老健の費用は月いくらか|多床室と個室・特養との比較・負担が下がる条件

電卓とペン
  • 病院から老健をすすめられたが、親が入ったら1か月にいくら払うのか
  • 料金表に並ぶ介護サービス費・食費・居住費が、それぞれ何なのか分からない
  • 個室と多床室(相部屋)で、月の支払いはどれくらい変わるのか
  • 要介護度が上がると、老健の費用も上がるのか
  • 料金表の「第1段階」「第2段階」が親のどれに当たるのか知りたい
  • 特養と老健では、同じ親でどちらの支払いが小さくなるのか
  • 入所中に病院にかかったら、医療費は別に請求されるのか
  • 親の年金で、老健の支払いがまかなえるのか

上記のような悩みに答えます。

老健(介護老人保健施設)の費用は、施設紹介のサイトでは部屋のタイプ別の「月額の目安」として並べられがちです。ところが目安の表には、親の要介護度・住んでいる地域・負担割合・所得の段階が入っていないので、うちの親の場合の額はそこから出てきません。老健の1日の単位数に地域の単価と負担割合を掛ける手順、多床室の居住費が「室料を取るかどうか」で2通りあること、介護費の部分にだけ月の上限がかかり食費と居住費には効かないこと、老健の介護費・食費・居住費の自己負担は医療費控除の対象が全額であることは、目安の表からは読み取れません。そこで、月額を4つの部分に分けて組み立てる手順を押さえたうえで、所得の段階ごとの食費・居住費、特養・有料老人ホームとの費用の形の違い、年金で払えるかの出し方まで、介護保険法・厚生労働省の告示と省令・国税庁の案内で確かめながら整理しました。

先に答え

老健(介護老人保健施設)の月額は、介護サービス費の自己負担・食費・居住費・日常生活費の4つの合計です。介護サービス費は要介護度と居室で決まる1日の単位数に地域の単価と1〜3割をかけて出し、食費と居住費は所得と預貯金の条件を満たして負担限度額認定を受ければ段階ごとの上限まで下がります。特養より1日の単位数は高めですが、どちらも介護保険施設なので軽減の仕組みは同じです。

介護費の自己負担シミュレーター(要介護度と負担割合から介護費の部分を出す)

この記事の数字は2026年10月時点のものです。食費・居住費の基準費用額と負担限度額は2026年8月1日からの額、施設サービス費の単位数は令和6年度改定後の基本部分(加算を含まない)で書いています。

目次

老健の月額は4つの合計

電卓とペン

老健に払うお金は、介護サービス費の自己負担、食費、居住費、日常生活費の4つに分かれます。介護保険の通常の給付(施設介護サービス費)が出るのは介護サービス費の部分だけで、食費と居住費は所得が低い人向けの別の仕組み(負担限度額認定)、介護サービス費は月の上限(高額介護サービス費)と、下がる仕組みもそれぞれ別です。

4つに分かれる理由は、介護保険法48条の書き方にあります。施設に入ったときの保険給付(施設介護サービス費)は、かかった費用から「食事の提供に要する費用、居住に要する費用その他の日常生活に要する費用」を除いた部分に対して出る、と定められています。給付は原則としてその部分の100分の90で、残りが1割の自己負担です。食費と居住費は最初から給付の外にあるので、介護保険証を出しても下がらず、別の制度(特定入所者介護サービス費=負担限度額認定)で軽くする形になっています。

部分 何で決まるか 下がる仕組み
介護サービス費の自己負担 1日の単位数(要介護度・居室・施設の類型)×地域の単価×1〜3割 高額介護サービス費(月の上限)
食費 施設との契約(国の基準費用額あり) 負担限度額認定
居住費 施設との契約(居室ごとに国の基準費用額あり) 負担限度額認定
日常生活費 施設が文書で示して同意を得たもの なし

出典:介護保険法48条(e-Gov法令API)/介護保険法51条の3(e-Gov法令API)

老健は、介護保険法8条で「主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である」要介護者に、看護・医学的管理の下での介護や機能訓練を行う施設と定められています。特養・介護医療院と並ぶ介護保険施設の1つなので、単位数も食費・居住費の基準の額も国が決めていて、料金表がなくても月額の骨組みは自分で組み立てられます。

たとえば、退院を控えた父について病院の相談員から老健の名前が挙がった場合、最初に要るのは施設の名前より、父の要介護度・介護保険負担割合証・住民税が課税か非課税かの3つです。この3つがそろえば、下の手順で4つの部分のうち3つまでは計算できます。要介護度は市区町村の要介護認定で決まるので、認定の結果が出る前なら、出たあとに計算し直す前提で見込みの要介護度を置いておきます。

出典:介護保険法27条(e-Gov法令API)

日常生活費だけは施設ごとなので、候補の施設に料金表をもらって足します。

料金表を受け取ったら、4つの欄に分けて書き写してください。欄ごとに効く軽減が違うので、分けておくだけで「どこが下がり、どこが下がらないか」を取り違えなくなります。

介護サービス費の自己負担を出す

介護サービス費の自己負担は、「1日の単位数×日数×1単位の単価×負担割合」で出ます。老健の単位数は、要介護度のほかに、居室が従来型個室か多床室か、施設の類型が基本型か在宅強化型かで変わります。

老健の単位数で見落としやすいのは、多床室のほうが従来型個室より単位数が高いことです。特養では従来型個室と多床室が同じ単位数ですが、老健は告示の上で別の単位数になっています。もう1つは施設の類型で、同じ老健でも在宅強化型は基本型より高い単位数が決められています。親の入る老健がどの類型かは、施設の重要事項説明書で確かめます。

1日の単位数と、1単位10円の地域・1割負担・30日での自己負担は次のとおりです(令和6年度改定後の基本部分。加算を含まない)。

計算例

要介護度 基本型・従来型個室 基本型・多床室 在宅強化型・従来型個室 在宅強化型・多床室
要介護1 717単位(21,510円) 793単位(23,790円) 788単位(23,640円) 871単位(26,130円)
要介護2 763単位(22,890円) 843単位(25,290円) 863単位(25,890円) 947単位(28,410円)
要介護3 828単位(24,840円) 908単位(27,240円) 928単位(27,840円) 1,014単位(30,420円)
要介護4 883単位(26,490円) 961単位(28,830円) 985単位(29,550円) 1,072単位(32,160円)
要介護5 932単位(27,960円) 1,012単位(30,360円) 1,040単位(31,200円) 1,125単位(33,750円)

かっこ内は「1日の単位数×30日×10円×1割」の目安です。

出典:厚生労働省 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(告示)/厚生労働省 介護報酬の算定構造(PDF)

ユニット型個室の老健(基本型)は、要介護1から5まで1日802・848・913・968・1,018単位です。実際の請求には、施設が算定している加算が上乗せされるので、加算の種類は料金表で確かめてください。

1単位の単価は、施設の所在地の地域区分で決まります。老健を含む施設サービスは、その他の地域が10円、1級地が10.90円で、その間に10.72円・10.68円・10.54円・10.45円・10.27円・10.14円の区分があります。

※1単位の単価は地域によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

出典:厚生労働省 地域区分と1単位の単価(PDF)

計算例

たとえば、要介護4の母が基本型の老健の多床室に1割負担で入る場合、1単位10円の地域なら961単位×30日=28,830単位で、自己負担は28,830円です。同じ母が1級地の老健に入ると、28,830単位×10.90円=314,247円が介護サービス費の総額で、1割の自己負担は約31,425円になります(1円未満の端数の扱いで数円ずれることがあります)。施設が在宅強化型なら、多床室の単位数は1,072単位で、1単位10円の地域・1割負担なら30日で32,160円です。

負担割合は原則1割で、65歳以上(第1号被保険者)で所得が一定以上の人は2割または3割です。判定は、本人の合計所得金額と「年金収入+その他の合計所得金額」の両方で行われます。

負担割合 本人の合計所得金額 年金収入+その他の合計所得金額(単身) 同(2人以上の世帯)
2割 160万円以上 280万円以上 346万円以上
3割 220万円以上 340万円以上 463万円以上

出典:厚生労働省 介護保険制度の概要(PDF)

計算例

上の母が2割負担なら、多床室の介護サービス費は28,830円×2=57,660円、3割負担なら86,490円です。

親の負担割合は、市区町村から届く介護保険負担割合証に書かれています。割合証が見当たらないときは、計算を始める前に市区町村の介護保険の担当で再交付の方法を聞いてください。割合を取り違えると、この部分の見込みが2倍・3倍の幅でずれます。

食費と居住費は居室で変わる

食費は居室にかかわらず同じ基準の額ですが、居住費は居室のタイプで大きく変わります。老健の多床室には、室料を徴収する場合と徴収しない場合の2つの基準費用額があり、料金表のどちらに当たるかで居住費が変わります。

基準費用額は、国が告示で決めている食費と居住費の基準の額で、2026年8月1日から引き上げられています。負担限度額認定を受けない人の食費と居住費は施設との契約で決まるので、施設の料金表の額が基準費用額と違うことがあります。親の施設の額は料金表で確かめ、計算ではその額に置き換えてください。

区分(老健) 1日の基準費用額
食費 1,545円
居住費・多床室(室料を徴収する場合) 697円
居住費・多床室(室料を徴収しない場合) 437円
居住費・従来型個室 1,728円
居住費・ユニット型個室 2,066円

出典:介護サービス情報公表システム「利用者負担の軽減について」(厚生労働省)

老健の月額はこの足し算で組み立てる
介護費(単位数×30日×単価×負担割合)+居住費+食費=30日の目安
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28,830円+20,910円+46,350円=96,090円(基本型・多床室・要介護4・1割)
--/calc-->
計算例

要介護4・1割・1単位10円の地域で、基本型の老健の居室ごとに30日の目安を並べると次のとおりです(負担限度額認定なし・食費と居住費は基準費用額どおり)。

居室(要介護4・1割) 介護費 居住費 食費 30日の目安
多床室・室料を徴収する場合 28,830円 697円×30日=20,910円 1,545円×30日=46,350円 96,090円
多床室・室料を徴収しない場合 28,830円 437円×30日=13,110円 46,350円 88,290円
従来型個室 883単位×30日=26,490円 1,728円×30日=51,840円 46,350円 124,680円

加算と日常生活費は含みません。この計算は単位数と居住費の組み合わせの一例なので、親の施設の区分と居住費の額は料金表で確かめてください。

計算例

多床室(室料を徴収する場合)と従来型個室の差は30日で28,590円(124,680円−96,090円)です。介護費は個室のほうが2,340円低いのに、居住費が30,930円高いので、合計では個室のほうが上になります。単位数の表だけを見て「多床室のほうが高い」と思い込むと、逆の結論になります。

たとえば、親が個室を希望していても、同じ老健の多床室との差が月にいくらかを先に出しておくと、家族で話すときの材料になります。料金表の居住費の欄で多床室の1日の額を確かめ、上の2行のどちらに当たるかを見てください。

30日で計算した額は月の目安で、実際の請求は日数と施設の契約で前後すると考えておくと、請求書を見たときに慌てません。

所得の段階で食費と居住費が下がる

親の世帯全員(別の世帯の配偶者も含む)が住民税非課税で、年金収入等と預貯金等が基準以下なら、負担限度額認定を受けると食費と居住費が段階ごとの1日の上限まで下がります。介護サービス費のほうは、別の制度(高額介護サービス費)で月の上限がかかります。

負担限度額認定で下がる仕組みは、介護保険法51条の3に書かれています。食費・居住費の基準費用額と、段階ごとの負担限度額の差を介護保険から施設に払う形なので、親が払うのは負担限度額までになります。対象は特養・老健・介護医療院・地域密着型特養・2種類のショートステイの6つで、老健はこの中に入っています。

老健の居室ごとの1日の負担限度額は次のとおりです(2026年8月時点)。

段階 食費 多床室(室料を徴収) 多床室(室料を徴収しない) 従来型個室 ユニット型個室
第1段階 300円 0円 0円 550円 880円
第2段階 390円 430円 430円 550円 880円
第3段階① 680円 430円 430円 1,370円 1,370円
第3段階② 1,420円 530円 430円 1,470円 1,470円
認定なし(基準費用額) 1,545円 697円 437円 1,728円 2,066円

出典:介護サービス情報公表システム「利用者負担の軽減について」(厚生労働省)

段階は、所得と預貯金等の両方で決まります。第1段階は生活保護を受けている人など、または世帯全員が住民税非課税で老齢福祉年金を受けている人です。第2段階は、世帯全員が非課税で、本人の年金収入等(非課税年金を含む年金の収入額+その他の合計所得金額)が82.65万円以下の人、第3段階①は82.65万円超120万円以下、第3段階②は120万円超の人です。

預貯金等の基準は、65歳以上の人の場合、本人と配偶者の分の合計で見て、第2段階が単身650万円以下・夫婦1,650万円以下、第3段階①が単身550万円以下・夫婦1,550万円以下、第3段階②が単身500万円以下・夫婦1,500万円以下です。老齢福祉年金を受けている第1段階の人は単身1,000万円以下・夫婦2,000万円以下で、生活保護を受けている人に預貯金の要件はありません。40〜64歳(第2号被保険者)は、段階にかかわらず単身1,000万円・夫婦2,000万円以下です。住民税が課税されている世帯(第4段階)は原則として対象外ですが、施設に入所していて世帯員が2人以上いる場合に、4つの条件をすべて満たすと対象になる特例があります。

出典:介護保険法51条の3(e-Gov法令API)/介護保険法施行規則83条の5(e-Gov法令API)

介護サービス費には、世帯の所得に応じた1か月の上限があり、超えた分は申請すると高額介護サービス費として戻ります。老健の施設サービスの自己負担もこの対象です(介護保険法51条)。

区分 1か月の上限額
課税所得690万円以上 140,100円(世帯)
課税所得380万円以上690万円未満 93,000円(世帯)
住民税課税〜課税所得380万円未満 44,400円(世帯)
住民税世帯非課税 24,600円(世帯)
世帯非課税で、年金収入等の合計が82.65万円以下 15,000円(個人)

出典:介護保険法51条(e-Gov法令API)/厚生労働省 介護保険最新情報Vol.997(PDF)/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)

この上限の対象は介護サービス費の自己負担で、食費と居住費が上限の計算に入るかどうかの扱いは市区町村で確かめてください。戻るのは申請した場合だけで、給付を受ける権利は2年で時効になります。いつから数えるかも市区町村に確認してください。

計算例

要介護4・1割・基本型の多床室(室料を徴収)・1単位10円の地域で、段階ごとの30日の目安は次のとおりです。世帯でほかに介護サービスを使っていない単身の親を想定しています。

段階 介護費 居住費 食費 30日の目安 介護費の上限を当てた後
認定なし 28,830円 20,910円 46,350円 96,090円 96,090円
第3段階② 28,830円 530円×30日=15,900円 1,420円×30日=42,600円 87,330円 24,600円+15,900円+42,600円=83,100円
第3段階① 28,830円 430円×30日=12,900円 680円×30日=20,400円 62,130円 24,600円+12,900円+20,400円=57,900円
第2段階 28,830円 430円×30日=12,900円 390円×30日=11,700円 53,430円 15,000円+12,900円+11,700円=39,600円

「認定なし」の行は、住民税課税〜課税所得380万円未満の世帯(上限44,400円)を想定しているので、介護費は上限に届きません。

計算例

この表で目を引くのは、第3段階②の下がり方です。認定なしとの差は、食費と居住費だけで見ると8,760円(96,090円−87,330円)で、第2段階の42,660円(96,090円−53,430円)と比べると小さくなります。第3段階②は食費の上限が1日1,420円と基準費用額に近いので、認定を受けても食費はあまり下がりません。

たとえば、年金収入等が120万円を少し超える母の場合、第3段階②に当たるので、認定を受けても月の支払いは大きくは下がりません。それでも申請しなければ食費と居住費はまったく下がらないので、預貯金の基準に収まるなら申請しておく価値はあります。反対に、預貯金が基準を超えている場合は、段階にかかわらず認定は受けられません。

認定を受ける手順と、預貯金等に含まれるもの・含まれないものは次の記事で詳しく書いています。認定の効力は、国の通知の取扱いでは申請した月の初日にさかのぼるので、入所が決まった月のうちに申請しておくと取りこぼしが少なくすみます。

負担限度額認定証で施設の食費・居住費は下がるか

※負担限度額認定の申請書の様式と窓口は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

月額の外の費用と医療費

病院の廊下

老健が介護保険の1〜3割のほかに入所者から受け取れる費用は、省令で範囲が決まっています。食費、居住費、特別な療養室の費用、特別な食事の費用、理美容代、それに日常生活で通常必要になるもののうち入所者に負担させることが適当と認められる費用です。

この範囲を決めているのは、介護老人保健施設の運営の基準を定めた厚生労働省令の11条です。施設は、これらの費用の内容と額をあらかじめ文書で説明して入所者の同意を得る決まりで、食費・居住費・特別な療養室・特別な食事の4つは同意も文書で取ることになっています。費用の内容と額は施設の料金表と重要事項説明書で確かめられるので、候補の施設には書面で出してもらってください。

出典:介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準 11条(e-Gov法令API)

この列挙には、有料老人ホームのような前払金(入居一時金)は挙がっていません。ただ、入所の際にどんな費用をいつ払うかは施設の重要事項説明書で決まるので、「入所時にまとまったお金が要るか」は候補の施設に直接確かめてください。日常生活費にどの品目が入るかも、この省令からは決まらないので、料金表の項目と額で確かめます。

入所中の医療は、老健の医師が担うのが基本です。省令は、老健の医師が施設で必要な医療を提供するのが難しいと認めたときは、協力医療機関などへの入院の措置や、ほかの医師の対診を求める措置をとるよう定めていて、必要のない往診や通院をさせてはならないとしています。

医療保険の扱いについては、厚生労働省の通知に基本的な考え方があります。老健で対応できる医療行為は施設の医師が対応するので、ほかの保険医が往診や通院で診ても医療保険での請求は認められず、老健で通常行えない医療行為は医療保険で請求できる、という整理です。どの医療行為がどちらに当たるかは施設と受診先によるので、持病の通院や薬がある親は、入所前の面談で「今の通院と薬は入所後どうなるか」を聞いてください。

出典:介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準 16条(e-Gov法令API)/厚生労働省 介護老人保健施設入所者に係る往診及び通院(対診)について

確定申告の医療費控除では、老健の施設サービスの自己負担額(介護費・食費・居住費)の全額が医療費控除の対象です。特養は自己負担額の2分の1が対象なので、ここは老健と特養で扱いが違います。日常生活費や特別なサービスの費用は対象外です。

出典:国税庁 タックスアンサーNo.1125

計算例

たとえば、要介護4・1割で基本型の多床室(室料を徴収)に1年間入った父の場合、30日の目安96,090円×12か月=1,153,080円が、医療費控除の対象になりうる額の目安です。高額介護サービス費で戻った分は医療費から差し引くので、実際の対象額は施設が発行する領収証で確かめてください。

医療費控除は、払った人の申告で使います。親の年金から払っているなら親の申告で、子が払っている場合に子の控除に入れられるかは「生計を一にしているか」で変わるので、税務署で確かめてください。領収証は入所した月から1年分をまとめて保管しておくと、申告の時期に慌てずにすみます。

医療的なケアが続く親の施設の選び方は、次の記事で整理しています。

医療ケアが必要な親の施設の選び方

特養や有料ホームと費用の形を比べる

老健と特養は、どちらも介護保険施設なので、月額の形(介護費+食費+居住費+日常生活費)も、負担限度額認定と高額介護サービス費が効くことも同じです。違うのは1日の単位数と居住費の基準費用額で、どちらが高いかは居室・負担割合・所得の段階で入れ替わります。

特養の単位数は、従来型個室と多床室が同じで、要介護1から5まで1日589・659・732・802・871単位です。老健の基本型の多床室(793〜1,012単位)より低く設定されています。一方で、居住費の基準費用額は、多床室が特養915円・老健697円(室料を徴収する場合)、従来型個室が特養1,231円・老健1,728円で、居室によって高低が逆になります。

出典:厚生労働省 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(告示)

計算例

同じ要介護4・1割・1単位10円の地域・負担限度額認定なしで並べると、30日の目安は次のとおりです。

居室 特養 老健(基本型) 差
多床室 802単位×30日=24,060円+915円×30日=27,450円+46,350円=97,860円 96,090円(室料を徴収)/88,290円(徴収しない) 老健が1,770円〜9,570円低い
従来型個室 24,060円+1,231円×30日=36,930円+46,350円=107,340円 124,680円 老健が17,340円高い

第2段階の場合は、多床室の食費と居住費の負担限度額が特養と老健で同じ(食費390円・居住費430円)で、介護費が個人の上限15,000円まで戻ると、特養も老健も30日で39,600円になります。

有料老人ホームは介護保険施設ではないので、形そのものが違います。介護付き有料老人ホームの介護の部分は特定施設入居者生活介護の単位数(一般型で要介護4は1日744単位)で決まりますが、家賃・食費・管理費などはホームが決め、負担限度額認定は効きません。前払金を受け取るホームもあり、その返還の仕組みは老人福祉法で決まっています。

計算例

要介護4・1割・1単位10円の地域なら、介護付き(一般型)の介護の部分は744単位×30日=22,320円です。これにホームの家賃・食費・管理費が加わり、食費と居住費には負担限度額認定の軽減がありません。

出典:厚生労働省 介護報酬の算定構造(PDF)/介護保険法51条の3(e-Gov法令API)

たとえば、要介護4で第2段階の父なら、特養でも老健でも多床室の30日の目安は同じ水準になり、費用より「どの施設に入れるか」「どのくらいの期間いられるか」で選ぶ話になります。同じ父が負担限度額認定の対象外で個室を望むなら、老健の従来型個室は特養の従来型個室より居住費と介護費の分だけ上がる(上の表の計算のとおり)ので、比べる意味が出てきます。有料老人ホームを候補に入れるなら、認定の有無で差が開く点を先に押さえておきます。

特養と有料老人ホームの違い

老人ホームの費用は月いくらかかるか

所得の低い親で、介護の必要が比較的軽い場合は、ケアハウスという住まいも候補に挙がります。費用の決まり方が老健とは違うので、次の記事で確かめてください。

ケアハウスの費用と入居の条件

年金と預貯金で払えるかの出し方

テーブルの上の書類

親の年金で払えるかは、「老健の月額−年金の1か月あたりの手取り」で毎月の持ち出しを出すと分かります。持ち出しが出たら、預貯金をその額で割れば、何か月払い続けられるかの目安になります。

この計算で迷いやすいのが、何か月の入所を前提にするかです。老健の運営の基準を定めた省令は、入所者が居宅で日常生活を営めるかどうかを定期的に検討し、記録するよう施設に求めていて、厚生労働省の解釈通知はその検討を少なくとも3月ごとに行うとしています。これは検討の頻度で、3か月で退所しなければならないという決まりではありません。入所期間の上限を数字で定めた文言は、編集部が確かめた省令と通知には見つかっていません。入所の対象や順番の決まり方、退所のときの流れは次の記事にまとめています。

老健に入れる条件と入所できる期間

出典:介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準 8条(e-Gov法令API)/厚生労働省 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について

持ち出しはこの順番で出す
  1. 1単位数と居住費を決める要介護度・居室・施設の類型
  2. 2軽減を当てる負担限度額認定の段階と介護費の上限
  3. 3日常生活費を足す施設の料金表の項目
  4. 4年金の月額を引く年金額の通知と通帳の入金
  5. 5預貯金で割る何か月払えるかの目安
  1. 介護保険負担割合証と要介護度を確かめ、候補の老健の類型と居室から介護費を出す
  2. 住民税の課税・非課税と預貯金等から段階を見当づけ、食費と居住費を段階の額にする
  3. 介護費が上限を超えるなら上限額に置き換え、料金表の日常生活費を足す
  4. 年金の年額を12で割り、月額から引いて毎月の持ち出しを出す
  5. 親の預貯金を持ち出しで割り、何か月払い続けられるかを出す
計算例

たとえば、第2段階の母が基本型の多床室(室料を徴収)に要介護4・1割で入る場合、30日の目安は39,600円で、12か月なら475,200円です。認定の対象外で同じ居室なら96,090円で、12か月なら1,153,080円になります。この2つの差の677,880円が、認定に当てはまるかどうかで1年に動く額の目安です。ここから年金で払える分を引いた残りが、預貯金から出ていく額になります。

持ち出しを計算するときは、年金の額面ではなく、通帳に振り込まれる額を使ってください。親が老健に入ったあとも、実家の固定資産税や光熱費の基本料金が同じ口座から出ていくなら、その分も持ち出しに入れます。

老健を出たあとの行き先(自宅・特養・有料老人ホーム)で費用の形が変わるので、預貯金で何か月払えるかが出たら、その月数と次の行き先の候補を並べて考えてください。

入所せず在宅で続ける条件

老健に入らず在宅で続けられるのは、親に要る介護と機能訓練が訪問・通所のサービスとショートステイの組み合わせで回り、夜間や体調の急な変化に誰がどう動くかが決まっていて、介護する家族の仕事と暮らしが続けられるときです。この3つがそろうなら、老健の月額と在宅の費用を並べて比べる意味があります。

老健は、心身の機能の維持回復を図り、居宅での生活を営めるようにする支援が必要な要介護者のための施設です。退院後の機能訓練を在宅のリハビリで受けられるなら、老健に入るかどうかは費用と家族の負担で比べる話になります。在宅で使う訪問や通所の介護サービスは、居住費がかからない代わりに、食事の用意や見守りの手間が家族に残ります。

在宅で続けるときに組み合わせやすいのが、ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)です。ショートステイも負担限度額認定の対象なので、段階に当てはまれば泊まった日の食費と滞在費が下がります。ただし、ショートステイの食費の負担限度額は入所とは別の額が決まっているので、申し込む前に施設で確かめてください。

たとえば、昼は通所リハビリに通い、月に数日ショートステイを使えば家族が仕事を続けられる父なら、在宅で続ける選択を老健と並べて考えられます。反対に、夜間の介助が毎晩要るのに担い手がいない場合や、退院後の機能訓練を毎日受ける必要がある場合は、費用だけで在宅を選ぶと家族の暮らしが先に崩れます。どちらに当たるかは、ケアマネジャーや病院の相談員に、親の一日の過ごし方と家族が動ける時間帯を書き出して見せると、判断の材料がそろいます。

親本人が施設に入るのを嫌がっている場合の話の進め方は、次の記事で扱っています。

親が施設を拒むときの話し方と進め方

施設を探すときに費用で聞くこと

老健を見学するときは、雰囲気と同じくらい、費用を4つの欄に分けて書面で答えてもらうことが大切です。重要事項説明書と料金表をもらい、次の点を確かめてください。

聞き方を決めておく理由は、老健の単位数と居住費が施設ごとの事情(類型・室料の扱い・加算)で変わるからです。同じ「老健の多床室」でも、施設の類型が違えば介護費の単位数が変わり、室料の扱いが違えば居住費が変わります。

  • 施設の類型(基本型か在宅強化型か)と、親の居室の1日の単位数
  • 多床室の室料を徴収するか、居住費と食費の1日の額
  • 算定している加算の種類と、親に当てはまる加算
  • 日常生活費として請求する項目と額、特別な療養室や特別な食事の費用
  • 入所中の通院・薬・医療の扱いと、入所時にまとまった費用が要るか
  • 施設の所在地の地域区分(1単位の単価)

たとえば、2つの老健の料金表を並べたとき、片方の月額が低く見えても、加算や日常生活費が別欄で書かれているだけということがあります。見学の帰りに、その日の回答を4つの欄の表に書き入れておけば、候補が増えても同じ物差しで比べられます。施設の候補を広げるときは、在宅か施設かの入口のページから種類ごとの記事をたどってください。

在宅か施設か|在宅の限界が見え、施設を考え始めた人へ

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老健を出たあとに家へ戻るのが難しそうなら、次の行き先の費用も同じ計算で並べておくと、退所の話が出たときに慌てずに済みます。老人ホームの検索サイトでは、地域と予算で絞って有料老人ホームなどの資料をまとめて取り寄せられます。届いた資料は、月額に含まれるものと別にかかるものを、この記事の老健の計算と同じ表に書き出して比べてください。

みんなの介護で老人ホームの資料を取り寄せる

入所したあとの実家

親が老健に入ると、次に考えることになるのは、親が住まなくなった実家です。老健は居宅での生活に戻れるかを定期的に検討する施設なので、自宅に戻る前提か、次の施設へ移る前提かで、実家の扱いは変わります。

戻る前提なら、手すりや段差など住まいの準備を考える時期になり、戻らない前提なら、郵便物の転送、電気・ガス・水道の契約、鍵の管理と見回りの担当を家族で決めておく段階です。どちらの場合も、実家にかかる毎月の費用は持ち出しの計算に入れておきます。

親が入所したあとの実家をどうするか

よくある質問

老健の1か月の費用はいくらですか?

介護サービス費の自己負担・食費・居住費・日常生活費の合計で、要介護度・居室・施設の類型・地域・負担割合・所得の段階で変わります。

計算例

たとえば基本型の多床室(室料を徴収)・要介護4・1割・1単位10円の地域・負担限度額認定なしなら、加算と日常生活費を除いて30日で96,090円が目安です。

親の条件で出すときは、本文の単位数と基準費用額の表に当てはめてください。

老健と特養ではどちらが安いですか?

どちらとも言い切れず、居室・負担割合・所得の段階で入れ替わります。1日の単位数は特養のほうが低い一方、多床室の居住費の基準費用額は老健のほうが低く、従来型個室では老健のほうが高くなります。同じ要介護度・同じ居室で、両方の料金表から30日の額を出して比べてください。

要介護5だと老健の費用はいくらになりますか?

計算例

基本型の多床室(室料を徴収)・1割・1単位10円の地域・認定なしなら、介護費1,012単位×30日=30,360円に居住費20,910円と食費46,350円を足して、30日で97,620円が目安です。

要介護度が上がると変わるのは介護費の部分で、食費と居住費は要介護度では変わりません。

老健に入所すると医療費はどうなりますか?

入所中の医療は老健の医師が担うのが基本で、施設で対応できる医療行為は医療保険で別に請求されない、施設で通常行えない医療行為は医療保険で請求できる、というのが厚生労働省の通知の考え方です。持病の通院や薬の扱いは施設と受診先で変わるので、入所前の面談で確かめてください。

老健に入るとき、入居一時金は要りますか?

老健が介護保険の自己負担のほかに受け取れる費用は、省令で食費・居住費・特別な療養室・特別な食事・理美容代・日常生活費と決まっていて、前払金はこの列挙に挙がっていません。入所時にまとまった費用が要るかは、施設の重要事項説明書で確かめてください。

老健は何か月くらい入れますか?

省令は、居宅で日常生活を営めるかを定期的に検討するよう老健に求めていて、解釈通知は少なくとも3月ごとの検討としています。これは検討の頻度で、退所の期限ではありません。入所の期間と退所の流れは、老健の入所条件と期間の記事で確かめてください。

順番のおさらい

  1. 月額の中身:介護サービス費の自己負担・食費・居住費・日常生活費の4つ。下がる仕組みは欄ごとに違う
  2. 介護費:1日の単位数×日数×単価×負担割合。老健は多床室のほうが単位数が高く、在宅強化型はさらに高い
  3. 食費と居住費:基準費用額は居室で違い、多床室は室料を徴収するかどうかで2通り
  4. 軽減:負担限度額認定で食費と居住費が段階の額に、介護費は高額介護サービス費で月の上限まで
  5. 月額の外:省令が決める範囲の費用と、入所中の医療の扱い。医療費控除は自己負担額の全額
  6. 比較:特養とは単位数と居住費で高低が入れ替わり、有料老人ホームには食費・居住費の軽減がない
  7. 年金で払えるか:月額から年金の手取りを引き、預貯金を持ち出しで割る
  8. 在宅で続ける条件:介護と機能訓練が在宅のサービスで回り、夜間の担い手と家族の暮らしが成り立つか
  9. 見学:類型・室料・加算・日常生活費・医療の扱いを書面で聞く

老健の費用は、目安の表を探すより、親の負担割合証と要介護度、住民税の課税状況、施設の料金表の4つをそろえて計算したほうが確かな答えになります。4つの欄に分けて数字を置けば、どこが認定で下がり、どこが上限で止まるかが一目で分かり、特養や在宅と比べるときも同じ表のまま並べられます。その表を持って施設の相談員や市区町村の介護保険の担当に聞けば、家族で同じ前提に立って決められます。

※1単位の単価・負担限度額認定の申請の扱い・高額介護サービス費の申請方法は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

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この記事を書いた人

親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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