- 病院から、退院までに次の行き先を決めてほしいと言われた
- 胃ろうやたんの吸引があっても、受け入れてくれる施設はあるのか
- 「医療付き老人ホーム」と書いてあるが、何がついているのか分からない
- 夜中も看護師がいるのかどうかが気になる
- 介護医療院と老健の違いが、説明を聞いてもつかめない
- 医療ケアがあると、費用はどれだけ上がるのか
- 食費や部屋代を軽くする制度は使えるのか
- 断られたら、次にどこを当たればいいのか
上記のような悩みに答えます。
医療ケアが続く親の行き先探しは、入院中の短い期間に、医療と介護と費用の話を一度に決めることになる場面です。検索すると施設の紹介サイトや運営会社のページが並び、医療的ケアの種類や看取りの話は厚く書かれていますが、「医療付き」が法律上の施設の種類ではないこと、施設の種類ごとに医療ケアを担う人が違うこと、看護職員の配置基準に夜間の定めがないことまでは、根拠つきで整理されていません。施設に入らずに家で続ける条件の説明も薄い項目です。そこで、介護医療院・介護老人保健施設・有料老人ホームの違い、介護職員ができる医療的ケアの範囲、食費・居住費の軽減という基本を押さえたうえで、在宅で続ける条件と入所後に来ることまで、介護保険法、人員基準、社会福祉士及び介護福祉士法、厚生労働省と国税庁の資料で確かめながら整理しました。
「医療付き老人ホーム」は法律上の施設の種類ではありません。親に続く医療ケア(たんの吸引、胃ろう、インスリンなど)を病院で書き出してもらい、それを医師・看護職員・介護職員の誰が担うかで施設を絞ります。長い療養が必要なら介護医療院、在宅に戻る準備なら介護老人保健施設、有料老人ホームなら看護職員の配置基準がある介護付きか、外部の訪問看護を使う住宅型が候補になります。
2026年10月時点の制度で確かめています
「医療付き老人ホーム」は区分ではない
「医療付き」「医療対応型」は施設が使う呼び名で、介護保険法に「医療付き老人ホーム」という種類はありません。選ぶときに見るのは呼び名ではなく、親に続く医療ケアを、その施設では誰が担うのかです。
法律が決めているのは施設の種類と、その種類ごとの役割です。介護保険法で介護保険施設とされるのは、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の3つだけです(介護保険法8条25項)。このうち介護医療院と介護老人保健施設は、定義の中に「医学的管理の下における介護」や「看護」が書き込まれた施設です。一方、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は介護保険施設ではなく、介護付きなら有料老人ホームの職員が、住宅型やサービス付き高齢者向け住宅なら外から来る訪問介護・訪問看護の事業所が、介護や看護を担います。同じ「医療に強い」という看板でも、担い手の立場がまったく違うということです。
| 施設の種類 | 医療ケアを担う人 | 法令上の位置づけ |
|---|---|---|
| 介護医療院 | 医学的管理の下で、療養上の管理・看護・介護 | 介護保険施設。長く療養が必要な要介護者が対象 |
| 介護老人保健施設 | 施設の医師・看護職員の医学的管理の下で、看護・介護・機能訓練 | 介護保険施設。在宅に戻るための支援が目的 |
| 特別養護老人ホーム | 医療ケアの受け入れは施設ごと | 介護保険施設。原則要介護3以上 |
| 介護付有料老人ホーム | ホームの看護職員(配置基準あり)と、条件を満たした介護職員 | 介護保険施設ではない。特定施設入居者生活介護 |
| 住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 | 外部の訪問看護・訪問介護の事業所 | 介護保険施設ではない。住宅型有料老人ホームの居室は「居宅」に含まれる。サ高住は住宅 |
出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準175条(e-Gov法令API)/厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」
特別養護老人ホームに入れるのは原則要介護3以上で、要介護1・2の人は、家での生活が難しいことについてやむを得ない事由があると認められたときの特例入所になります。要介護3以上でも、入所できるかどうかと順番は施設の判定で決まります。医療ケアがある人を受け入れるかどうかも施設ごとなので、候補に入れるなら最初の問い合わせで確かめてください。
たとえば、たんの吸引が1日に何度か要る親と、インスリンの注射が朝晩ある親とでは、同じ「医療付き」と書いたホームでも受け入れの答えが変わることがあります。吸引を誰がどの時間帯に行うのか、注射は誰が行うのかは、ホームごとに確かめる項目です。看板の言葉だけで候補を決めると、見学のたびに「その処置はうちでは」と言われて、退院の日が近づくことになります。
迷ったときの軸は、「どの施設が医療に強いか」ではなく、「親の医療ケアの一つひとつに、担い手の名前を書けるか」です。下の項から、施設の種類ごとに担い手を一つずつ見ていきます。
最初に病院で確かめること

施設に電話をかける前に、親の入院先で、退院後も続く医療ケアの名前と回数を書き出してもらってください。施設に受け入れを確かめるときは、病名だけでなく、続く処置の中身と頻度を伝えます。
施設に受け入れを聞くときは、医療ケアの内容が伝わっているほうが話が進みます。家族が「胃ろうがあります」とだけ伝えると、栄養剤の注入を誰が何回するのか、たんの吸引も要るのか、といった質問が返ってきて、家族は病院と施設の間を何度も往復することになります。病院で先に一覧にしておけば、どの施設にも同じ紙を見せて答えを比べられます。
病院で書き出してもらいたいのは、次の項目です。
- 続く医療ケアの名前:たんの吸引、胃ろう・腸ろう・経鼻からの経管栄養、インスリン、在宅酸素、床ずれの処置など
- 回数と時間帯:1日に何回か、夜間にも要るか
- 誰がしてよいか:医師・看護職員だけか、条件を満たした介護職員もできる処置か
- 通院や往診の見通し:主治医をどうするか、定期の受診がどのくらいあるか
- 退院の予定日:いつまでに行き先を決める必要があるか
相談相手は、病院の相談員(医療ソーシャルワーカーなど)です。退院後の行き先の相談に乗る役目の人がいる病院なら、主治医や病棟の看護師と話をつないでもらえます。親がすでに要介護認定を受けていて担当のケアマネジャーがいるなら、病院の相談員とケアマネジャーの両方に同じ一覧を渡しておくと、施設探しと在宅の準備を並べて進められます。
たとえば、退院の予定日まで日が少ないと言われた場合でも、一覧があれば、その日のうちに複数の施設へ同じ条件で問い合わせられます。一覧がないまま電話をかけると、施設ごとに聞かれることが違い、比べようがありません。日が足りないときは、最初に書き出しを頼んでおくと、問い合わせの条件をそろえられます。
医療的な判断、つまり「この状態ならどの種類の施設が合うか」は、家族だけで決めないでください。主治医と病院の相談員と一緒に、医療ケアの一覧を見ながら決めるのが順番です。家族が担うのは、親の希望と家族が出せるお金と通える距離を、その場に持っていくことです。
介護医療院は長く療養する人の施設
介護医療院は、長く療養が必要な要介護者が、医学的管理の下で看護や介護を受けながら暮らす施設です。医療ケアが長く続く親の行き先として検討する種類の一つです。
介護保険法は介護医療院を、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である人に、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護、機能訓練その他必要な医療、日常生活上の世話を行う施設と定めています(介護保険法8条29項)。開設には都道府県知事の許可が要ります。入れるのは要介護者で、要支援の人は対象ではありません。どの程度の治療の必要があれば対象になるかは厚生労働省令で決まっています。入所できるかどうかは、施設に確かめてください。
- 長く療養が必要な要介護者
- 療養の場として暮らす
- 医学的管理の下で看護・介護
- 在宅に戻るための支援が必要な要介護者
- 機能の維持回復を図り、家に戻る準備をする
- 医学的管理の下で看護・介護・機能訓練
費用の面では、介護医療院は介護保険施設なので、介護サービスの自己負担に加えて、食費・居住費がかかります。食費・居住費は介護保険の施設サービスの給付に含まれず、原則として自己負担です(介護保険法48条)。ただし、所得と預貯金が一定以下の人は負担限度額認定で食費・居住費が下がる対象で、確定申告では施設サービスの自己負担の全額が医療費控除の対象になります。詳しくは下の「費用の決まり方」の項で見ます。
たとえば、退院後も胃ろうからの栄養とたんの吸引が続き、家に戻る見通しが立たない親なら、主治医や相談員から介護医療院の名前が出ることがあります。一方、同じ胃ろうでも、リハビリで体の機能を戻して家に帰ることを目指す段階なら、次の項の介護老人保健施設が話に上がります。同じ処置があっても、「長く療養するのか」「家に戻るのか」で施設の種類が分かれるということです。
介護医療院を候補にするときは、施設に医療ケアの一覧を見せて受け入れを確かめたうえで、看取りの対応、入院したときの扱い、部屋の種類(多床室か個室か)を聞いてください。部屋の種類で居住費の基準が変わるので、費用の話もここから始まります。
介護老人保健施設は在宅へ戻る準備の場
介護老人保健施設(老健)は、家での生活に戻るための支援が必要な要介護者に、看護、医学的管理の下での介護、機能訓練を行う施設です。介護医療院との違いは、目的が「家に戻ること」に置かれている点です。
介護保険法は老健を、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である人に、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療、日常生活上の世話を行う施設と定めています(介護保険法8条28項)。開設には都道府県知事の許可が要ります。定義の中に「居宅における生活を営むことができるようにするための支援」と書かれているので、長く暮らす場としてではなく、家に戻る準備の場として位置づけられています。
入院していた病院から老健に移り、そこで体の機能を戻してから家に帰る、という流れを主治医や相談員から提案されることがあります。老健も介護保険施設なので、食費・居住費は負担限度額認定の対象で、施設サービスの自己負担の全額が医療費控除の対象になる点は介護医療院と同じです。入所できる期間の目安は、この記事では取り上げません。入所前に「いつごろ、何を基準に退所の話が出るか」を施設に聞いておきます。
たとえば、骨折の手術のあと、歩く力が落ちて家に帰れないまま退院を迎える親なら、老健で機能訓練を受けて家に戻る道があります。反対に、医療ケアが重くなっていき、家に戻る見通しが立たない場合は、老健を出たあとの行き先も同時に考えておかないと、退所の話が出たときに同じ慌ただしさを繰り返すことになります。
老健を選ぶなら、「ここを出たあとどこへ行くか」を入所と同時に家族で話しておいてください。家に戻るなら在宅の準備(下の「在宅で続ける条件」の項)を、戻れないなら介護医療院や特別養護老人ホーム、有料老人ホームの候補を、老健にいる間に並べておくのが順番です。
介護付き老人ホームの看護職員と夜間
介護付有料老人ホームには、看護職員を置く基準があります。ただし、その基準に夜間の配置の定めはありません。「看護師がいる」と書かれていても、夜の体制はホームごとに違います。
介護付有料老人ホームは、ホームが提供する特定施設入居者生活介護を使いながら、介護が必要になっても居室で暮らし続けられる類型です(厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」)。一般型では、ホームの職員が介護サービスを提供します。人員の基準は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」で決まっていて、看護職員は看護師または准看護師です。
| 利用者の数 | 看護職員の数(常勤換算) |
|---|---|
| 30人以下 | 1以上 |
| 30人を超える場合 | 1に、30人を超えて50人またはその端数を増すごとに1を加えた数以上 |
出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準175条(e-Gov法令API)
この基準は法律上の最低限の線で、実際に何人の看護職員を、どの時間帯に置いているかはホームごとに違います。基準の条文には、夜間に看護職員を置くことも、夜間に電話で看護職員を呼べる体制を取ることも書かれていません。夜間の看護体制はホームごとに違うので、重要事項説明書と見学で確かめてください。夜にたんの吸引が要る親なら、ここが施設選びの分かれ目になります。
たとえば、日中は看護職員がいて、夜は介護職員だけになるホームの場合、夜間の吸引を誰が行うのかが問題になります。夜勤の介護職員が下の「たんの吸引と経管栄養」の項の条件を満たしていれば対応できることがありますが、満たしていなければ夜の吸引には対応できません。「看護師常駐」という言葉が日中だけの意味なのか、夜も含むのかは、時間帯を区切って聞かないと分かりません。
見学では、「夜間、看護職員はホームにいますか。いない時間に吸引や急変があったら、誰がどう対応しますか」と、時間帯と場面を指定して聞いてください。答えを重要事項説明書の記載と見比べると、看板の言葉と実際の体制の差が見えてきます。
住宅型老人ホームやサ高住で訪問看護を使う
住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅では、医療ケアの担い手は外から来る訪問看護の事業所です。住宅型有料老人ホームの居室は介護保険法で「居宅」に含まれ、サービス付き高齢者向け住宅は住宅なので、どちらも家と同じように外部の訪問看護・訪問介護を使えます。
住宅型有料老人ホームは、生活支援などのサービスが付き、介護が必要になったときは、入居者が自分で選んだ地域の訪問介護などを使いながら居室で暮らし続ける類型です(厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」)。介護保険法は、訪問介護の「居宅」に有料老人ホームの居室を含めていて、訪問看護も同じ定義を受けます(介護保険法8条2項・4項)。サービス付き高齢者向け住宅も、それ自体は住宅で、介護が要るときは外部の居宅サービスを使います(特定施設の指定を受けたものは特定施設入居者生活介護)。
出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」
訪問看護を介護保険で使えるのは、主治の医師が、治療の必要の程度について省令の基準に合うと認めた人に限られます(介護保険法8条4項)。つまり住宅型やサービス付き高齢者向け住宅で医療ケアを続けるなら、主治医と、通ってくれる訪問看護の事業所の両方がそろっていることが前提です。ケアマネジャーや事業所をどう選ぶか、費用がどうなるかは、入居の契約書と重要事項説明書で確かめてください。
たとえば、インスリンの注射が朝晩あり、それ以外は身の回りのことがある程度できる親なら、住宅型で訪問看護を使う形が候補になることがあります。ただし、夜間や急変のときに訪問看護の事業所がどう動くかは事業所ごとに違い、ホームの職員が医療ケアを行うわけではありません。医療ケアの回数が多い親、夜にも処置が要る親ほど、外から来る看護だけで回るかを慎重に確かめる必要があります。
住宅型を候補にするなら、「このホームに入居している人が使っている訪問看護の事業所はどこか、夜間や休日の連絡はどうなっているか」をホームに聞き、そのうえで事業所にも直接確かめてください。入居の契約と訪問看護の契約は別々なので、片方だけ決めても医療ケアは回りません。
たんの吸引と経管栄養は誰がしてよいか

介護職員が条件つきで行える喀痰吸引等は、たんの吸引と経管栄養の5つの行為です。「介護職員なら誰でもできる」わけではありません。
社会福祉士及び介護福祉士法施行規則は、介護福祉士が医師の指示の下に行える「喀痰吸引等」を次の5つと定めています。
- 口の中のたんの吸引(口腔内)
- 鼻の中のたんの吸引(鼻腔内)
- 気管カニューレ内部のたんの吸引
- 胃ろう・腸ろうによる経管栄養
- 鼻からの経管栄養(経鼻経管栄養)
出典:社会福祉士及び介護福祉士法施行規則1条(e-Gov法令API)
介護福祉士の資格があっても、事業所が都道府県知事の登録(登録喀痰吸引等事業者)を受けていなければ、業務として行うことはできません(社会福祉士及び介護福祉士法48条の3)。介護福祉士以外の介護職員は、喀痰吸引等研修を修了して都道府県知事から認定証を受けると、当分の間、医師の指示の下に、修了した研修の課程に応じた行為を行えます。行うときは、医師・看護師その他の医療関係者との連携を保つことが求められ、行う事業所にも登録が要ります(同法附則10条・11条・27条)。
出典:社会福祉士及び介護福祉士法48条の3(e-Gov法令API)/社会福祉士及び介護福祉士法(附則を含む全文・e-Gov法令API)
たとえば、夜間にたんの吸引が要る親が介護付有料老人ホームを検討する場合、「夜勤の介護職員が吸引できるか」は、ホームが登録を受けているか、夜勤に認定を受けた職員や介護福祉士がいるか、が主な分かれ目です(医師の指示など、ほかの条件もあります)。どちらかが欠けると、夜の吸引は看護職員か外部の訪問看護に頼ることになります。5つの行為に入らない処置(インスリンの注射、在宅酸素の管理、点滴など)を誰が担えるかは、ここでは扱いません。医療行為の可否は、医師・看護職員と施設に確かめてください。
施設に聞くときは、「喀痰吸引等の登録を受けていますか。夜勤の時間帯に、吸引や経管栄養ができる職員は何人いますか」と2段に分けて聞きます。登録の有無だけ、職員の資格だけを聞いても、実際に夜の処置が回るかどうかは分かりません。
費用の決まり方と軽くなる制度
医療ケアが必要な親の施設の費用は、介護サービスの自己負担、食費・居住費、日用品などの実費の3つに分かれます。軽くなる制度は3つあり、負担限度額認定と医療費控除は、施設の種類によって対象かどうかが分かれます。
食費・居住費は、介護保険の施設サービスの給付に含まれず、原則として自己負担です(介護保険法48条)。そのうえで、所得と資産の状況に応じて、特定入所者介護サービス費(補足給付)が出ます。基準費用額と負担限度額の差額を介護保険が出す仕組みで(介護保険法51条の3)、対象は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・地域密着型の特別養護老人ホーム・短期入所生活介護・短期入所療養介護の6つです。有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームは対象ではありません。
出典:介護保険法48条(e-Gov法令API)/介護保険法51条の3(e-Gov法令API)
介護医療院・介護老人保健施設の居住費は、負担限度額認定を受けると、段階ごとに1日あたり次の額になります(ユニット型の個室などは別の額です)。食費の基準費用額は1日1,545円です(食費の段階ごとの額と、段階の所得・預貯金の条件は、下にリンクした介護費用の記事にまとめています)。
| 部屋の種類(介護医療院・老健) | 基準費用額 | 第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② |
|---|---|---|---|---|---|
| 従来型個室 | 1,728円 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,470円 |
| 多床室(室料を徴収する場合) | 697円 | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 多床室(室料を徴収しない場合) | 437円 | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 |
出典:介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
基準費用額は負担限度額認定を受けた人の計算に使う額で、認定を受けない人の食費・居住費は施設との契約で決まります。実際の額は施設で確かめてください。
たとえば、第2段階に当たる親が介護医療院の従来型個室に入る場合、居住費は1日550円で、基準費用額の1,728円より1日1,178円軽くなります。30日の月なら35,340円の差です。
介護サービスの自己負担には、世帯の1か月の上限(高額介護サービス費)があり、超えた分は申請すると戻ります。上限の対象になる費用の範囲は、お住まいの市区町村で確認してください。
| 区分 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 市町村民税課税〜課税所得380万円未満 | 44,400円(世帯) |
| 市町村民税世帯非課税 | 24,600円(世帯) |
| 世帯非課税で、年金収入+その他の合計所得金額が82.65万円以下 | 15,000円(個人) |
出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.997(140,100円・93,000円の区分)/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
介護保険の給付を受ける権利は2年で時効になります(介護保険法200条)。いつから数えるかは市区町村に確認してください。
確定申告の医療費控除では、施設の種類で対象の範囲が違います。介護老人保健施設と介護医療院は、施設サービスの自己負担(介護費・食費・居住費)の全額が対象で、特別養護老人ホームはその2分の1です。どちらも、理美容代などの日常生活費は対象になりません。施設が出す領収証に、医療費控除の対象額が書かれているかを見てください。
編集部の整理では、同じ医療ケアの親でも、介護医療院・老健では、3つの制度(負担限度額認定・高額介護サービス費・医療費控除の全額)が当てはまる可能性があり(負担限度額認定は所得と預貯金の条件つき)、有料老人ホームでは食費・居住費の軽減(負担限度額認定)は使えません。比べるときは月額の総額だけでなく、どの制度が当てはまるかを施設の種類ごとに並べてください。月々の自己負担は、介護費のシミュレーターでも確かめられます。
親の介護費用が毎月いくらか分からない人へ|うちの親の場合の出し方
介護費の自己負担シミュレーター(限度額・負担割合・高額介護サービス費)
※負担限度額認定・高額介護サービス費の申請の窓口と、1単位あたりの単価は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
施設に入らず在宅で続ける条件
医療ケアがあっても、施設に入らずに家で続ける道はあります。その条件は、主治医と訪問看護の体制がそろい、医療ケアの回数と時間帯に家族とサービスで手当てができることです。
病院から「施設を」と言われた家族の中にも、親が家に帰りたがっている、近くに施設の空きがない、という事情で在宅を考える人はいます。訪問看護は家でも受けられる居宅サービスで、主治の医師が治療の必要の程度が省令の基準に合うと認めた人が対象です(介護保険法8条4項)。
在宅で続けるならそろえたい条件は、たとえば次のとおりです。
- 主治医がいる:通院か往診で、医療ケアの指示を出してくれる医師が決まっている
- 訪問看護が来る:医療ケアの回数と時間帯に合わせて来てくれる事業所がある
- 夜間の手当てがある:夜にも処置が要るなら、誰が行い、急変のとき誰に連絡するかが決まっている
- 家の中が整っている:介護ベッドなど、医療ケアと介護がしやすい環境がある
- 家族が続けられる:家族の仕事や暮らしが、通う・見守る負担で崩れていない
- 本人が望んでいる:親が家での暮らしを続けたいと考えている
たとえば、夜間の吸引が要らず、日中の処置を訪問看護と訪問介護でまかなえる親なら、在宅で続ける組み立てができることがあります。反対に、夜にも何度か吸引が要り、家族が同居していない場合は、「夜間の手当て」の条件がそろわず、在宅は難しくなります。条件は家ごとに重みが違うので、病院の相談員やケアマネジャーと一緒に、外せない条件から順に確かめてください。
親が施設に入ることを拒んでいる場合や、家での介護に使うベッドを先に整えたい場合は、次の記事も参考になります。
在宅か施設かは、どちらが正しいかではなく、条件がそろうかどうかで決まります。条件がそろっている間は在宅で続け、崩れたら施設を考える、と家族で線を引いておけば、退院の場面で急いで決めなければならない量が減ります。
探し方と見学で聞く項目

医療ケアが必要な親の施設は、医療ケアの一覧を手に、施設の種類ごとに候補を出し、見学で「夜間」「看取り」「入院したとき」の3つを確かめる順で探します。断られたら、担い手の違う種類に移って探し直します。
施設の受け入れは、医療ケアの内容、職員の体制、そのときの空き状況で変わります。一つの施設に断られても、それは「その施設のいまの体制では」という意味で、医療ケアがある親がどこにも入れないという意味ではありません。介護付で断られたら住宅型と訪問看護の組み合わせを、有料老人ホームで難しければ介護医療院を、というように、担い手の違う種類に移ると答えが変わることがあります。
- 1医療ケアを書き出す病院の相談員と主治医に
- 2担い手で種類を絞る医師・看護職員・介護職員・訪問看護
- 3候補に同じ紙を見せる受け入れの可否を比べる
- 4見学で3つを聞く夜間・看取り・入院したとき
- 5軽減の申請を確かめる負担限度額認定・高額介護サービス費
見学で聞いておきたいのは、次の項目です。
- 夜間の体制:夜に看護職員はいるか、いない時間に吸引や急変があったら誰がどう動くか
- 看取り:最期まで暮らせるか、そのときの医師・看護の関わり方はどうなっているか
- 入院したとき:入院中の部屋の扱い、費用、戻れる条件
- 医師との関わり:施設の医師、協力医療機関、往診の有無と頻度
- 喀痰吸引等の登録:登録の有無と、夜勤に吸引や経管栄養ができる職員がいるか
- 費用の内訳:介護サービスの自己負担、食費・居住費、医療費や日用品の扱いを分けて書いた書類があるか
看取りの可否、医師がいつ施設にいるか、病院が併設されているかは、施設ごとに違います。どれも見学で聞く項目として、答えを重要事項説明書と見比べてください。
たとえば、日中の見学では看護職員が何人も見えて安心したのに、夜は看護職員がいないホームだった、ということは起こりえます。見学は日中に行くことが多いので、夜と休日の体制は、見えたものではなく聞いた答えと書類で判断します。入院したときに部屋をどう扱うかは、費用と合わせて聞いておくと後で慌てません。
候補の施設に資料を取り寄せるときは、医療ケアの一覧を添えて問い合わせると、受け入れの可否まで含めた答えが返ってきやすくなります。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
医療ケアの一覧ができたら、それを添えて複数の施設に問い合わせると、受け入れの可否と夜間の体制を比べられます。老人ホームの検索サイトでは、医療対応の条件で絞り込んで資料請求や見学の予約ができます。資料が届いたら、看護職員が夜もいるかを必ず確かめてください。
入所したあとに来ること
親が施設に入ったあとに来るのは、空いた実家をどうするか、という話です。入所の慌ただしさが落ち着いたころに、固定資産税の通知や郵便物の転送、家の傷みといった形で、実家の問題が表に出てきます。
医療ケアが必要な親の場合、介護医療院や医療に対応した施設で長く暮らすことになり、実家に戻る見通しが立たないことがあります。その場合、空き家になった実家の管理、貸すか売るか、いずれ相続するときの扱いを、親の判断ができるうちに話しておくかどうかが分かれ目になります。親が入所した直後に家のことを話すのは気が引けますが、話題にするのは「売ること」ではなく「いま誰が家を見に行くか」からでかまいません。
認知症が中心で医療ケアは少ない親なら、グループホームが候補になることもあります。有料老人ホームの類型全体を見比べたいときは、次の記事が参考になります。
たとえば、親が介護医療院に入ってしばらくして、実家の郵便受けがあふれていると近所から連絡が来る、という形で問題が見えることがあります。入所の手続きと同時に、郵便の転送と、誰が月に何度家を見に行くかだけでも決めておくと、次の段階を慌てずに迎えられます。
よくある質問
医療付き有料老人ホームの費用はいくらですか?
有料老人ホームの月額や入居金は施設ごとの契約で決まります。この記事では相場の数字は取り上げません。比べるときは、介護サービスの自己負担、家賃・食費・管理費、医療費や日用品の扱いを分けて書いた書類を施設からもらってください。有料老人ホームは、負担限度額認定で食費・居住費が軽くなる対象ではありません。
医療系老人ホームとは何ですか?
法律上の施設の種類ではなく、医療ケアに対応していることを伝える呼び方です。法律上は、介護医療院と介護老人保健施設が、医学的管理の下で看護や介護を行う介護保険施設として定められています。有料老人ホームで「医療対応」とうたう場合は、看護職員の体制や外部の訪問看護との連携を個別に確かめてください。
お金がなくても入れる高齢者施設はありますか?
介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院)は、親の世帯全員と配偶者が市町村民税非課税で預貯金が一定以下なら、負担限度額認定で食費・居住費が1日の上限まで下がります。介護サービスの自己負担にも、世帯の区分ごとに1か月の上限があります。どちらも申請が要るので、親の住む市区町村の介護保険の窓口に、当たるかどうかを聞いてください。
夜も看護師がいる施設を探せますか?
介護付有料老人ホームの看護職員の配置基準には、夜間の定めがありません。夜間の看護体制はホームごとに違うので、重要事項説明書と見学で確かめてください。聞くときは「夜に看護職員はいるか」「いない時間の吸引や急変に誰がどう対応するか」と、場面を指定すると答えを比べやすくなります。
看取りまで同じ施設にいられますか?
看取りの可否は施設ごとに違います。見学のときに、最期まで暮らせるか、そのとき医師や看護職員がどう関わるかを聞き、重要事項説明書や契約書の記載と見比べてください。介護付有料老人ホームでも、介護が必要になっても住み続けられるかどうかは契約で確かめる事項です。
断られたら、次にどこを当たればいいですか?
断られたのは、その施設のいまの体制や空き状況での答えです。担い手の違う種類、たとえば介護付から住宅型と訪問看護の組み合わせへ、有料老人ホームから介護医療院へ、と移ると答えが変わることがあります。病院の相談員かケアマネジャーに断られた理由を伝え、次の候補を一緒に出してもらってください。
介護医療院の費用は医療費控除の対象ですか?
介護医療院と介護老人保健施設は、施設サービスの自己負担(介護費・食費・居住費)の全額が医療費控除の対象です。特別養護老人ホームはその2分の1です。理美容代などの日常生活費は対象にならないので、施設の領収証に書かれた医療費控除の対象額を確かめてください。
順番のおさらい
- 「医療付き」は区分ではない:親の医療ケアを誰が担うかで施設の種類を絞る
- 病院で確かめる:医療ケアの名前・回数・時間帯・退院日を書き出し、相談員と主治医に相談する
- 介護医療院:長く療養が必要な要介護者が、医学的管理の下で暮らす施設
- 介護老人保健施設:家に戻るための支援が目的。出たあとの行き先も同時に考える
- 介護付有料老人ホーム:看護職員の配置基準はあるが、夜間の定めはない
- 住宅型・サ高住:外部の訪問看護が担い手。主治医と事業所の両方が要る
- 介護職員の喀痰吸引等:たんの吸引と経管栄養の5行為で、事業所の登録などが条件
- 費用:介護医療院・老健は負担限度額認定の対象。高額介護サービス費と医療費控除も確かめる
- 在宅で続ける条件:主治医・訪問看護・夜間の手当て・家族が続けられること
- 探し方:同じ紙を見せて比べ、見学で夜間・看取り・入院時を聞く
- 入所のあと:空いた実家を誰が見に行くかから話す
医療ケアが必要な親の施設選びで、家族が先に決めるべきなのは施設の名前ではなく、親の医療ケアの一つひとつを誰が担うかという割り振りです。割り振りが書ければ、介護医療院か、老健か、有料老人ホームか、在宅かは、その表から自然に絞れます。退院の日が迫っていても、最初にするのは、病院の相談員に医療ケアの一覧を頼むことです。
負担限度額認定・高額介護サービス費の申請の窓口と、1単位あたりの単価は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

