- 介護休業は今取るべきか、もっと後に取っておくべきか決められない
- 93日で何ができるのか、足りるのかが分からない
- 親が入院して、退院の日を決めてくださいと言われた
- 会社に介護のことを言い出しにくい。評価に響かないか気になる
- 要介護認定が出ていないと取れないのではないか
- 数日だけ休みたいときも介護休業なのか
- 休業中のお金がどうなるのか分からない
- 父の介護で使ったら、母のときにはもう取れないのか
- このまま仕事を辞めるしかないのか、と考え始めている
上記のような悩みに答えます。
介護休業は、働きながら親の介護に向き合う人のための休みで、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取れます。ところが「93日」という数字だけが先に知られていて、「93日で介護をやり切る休み」だと受け取られがちです。制度の解説や会社の人事向けの記事は、対象者・日数・手続き・給付金の順に説明していて、働く側がいちばん知りたい「いつ取るのか」「会社にどう言うのか」には答えていません。そこで、条件・日数・お金という基本を押さえたうえで、取る時期を3つの節目で決める考え方、介護休暇との使い分け、会社への切り出し方、取らずに回せる条件まで、育児・介護休業法の条文と厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。
介護休業は、自分が介護をするためではなく、介護の体制を作る・作り直す節目に取ります。節目は始まり・変わり目・最後の時間の3つで、数日で済む用事は介護休暇で足ります。
2026年9月時点の制度で確かめています
介護休業は体制を整える節目に取る
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れる休みです(育児・介護休業法11条)。93日では、親の介護そのものは終わりません。だから厚生労働省も、休業期間を「自分が介護を行うのではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間」と説明しています。同じ家族については、年度が変わっても、状態がよくなったあとにまた悪くなっても、使った分の93日と3回は戻りません(リセットされません)。
答えを先に書きます。
- 介護休業は、介護の体制を作る・作り直す「節目」に取る
- 節目は3つ(始まり・状態の変わり目・最後の時間)。3回に分けられるのは、この3つに1回ずつ当てられるから
- 通院の付き添いや役所の手続きのような数日の用事は、介護休業ではなく介護休暇で足りる
制度がこういう形になっているのは、親の介護が年単位で続くことが多く、その間ずっと子が仕事を休むことは現実的でないからです。休業の目的は、子が介護を担うことではなく、介護サービス・ケアマネジャー・家族の分担といった「子がいなくても回る仕組み」を作ることに置かれています。93日を3回に分けられるのも、仕組みを作り直す場面が一度では終わらないためです。
たとえば、親が倒れた直後に「とりあえず休めるだけ休む」と決めて、93日を一度に使い始めた場合を考えてみてください。最初の数週間は病院と家の往復で過ぎ、ケアマネジャーが決まり、サービスが動き出したころには休業の残りが少なくなっています。そのあとで状態が変わったり、施設を考える時期が来たりしても、同じ親のためにはもう休業を取れません。反対に、始まりの休業を「サービスの手配が済んだら戻る」と決めて取れば、残りの日数を次の節目のために持っておけます。
迷ったときは、「この休みで何を決めて戻るか」を先に書き出してみてください。決めることが書けないなら、それはまだ介護休業の時期ではなく、介護休暇や年次有給休暇でつなぐ時期かもしれません。
出典:厚生労働省 介護休業制度特設サイト「介護休業」/育児・介護休業法11条(e-Gov法令API)
介護休業を取るタイミングは3つ

取る時期は、始まり・変わり目・最後の時間の3つの節目です。節目ごとに、休業中にやることが違います。
節目で考えるのは、介護の手間がいちばん増えるのが「日々の世話」ではなく「決めることが一度に押し寄せる時期」だからです。入院から退院、在宅から施設、そして最後の時間。どの場面でも、短い期間に病院・ケアマネジャー・施設・家族との話し合いが重なります。その時期に仕事を離れて集中できるかどうかで、その後の回りやすさが変わります。
| 節目 | よくある場面 | 休業中に決めること |
|---|---|---|
| 始まり | 退院が決まった/急に一人で暮らせなくなった | 要介護認定の申請、ケアマネジャー探し、介護サービスの手配、家族の分担 |
| 変わり目 | 状態が進んだ/在宅から施設を考える/同居の家族が倒れた | ケアプランの見直し、施設の見学と申込み、実家の片付けの段取り |
| 最後の時間 | 医師から終末期の話があった/看取りの方針を決める | 付き添いの時間、きょうだいとの交代、職場との連絡の取り方 |
いちばん多い失敗は、始まりの時期に「自分で世話をするために」まとめて休み、介護の体制ができないまま93日に近づくことです。始まりの休業は、サービスと人の手配が済んだら戻るくらいの長さで十分なことが多いです。残りは次の節目のために取っておけます。
- 1始まり認定の申請・サービスの手配
- 2変わり目ケアプランの見直し・施設
- 3最後の時間付き添い・きょうだいと交代
要介護認定の申請は、原則として申請日から30日以内に結果が出る決まりです(介護保険法27条)。認定が出てからでは始まりの手配が遅れるので、申請と休業の開始を同じ時期に重ねると動きやすくなります。
たとえば、病院から「退院の日を決めてください」と言われた場合は、始まりの節目です。このときの休業では、退院の前に認定の申請を済ませ、地域包括支援センターかケアマネジャーに相談し、退院した日から使うサービスを決めておくことが目標になります。一方、親が遠方に住んでいて、物忘れが少しずつ増えているだけの段階なら、まだ節目ではないことが多いです。その段階は、帰省と電話、介護休暇での相談でつなぎ、決めることが一度に来たときのために休業を残しておけます。
休業に入るときは、戻る日の見込みを先に決めて上司と共有しておくと、休んでいるあいだも焦りにくくなります。休業中は「自分がやる」ことより「誰に任せるか」を決めることに時間を使ってください。任せる先が決まったら、そこが戻るタイミングです。
最初にどこへ相談すればいいか分からないときは、親の住む地域の地域包括支援センターです。家族だけで相談できます。
※地域包括支援センターの名称と担当区域は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
相談のきっかけが「親が外出しなくなった」「お風呂に入らなくなった」といった暮らしの変化のときは、親が外出しなくなったときと親がお風呂に入らないときに、家族だけで相談に行く順番をまとめています。
介護休暇で足りる場面もある
通院の付き添いや役所の手続きのように、数日で済む用事は介護休業ではなく介護休暇で足ります。
介護休暇は、介護休業とは別の休みです。要介護状態の対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで取れます(育児・介護休業法16条の5第1項)。1日単位だけでなく、時間単位でも取れます。年度は、会社が別に決めていなければ4月から翌年3月までです。
2つの休みが分かれているのは、介護で仕事を離れる場面に「数日で終わる用事」と「まとまった期間が要る節目」の2種類があるからです。数日の用事のたびに介護休業を使っていると、3回の分割をすぐに使い切ってしまいます。介護休暇は、その小さな用事を受け止めるために別に用意されている休みだと考えると、使い分けがはっきりします。
こういう用事は、介護休暇で足ります。
- 通院の付き添い、入退院の手続き
- 要介護認定の訪問調査の立ち会い
- ケアマネジャーとの面談、サービス担当者会議
- 役所や地域包括支援センターへの相談
- 対象家族1人につき通算93日・3回まで
- 体制を作る・作り直す節目に
- 育児・介護休業法11条
- 年5日(2人以上なら年10日)
- 通院の付き添い・役所の手続きなど
- 育児・介護休業法16条の5第1項
たとえば、要介護認定の訪問調査に立ち会いたい場合は、半日から1日で済むことが多く、介護休暇の時間単位の取り方がよく合います。ケアマネジャーとの面談も同じです。こうした用事を介護休暇に回しておけば、介護休業は退院や施設の申込みのような節目のためだけに残せます。
どちらの休みを使うか迷ったら、「数日で終わるか」「その休みで何かの体制が決まるか」の2点で分けてください。数日で終わり、決まることが1つなら介護休暇、何週間かかけて段取りを組み直すなら介護休業です。
出典:厚生労働省 介護休業制度特設サイト「介護休暇」/育児・介護休業法(介護休暇の条文・e-Gov法令API)
介護休業を取れる条件
介護休業は、家族の範囲・要介護状態・働き方の3つの条件で取れるかどうかが決まります。要介護認定を受けていることは、必ずしも条件ではありません。
- 家族の範囲:配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母のほか、祖父母・兄弟姉妹・孫も対象家族に入ります
- 要介護状態:けがや病気、障害で、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態。要介護認定を受けていることは必ずしも条件ではありません。当てはまるかの判断基準は厚生労働省が示しているので、迷ったら会社の人事か、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確かめてください
- 働き方:日々雇用の人を除き、正社員に限らず取れます。期間を定めて働いている人も、育児・介護休業法11条が定める期間内に労働契約が満了することが明らかでなければ申し出られます
認定が条件になっていないのは、介護休業が介護保険の制度ではなく、働く人を守る育児・介護休業法の制度だからです。認定の結果を待っていると、始まりの節目に間に合わないことがあります。そのため、「常時介護が必要な状態かどうか」という状態そのもので判断する形になっています。
ただし、入社して間もない人や、週の所定労働日数が少ない人などは、会社と労働者の代表が結んだ労使協定で対象外にされていることがあります。自分の会社がどうなっているかは就業規則で確認できます。
たとえば、パートや契約社員で働いている人も、日々雇用でなければ申し出られます。契約の期間が決まっている人は、育児・介護休業法11条が定める期間内に契約が満了することが明らかでないかどうかが分かれ目になります。その期間がいつまでかは、休業開始予定日をもとに会社の人事か労働局で確かめてください。親がまだ認定を受けていない場合も、退院直後で一人では暮らせない状態が続くなら、要介護状態に当たるかを会社の人事に相談できます。
確かめる順番は、就業規則で労使協定の対象外にあたらないかを見る、判断基準を人事に聞く、迷いが残れば都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に聞く、です。給付金の条件と手続きはハローワークの担当です。自分で「たぶん取れない」と決めてしまう前に、この順で聞いてください。
出典:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(労働者の方へ)」/育児・介護休業法(定義の条文・e-Gov法令API)
介護休業の93日は、同じ家族ではリセットされない

93日は、同じ対象家族について通算で数えます。一度よくなったあとに状態が悪くなっても、同じ家族の日数は戻りません。
休業を3回取った場合も、日数の合計が93日に達した場合も、その家族についてはそれ以上申し出られません(育児・介護休業法11条)。「年度が変われば戻る」「状態が回復したらリセットされる」と思われがちですが、そういう仕組みにはなっていません。
「戻るのか」を場面ごとに並べると、次のとおりです。
| 場面 | 93日・3回は戻るか |
|---|---|
| 年度が変わった | 戻らない(同じ家族は通算で数える) |
| 状態がよくなったあと、また悪くなった | 戻らない |
| 回数も日数もまだ残っている | 残っている回数と日数の範囲で、また取れる |
| 別の家族(父のあとに母)の介護が始まった | 母について、新しく93日・3回を数える |
| 介護休暇(年5日・2人以上なら年10日) | 介護休業とは別の休み。日数は1年度ごとに数える |
日数の数え方にも気をつけてください。介護休業の日数は、休業を始めた日から終えた日までの日数で数え、2回以上取ったときは回ごとの日数を足し合わせます(育児・介護休業法11条2項)。出勤日だけを数えるのではないので、休業の期間に入っている土日や祝日も日数に入ります。たとえば、ある月曜日から翌週の金曜日まで休業すると、出勤しなかった平日は10日でも、数える日数は12日です。
一方で、93日と3回は「対象家族ごと」です。父の介護で使った日数は、母の介護の日数とは別に数えます。両親とも介護が必要になりそうな家庭ほど、1人目の始まりで使い切らないことが大事になります。
たとえば、父が倒れて始まりの節目で休業を取り、しばらくして父が施設に入る変わり目でもう一度取った場合、父についての残りは1回と、93日から使った日数を引いた分です。その後に母の介護が始まったときは、母について新しく93日・3回を数えられます。父の分を使い切っていても、母の分には影響しません。
この仕組みから言えるのは、同じ親について「最初に長く」ではなく「節目ごとに必要な分だけ」使うほうが、長い介護の中で安心材料が残るということです。使った日数と回数は、会社の人事に記録を確かめてもらうか、自分でも手元に控えておいてください。
介護休業中のお金はどうなる?
休業中は原則として無給になり、その代わりに雇用保険から介護休業給付金が出ます。ただし、給付金は休業が終わってから申請するため、休業中の生活費はすぐには入ってきません。
休業中は働かないので、会社に給料を払う義務はなく、原則は無給です。会社によっては就業規則で給与の一部を出すところもあります。
その代わりに、雇用保険から介護休業給付金が出ます。額は、休業開始時の賃金日額×支給日数×67%が目安です(法律上の基本の率は40%ですが、当分の間の措置として67%に引き上げられています)。支給の対象になるのも同じ家族について93日・3回までです。雇用保険の加入期間などの条件があります。
給付金が雇用保険から出るのは、介護休業が「仕事を辞めずに続けるための休み」だからです。仕事を続ける人を支える仕組みなので、会社を通じた手続きが基本になっています。
気をつけたいのは、給付金の申請は休業が終わったあとに行う決まりで、休業中の生活費がすぐには入ってこないことです。休む前に、数か月の生活費の見通しを立てておいてください。申請は原則として会社(事業主)が行い、本人が希望すれば自分でも申請できます。休業を申し出るときに、給付の手続きも一緒に聞いておくと早く進みます。
たとえば、始まりの節目で休業を取り、その間に帰省の交通費や親の家の片付けの費用が重なると、手元のお金が一時的に大きく減ります。休業に入る前に、会社に「休業中の給与の扱い」「給付金の申請をいつ誰がするか」を聞き、給付金が入るまでの期間をどう乗り切るかを家族で話しておくと安心です。
月給ごとの給付の目安と申請の流れは、②認定・お金の記事で扱っています(下の「介護休業の次に来るお金の話」から進めます)。
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」/厚生労働省「よくあるお問い合わせ(労働者の方へ)」
会社に言いにくいときの切り出し方
会社には、休業を決める前に「相談」として早めに伝えるのが通りやすい順番です。言い出すこと自体が、会社に制度を案内してもらう入口になっています。
介護のことを職場で話すのは、多くの人にとって気が重いものです。忙しい時期に迷惑をかけたくない、評価に響かないか、と考えるのは自然なことです。ただ、会社の側から見ると、急に休まれるより、早めに相談してもらえるほうが仕事の割り振りを考えやすくなります。
順番はこうすると通りやすいです。
- まず上司に「親の介護が必要になりそうで、相談したい」と伝える。この段階で休業を決めていなくてかまいません
- 人事や総務に、会社の介護休業・介護休暇の決まり(申出の様式、給与の扱い)を聞く
- 休業を取ると決めたら、休業開始予定日の2週間前までに書面などで申し出る。開始日と終了予定日を書きます
- 休業中に決めること(上の3つの節目の表)と、戻る予定を上司と共有する
介護が必要になったことを会社に申し出ると、会社は介護休業などの制度を個別に知らせ、利用するかどうかの意向を確かめることになっています。言い出すことそのものが、制度の入口になっています。また、条件を満たす人からの介護休業の申出を、会社は拒めません(労使協定で対象外にされている場合を除きます。対象かどうかは上の「介護休業を取れる条件」で確かめてください)。申出や休業をしたことを理由とする解雇などの不利益な扱いも禁止されています。
急に倒れて2週間前に間に合わないときも、申出はできます。その場合、会社は開始日を2週間後までの範囲でずらすことがあります。そのあいだは介護休暇や年次有給休暇でつなぐのが現実的です。
たとえば、上司に話すときは「いつから・どれくらい・何のために」を短く伝えると、相手も仕事の段取りを考えやすくなります。「父の退院に合わせて、ケアマネジャーとサービスを決めるまで休みたい。戻る見込みはこのくらい」と言えれば、休業が「いなくなる」ではなく「体制を作って戻る」ための期間だと伝わります。評価への影響が心配なら、休業中の連絡の取り方と、戻ったあとの働き方を先に相談しておくと、お互いの不安が小さくなります。
出典:育児・介護休業法(申出があった場合の事業主の義務の条文・e-Gov法令API)/育児・介護休業法(不利益取扱いの禁止の条文・e-Gov法令API)/育児・介護休業法(介護に直面した旨の申出への個別周知の条文・e-Gov法令API)
介護休業を取らずに回せる場合
介護休業は、取らなくて済むならそれでもかまいません。次の条件がそろっているなら、休業は温存して、働きながら回す選択ができます。
- 介護サービス(デイサービス・訪問介護・ショートステイ)で、平日の日中が回っている
- ケアマネジャーとの面談や通院の付き添いが、介護休暇と年次有給休暇の範囲に収まっている
- 残業を減らせば回る。要介護状態の家族を介護している人は、会社に請求すれば、原則として所定労働時間を超える労働(残業)をしないで済むようにできます
- きょうだいや親族と、誰が何をするかの分担が決まっている
- 離れて暮らしていても、親の異変に早めに気づける手段がある
出典:育児・介護休業法(所定外労働の制限を介護に準用する条文・e-Gov法令API)
この条件を並べたのは、「介護休業を取らない=無理をしている」とは限らないからです。休業は、体制ができていないときに作るための手段です。体制がすでに回っているなら、休業を取らずに働き続けることが、介護にとっても仕事にとっても自然な形になります。
最後の条件は、遠方に住む子ほど大事です。見守りの機器は転倒を防ぐ道具ではなく、「いつもと違う」に気づくための道具です。気づくのが早ければ、休業を取る節目を自分で選べます。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
外に出なくなった親の様子を、電話の声だけで判断するのは難しいものです。部屋での過ごし方がわかる見守りカメラやセンサーを置くと、次に帰省するまでの変化に気づけます。置く前に、親に何が見えるのかを説明しておくと揉めにくくなります。
一方で、サービスの手配が進んでいない、分担が決まっていない、状態が大きく変わった、というときは節目です。無理に休まずにいるより、休業を取って体制を作り直すほうが、結果として仕事を続けやすくなります。
たとえば、「このままでは仕事を辞めるしかない」と感じ始めたときは、辞める前にこの一覧を見直してください。回っていない項目が一つでもあれば、それは辞める理由ではなく、休業を取って作り直す項目です。兄弟が「大丈夫でしょ」と言って分担が決まらない場合も、ケアマネジャーや地域包括支援センターに入ってもらい、誰が何をするかを書き出すところから始められます。休業明けも、この一覧のうち崩れた項目が出たら次の節目と考えれば、慌てずに次の手を選べます。
会社とこじれたら、労働局か社労士か
会社とのやり取りで行き詰まったときの相談先は、困っていることの中身で分かれます。制度の話は都道府県労働局、手続きの実務は社会保険労務士、争いになっていれば弁護士や法テラスです。
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):働く人が無料で相談できる、国の窓口です。申出を断られた、休業を理由に不利益な扱いを受けたといった、育児・介護休業法の制度の話はここです。労働局長が会社に助言・指導・勧告をする、紛争解決の援助の仕組みもあります(育児・介護休業法の条文・e-Gov法令API)
- 社会保険労務士:就業規則の読み方、給付金の申請書類、休業と復帰の段取りなど、手続きの実務を個別に相談したいとき。費用がかかることがあります
- 解雇や退職の強要など、争いになっている場合は、弁護士や法テラスへの相談になります
窓口が分かれているのは、法律で決まっている権利が守られているかどうかを確かめる仕事と、個別の書類や段取りを手伝う仕事、争いを解決する仕事が、それぞれ別の専門だからです。どこに相談すればいいか分からないときは、各都道府県の総合労働相談コーナーで、どの窓口が扱うかを聞けます。
相談に行くときは、次のものを手元にそろえておくと話が早く進みます。
- 就業規則のうち、介護休業・介護休暇の部分
- 申出をした日付と、そのとき会社から言われたこと(メモでよい)
- 親の状態が分かるもの(入院や退院の予定、認定の申請をしたかどうか)
たとえば、上司に休業を相談したら「今は困る」と言われて話が止まっている、という場合は、まず人事に正式に申し出る手続きを聞き、それでも進まなければ労働局に相談する、という順番が取れます。いきなり争う形にせず、制度の説明を会社にしてもらうところから始められます。会社のケースに当てはめて違法かどうかを決めるのは、上の窓口の仕事です。
介護休業の次に来るお金の話
介護休業の次に来るのは、「休んでいるあいだのお金」と「親の介護にいくらかかるか」の話です。
- 介護休業給付は、月給いくらでどれくらい入るのか
- 親が要介護認定を受けたら、介護サービスに月いくらかかるのか
休業を取る前にこの2つの見通しが立つと、何日休めるか、どこまでサービスに任せるかを数字で考えられます。
要介護認定が出て、月にいくら出ていくかを知りたいとき/親の介護費用が毎月いくらか分からない人へ/介護費の自己負担シミュレーター
休業中に施設の話が出たときは、親が施設を拒むときの話し方を先に読んでおくと、体制づくりの3回目をどう使うかが決めやすくなります。
よくある質問
介護休業を取る条件は?
対象家族が2週間以上の常時介護を必要とする状態にあることと、日々雇用でないことが基本です。要介護認定は必ずしも要りません。入社して間もない人などは労使協定で対象外にされていることがあるので、就業規則で確かめてください。
介護の休みは有給扱い?
介護休業も介護休暇も、法律では給料の支払いを決めていないため、有給か無給かは会社の決まりによります。介護休業には雇用保険の介護休業給付があります。給付金は休業が終わってから申請するので、休業中の生活費の見通しは先に立てておいてください。
介護休業の93日はリセットされる?
同じ家族については通算で数えるので、年度が変わっても、状態が回復しても戻りません。父と母のように家族が違えば、それぞれ別に数えます。同じ親について最初に使い切らないことが、長い介護で残りを持っておくこつです。
介護休暇は無給?
有給か無給かは会社の規定によります。就業規則で確かめてください。年5日(2人以上なら10日)、時間単位でも取れます。
介護休業のデメリットは?
原則無給で、給付金は休業が終わってから申請するため、休業中の生活費に見通しが要ります。また同じ家族の日数は戻らないので、早く使い切ると次の節目に残りません。どちらも、取る時期を節目に絞ることで小さくできます。
パートや契約社員でも取れますか?
日々雇用でなければ、正社員に限らず取れます。期間を定めて働いている人は、育児・介護休業法11条が定める期間内に労働契約が満了することが明らかでなければ申し出られます。会社の労使協定で対象外にされていないかは、就業規則で確かめてください。
順番のおさらい
- 取る時期:自分が介護するためではなく、介護の体制を作る節目に取る。対象家族1人につき通算93日・3回まで
- 3つの節目:始まり・変わり目・最後の時間。休む前に「何を決めて戻るか」を書き出す
- 介護休暇:数日の用事は介護休暇(年5日・2人以上なら10日)で足りる
- 条件:要介護認定は必須ではない。労使協定の対象外にあたらないかを就業規則で見る
- 93日:同じ家族ではリセットされない。家族が違えば別に数える
- お金:原則無給。介護休業給付は休業が終わってから申請する
- 切り出し方:まず「相談」として伝え、取ると決めたら休業開始予定日の2週間前までに申し出る。会社は条件を満たす申出を拒めない
- 取らずに回せる:サービス・休暇・分担・見守りがそろっていれば温存してよい。崩れたらそこが次の節目
- こじれたら:制度の話は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、手続きの実務は社会保険労務士へ
介護休業で迷う人の多くは、「いつ取るか」を休みの長さで考えています。長さではなく、何を決めるための休みかで考えると、取る時期も戻る時期も自然に決まります。決めることが無いうちは介護休暇でつなぎ、決めることが一度に来たときのために休業を残しておく。その構えがあれば、急な電話が来ても、仕事を辞める以外の道を選べます。
地域包括支援センターの名称と窓口は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。休業中の給与や申出の様式は会社によって違うので、就業規則で確認してください。

