- 兄弟がいないから、全部自分がやるしかないのかと思っている
- 両親が同時に介護になったら、自分一人では回らない気がする
- 親のお金がどこにいくらあるのか、何も知らない
- 仕事を辞めずにやっていけるのか分からない
- 独身で、相談できる相手が身近にいない
- 父が母の面倒を見ているけれど、父のほうも危なっかしい
- 配偶者に親の介護を頼んでいいのか迷っている
- 親戚は口だけ出して、手は貸してくれない
- 何から順番に決めればいいのかが分からない
上記のような悩みに答えます。
一人っ子の親の介護は、相談する兄弟も、役割を分ける兄弟もいないところから始まります。そのため「全部自分がやる」と思い込みやすいのですが、介護には「決めること」と「手を動かすこと」の2種類の仕事があり、手を動かす側は介護保険のサービスや事業者に渡せます。検索して出てくる解説は、一人っ子が抱える問題の一覧と「一人で抱え込まないで」という呼びかけ、サービスや窓口の一覧で終わっていて、誰に何を任せるのか、何をどの順番で決めるのかまでは書かれていません。そこで、頼れる先・お金の出し方・仕事との両立という基本を押さえたうえで、元気なうち・片親に介護が始まったとき・両親とも介護になったときの3段階で決める順番、父が母を介護している家に先に入れる手当て、親が判断できなくなる前のお金の段取り、在宅を一人で続けない条件まで、育児・介護休業法・介護保険法・任意後見契約に関する法律の条文と厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。
一人っ子で親の介護を担うときは、決める役は自分1人でも、手を動かす役は介護保険のサービスやケアマネジャー、事業者に分けて考えてください。元気なうちは親の希望とお金の場所を聞き、片親に介護が始まったら家族だけで地域包括支援センターに相談し、両親とも介護になったら介護休暇が年10日(両親とも要介護状態のとき)になることも使って、親ごとにサービスを組みます。費用は親の年金と貯蓄から払う前提で組み立て、足りない分をどうするかを先に決めます。
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決める役は1人、手を動かす役は分けられる
一人っ子の介護で自分1人が持つのは「決める役」です。食事・入浴・掃除・通院の送り迎えのような「手を動かす役」まで、全部を自分で持つ必要はありません。
介護の仕事を分けてみると、次の2つに分かれます。
- 決める役:どこに相談するか、どのサービスを使うか、お金をどこから出すか、在宅か施設か、を決める
- 手を動かす役:日々の食事・入浴・排せつの介助、家事、通院の付き添い、見守り
兄弟がいる家では、この2つを兄弟で分けようとして話がまとまらなくなることがあります。一人っ子の家は、決める人が最初から1人に決まっています。迷う相手がいない分、決める役に集中すれば、手を動かす役は介護保険のサービス・ケアマネジャー・介護事業者に任せる形で組み立てられます。一人っ子の家では、決める人を兄弟の間で調整する手間がありません。
- 相談先・サービス・お金の出どころを決める
- 在宅か施設かを決める
- 日々の介助・家事・送り迎え
- 見守り・通院の付き添い
たとえば、母が転んで退院してきた場面で、毎週末に実家へ通って家事と入浴を手伝うことを最初の対応にすると、一人っ子は自分の生活が回らなくなるおそれがあります。同じ場面で、先に地域包括支援センターとケアマネジャーにつなぎ、平日の入浴と家事をサービスに任せる形を決めておけば、自分の仕事は「週末に様子を見て、合わないところを直す」に変わります。手を動かす量は同じでも、誰が動くかを先に決めておくことが、続けるための土台になると編集部は考えています。
手を動かす役を任せても、決める役は自分に残ります。サービスの様子を週末に見て、合わないところをケアマネジャーに伝えるのも決める役の仕事です。迷ったら、紙に「やること」を全部書き出し、1つずつ「自分が決めることか、誰かが手を動かすことか」に印を付けてから考えてください。印を付け終えたら、手を動かす側の項目を持って地域包括支援センターかケアマネジャーに相談します。
一人っ子の介護の役割表
手を動かす役は、任せる先がおおむね決まっています。自分が持つのは、表の左の列のうち「決める」と書いた行です。
役割を表にしておくと、一人っ子が倒れたときに「誰も代わりがいない」状態を避けやすくなる、と編集部は考えています。自分にしかできないことを小さくしておけば、仕事が立て込んだ週や自分が体調を崩した週でも、親の暮らしが止まりません。
| 役割 | 一人っ子が持つか | 任せる先 |
|---|---|---|
| 最初の相談 | 決める(電話は自分) | 地域包括支援センター |
| ケアプラン作り | 決める(希望を伝える) | ケアマネジャー |
| 日々の介助・家事 | 任せる | 訪問介護・デイサービスなどの事業者 |
| 緊急時の連絡を受ける | 自分+代わりの1人 | 配偶者・親戚・近所の人 |
| お金の管理 | 決める(親と一緒に) | 判断が難しくなったら任意後見などの制度 |
| 見守り | 任せる | サービス・近所・機器 |
この表で一人っ子が自分で持つ行は、相談・ケアプラン・お金の3つと、緊急時の連絡です。緊急時の連絡だけは「自分+代わりの1人」にしてください。仕事中や出張中に電話に出られないときの受け手が1人いるだけで、ケアマネジャーや事業者が連絡をつけられる先が増えます。代わりの1人は、配偶者・親戚・親の近所に住む知人などが考えられますが、頼むのは「連絡を受けて自分に伝える」ところまでにして、手を動かすことまでは頼まないほうが、相手も引き受けやすくなります。
たとえば、配偶者がいる人の場合、配偶者に頼むかどうかは夫婦で決めることです。配偶者を「手を動かす役」に入れると、手を動かす負担が配偶者に移ります。配偶者には緊急時の連絡の受け手と、決めるときの相談相手を頼み、手を動かす役はサービスに渡す、という分け方もあります。独身の人の場合は、緊急時の受け手を親戚か親の近所の人に頼み、決めるときの相談相手はケアマネジャーや地域包括支援センターの担当者にする、という形で組めます。
表は一度作って終わりではありません。親の状態が変わったら、任せる先の行を見直してください。
元気なうちに聞いておく4つのこと

親が元気なうちに聞いておきたいのは、親の希望・お金の場所・かかりつけ・連絡先の4つです。介護が始まってからでは、聞く時間も、親が答えられる状態も残っていないことがあります。
4つに絞ったのは、介護が始まった直後の手配で、この4つが最初に要ると編集部が整理しているからです。兄弟がいれば「誰かが知っているかもしれない」と分担できますが、一人っ子の場合は自分が知らなければ誰も知りません。
- 親の希望:介護が必要になったら、家で暮らしたいか、施設も考えるか。誰に手伝ってほしいか
- お金の場所:年金の振込先、通帳と印鑑のある場所、保険の契約、借入があるか
- かかりつけ:通っている医療機関、飲んでいる薬の一覧がどこにあるか
- 連絡先:親の友人・近所・親戚のうち、何かあったら知らせてほしい人
切り出し方は、親の話として聞くより、自分の話として始めるほうが通りやすくなります。「自分が急に入院したら親にどう知らせればいいか考えていて」と自分のことから話すと、親も「では自分の場合は」と話しやすくなります。帰省のたびに1つずつ聞く、という進め方でもかまいません。
たとえば、お金の場所を聞こうとして「いくらあるの」と金額から入ると、親は身構えます。「通帳はどこにしまってある? 何かあったとき、場所だけ知っておきたい」と場所から聞けば、金額を聞かなくても、いざというときに確認できる状態は作れます。金額は、介護が始まって費用を組み立てる段階で、親と一緒に見れば足ります。
聞いた内容は、紙1枚にまとめて自分と親の両方が持っておいてください。親が答えたくないことは無理に聞き出さず、「話したくなったら教えて」と言って次に進むほうが、その後の話し合いが続きます。
親の物忘れが気になり始めている場合は、お金の守り方を先に考える必要があります。
片親に介護が始まったら
片親に介護が必要になったら、最初の一歩は、家族だけで地域包括支援センターに相談することです。
地域包括支援センターは、介護保険法で市町村が設置できると定められた施設で、高齢者の心身の状況や暮らしの実態の把握、必要な情報の提供、関係機関との連絡調整といった総合的な相談を受けています(介護保険法115条の46・115条の45第2項1号)。一人っ子にとっては、兄弟の代わりに最初の相談相手になってくれる窓口です。センターの名称と担当区域は自治体によって違います。※お住まいの市区町村で確認してください。
出典:介護保険法115条の46(e-Gov法令API)/介護保険法115条の45(e-Gov法令API)
相談したあとは、要介護認定の申請、ケアマネジャーとの契約、サービスの開始と進みます。認定の結果が出るまでの期限は介護保険法27条11項にあり、特別な理由があれば延期の知らせが届く仕組みです。結果がいつごろ出そうかは、申請の窓口で目安を聞いておくと、自分の仕事の予定を組みやすくなります。
一人っ子がこの段階で見落としやすいのは、介護が始まっていない側の親です。母に介護が始まると、父は母を支える側に回ります。父の暮らしや体調まで目が届かないうちに、父のほうも疲れて動けなくなる、という流れを防ぐ手立ての一つは、最初の相談のときから「もう片方の親の暮らし」も一緒に伝えておくことです。
たとえば、相談の電話では「母が退院してきて一人で歩くのが難しい。父と二人暮らしで、父も年齢的に家事を全部は担えない。自分は遠方で平日は動けない」と、両親と自分の3人分の状況をまとめて伝えます。こう伝えておけば、母だけでなく父の負担も含めてサービスの組み方を相談できます。電話の前に、両親それぞれの困っていること、自分が動ける曜日、緊急時の連絡先を紙に書いておくと、伝え漏れを減らせます。
迷ったときの順番は、センターに電話する、認定を申請する、ケアマネジャーに両親の状況を伝える、の3つです。この段階で自分が手を動かす量を増やしすぎないことを、編集部は後の段階まで続けるための目安にしています。
父が母を介護しているとき
父が母を介護している家に一人っ子が先に入れる手当ては、「父が倒れたときに母を誰が見るか」を決めておくことです。いまは回っていても、介護している側の親が動けなくなった瞬間に、二人分の介護が一度に一人っ子に来ます。
介護している親が子に頼ろうとしない家もあります。一人っ子の側も、親が回しているうちは口を出しにくいことがあります。けれども、介護している親の代わりがいない状態は、その親が動けなくなったときに一人っ子が全部を代わりに担う形になりやすい状態です。先に決めておくと、その場面での選択肢が増えます。
- 介護している父が動けなくなったとき、母の世話を一時的に誰に頼むかをケアマネジャーと決めておく
- 父の通院・健康診断の予定を、自分も知っておく
- 父自身が相談できる場として、地域包括支援センターを父にも紹介しておく
- 父の負担が大きい時間帯(入浴・夜間など)から、サービスに置き換えられないか相談する
仕事の休みの日数にも関係します。介護休暇の日数は、要介護状態の家族が何人いるかで決まります(育児・介護休業法16条の5第1項)。母だけが要介護状態で父は介護する側なら年5日、父も要介護状態になれば年10日です。要介護状態が何を指すかは、下の「両親とも介護になったら」で触れます。
たとえば、父が「母のことは自分で見る」と言ってサービスを嫌がる場合、父のためではなく母のためのサービスとして話す方法があります。「母が週に何回か外に出る機会があると、父も自分の通院に行ける」というのは、父の役割を否定しない言い方の例です。父が受け入れない場合でも、ケアマネジャーに状況を伝えておくことはできます。そのときは、父が動けなくなったら誰に連絡するか、母の世話を一時的にどこに頼めるかを一緒に確認しておいてください。
この段階で一人っ子がやることは、自分が介護を代わることではなく、代わりの手を先に用意しておくことです。
両親とも介護になったら
両親とも介護が必要になったら、親ごとにケアマネジャーとサービスを確認し、二人分の時間割をそろえるところから始めます。
両親が同じ家で暮らしていても、介護の必要な度合いや使うサービスは親ごとに違います。ケアプランも、認定も、親一人ひとりに対して作られます。一人っ子が両親のサービスを別々に管理しようとすると、曜日や時間が重なったり、片方だけ手薄な日ができたりします。二人分を1枚の時間割に並べると、どこに穴があるかが見えるようになります。
- 1親ごとにケアマネを確認同じ人か別の人か
- 2サービスの時間割をそろえる二人分を1枚に
- 3休みの制度を使う両親とも要介護状態なら介護休暇は年10日・介護休業は親ごとに
- 4住まいを一緒に考える在宅か、二人で入れる施設か
仕事の休みも、両親とも介護になると使える日数が変わります。介護休暇は、要介護状態の対象家族が2人以上なら年10日です(両親とも要介護状態のとき)。要介護状態とは、けがや病気、障害で2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態で、要介護認定を受けていることは条件ではありません。介護休業は、対象家族1人について3回まで・通算93日までで、この制限は対象家族ごとに数えます(育児・介護休業法11条2項)。父と母のそれぞれについて、3回・93日を数えられます。
出典:育児・介護休業法11条(e-Gov法令API)/厚生労働省 介護休業制度特設サイト「介護休業」/ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」
たとえば、母が先に介護になり、母のあとに父も介護になった場合、母のために使った介護休業の回数や日数は、父の分には影響しません。母のときは体制づくりに1回、父のときも体制づくりに1回、と親ごとに使えます。介護休暇の年10日は、要介護状態の対象家族が2人以上のときの1年度の限度日数です(育児・介護休業法16条の5第1項)。
次にやることは、両親のケアマネジャーが別の人なら、互いの連絡先を伝えて、時間割を突き合わせられないかケアマネジャーに頼むことです。住まいは、二人分を一緒に考えます。両親とも介護になったとき、在宅のまま二人分のサービスを組むか、二人で入れる施設を考えるかは、一人っ子が決める役のなかでも大きな判断です。在宅で回るかどうかの見方は、下の「一人で在宅を続けない条件」で整理しています。
お金は親の年金と貯蓄から組み立てる

介護のお金は、親の年金や貯蓄から払う前提で組み立て、足りない分をどうするかを決める、という順番で考えるのが編集部の整理です。最初から子の収入で払う前提にすると、一人っ子は自分の家計や老後の備えを圧迫するおそれがあります。
これは法律で決まっている順番ではありません。民法は、親子のような直系血族や兄弟姉妹の間で互いに扶養をする義務があると定めていて(民法877条1項)、扶養の程度や方法は当事者の協議で決め、協議が調わないときは、扶養を受ける側の必要や扶養する側の資力などの事情を考えて家庭裁判所が定めることになっています(民法879条)。条文が定めているのは扶養の義務と決め方で、介護費用を誰がいくら出すかまでは書かれていません。だからこそ、親のお金でどこまで払えるかを先に見ることが、一人っ子が自分の生活を守りながら決めるための出発点になります。
出典:民法877条(e-Gov法令API)/民法879条(e-Gov法令API)
組み立てる順番は、次のとおりです。
- 親の収入を知る:年金の振込額と振込先
- 親の貯蓄を知る:通帳・保険の場所と、使えるお金のおおよそ
- 介護にかかるお金の見込みと並べる
- 足りない分を、親の資産のどこから出すか、子が出すなら毎月いくらまでかを決める
一人っ子が気をつけたいのは、親のお金と自分のお金を混ぜないことです。立て替えたら日付と金額を控え、親の通帳から出したお金も何に使ったかを書き残しておいてください。親の判断が難しくなったときや、相続のときに、記録があると、確認の手間を減らせます。
たとえば、子が毎月の不足分を出すと決める場合も、「出せる上限」を先に決めておくと、自分の家計が崩れません。上限を超えそうなときは、サービスの組み方を見直すか、住まいの選び方を変えるか、という判断に進みます。上限を決めずに出し始めると、いつの間にか自分の貯蓄が減っていた、ということになりかねません。上限は、毎月の自分の家計の残りから決め、見直す時期(親の状態が変わったときなど)も一緒に決めておいてください。
介護費用の見込みの出し方は、別の記事で扱っています。
親が判断できなくなる前のお金の段取り
親が自分でお金のことを決められるうちに、判断が難しくなったときに誰がお金を管理するかを決めておくと、一人っ子の負担は大きく変わります。その手段の一つが任意後見契約です。
任意後見契約は、親(委任者)が、判断能力が不十分になったときの生活、療養看護、財産の管理に関する事務を、自分で選んだ人(受任者)に任せる契約です(任意後見契約に関する法律2条1号)。契約は、法務省令で定める様式の公正証書で結ばなければなりません(同法3条)。
気をつけたいのは、契約した日から後見が始まるわけではないことです。効力が生じるのは、任意後見契約が登記されている場合に、親の判断能力が不十分な状況になり、請求を受けた家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時からです(同法2条1号・4条1項。本人が成年被後見人等でその継続が特に必要な場合などは選任されないことがあります)。監督人の選任は、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者が請求でき、本人以外が請求するときは本人の同意が必要です(本人が意思を表示できないときは除きます。同法4条)。
出典:任意後見契約に関する法律2条(e-Gov法令API)/同法3条(e-Gov法令API)/同法4条(e-Gov法令API)
一人っ子の場合、親の判断が難しくなったときに、お金をどう動かすかを相談する兄弟がいません。契約を結ぶのは親本人なので、親が内容を理解して自分で決められるうちに話し合う必要があります。
たとえば、両親のどちらかに物忘れが出始めた段階で「お金のことを今後どうしたいか」を聞き、任意後見を使うか、家族信託のような別の仕組みを考えるかを親と話し合う、という順番が取れます。どの仕組みが合うかは、親の財産の中身や、親が何を望むかで変わります。話し合いでは、両親それぞれについて「誰にお金の管理を任せたいか」「何に使ってほしいか」を聞き、親の言葉のまま書き留めておいてください。
家族信託の仕組みと、任意後見との違いは別の記事で整理しています。
仕事と遠距離をどう回すか
仕事は、辞める前に休みの制度と会社の措置を組み合わせて回します。遠距離の場合は、緊急時に誰が最初に駆けつけるかを先に決めておきます。
仕事の側では、数日で済む用事は介護休暇(要介護状態の対象家族が1人なら年5日、両親とも要介護状態なら年10日)、体制を作る節目は介護休業(対象家族ごとに3回・通算93日まで)が使えます。法律上、事業主は申出を拒めません(労使協定で対象外とされた労働者などの例外があります。育児・介護休業法12条1項・16条の6第1項)。休業を取らずに働きながら介護する人のために、事業主は連続する3年以上の期間で所定労働時間の短縮その他の措置を講じることになっています(同法23条3項。措置の種類は会社が選びます。労使協定で、雇用期間が1年に満たない労働者などが対象外とされる場合があります)。
出典:育児・介護休業法12条(e-Gov法令API)/同法16条の6(e-Gov法令API)/同法23条(e-Gov法令API)
申出の例外の中身と、介護休業をいつ取るかは、別の記事で節目ごとに整理しています。
遠距離の場合、一人っ子は「連絡を受けても、すぐには行けない」状態が前提になります。役割表の「緊急時の連絡を受ける」行で決めた代わりの1人と、ケアマネジャー・事業者の連絡先を、自分と代わりの1人の両方が持っておいてください。
たとえば、親が夜に転んで救急搬送された連絡が来た場合、その夜に動けるのは近くにいる人です。代わりの1人に病院へ行ってもらい、自分は翌日に移動しながら、ケアマネジャーや職場と連絡を取る、という分担を先に決めておけば、連絡が来た瞬間に何をするか迷いません。
遠距離で何かあったときの動き方は、別の記事にまとめています。
仕事を辞めるかどうかを考え始めたら、辞める前に「休みの制度・会社の措置・サービスの組み直し」の3つで回らないかを確かめてください。
一人で在宅を続けない条件

在宅で粘れるのは、サービスで平日の日中が回り、自分が手を動かす量が仕事と生活を壊さない範囲に収まっているときです。そうでなくなったら、施設を考える時期です。
編集部が在宅か施設かを条件で考えるようにすすめているのは、一人っ子の場合、在宅を続けるかどうかを「自分がどこまで頑張れるか」で決めてしまうおそれがあるからです。頑張れるうちは在宅、限界が来たら施設、という決め方をすると、自分が倒れたときに親の暮らしも同時に止まります。条件を先に書き出しておけば、限界が来る前に判断できます。
| 在宅で粘れる条件 | 施設を考える条件 | |
|---|---|---|
| サービス | 平日の日中が回っている | 夜間や早朝の介助が毎日要る |
| 自分の手 | 週末の様子見と手直しで足りる | 毎日の介助を自分が担っている |
| 緊急時 | 代わりの1人とケアマネに連絡がつく | 駆けつける人がいない |
| 両親 | 片方が元気で、もう片方を支えられる | 両親とも介護が要る |
| 自分の体 | 仕事と生活が続いている | 自分が疲れて倒れそう |
たとえば、両親とも介護になったものの、片方はデイサービスに通え、もう片方も訪問介護で日中が回っている場合は、在宅を続けられます。反対に、片方に夜間の介助が毎晩必要になり、もう片方がそれを担えない場合は、二人分の夜を在宅で回すのは一人っ子には難しくなります。この場合は、二人で入れる施設や、片方だけ施設に移る選び方を考える時期です。
施設を考えるのも、決める役の仕事の一つです。表の右の列に当てはまる行が増えてきたら、ケアマネジャーにその行を見せて、在宅のまま組み直せるか、施設を探し始めるかを相談してください。在宅のサービスの組み方を見直してから判断したい場合は、組み合わせの記事が参考になります。
認定を受けたあとに、毎月いくら出ていくか、どこまで介護保険で賄えるかを知りたいときは、次の段階の記事に進んでください。
よくある質問
お金がない親の介護はどうすればいいですか?
まず親の年金の額と貯蓄を把握し、介護にかかるお金の見込みと並べてください。足りない分をどうするかは、サービスの組み方や住まいの選び方で変わります。地域包括支援センターやケアマネジャーに、親の収入の状況も伝えたうえで相談すると、組み方を一緒に考えてもらえます。
一人っ子の親の老後はどうしたらいいですか?
親が元気なうちに、親の希望・お金の場所・かかりつけ・連絡先の4つを聞いておくことから始めてください。お金のことを親が自分で決められるうちに、判断が難しくなったときに誰が管理するか(任意後見など)を話し合っておくと、後の負担が小さくなります。
親の介護を一人でするのはどうですか?
決める役を一人で持つことはできますが、手を動かす役まで一人で担うと、仕事と生活が続かなくなるおそれがあります。手を動かす役は介護保険のサービスや事業者に任せ、自分は相談・ケアプラン・お金・緊急時の連絡に絞ってください。
独身で相談できる相手がいません。どうすればいいですか?
決めるときの相談相手は、地域包括支援センターの担当者とケアマネジャーにできます。緊急時の連絡の受け手だけは、親戚や親の近所の人など、自分以外に1人決めておいてください。
配偶者に親の介護を頼んでいいですか?
頼むかどうかは夫婦で決めることです。手を動かす役を頼むと、その負担が配偶者に移ります。緊急時の連絡の受け手や、決めるときの相談相手を頼み、日々の介助はサービスに任せる分け方もあります。
親戚が口を出してきますが、手は貸してくれません。
一人っ子の場合、決める役は自分です。親戚の意見は聞いたうえで、ケアマネジャーと決めたケアプランを伝え、「この形で進める」と知らせれば足ります。手を貸してもらえるなら、緊急時の連絡の受け手を頼めないか聞いてみてください。
順番のおさらい
- 役の分け方:決める役は自分1人、手を動かす役はサービス・ケアマネジャー・事業者に任せる
- 役割表:自分が持つのは相談・ケアプラン・お金と、緊急時の連絡(代わりの1人を決める)
- 元気なうち:親の希望・お金の場所・かかりつけ・連絡先の4つを聞き、紙1枚にまとめる
- 片親に介護:家族だけで地域包括支援センターに相談し、認定とケアマネジャーへ。もう片方の親の暮らしも一緒に伝える
- 父が母を介護:父が倒れたときに母を誰が見るかを、ケアマネジャーと先に決める
- 両親とも介護:親ごとにケアマネとサービスを確認し、時間割を1枚にそろえる。介護休暇は年10日(両親とも要介護状態のとき)、介護休業は親ごとに3回・93日
- お金:親の年金と貯蓄から払う前提で組み、足りない分と子が出す上限を決める。親のお金と自分のお金を混ぜない
- 判断できなくなる前:任意後見は公正証書で結び、効力は登記された契約について家庭裁判所が監督人を選任してから
- 仕事と遠距離:辞める前に休みの制度・会社の措置・サービスの組み直しで回らないか確かめる
- 在宅を続けない条件:サービスで日中が回らない、毎日の介助を自分が担っている、駆けつける人がいない、のどれかが続いたら施設を考える
一人っ子の介護が重く感じられるのは、決めることと手を動かすことを、一人で全部引き受けようとするからです。決める役だけを自分の仕事にして、手を動かす役は最初から任せる前提で組めば、兄弟がいなくても介護は回ります。元気なうちに4つを聞き、片親に介護が始まったら家族だけで相談に行き、両親とも介護になったら親ごとに組み直す。その順番を知っておけば、急な電話が来ても、何から手を付けるかで迷わずに済みます。
地域包括支援センターの名称と担当区域は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

