- 親の介護が始まりそうで、毎月いくら出ていくのかを1つの数字で知りたい
- 何年も続いたら、総額でどれくらいになるのか見当がつかない
- 施設に入れると、在宅のときよりどれだけ増えるのか
- 親は要介護1で、負担割合証には「1割」とあった。それで月いくらなのか
- 施設の食費や部屋代にも、介護保険は効くのか
- 高額介護サービス費や医療費控除は、黙っていても戻ってくるのか
- 親の年金と貯金で足りるのか、足りなければ自分が出すのか
- 兄弟の間で、誰がどれだけ出すのかをまだ話していない
上記のような悩みに答えます。
親の介護費用を調べると、「平均で月いくら」という数字がすぐに出てきます。ただ、その平均は幅の大きい調査の数字で、うちの親の額とは一致しません。上位に並ぶ銀行や保険会社のページは、平均を見せて備えを促すところで話が終わりやすく、親の要介護度と負担割合から月額を組み立てる手順、施設の食費・居住費は介護保険の外にあって所得と預貯金によっては負担限度額認定で下がること、戻るお金は申請しないと戻らないことは、別々のページに散らばっています。そこで、調査の平均の読み方、自己負担の決まり方、在宅と施設の内訳という基本を押さえたうえで、軽くする制度を当てはめる順番と、親のお金で足りないときの考え方まで、厚生労働省の資料、介護保険法の条文、国税庁の資料で確かめながら整理しました。
親の介護費用は、調査の平均よりも、親の要介護度と負担割合から出すほうが実際の額に近づきます。在宅なら区分支給限度基準額(要介護1で月167,650円、1単位10円の地域の目安)の範囲で使ったサービスの1割(所得によって2割・3割)が基本で、施設なら介護保険の外にある食費・居住費が加わります。そのうえで、高額介護サービス費や負担限度額認定など、申請すると軽くなる制度を当てはめます。
介護費の自己負担シミュレーター(要介護度と負担割合から月額を出す)
2026年10月時点の制度で確かめています
親の介護費用の平均をそのまま使わない
親の介護費用の平均は、月々9.0万円、一時的な費用が47.2万円、介護をした期間が55.0か月です。ただしこれは、生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2024年度)で、過去3年間に介護経験がある人が答えた額の平均で、制度で決まった額ではありません。
| 調査の項目 | 平均 |
|---|---|
| 月々の費用 | 9.0万円 |
| 月々の費用(在宅で介護した場合) | 5.3万円 |
| 月々の費用(施設で介護した場合) | 13.8万円 |
| 一時的な費用(住宅の改造・介護用ベッドの購入など) | 47.2万円 |
| 介護を行った期間 | 55.0か月 |
出典:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2024年度)
この平均を読むときに押さえておきたいことが3つあります。1つめは、公的介護保険サービスの自己負担を含めて答えた額だということです。2つめは、調査の対象が2人以上の世帯で、一人暮らしの世帯は入っていないことです。3つめは、期間の55.0か月は、いま介護中の人については「介護を始めてから今まで」の経過期間で、この先も平均55.0か月続くという意味ではないことです。費用がかからなかった人も0円として平均に入っているので、実際の家ごとの額は、平均よりずっと少ない家も、ずっと多い家もあります。
総額を知りたいときに、月々の平均と期間の平均を掛け合わせる計算がよく紹介されます。計算すると次のようになりますが、これは調査の平均どうしの掛け算で、誰かの実際の総額ではありません。
- 9.0万円 × 55.0か月 + 47.2万円 = 542.2万円(調査の平均を掛け合わせただけの数字)
たとえば、要介護1で週に何日かデイサービスに通う親と、特別養護老人ホームに入った親とでは、払うお金の項目そのものが違います。前者は介護保険のサービスの自己負担が基本で、後者はそこに食費・居住費が毎月加わります。この2つを1本の平均にまとめると、どちらの家にとっても実感と離れた数字になります。
編集部の整理では、平均は「うちの家は平均より上か下か」を見るための物差しにとどめ、準備しておく額の目標にはしません。うちの親の額は、次の項から順に、制度の数字で組み立てていきます。
自己負担は限度額と負担割合で決まる

在宅で介護保険のサービスを使うときの自己負担は、「区分支給限度基準額の範囲で使ったサービスの額 × 負担割合(1割・2割・3割)」です。そこに、世帯の1か月の上限(高額介護サービス費)がかかります。
区分支給限度基準額は、要介護度ごとに決まった「1か月に介護保険で使える枠」です。枠は本来「単位」で決まっていて、1単位が何円になるかは地域とサービスの種類で違い、10円〜11.40円の幅があります。下の表は1単位10円の地域の目安です。
| 要介護度 | 区分支給限度基準額(1か月) |
|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 |
| 要支援2 | 105,310円 |
| 要介護1 | 167,650円 |
| 要介護2 | 197,050円 |
| 要介護3 | 270,480円 |
| 要介護4 | 309,380円 |
| 要介護5 | 362,170円 |
出典:介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
この枠をぴったり使い切った月の自己負担は、負担割合ごとに次のとおりです。実際には枠を使い切らない月もあり、その場合は使った額に割合を掛けた額になります。
| 要介護度 | 1割 | 2割 | 3割 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
| 要支援2 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
| 要介護1 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
| 要介護2 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
| 要介護3 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
| 要介護4 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
| 要介護5 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
たとえば、要介護3・2割負担の親が枠いっぱいまで使うと、表のとおり54,096円です。ところが世帯が課税世帯〜課税所得380万円未満の区分なら、1か月の上限は44,400円なので、差額の9,696円は申請すると戻ってきます。
反対に、枠を超えて使った分は介護保険が効かず10割の自己負担になり、上限の計算にも入りません。上限があるから安心、と考えてよいのは、枠の中で使った分だけです。
編集部の整理では、枠は「使ってよい上限」で、使い切る前提の額ではありません。ケアマネジャーに計画を出してもらったら、「この計画で月の合計はいくらで、親の割合だといくらか」「枠までどのくらい余裕があるか」の2つを聞いてください。それだけで、介護保険の部分の月額は1つの数字になります。
1割か2割か3割かは所得で決まる
負担割合は原則1割で、本人の所得が一定以上なら2割か3割になります。判定は「合計所得金額」と「年金収入とその他の合計所得金額の合計」の2段で見て、両方の線を超えたときだけ割合が上がります。
| 負担割合 | 合計所得金額 | 年金収入+その他の合計所得金額(単身) | 同(同じ世帯に65歳以上の被保険者がほかにもいる場合) |
|---|---|---|---|
| 3割 | 220万円以上 | 340万円以上 | 463万円以上 |
| 2割 | 160万円以上 | 280万円以上 | 346万円以上 |
| 1割 | 上の線に届かない | ― | ― |
2段で見るので、片方の数字だけで「うちの親は2割のはず」と決めることはできません。右端の欄は、同じ世帯に介護保険の第1号被保険者(65歳以上)がほかにもいるときに、その人と合わせた合計で見る線です。夫婦2人とも65歳以上の世帯では、こちらの欄で判定されます。
たとえば、一人暮らしの母の合計所得金額が160万円以上でも、年金収入とその他の合計所得金額の合計が280万円に届かなければ、1割のままです。同じ所得でも、父も65歳以上で2人暮らしなら、見る線は346万円になります。「年金が多めだから2割だろう」と思い込んで計画を控えめにしていた家が、負担割合証を見たら1割だった、ということも起こります。
編集部の整理では、割合は自分で計算せず、市区町村から届く負担割合証の記載で確かめます。親の郵便物の中から見つからないときは、市区町村の介護保険の窓口に確認してください。
※負担割合証が届く時期と様式は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
在宅のときに出ていくお金

在宅の月額は、介護保険のサービスの自己負担に、保険の外のお金を足した額です。限度額の表だけを見ていると、この「外のお金」が抜け落ちます。
介護保険が払うのは、ケアプランに入った介護サービスの費用で、暮らしの中で使うモノや、保険の枠の外の手助けは家族の財布から出ます。調査の在宅の平均5.3万円は、保険の自己負担を含めて答えた額です。
在宅で、介護保険の自己負担とは別に出ていきやすいのは次のお金です。
- 限度額を超えて使った分(10割の自己負担)
- 介護保険の対象にならない自費のサービス(配食、保険外の家事の手伝いなど)
- おむつや衛生用品などの消耗品
- 手すりの工事や入浴用品の購入などの一時的な出費
- 通院・入院の医療費
- 親自身の介護保険料(第9期の全国平均で月6,225円。実際の額は市区町村ごとに違うため、お住まいの市区町村で確認してください)
たとえば、要介護2・1割負担の父が、限度額197,050円いっぱいまでデイサービスと訪問介護を使うと、介護保険の自己負担は19,705円です。ここにおむつ代や配食の代金、通院の医療費が毎月加わるので、通帳から出ていく額は19,705円よりかなり多くなります。使う量が少ない月は、介護保険の部分もその分だけ小さくなります。
在宅で限度額を超えるのは、たとえば、ショートステイを続けて使った月や、退院直後にサービスを増やした月です。こうした月に超えた分は10割になり、上限の制度でも止まりません。親の状態が変わりそうな時期は、月ごとの計画をケアマネジャーと先に確かめておくと、請求を見て驚くことが減ります。
編集部の整理では、在宅の月額を知りたいときは、ケアマネジャーから届く月ごとの利用の計画(サービス利用票)と、親の通帳の引き落としを並べて見ます。介護保険の部分と、それ以外の部分を分けて書き出すと、「足りないのはどちらか」がはっきりします。
施設のときに出ていくお金

施設の月額は、介護サービス費の自己負担、食費・居住費、日用品などの実費の3つに分かれます。このうち食費・居住費は、介護保険の施設サービスの給付に含まれず、原則として全額が自己負担です(介護保険法48条)。
施設といっても、介護保険の上の扱いは種類で大きく違います。介護保険施設と呼ばれるのは、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の3つだけで(介護保険法8条)、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は介護保険施設ではありません。
| 施設の種類 | 介護保険の上の扱い | 食費・居住費の軽減(負担限度額認定) | 医療費控除の対象になる範囲 |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 介護保険施設。入れるのは原則要介護3以上 | 対象 | 介護費・食費・居住費の自己負担の2分の1 |
| 介護老人保健施設 | 介護保険施設 | 対象 | 介護費・食費・居住費の自己負担の全額 |
| 介護医療院 | 介護保険施設 | 対象 | 介護費・食費・居住費の自己負担の全額 |
| 有料老人ホーム | 介護保険施設ではない。介護は特定施設入居者生活介護か外部のサービス | 対象外 | 特定施設入居者生活介護の利用料は対象外 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 住宅。介護は外部の居宅サービスを使う(特定施設の指定を受けたものは特定施設入居者生活介護) | 対象外 | 使うサービスの種類で決まる(特定施設入居者生活介護なら対象外) |
出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/国税庁 タックスアンサーNo.1125/国税庁 タックスアンサーNo.1127
特別養護老人ホームに入れるのは原則要介護3以上で、要介護1・2の人は、在宅での生活が難しいことについてやむを得ない事由があるときの特例入所になります。要介護3以上でも、入所できるかどうかと順番は施設の判定で決まります。
有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の月額や入居金は、施設ごとの契約で決まり、全体の相場を示す公的な統計はありません。調査の施設の平均13.8万円も、特別養護老人ホームから有料老人ホームまでをまとめた数字で、種類ごとの額ではありません。比べるときは、施設から重要事項説明書をもらい、介護保険の自己負担と、家賃・食費・管理費を分けて書き出してください。
たとえば、負担限度額認定を受けた人の計算に使われる「基準費用額」で見ると、特別養護老人ホームの多床室は食費1,545円+居住費915円で1日2,460円、ユニット型個室は食費1,545円+居住費2,066円で1日3,611円です。認定を受けない人の食費・居住費は施設との契約で決まるので、実際の額は施設で確かめます。同じ特別養護老人ホームでも、部屋の種類だけで1日の額が1,151円違うことになります。
編集部の整理では、施設の月額は「介護保険の自己負担」「食費・居住費」「日用品・理美容などの実費」の3つの財布に分けて考えます。最初の財布には高額介護サービス費の上限がかかり、2つめの財布には次の項の負担限度額認定がかかる可能性があり、3つめの財布にはどちらもかかりません。
食費・居住費は負担限度額認定で下がる
介護保険施設とショートステイの食費・居住費は、親の世帯全員と、親の配偶者(世帯が別でも)が市町村民税非課税で、夫婦の預貯金が一定以下なら、負担限度額認定を受けると1日の上限まで下がります。施設が受け取る基準費用額と、本人が払う負担限度額の差を、介護保険が出す仕組みです(特定入所者介護サービス費、介護保険法51条の3)。
対象になるサービスは、特別養護老人ホーム(地域密着型を含む)・介護老人保健施設・介護医療院・短期入所生活介護・短期入所療養介護です。有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームは対象外で、この認定で食費・居住費が軽くなることはありません。
施設に入ったときの1日あたりの負担限度額は、段階ごとに次のとおりです。
| 段階 | 所得の条件(世帯全員と別世帯の配偶者が市町村民税非課税) | 預貯金(単身/夫婦) | 食費 | 居住費(多床室・特養等) | 居住費(ユニット型個室) |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者等、老齢福祉年金受給者 | 1,000万円/2,000万円以下(生活保護受給者等は要件なし) | 300円 | 0円 | 880円 |
| 第2段階 | 年金収入+合計所得金額が82.65万円以下 | 650万円/1,650万円以下 | 390円 | 430円 | 880円 |
| 第3段階① | 同じく82.65万円超120万円以下 | 550万円/1,550万円以下 | 680円 | 430円 | 1,370円 |
| 第3段階② | 同じく120万円超 | 500万円/1,500万円以下 | 1,420円 | 530円 | 1,470円 |
| 参考:基準費用額 | ― | ― | 1,545円 | 915円 | 2,066円 |
出典:介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
年金収入には、遺族年金などの非課税の年金も含めて見ます。ショートステイの食費は別の額で、第1段階300円・第2段階600円・第3段階①1,030円・第3段階②1,360円です。
たとえば、一人暮らしだった母が第2段階に当たり、特別養護老人ホームの多床室に入った場合、1日の食費・居住費は390円+430円=820円です。基準費用額の2,460円と比べると1日1,640円軽く、30日の月なら49,200円の差になります。
ただし、所得が低くても預貯金が線を超えると、この認定は受けられません。同じ母でも、単身で預貯金が650万円を超えていれば第2段階には当たらず、食費・居住費は施設との契約どおりの額になります。認定は申請して受けるものです。
編集部の整理では、親の通帳の残高と年金の額が分かった時点で、この表のどこに当たるかを一度見ておきます。当たりそうなら、入所の話が出る前に市区町村の介護保険の窓口に申請の方法と、いつの分から軽くなるかを聞いておくと、入所してから慌てずに済みます。
※負担限度額認定の申請の手続きは自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
申請すると戻るお金は3つある
介護費用には、払ったあとで戻るお金が3つあります。高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、確定申告の医療費控除で、どれも自分から動かないと戻りません。
高額介護サービス費
1か月の介護保険の自己負担が、世帯の区分ごとの上限を超えたら、超えた分が戻ります。上限がかかるのは介護サービスの自己負担で、施設の食費・居住費や日用品の実費は入りません。
| 区分 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 市町村民税課税〜課税所得380万円未満 | 44,400円(世帯) |
| 市町村民税世帯非課税 | 24,600円(世帯) |
| 世帯非課税で、年金収入+その他の合計所得金額が82.65万円以下 | 15,000円(個人) |
出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.997(140,100円・93,000円の区分)/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
介護保険の給付を受ける権利は2年で時効になります(介護保険法200条)。いつから数えるかは市区町村に確認してください。
高額医療合算介護サービス費
医療と介護の両方に自己負担がかかった年は、同じ医療保険に入っている世帯の1年分を合わせた額が上限を超えると、超えた分が支給されます。期間は毎年8月から翌年7月までで、暦の1月〜12月ではありません。先に高額介護サービス費と高額療養費が引かれたあとの額で見ます。
70歳以上の人の年間の上限は、法令上の区分の通称でいう「一般」なら56万円、市町村民税世帯非課税なら31万円、世帯全員に所得がない世帯なら19万円(介護サービスを使う人が世帯に複数いれば31万円)で、現役並みの所得がある人は67万円・141万円・212万円と上がります。どの区分に当たるかは、医療保険の保険証や限度額の認定の区分で確かめます。申請の窓口は、お住まいの市区町村の介護保険の担当と、加入している医療保険の窓口に確認してください。
出典:介護保険法51条の2(e-Gov法令API)/介護保険法施行令22条の3(e-Gov法令API)
医療費控除
介護費用の一部は、確定申告の医療費控除の対象になります。控除できるのは、1年に払った医療費から保険などで補てんされた額を引き、さらに10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を引いた残りです。高額介護サービス費などで戻った分は、払った額から差し引きます。
施設では、特別養護老人ホームは介護費・食費・居住費の自己負担の2分の1、介護老人保健施設と介護医療院は全額が対象です。在宅では、訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリなどの医療系のサービスは単独で対象、デイサービスや訪問介護(生活援助中心のものを除く)は医療系のサービスと併せて使った場合だけ対象です。有料老人ホームやグループホームの介護の利用料、福祉用具の貸与は対象外です。どれが対象かは、施設や事業所の領収証に書かれた医療費控除の対象額の欄を見ると分かります。
出典:所得税法73条(e-Gov法令API)/国税庁 タックスアンサーNo.1125
子が親の介護費用を払った場合に、子の確定申告に入れられるかどうかは、親と「生計を一にしている」かで変わります。別々に暮らしている場合の扱いは事情ごとに違うので、税務署か国税庁の相談窓口で確かめてください。
たとえば、父が入院し、同じ年に母も介護サービスを使った家では、3つの制度がそれぞれ別の窓口で関わります。父と母の医療保険が違う(後期高齢者医療と国民健康保険など)と、2人の分は合算できません。月ごとの高額介護サービス費、年単位の合算、確定申告の医療費控除は、期間の区切りも申請先も違うので、領収証と通知を1つの封筒にまとめておくと、あとで申請するときに迷いません。
編集部の整理では、戻るお金は、申請しないかぎり戻りません。帰省のたびに親宛ての役所や医療保険の郵便物をまとめて確認し、親には「役所からの封筒は捨てずに取っておいて」と頼んでおいてください。
在宅で続けられる条件と施設のほうが負担を抑えられる条件
在宅と施設のどちらの負担が軽いかは、要介護度・親の所得と預貯金・家族が回せる時間の3つで入れ替わります。調査の平均では在宅5.3万円・施設13.8万円ですが、これは家ごとの比べ方の答えにはなりません。
施設の事業者のページは入所を前提に、在宅の支援のページは在宅を前提に書かれやすいので、ここでは「施設を選ばない場合の条件」と、その反対の条件を両方並べます。
- 必要なサービスが限度額の中に収まる
- 夜間や急な呼び出しを家族か保険外のサービスで回せる
- 保険外の自費サービスが膨らまない
- 親が自宅で暮らしたいと言っている
- 限度額を超えて10割で払う月が続く
- 夜間の介助が家族の仕事と両立しない
- 負担限度額認定の第1〜第3段階に当たる
- 特別養護老人ホームに原則入れる要介護3以上
在宅で続けられる条件は、まず必要なサービスが限度額の中に収まることです。そのうえで、夜間や急な呼び出しを家族か保険外のサービスで回せること、その保険外の費用が膨らまないことがそろえば、在宅のまま続けやすくなります。親が自宅にいたいと言っているなら、ここまでの条件がそろっているかを先に確かめてから施設の話をしても遅くありません。
反対に、施設のほうが負担を抑えられる場合があるのは、在宅で限度額を超える月が続き、超えた分を10割で払っている家です。親の世帯全員と配偶者が非課税で預貯金が少なく、負担限度額認定の段階に当たるなら、特別養護老人ホームの食費・居住費は下がります。
たとえば、要介護3で第2段階に当たる母が在宅で限度額を超えて使い、超えた分の10割を毎月払っている場合と、特別養護老人ホームの多床室に入って食費・居住費が1日820円になる場合とでは、後者のほうが月の出費を読みやすくなります。逆に、要介護1・1割負担で限度額の中に収まっている父なら、在宅のまま介護保険の自己負担16,765円以内で回る月もあり、施設を急ぐ理由はお金の面では見当たりません。
在宅か施設かで迷ったら、お金の比較だけで決めず、家族が回せる時間も同じ紙に書いてください。仕事との両立に無理が出ている場合は、介護休業の使いどころも合わせて考えます。
親のお金で足りないとき誰が払うか
介護費用は、親の年金と預貯金から払うことを出発点にします。子が出すかどうかを話し合うのは、軽くする制度を全部当てはめたあとです。
制度を当てはめる前に子が立て替え始めると、親の通帳から何が出ているのかが見えなくなり、負担限度額認定や高額介護サービス費の申請にも気づきにくくなります。まず親のお金の出入りを見える形にすることが、最初にやることです。
確かめておくことは次のとおりです。
- 親の年金が毎月いくら、どの口座に入っているか
- 介護の自己負担と施設の費用が、どの口座から引き落とされるか
- 預貯金の残りで、足りない月をどれくらい埋められるか
- 負担限度額認定・高額介護サービス費・医療費控除を申請したか
- 足りない分を子が出すなら、兄弟で誰がどれだけ出すか
兄弟の分担に決まった形はありません。近くに住んで手を動かす人と、遠くでお金を出す人で分ける家もあれば、均等に出す家もあります。どの形でも、立て替えた額と領収証を記録しておくと、あとで相続の話になったときに揉める種が減ります。
たとえば、親の年金で毎月の介護保険の自己負担は払えるが、施設に入ると食費・居住費の分だけ足りなくなる、という家があります。その場合は、負担限度額認定に当たるかを先に確かめ、それでも足りない分を預貯金で何か月埋められるかを出してから、子が出すかどうかを話すと、話し合いが具体的になります。
もう1つ気をつけたいのは、親の判断力が落ちると、親の口座からお金を動かしにくくなることです。家族信託や任意後見のように、親が元気なうちにしか選べない方法があります。どちらが向くかは家ごとの事情で変わるので、司法書士・弁護士などの士業に、親の年金と口座、いまの介護の月額、兄弟の意向をまとめて持って相談してください。
うちの親の介護費用を出す順番
うちの親の介護費用は、次の5つの順で当てはめると1つの数字になります。順番を入れ替えると、上限を掛ける前の額で不安になったり、戻るお金を数え忘れたりします。
- 1要介護度と割合を見る認定の通知と負担割合証
- 2枠の中の計画を聞くケアマネに月の合計を
- 3上限を当てはめる高額介護サービス費
- 4保険の外を足す食費・居住費・日用品
- 5戻るお金を当てる負担限度額認定・合算・医療費控除
- 要介護度と負担割合を確かめる:認定結果の通知と負担割合証を見る
- 介護保険の部分を出す:ケアマネジャーに月の計画の合計を聞き、割合を掛ける
- 上限を当てはめる:世帯の区分の上限額で止まるかを見る
- 保険の外のお金を足す:在宅なら消耗品や自費サービス、施設なら食費・居住費と日用品
- 申請で軽くなる制度を当てる:負担限度額認定・高額介護サービス費・合算・医療費控除
1と2は、計算ツールに要介護度と負担割合を入れれば目安が出ます。3から5は家ごとの事情で変わるので、出てきた額の横に書き足してください。
たとえば、要介護3・2割負担の父で、世帯が課税世帯〜課税所得380万円未満の区分で、区分支給限度基準額いっぱいまで使うなら、介護保険の自己負担のうち上限の44,400円を超えた分は、あとで高額介護サービス費として戻ります。そこに在宅の消耗品や通院の費用を足したものが、その月に出ていく額です。要介護度が決まる前なら、まず認定の申請から始めます。
同じ要介護度と割合の月額を詳しく見たいとき、介護ベッドなどの用具の費用を知りたいときは、次の記事で続きを確かめられます。
要介護3・2割負担の月額はいくら?限度額いっぱいでも上限で止まる
※1単位あたりの単価は地域区分によって違うため、この記事の金額は目安です。実際の額は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
よくある質問
親の介護費用は、総額でいくらかかりますか?
決まった総額はありません。生命保険文化センターの2024年度の調査の平均を掛け合わせた額は上の「親の介護費用の平均」の項の計算例のとおりですが、期間の55.0か月は介護中の人の経過期間を含んだ平均で、この先の見込みではありません。うちの親の額は、月額を出したうえで、親の状態の変化に合わせて見直していくほうが実際に近づきます。
高額介護サービス費は、自動で戻ってきますか?
自動では戻りません。申請して初めて戻ります。介護保険の給付を受ける権利は2年で時効になるので、気づいたら早めに市区町村の窓口に確かめてください。
介護費用は医療費控除に入りますか?
一部が入ります。特別養護老人ホームは自己負担の2分の1、介護老人保健施設と介護医療院は全額が対象で、在宅は医療系のサービスかどうかで変わります。対象額は領収証の欄で確かめ、迷うときは税務署か国税庁の相談窓口に聞いてください。
親の介護に備えて、いくら準備しておけばいいですか?
準備額を1つに決める根拠になる数字はありません。調査の平均は幅が大きく、家ごとの額とずれます。まず親の年金と預貯金で月額がまかなえるかを確かめ、足りない分を負担限度額認定などの制度で減らせるかを見てから、子が出す額を考える順にしてください。
認知症だと介護費用は高くなりますか?
介護保険の自己負担は、病名ではなく、認定された要介護度ごとの枠と、使ったサービスの量で計算されます。状態に合わせてサービスが増えれば額も増えますが、病名だけで料金が上がる仕組みではありません。判断力が落ちる前に決めておける、お金の管理の手段があります。
住んでいる地域で金額は変わりますか?
変わります。1単位の単価が地域とサービスの種類で10円〜11.40円まで違うため、この記事の金額は1単位10円の地域の目安です。親の住む地域の額は、ケアマネジャーか市区町村に確かめてください。
順番のおさらい
- 調査の平均:月9.0万円(在宅5.3万円・施設13.8万円)は幅の大きい目安で、準備額の目標にしない
- 自己負担の決まり方:限度額の範囲で使った額に負担割合を掛け、世帯の上限で止める。枠を超えた分は10割
- 負担割合:合計所得金額と年金収入等の2段で判定。負担割合証で確かめる
- 在宅:介護保険の自己負担に、消耗品・自費サービス・医療費・介護保険料が加わる
- 施設:介護サービス費、食費・居住費、日用品の3つの財布。有料老人ホームは施設ごとの契約で、重要事項説明書で分けて見る
- 負担限度額認定:介護保険施設とショートステイの食費・居住費が、所得と預貯金に応じて1日の上限まで下がる
- 戻るお金:高額介護サービス費・合算・医療費控除はどれも申請が要る。時効は2年
- 在宅か施設か:限度額に収まり家族の時間が回るなら在宅で続けやすく、限度額超えが続き認定の段階に当たるなら施設のほうが負担を抑えられる場合がある
- 足りないとき:親のお金と制度を先に当て、そのあとで兄弟の分担を話す。判断力のあるうちに管理の方法を決める
- うちの親の月額:要介護度と割合 → 枠の中の計画 → 上限 → 保険の外 → 戻るお金の順で出す
親の介護費用は、平均の数字を自分の家の額だと受け取ると、実際の額とずれて不安が大きくなります。実際に出ていく額は、親の要介護度と負担割合を軸に、保険の外のお金を足し、申請で戻る分を引いて決まります。最初の一歩は、負担割合証とケアマネジャーの計画を手元にそろえ、介護保険の部分を1つの数字にすること。そこから先は、外のお金を足し、戻るお金を引いていけば、親のお金で足りるかどうかの答えが見えてきます。
単価・負担割合証が届く時期・負担限度額認定と高額介護サービス費の申請の手続きは自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

