否 |
| 介護老人保健施設(老健) | 看護・医学的管理の下の介護と機能訓練が要り、居宅に戻ることを目指す要介護者 | 入所の判定・続けて要る医療を受けられるか |
| 介護医療院 | 長期にわたり療養が必要な要介護者 | 受け入れの可否・必要な処置を受けられるか |
| 療養病床(医療保険の病床) | 主として長期にわたり療養を必要とする患者 | 転院の受け入れの相談 |
| 介護付有料老人ホーム | ホームの特定施設入居者生活介護を使いながら暮らしたい | 医療の対応・費用・退去の条件 |
| 住宅型有料老人ホーム | 外部の介護サービスを自分で選んで使える | ケアマネジャーと事業所の選び方 |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 原則として要介護3以上(1・2は特例入所) | 入所の判定と順番 |
| グループホーム | 認知症があり、要支援2か要介護1以上の人 | 医療の必要度・原則として住民票のある市町村の事業所 |
出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/介護保険法施行規則17条の9(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)/老人福祉法29条(e-Gov法令API)
この表は、法令の定めから見た向き不向きであって、受け入れの可否を決めるものではありません。どの処置を受けられるかは施設ごとに違うので、候補が決まったら、親の処置の内容を伝えて施設に直接確かめます。老健の入所の対象は、施設が心身の状況や病状、置かれている環境に照らして判断し、入所の申込みが空きより多いときは、医学的管理の下の介護と機能訓練の必要性が高い人を優先して入所させるよう努めることになっています(介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準8条)。
グループホームは、認知症であることが入居の前提で、入居のときは主治医の診断書などで確かめられます。医療の必要度が高い人は入居できないことがあります。
出典:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準94条(e-Gov法令API)
たとえば、要介護4で胃ろうの管理が続く母なら、医療の軸で老健・介護医療院・療養病床が先に並び、有料老人ホームを考えるなら、胃ろうの管理を受けてもらえるかを先に確かめる順になります。同じ母でも、処置がなく、認知症が進んで目が離せない状態なら、グループホームや特養の申込みが候補に入ります。認知症で処置もあるなら、両方の条件を満たすかを1軒ずつ当たります。
決まらないときのつなぎ方
退院の時期までに本命の行き先が決まらないときは、いったん別の場所でつないで時間を作ります。つなぎの候補は、老健、ショートステイ、在宅サービス、転院の相談の4つです。
老健は、居宅での生活を目指して支援する施設で、入所している人が居宅で暮らせるかを、医師や看護・介護職員、支援相談員、ケアマネジャーなどが定期的に話し合って検討し、記録することになっています。厚生労働省の通知では、この検討は少なくとも3か月ごとに行うとされています。これは検討の頻度であって、退所の期限ではありません。入所できる期間の長さは、申込みのときに施設に直接確かめてください。退所するときは、老健がケアマネジャーや主治医に情報を渡すよう努めることになっています。
出典:介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準8条(e-Gov法令API)/介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について(厚生労働省)
- 老健に入所する:リハビリを続けながら、在宅か次の施設かを決める時間を作る
- ショートステイを使う:家に戻ったうえで泊まりを挟み、介護の負担を分ける
- 在宅サービスを組む:訪問介護・訪問看護・定期巡回などで、家での暮らしを支える
- 転院を相談する:医療の管理が重いときに、療養病床などへの転院を病院の担当に聞く
ショートステイは、特養などに短期間泊まる短期入所生活介護と、老健や介護医療院などで医学的管理の下の介護を受ける短期入所療養介護の2つです。短期入所生活介護は、連続して30日を超えると、31日目以降は介護保険の短期入所に当たらず、事業所の料金で全額自己負担になります。退所した翌日に同じ事業所へ入所しても連続として数えます。あわせて、ケアマネジャーはショートの利用日数を、認定の有効期間のおおむね半数を超えないようにすることになっています(特に必要と認められる場合は除きます)。ショートを長いつなぎに使う計画は、日数の扱いをケアマネジャーと確かめてから立ててください。
出典:短期入所生活介護関係Q&A集(厚生労働省の事務連絡の転載・岩沼市)/指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準13条(e-Gov法令API)
たとえば、特養に申込みを出した母が、退院の時期までに入所の順番が来ない場合は、老健に入所して待つ、家に戻ってショートと在宅サービスを組んで待つ、の2通りが考えられます。前者はリハビリと医療の管理を続けやすく、後者は母が家で暮らす時間を保てます。どちらにするかは、母に続けて要る医療の管理と、家で夜を見られる人がいるかで決まります。老健から特養へ移れるかどうかは、特養の判定で決まるので、老健に入っても特養の申込みは続けてください。
遠くに住む子の動き方
離れて住んでいる子は、病院へ通える回数が限られます。だからこそ、最初の面談で連絡の窓口を1人に決め、電話でつながる時間帯を病院とケアマネジャーに伝えておくことが、遠方からでも打てる一手です。
退院困難な要因の項目には、家族や親族と連絡が取りにくいことが含まれています。連絡の窓口を決めておけば、病院とケアマネジャーとのやり取りがその人に集まり、兄弟の間で話が食い違うことも減ります。
病院と在宅の側の専門職が共同で行う退院時の指導は、ビデオ通話でもできる仕組みになっています(退院後に家で療養する場合が中心の仕組みです。厚生労働省の診療報酬の留意事項通知 B005)。家族がオンラインで話合いに加われるかは、遠方に住んでいることを伝えたうえで、病院の担当に相談してみてください。
施設の見学に行けないときは、書類で確かめる項目を決めて取り寄せます。
- 有料老人ホームの類型の表示(介護付か住宅型か)と、介護を誰が提供するか
- 看護職員の配置と、夜間の医療の対応がどうなっているか
- たんの吸引や経管栄養を、登録を受けた事業所として行っているか
- 入居の条件と、退去を求められる条件
- 月額の内訳と、入居のときに払う費用
たんの吸引や経管栄養は、介護福祉士なら誰でもできるわけではなく、事業所が都道府県知事の登録を受けている必要があります。介護付のホームの看護職員の配置も、省令に最低基準があるだけで、実際の配置はホームごとに違います。夜間に看護師がいるかどうかは、重要事項説明書で確かめるか、電話で聞いてください。
出典:社会福祉士及び介護福祉士法48条の3(e-Gov法令API)
たとえば、関東に住む長女が、九州の病院に入院した父の行き先を探す場合、病院の担当との面談を1回だけ現地で行い、あとは電話とオンラインでつなぐ形が考えられます。候補の施設は、近くに住む親族に1軒だけ見てきてもらい、残りは書類と電話で比べると、限られた帰省の回数で決めやすくなります。親族の手を借りられないなら、ケアマネジャーに施設の様子を聞いてみるのも1つの方法です。
候補を並べて比べる
行き先の種類が絞れたら、候補の施設を同じ物差しで並べて比べます。行に親の状態から出た条件、列に施設の名前を置いた1枚の表を作り、施設に電話で確かめた答えを書き込んでいきます。
表に入れる条件は、親に続けて要る医療の管理、認知症の様子、退院の見込みの時期に入れるか、費用の上限、家族が通える距離の5つが目安です。退院までの時間が短いときほど、最初に「受け入れられるか」と「いつから入れるか」の2行で候補をふるいにかけ、残った施設だけ費用や暮らしの中身を比べると、電話の数が減ります。
| 確かめる行 | 施設A | 施設B | 施設C |
|---|---|---|---|
| 親の医療の管理を受けられるか | |||
| 認知症の様子に対応できるか | |||
| 退院の時期に入れるか | |||
| 月額と入居時の費用 | |||
| 家族が通える距離か |
施設の空き状況や入れるまでの期間は、地域と時期によって違います。入れる時期は施設に直接聞き、答えをもらった日付も表に書いておきます。
費用は、介護の部分(介護保険の自己負担)と、住まいと食事の部分に分けて聞いてください。有料老人ホームの月額や入居時の費用はホームが決める額なので、重要事項説明書の写しをもらって家族で読み合わせます。
たとえば、候補が2軒しかなく、1軒は医療の行で、もう1軒は時期の行で引っかかった場合、どちらかに妥協する前に、地域を少し広げたり、類型を住宅型まで含めたりして候補を足すことを考えてください。病院の担当は、近くの施設の受け入れの傾向を知っていることがあるので、候補の名前を見せて意見を聞くのも手です。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
病院の担当やケアマネジャーから具体的な候補を聞けていて、見学の段取りまで進んでいるなら、その候補に絞って動けば足ります。行き先の種類は絞れたものの、退院までの短い期間に、親の状態を受け入れてくれるホームが地域にどれだけあるかを自分で調べきれないときは、老人ホームの検索サイトで地域と医療の対応を絞って資料をまとめて取り寄せると、病院の担当に見せる候補の一覧を短い時間で作れます。資料では、必要な医療の処置に対応できるかを先に確かめてください。
施設を選ばず家に帰す条件
親も家族も家での暮らしを望み、条件がそろうなら、施設を選ばずに家に帰す道もあります。続けられるかどうかは、介護の量、夜間の体制、医療の管理の担い手、家族の暮らしの4つで見ます。
家に帰すと決めたら、退院前にケアマネジャーが病院の職員と面談して情報を受け取り、退院後のケアプランを作ります。ケアマネジャーは、退院しようとする要介護者から依頼があれば、居宅での生活へ円滑に移れるよう、あらかじめケアプランの作成などの援助を行うことになっています。介護保険の在宅サービスは、要介護度ごとの区分支給限度基準額の範囲で組み立てるので、要る介護がこの範囲に収まるかが1つ目の目安です。
出典:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準13条(e-Gov法令API)/区分支給限度基準額(介護サービス情報公表システム・厚生労働省)
- 介護の量:要る訪問介護やデイサービスが、限度額の範囲に収まっている
- 夜間の体制:夜中のトイレや見守りを、家族か定期巡回などのサービスで担える
- 医療の管理:薬や処置を、訪問看護や家族で担える
- 家族の暮らし:主に介護する人の体と仕事に、続けられる見通しがある
- 家の環境:ベッドや手すりなど、退院の日までに整えられる
この4つと家の環境がそろっていれば、施設を選ばずに家に帰す案を具体的に検討できます。1つでも欠けるなら、欠けた部分をどのサービスで埋めるかをケアマネジャーと話し、埋まらなければ、先に見た老健やショートでつなぐ案に戻ります。
たとえば、要介護2で、退院後に処置が残らない父なら、昼はデイサービス、週に数回の訪問介護、介護ベッドのレンタルで家に戻れる見込みがあります。同じ父でも、夜中に何度も起きてトイレに介助が要り、同居の家族が夜勤のある仕事をしているなら、夜間の体制が欠け、家に帰す前に夜の手当てを決める話になります。
入居したあとの実家

退院してそのまま施設に入ると、次に表に出てくるのは、空いた実家をどうするかです。郵便物、公共料金、家の傷みは、親が家を離れたあとも続きます。
入居が決まったら、最初に決めるのは、貸すか売るかではなく、誰がいつ家の様子を見に行くかと、郵便をどこに届けてもらうかです。親の判断ができるうちに、家の扱いについての希望を聞いておくと、あとで兄弟の意見が分かれたときの手がかりになります。
たとえば、遠くに住む長男と近くに住む次女がいる場合、次女が月に一度家を見に行き、長男が公共料金と税の通知を引き受ける、と役割を分けておくと、どちらかに負担が偏りにくくなります。家の片付けや売却の話は、そのあとに家族の都合を合わせて進めれば足ります。
次に来ることを先に知っておくと、入居のあとの実家の問題を慌てずに迎えられます。
よくある質問
介護施設が見つからないときはどうすればいいですか?
まず、病院の入退院支援の担当とケアマネジャー(いなければ地域包括支援センター)に、見つからない理由を伝えて相談してください。医療の管理が理由なら老健や介護医療院、療養病床への転院、時期が理由なら老健やショートステイ、在宅サービスでつなぐ案があります。地域や類型を広げて候補を足すことも考えます。
退院してから老健に入るにはどうすればいいですか?
入院中から、病院の担当とケアマネジャーに老健を候補にしたいと伝え、老健に申込みをして入所の判定を受けます。老健は、施設が親の心身の状況や病状、環境に照らして入所を判断するので、病院からの情報が要ります。退院の時期と入所の時期を合わせられるかは、老健に直接確かめてください。
退院支援とは何ですか?
入院した患者が、退院後に安心して暮らせる場所へ移れるよう、病院が退院の段取りを支える取り組みです。入退院支援加算1を届け出ている病院では、退院が難しくなりそうな患者を入院後の早い時期に見つけ、家族と話し合い、退院支援計画を作って文書で交付し、転院先や介護サービスとの調整を進めます。
退院後、入居先の施設まではどうやって移動しますか?
移動の方法は、親の体の状態と、施設や病院がどこまで送迎に関わるかで変わります。車いすのまま乗れる車が要るか、付き添いが要るかを、退院日の段取りとして病院の担当と施設に早めに相談してください。誰が手配し、費用を誰が払うのかも、その場で決めておくと当日に慌てません。
地域包括ケア病棟は60日で退院しなければいけませんか?
60日は、地域包括ケア病棟の入院料を算定できる日数の上限で、その日までに退院しなければならないという期限ではありません。退院の時期は病院の担当に確かめられるので、上限に近づく前から退院先の相談を始めておくと、探す時間に余裕が生まれます。
退院までに要介護認定が間に合わないときはどうすればいいですか?
申請に対する処分は申請から30日以内にしなければならないと定められていますが、実際に結果が出る日数は市区町村によって違います。申請を済ませたうえで、結果が出る前に使うサービスの扱いを、地域包括支援センターやケアマネジャーに確かめてください。退院の見込みの時期を早めに伝えておくほど、段取りを組みやすくなります。
順番のおさらい
- 退院支援の担当:病棟で窓口を聞き、退院の見込みの時期と医療の管理を確かめる
- 病院の中の流れ:加算1の病院では入院後3日以内の抽出、7日以内の話合いと計画の着手が決まっている
- 日数の上限:病棟の入院料を算定できる日数で、退院の期限ではない
- ケアマネと地域包括:入院をすぐ知らせ、いなければ地域包括に相談して認定を進める
- 行き先:医療の管理の重さ・退院までの時間・家の体制の3つで絞る
- つなぎ:老健・ショート・在宅サービス・転院の相談で時間を作る
- 遠方から:連絡の窓口を1人に決め、見学に行けない施設は書類で確かめる
- 比べ方:受け入れと時期の2行でふるい、残った候補を同じ表で比べる
- 家に帰す条件:介護の量・夜間・医療の管理・家族の暮らしがそろっているか
- 入居したあと:実家を誰がいつ見に行くかを最初に決める
行き先の答えを1日で出そうとすると、焦りが強くなります。実際には、病院の中では入院のすぐあとから退院支援が動いていて、家族は担当に会い、ケアマネジャーか地域包括支援センターを呼び、親の状態を1枚の紙にまとめるところまでを先に済ませれば、あとは同じ表で候補を比べ、足りない時間をつなぎで埋める順に進められます。決めるのは家族ですが、1人で探す必要はありません。

