元気なうちに入れる自立型老人ホームとは|費用・介護が必要になった後・向く親

住宅の外観
  • 親はまだ元気だけれど、自立でも入れる老人ホームはあるのか知りたい
  • 自立型・健康型・住宅型・サ高住と言葉が多すぎて、違いが分からない
  • 入ったあとに介護が必要になったら、退去させられるのではと心配
  • 入居一時金を払って、すぐ出ることになったらお金は戻るのか
  • 一人暮らしの親が心配で、元気なうちに住み替えてほしい
  • 本人が元気なのに、施設の話は早すぎないか迷っている
  • 夫婦で一緒に入れるのか、片方だけ介護が要るときはどうなるのか
  • 親の家を手放すべきかどうか、決めきれない

上記のような悩みに答えます。

「自立型老人ホーム」は、まだ介護が要らない親でも入れる住まいを指して使われる言葉です。つまずきやすいのは、この言葉が一つの施設の種類を指していると考えてしまう点で、実際には介護が必要になった後の扱いがまったく違う住まいがひとまとめにされています。検索の上位には施設の運営会社や紹介サイトの記事が並び、種類・費用・選び方は詳しい一方、法令や厚生労働省の指針で決まっている類型ごとに介護が必要になった後がどう違うのか、それを契約前の書面のどこで確かめるのか、そして住み替えない場合はどんな条件がそろっていればいいのかは、あまり書かれていません。そこで、種類の違い・入居の条件・費用の決まり方という基本を押さえたうえで、入居一時金の返還と保全のルール、重要事項説明書の読み方、今の家で続ける条件まで、老人福祉法・高齢者住まい法・介護保険法の条文と厚生労働省の指導指針で確かめながら整理しました。

先に答え

「自立型老人ホーム」は通称で、中身は健康型有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・入居時自立の介護付有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に分かれます。いちばん大きな違いは、介護が必要になった後もそこに住み続けられるかどうかで、健康型は契約を解除して退去する類型です。契約の前に重要事項説明書の「類型」と「入居時の要件」の欄を見て、介護が必要になったときの扱いを確かめてください。

在宅か施設か|在宅の限界が見え、施設を考え始めた人

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目次

自立型老人ホームは通称で、中身は4つ

住宅の外観

「自立型」「元気なうちに入れる老人ホーム」という言葉は、法令にも厚生労働省の指針にも、類型の名前としては出てきません。入居するときに介護が要らない人を受け入れる住まいを、まとめて呼ぶための通称です。

類型の名前があるのは有料老人ホームのほうです。厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」は、有料老人ホームを介護付(一般型特定施設入居者生活介護・外部サービス利用型特定施設入居者生活介護の2種)・住宅型・健康型に分け、サービス付き高齢者向け住宅の登録を受けていないホームは、広告やパンフレットで施設名と一緒に類型を表示することにしています。もう一つのサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者住まい法に基づいて都道府県知事の登録を受ける住まいで、有料老人ホームの類型とは別の枠組みです(建物が有料老人ホームに当たる場合は、老人福祉法の対象にもなります)。

「自立型」と呼ばれるものを、介護が必要になった後の扱いで並べると次のようになります。

呼び方 根拠になる枠組み 入居の入り口 介護が必要になった後(類型の説明)
健康型有料老人ホーム 指針の類型 食事などのサービスが付く高齢者向けの居住施設 契約を解除して退去する類型
住宅型有料老人ホーム 指針の類型 生活支援などのサービスが付く 地域の訪問介護などを自分で選んで使い、居室で暮らし続けられる
介護付有料老人ホーム(入居時自立) 指針の類型と入居時の要件 入居時に自立している人が対象 そのホームの介護サービスを使いながら居室で暮らし続けられる
サービス付き高齢者向け住宅 高齢者住まい法の登録 高齢者向けの賃貸住宅などに見守りと生活相談が付く 外部の訪問介護などを使うのが基本

ここで押さえたいのは、同じ「自立型」の看板でも、介護が必要になった時点で道が分かれることです。健康型は、類型の説明そのものが「介護が必要になったら退去」です。住宅型とサ高住は「住まい」で、介護は外から呼びます。介護付はホームが介護を提供します。

たとえば、パンフレットに「自立の方も入居できます」と書かれた有料老人ホームが2つあったとします。一方が介護付で入居時の要件が「入居時自立・要支援・要介護」、もう一方が健康型なら、入居の日の暮らしは似ていても、将来介護が必要になったときに住み続けられるかどうかが反対になります。

編集部の整理では、候補が出てきたら最初に「これは4つのうちどれか」を一言で言えるようにしてください。施設名と一緒に表示されている類型を見れば分かります。ここが言えないまま費用や設備を比べ始めると、比べている物差しがそろいません。

出典:有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)/高齢者住まい法5条(e-Gov法令API)

介護が必要になったら住み続けられるか

元気なうちに入る住まいで最初に確かめたいのが、介護が必要になった後の扱いです。健康型は退去、住宅型とサ高住は外部の介護サービスを使って住み続ける形、介護付はホームの介護で住み続ける形、というのが類型としての説明です。

次に、それぞれの住まいが介護保険の上でどこに置かれているかを確かめておきます。有料老人ホームもサ高住も、介護保険法の「介護保険施設」(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の3つ)ではありません。介護保険法は有料老人ホームの居室を「居宅」に含めているので、住宅型やサ高住に住む親は、自宅に住んでいるのと同じように訪問介護や訪問看護などの居宅サービスを使えます(訪問看護は、主治の医師が必要と認めた人が対象です)。介護付と表示できるのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームだけで、こちらはホームが介護を提供する側に立ちます。

類型 介護が必要になったら(類型の説明) 介護を提供するのは 確かめること
健康型 契約を解除して退去する類型 個々のホームの契約で確かめる 退去後の行き先(提携先・住み替え先)があるか
住宅型 居室で暮らし続けられる 入居者が自分で選んだ外部の事業所 ケアマネジャーや事業所を自分で選べるか
介護付(一般型) 居室で暮らし続けられる ホームの職員 看取りや医療的な対応をどこまでするか
介護付(外部サービス利用型) 居室で暮らし続けられる ホームが委託した事業所(安否確認や計画づくりはホームの職員) 委託先がどこか
サ高住 外部の居宅サービスを使う 入居者が契約した外部の事業所 特定施設の指定を受けているか

注意したいのは、「住み続けられる」は類型の説明であって、どのホームでも最後まで住めるという約束ではない点です。指針の説明は類型の性格を示すもので、看取りをするか、医療的な対応が必要になったときどうするかは、個々のホームの契約で決まります。健康型も同じで、退去したあとに提携する介護付ホームへ移れるのか、自分で探すのかは、ホームごとに違います。

たとえば、親が住宅型に入り、その後に認知症の症状が出てきた場合を考えます。住宅型の居室は居宅なので、訪問介護などを増やしながら住み続ける道があります。ただ、見守りが一日中必要になると、外部のサービスだけで暮らしを支えるのが難しくなることがあり、そのときの選択肢の一つが認知症の人向けのグループホームです。グループホームは要支援2以上で認知症であることが入居の前提です。

認知症の親のグループホームの費用と入れる条件

編集部の整理では、類型で大まかな道筋をつかんだうえで、「このホームでは、介護が必要になったら具体的にどうなるか」を契約書と重要事項説明書の文言で確かめるところまでを一続きの作業と考えてください。見学の担当者の説明だけで済ませず、書面のどこに書いてあるかを聞くのが確実です。

出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)

入れる人の条件は入居時の要件で決まる

元気な親が入れるかどうかは、有料老人ホームなら「入居時の要件」、サ高住なら年齢などの入居者の要件で決まります。何歳から、という問いへの答えも、この2つで違います。

有料老人ホームの指針は、入居時の要件を4つの区分で表示することにしています。自立した親が対象になるのは、このうち「入居時自立」と「入居時自立・要支援・要介護」の2つです。

  • 入居時自立:入居するときに自立している人が対象
  • 入居時要介護:要介護認定を受けている人が対象(要支援は含まない)
  • 入居時要支援・要介護:要支援か要介護の認定を受けている人が対象
  • 入居時自立・要支援・要介護:自立の人も、認定を受けている人も対象

サ高住は法令で入居者の要件が決まっています。高齢者住まい法の施行規則では、60歳以上の人、または要介護認定・要支援認定を受けている60歳未満の人が対象で、同居する人がいる場合は、配偶者・60歳以上の親族・要介護(要支援)認定を受けている60歳未満の親族などに限られます。有料老人ホームのほうは、この記事で確かめた法令と指針の範囲では入居できる年齢が一律に決まっていないので、年齢の条件はホームごとに確かめてください。

たとえば、自立している母と、要介護認定を受けている父が夫婦で住み替えを考えている場合、サ高住なら配偶者との同居は要件の範囲に入ります。有料老人ホームで同じ部屋に入るなら、入居時の要件が「入居時自立・要支援・要介護」のホームが候補になり、「入居時自立」だけのホームでは父が対象から外れます。母一人なら元気でも、夫婦のどちらかに認定があるだけで、候補の幅が変わります。

編集部の整理では、親の今の状態を「自立」「要支援」「要介護」のどれかに当てはめ、介護認定を受けていなければその旨も控えてから候補を探してください。認定の有無が分からないまま問い合わせると、話が進んだあとで「入居時の要件に合わない」と分かって振り出しに戻ることがあります。

出典:高齢者住まい法施行規則3条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)

費用は払い方と中身で分けて見る

自立型の住まいの費用は、「どう払うか」と「何に払うか」の2つに分けると比べやすくなります。払い方は入居一時金などの前払金で先にまとめて払う方式と、月々払う方式に分かれ、中身は家賃や食費などの暮らしの費用と、介護保険サービスの自己負担に分かれます。

前払金について、老人福祉法の施行規則は、入居一時金・介護一時金・協力金・管理費・入会金など、名前にかかわらず家賃や介護・食事などの対価として先に受け取るお金を、まとめて前払金として扱っています。呼び方が違っても、中身が家賃などの前払いであれば同じルールがかかります。一方で、家賃・敷金・介護などの対価として受け取る費用のほかに、権利金などを受け取ることは、法律で禁じられています。

費用の種類 中身 介護保険との関係
前払金(入居一時金など) 家賃などをまとめて前払いするお金 介護保険の外
月々の家賃・管理費 住まいとしての費用 介護保険の外
食費 食事の提供の費用 介護保険の外
介護保険サービスの自己負担 訪問介護や特定施設入居者生活介護を使った分 介護保険の給付の残り
上乗せのサービス費 ホーム独自の見守りや生活支援など 契約で決まる

もう一つ知っておきたいのは、所得の低い人の食費・居住費を軽くする仕組み(特定入所者介護サービス費)は介護保険施設などのサービスが対象で、有料老人ホームやサ高住は対象に入っていないことです。介護保険施設でも、食費と居住費はそもそも施設介護サービス費の外に置かれています。自立型の住まいでは、家賃・食費は介護保険とは関係なく、契約で決まる額をそのまま払うことになります。

入居一時金や月額の相場は、この記事では書きません。施設ごとに自由に決められていて、一次資料の統計を確かめられていないためです。比べるときは、同じ物差しにそろえるのが先です。

たとえば、前払金のある介護付ホームと、前払金のないサ高住を比べる場合、月々の支払いだけを並べると、前払金のある方が安く見えることがあります。前払金は家賃などの前払いなので、比べるなら前払金も含めた住まいの費用の総額で並べ、さらにサ高住では介護が必要になったとき外部のサービスを自分で契約する分が別にかかる、と考えます。お金がなくても入れる所はあるか、という問いには、前払金のない月払いの住まいを探す、ケアハウス(軽費老人ホーム)のような住まいを市区町村や施設に確かめる、という2つの道があります。

親の介護費用は誰が払うか・どう見積もるか

編集部の整理では、候補ごとに「前払金」「月々の家賃・管理費」「食費」「介護の自己負担」「上乗せのサービス費」の欄を作り、空欄が残らないように資料を集めてください。介護の自己負担は要介護度と使うサービスの量で変わるので、上の記事で考え方を確かめておくと、資料の数字を読み違えずに済みます。

出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/介護保険法48条(e-Gov法令API)

入居一時金の3か月ルールと保全措置

入居一時金などの前払金には、法律で決まった返還と保全のルールがあります。入居後3か月以内に契約を解除したり、親が亡くなって契約が終わったりした場合は、前払金を返す契約を結ぶことがホームに義務づけられ、返すお金に備えた保全措置も義務です。

老人福祉法と施行規則が決めている内容を順に並べると、次のようになります。

  • 前払金を受け取るホームは、前払金の算定の基礎を書面で示さなければならない
  • 返すことになったときに備えて、保全措置を講じなければならない
  • 入居後3か月以内に契約の解除や入居者の死亡で終わったときは、前払金を返す契約を結ばなければならない
  • 3か月を過ぎても、想定居住期間が終わるまでの解除や死亡なら、返す契約を結ばなければならない
  • 家賃・敷金・介護などの対価として受け取る費用のほかに、権利金などを受け取ってはならない

入居後3か月以内に終わった場合の返す額は、施行規則で算定の方法が決まっています。家賃などの月額を30で割った額に、入居した日から契約が終わった日までの日数を掛け、その額を前払金から差し引く方法です。住んだ日数分の家賃などを引いて残りを返す形で、3か月を過ぎて想定居住期間が終わるまでの場合も、日割りで算出した家賃などの額を前払金から引く形になっています。

もう一つ、指針は、解約の申し出から契約解除までの予告期間を設けて、前払金を返す期間を事実上短くしてはならないとしています。指針は都道府県への行政指導の基準で法律そのものではありませんが、契約書の解約の条項に長い予告期間が書かれていたら、返還の扱いがどうなるかを確かめるきっかけになります。

たとえば、入居から3か月たたないうちに親が体調を崩して入院し、そのまま戻れずに解約することになったとします。この場合は、契約が終わった日が入居後3か月以内なら、住んだ日数分の家賃などを引いた残りが返る計算になります。解約の予告期間の扱いは、契約書で確かめてください。逆に、入居から年数がたって解約する場合は、想定居住期間の中かどうかで扱いが変わります。具体的な返還額や、入居時に返らない部分がどれだけあるかは契約ごとに違うので、この記事では計算例を出しません。

保全措置の方法は厚生労働大臣が定める措置によりますが、ここでは方法の中身までは扱いません。ホームが倒産したら一時金はどうなるのか、という不安には、保全措置が法律で義務づけられていることと、そのホームが実際に保全しているかを重要事項説明書で確かめることの2つで答えるのが確かです。

編集部の整理では、前払金のあるホームを検討するなら、「算定の基礎」「保全措置」「3か月以内の返還」「想定居住期間」「解約の予告期間」の言葉が、渡された書面のどこに書かれているかを指でたどって確かめてください。一つでも見つからなければ、契約の前に担当者に聞いてください。

出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則21条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)

契約前に重要事項説明書で読む欄

書類に記入する手元

有料老人ホームは、入居を希望する人に、重要な事項を書いた文書を書面で交付しなければなりません。一般に重要事項説明書と呼ばれるこの文書が、自立型の住まいを比べるときの確かな材料です。

老人福祉法の施行規則は、この文書を「施設で提供される便宜の内容、費用負担の額その他の入居契約に関する重要な事項を説明することを目的として作成した文書」としています。重要事項説明書は契約の中身を説明するための文書なので、候補を見比べるときはこちらを使ってください。

重要事項説明書はこの順で読む
  1. 1類型健康型・住宅型・介護付のどれか
  2. 2入居時の要件親の今の状態が対象に入るか
  3. 3介護が必要になったとき住み続けるか、退去や住み替えか
  4. 4費用と前払金算定の基礎と保全措置
  5. 5解約と返還予告期間と返還の扱い

読む順番を番号で並べると、次のとおりです。

  1. 類型:健康型・住宅型・介護付(一般型・外部サービス利用型)のどれかを確かめる
  2. 入居時の要件:4区分のどれかを見て、親の今の状態が対象に入るかを確かめる
  3. 介護が必要になったときの扱い:住み続けられるのか、退去や別の居室・提携先への住み替えがあるのかを、書かれている文言で確かめる
  4. 費用と前払金:前払金の有無、算定の基礎、保全措置が講じられているかを確かめる
  5. 解約と返還:解約の予告期間、入居後3か月以内の返還、想定居住期間を確かめる

有料老人ホームの運営状況は、ホームから都道府県知事に報告され、知事が公表する仕組みもあります。手元の重要事項説明書と、都道府県が公表している情報を見比べると、説明に食い違いがないかを確かめられます。

たとえば、見学のときに「介護が必要になっても大丈夫です」と説明されたのに、重要事項説明書の類型が健康型だった場合は、口頭の説明と書面の性格が食い違っています。どちらが契約の中身なのかを、その場で担当者に確かめてください。介護付でも、看取りの対応や医療的な対応の範囲は書面の文言で確かめる部分です。

編集部の整理では、重要事項説明書は契約の当日ではなく、候補を数か所に絞った段階で取り寄せて、家族で同じ順番で読み比べるのが進めやすいやり方です。読んで分からない言葉には付せんを貼り、見学のときにまとめて聞くと、聞き漏らしが減ります。

出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則20条の7(e-Gov法令API)

自立型老人ホームが向く親・向かない親

自立型の住まいが向くかどうかは、親の年齢や元気さよりも、「今の家で困っていることを、住み替えで解決できるか」で分かれます。住み替えで解決したいことがはっきりしている親には向き、解決したいことが「将来の介護」だけなら、類型の選び方を間違えると二度の住み替えになります。

自立型の住まいで手に入るのは、食事の提供、見守りや生活相談、同じ建物にいる人とのつながり、といった暮らしの支えです。逆に、介護が必要になった後の安心は類型によって違い、健康型のように退去が前提の類型もあります。何のために住み替えるのかを先に言葉にしておかないと、手に入るものと期待しているものがずれます。

判断の軸 向く方向 向かない方向
今の家で困っていること 食事づくり・一人の夜・家の管理など、住まいで解決できる 困っていることが特にない
本人の気持ち 本人が住み替えに前向き 子が勧めているだけで本人は迷っている
介護が必要になったとき 住み続けられる類型を選べる 退去が前提の類型しか候補がない
お金の見通し 前払金や月々の費用を、介護が要る時期まで見込める 介護が要る時期の費用が残らない
夫婦の状態 二人の状態が入居時の要件に合う どちらかが要件から外れる

本人が元気なのに早すぎないか、という迷いには、本人がそれを望んでいるかで答えるのが筋です。元気なうちの住み替えは、本人が新しい暮らしに慣れる時間があることが利点ですが、本人が望んでいないなら、その利点は生きません。

たとえば、一人暮らしの母が「料理がおっくうで、夜一人なのが不安」と自分から言っているなら、食事と見守りが付く住まいは困りごとに直接効きます。一方、父が「まだ一人で大丈夫」と言っていて、子が将来の介護を心配して勧めているだけなら、先に話し合うべきは住み替え先ではなく、今の家でどこまで続けられるかです。

親が施設を拒むときは在宅で続ける条件から話す

迷ったときは、表の軸のうち、向かない方向に当てはまるものが一つでもあれば、急がずにその軸を先に解決してください。とくに「本人の気持ち」と「介護が必要になったとき」の2つは、後から変えにくい軸です。

住み替えずに今の家で続ける条件

和室の廊下

元気なうちの住み替えは、選択肢の一つであって、正解ではありません。今の家で暮らし続ける条件がそろっているなら、住み替えずに続けるほうが、本人の暮らしを変えずに済みます。

自立型の住まいで手に入るものの中には、今の家に外から持ち込めるものもあります。食事は配食サービス、見守りは機器や近所とのつながり、生活相談は地域包括支援センター、介護が必要になったら訪問介護などの居宅サービスです。住宅型やサ高住で使う介護サービスも、自宅で使うのと同じ居宅サービスなので、介護の面では今の家と変わらない部分があります。

住み替えるか、今の家で続けるか
自立型の住まいへ住み替える

  • 食事と見守りが住まいに付く
  • 同じ建物に人がいる
  • 介護は類型によって扱いが違う
  • 前払金や家賃がかかる
今の家で続ける

  • 配食や見守りを外から足す
  • 近所や家族とのつながりを保つ
  • 介護は居宅サービスを使う
  • 家の修繕や管理の手間が残る

今の家で続けられるかどうかは、次の条件がそろっているかで考えます。

  • 食事・買い物・通院が、本人か周りの支えで回っている
  • 転んだときや体調が急に悪くなったときに、誰かが気づける仕組みがある
  • 家の段差や寒さなど、暮らしにくさに手が打てている
  • 困ったときに相談する先(地域包括支援センターなど)が分かっている
  • 本人が今の家で暮らし続けたいと思っている

※見守りや配食などの支援、地域包括支援センターの名称や担当区域は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

たとえば、父が一人暮らしで、近くに住む子が週末に様子を見に行き、平日は配食サービスで安否も確かめられている場合は、上の条件の多くがそろっています。この状態で自立型の住まいへ移るなら、移ることで新しく手に入るものが何かを家族で言葉にしてから決めても遅くありません。反対に、冬に一人で倒れても誰も気づけない家だと分かったら、見守りを足すか、見守りの付いた住まいへ移るかを比べる段階です。

住み替えを話し合う前に、上の条件を家族で一つずつ確かめてください。そろわない条件が出てきたら、まず今の家に足せるかを考え、足せないものが重なったときに住み替えを比べると、本人にも理由を説明しやすくなります。

探し方と見学の順番

自立型の住まいを探すときは、候補を集める前に「類型」と「入居時の要件」で絞り、重要事項説明書で比べてから見学する、という順で進めると迷いが少なくなります。見学で設備から見てしまうと、類型の違いが後回しになります。

有料老人ホームは、設置の際に都道府県知事への届出が必要な届出制で、運営状況も都道府県が公表する仕組みがあります。サ高住は都道府県知事の登録を受け、登録は5年ごとに更新されます。どちらも都道府県が持っている情報から候補を確かめられるので、紹介サイトの情報と合わせて見ると、偏りを減らせます。

探す前に絞り、書面で比べてから見る
  1. 1条件を決める住む地域・親の状態・払える費用
  2. 2類型で絞る介護が必要になった後の扱いで選ぶ
  3. 3資料を取り寄せる重要事項説明書を家族で読み比べる
  4. 4見学する本人と一緒に、書面で分からない点を聞く
  5. 5契約前に確かめる返還と保全、解約の条項

見学では、書面では分からないことを確かめます。

  • 入居している人の様子と、本人がそこで暮らす姿を想像できるか
  • 介護が必要になった人が、実際にどう暮らしているか
  • 食事の内容と、食べる場所の雰囲気
  • 職員が日中と夜間にどう配置されているか
  • 重要事項説明書で分からなかった点への答え

※有料老人ホームの届出やサービス付き高齢者向け住宅の登録の窓口、公表している情報の見方は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

たとえば、母と子で見学に行く場合は、事前に重要事項説明書の「介護が必要になったときの扱い」が書かれたところに付せんを貼っておき、見学の最後に「この言葉は、具体的にどういう場面のことですか」と聞いてみてください。本人には住まいの雰囲気を見てもらい、子は書面との食い違いを確かめる、と役割を分けると、一回の見学で見られることが増えます。

※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

自立型は、介護が必要になったあとの扱いがホームごとに大きく違います。資料を取り寄せたら、重要事項説明書の「介護が必要になったときの扱い」(住み替え・契約の解除・介護居室への移動)を先に確かめてください。老人ホームの検索サイトでは、地域と種類で絞り込んで資料請求や見学の予約ができます。

みんなの介護で老人ホームの資料を取り寄せる

住み替えたあとの実家をどうするか

親が自立型の住まいに移ったあと、残った実家をどうするかは、住み替えと同時に考え始める問題です。すぐに決める必要はありませんが、空き家のまま置くと、管理の手間と費用は続きます。

住み替えたあとも、実家に戻る可能性があるか、売って住まいの費用に充てるか、家族の誰かが使うかで、取る道が変わります。健康型のように介護が必要になったら退去する類型を選んだ場合は、戻る先として実家を残しておくかどうかも、選択の一部になります。親が判断する力を失ったあとは、親名義の実家を売る手続きが進めにくくなることがあるので、元気なうちに方針を話しておくことが大切です。

  • 戻る可能性がある:当面は残して管理する方法を決める
  • 費用に充てたい:売る時期と、売るときの税の扱いを調べる
  • 家族が使う:名義や費用の分担を家族で話す
  • 決めきれない:管理の分担だけ先に決めて、期限を区切る

たとえば、母が住宅型の有料老人ホームに移り、実家が空いた場合、母が元気なうちに「売ってよいか」「誰が管理するか」を聞いておけば、あとで家族の判断が割れずに済みます。売るなら、親が住まなくなった家の税の特例が使えるかどうかも、時期によって変わることがあります。

実家を売るか残すかの考え方

親が住まなくなった実家を売るときの税の特例

親の判断する力が衰えたあとに実家を動かしたいなら、元気なうちに財産の管理を家族に任せる仕組みもあります。

家族信託とは、財産管理を家族に任せる仕組み

住み替えの話がまとまりかけた段階で、実家について「戻るか」「売るか」「誰が管理するか」の3つだけでも本人の考えを聞いておいてください。住み替えの準備で手いっぱいの時期ですが、本人の意思を確かめやすいのも、この時期です。

よくある質問

自立型老人ホームの入居年齢は何歳からですか?

サービス付き高齢者向け住宅は、60歳以上の人、または要介護認定・要支援認定を受けている60歳未満の人が対象です。有料老人ホームは、この記事で確かめた法令と指針の範囲では年齢が一律に決まっていないので、ホームごとの条件を重要事項説明書や担当者に確かめてください。

入ったあとに介護が必要になったら退去ですか?

類型によって違います。健康型は介護が必要になったら契約を解除して退去する類型で、住宅型とサ高住は外部の介護サービスを使って住み続ける形、介護付はホームの介護で住み続ける形です。個々のホームの扱いは契約で決まるので、重要事項説明書の文言で確かめてください。

認知症になったらどうなりますか?

住宅型やサ高住なら訪問介護などを増やして住み続ける道があり、介護付ならホームの介護を使います。見守りが一日中必要になった場合は、要支援2以上で認知症の人が入れるグループホームも選択肢になります。どこまで対応するかはホームごとに違うので、契約前に聞いておいてください。

入居一時金は戻りますか?

入居後3か月以内に契約を解除したり、入居者が亡くなって契約が終わったりした場合は、住んだ日数分の家賃などを差し引いて返す契約を結ぶことが、法令でホームに義務づけられています。3か月を過ぎても想定居住期間の中なら返還の対象になります。返る額は契約ごとに違います。

ホームが倒産したら入居一時金はどうなりますか?

前払金を受け取るホームには、返すお金に備えた保全措置が法律で義務づけられています。そのホームが実際に保全措置を講じているかは、重要事項説明書で確かめてください。書面で確かめられないときは、契約の前に担当者に聞いてください。

お金がなくても入れる高齢者の住まいはありますか?

前払金のない月払いの住まいを探す方法と、ケアハウス(軽費老人ホーム)のような住まいを市区町村や施設に確かめる方法があります。家賃や食費は介護保険の外で、所得の低い人の食費・居住費を軽くする仕組みは有料老人ホームやサ高住には使えない点も、先に知っておいてください。

夫婦で一緒に入れますか?

サ高住は、配偶者との同居が入居者の要件の範囲に入っています。有料老人ホームでは、夫婦それぞれの状態が入居時の要件に合うかが分かれ目で、どちらかに介護認定があると「入居時自立」のホームでは対象から外れます。二人の状態をそろえて問い合わせてください。

順番のおさらい

  1. 種類:「自立型」は通称で、健康型・住宅型・介護付(入居時自立)・サ高住の4つに分かれる
  2. 介護が必要になった後:健康型は退去、住宅型とサ高住は外部の介護、介護付はホームの介護で住み続ける(類型の説明。個々のホームは契約で確かめる)
  3. 入居の条件:有料老人ホームは入居時の要件の4区分、サ高住は60歳以上などの要件で決まる
  4. 費用:前払金か月払いか、暮らしの費用か介護の自己負担かに分けて比べる
  5. 入居一時金:3か月以内の返還、想定居住期間、保全措置が法令で決まっている
  6. 重要事項説明書:類型・入居時の要件・介護が必要になったとき・費用・解約の順で読む
  7. 向く親:住み替えで解決したいことがはっきりしていて、本人が前向き
  8. 住み替えない条件:食事・気づける仕組み・家の安全・相談先・本人の意思がそろえば今の家で続けられる
  9. 探し方:類型で絞り、書面で比べてから本人と見学する
  10. 実家:戻るか・売るか・誰が管理するかを元気なうちに聞く

元気なうちの住み替えで家族が決めているのは、「今の暮らし」だけでなく「介護が必要になった後の暮らし」の置き場所です。自立型という言葉に安心せず、類型と入居時の要件で介護が必要になった後の道筋を確かめ、そのうえで今の家で続ける条件と比べてください。まずは候補の重要事項説明書を取り寄せ、家族で同じ順番で読むところから始めてください。

有料老人ホームの届出やサービス付き高齢者向け住宅の登録の窓口、見守りや配食などの支援は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

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親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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