高級老人ホームの費用と一般の有料との違い|入居金・月額の目安・選び方

日の差す和室
  • 高級老人ホームの相場は、入居金も月額もいくらくらいなのか
  • 普通の有料老人ホームと、何が違ってあんなに高いのか
  • 何千万円も払った入居金は、途中で出たり亡くなったりしたら戻ってくるのか
  • 「職員2:1」「手厚い介護」と書いてあるが、どう受け取ればいいのか
  • 介護が重くなっても、そのホームで暮らし続けられるのか
  • 親の預金と実家を売ったお金で、何年払い続けられるのか
  • お金が尽きたら、出ていかなければならないのか
  • 入居したら、空いた実家はどうすればいいのか

上記のような悩みに答えます。

高級老人ホームは、広い居室やホテルのような共用部、手厚い職員の配置をうたうホームを指して使われる言葉です。ところが、施設の紹介サイトや運営会社のページは、設備やサービスの魅力と施設の実例を中心に書くので、「高級」の中身を法令の言葉に置き直し、払ったお金がどう減ってどう戻るのか、親の資産が先に尽きたらどうなるのかを、払う側の目線で並べた説明は見つけにくいところです。そこで、一般の有料老人ホームとの違い・国の調査で見る費用・設備と職員体制という基本を押さえたうえで、前払金の償却と返還、介護が重くなったときの費用の変わり方、資産で何年払えるかの出し方まで、老人福祉法の条文と厚生労働省の指針・調査で確かめながら整理しました。

先に答え

「高級老人ホーム」は法律上の区分ではなく、介護付や住宅型の有料老人ホームのうち、居室が広い・職員が手厚い・前払金が大きいものを指す呼び名です。国の調査(2024年)では、介護付の月額費用の平均は261,510円で、30万円以上の階級が34.4%で最も多くなっています。選ぶときは費用の高さより、前払金の償却と3か月以内の返還、職員体制の表示、介護が重くなったときとお金が尽きたときの扱いを、重要事項説明書で先に確かめてください。

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2026年10月時点の制度で確かめています

目次

高級は呼び名で、区分ではない

日の差す和室

「高級老人ホーム」という種類の施設は、法律にも国の資料にもありません。実際に「高級」と呼ばれているホームかどうかに関わらず、法令の上での扱いは、有料老人ホーム(介護付・住宅型・健康型の類型)か、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)かで決まります。

有料老人ホームは、老人を入居させて、介護や食事の提供などの日常生活上必要な便宜を供与する施設で、設置する人は都道府県知事に届け出ることになっています(老人福祉法29条1項)。厚生労働省の指針は、有料老人ホームを介護付・住宅型・健康型の類型に分け、広告やパンフレットに類型を表示させています。「介護付」と表示できるのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームだけです。サ高住は、高齢者向けの賃貸住宅などに見守りと生活相談のサービスを付けて都道府県知事の登録を受けた住まいで、登録は5年ごとに更新されます。

呼び名の裏にある区分 介護の受け方 根拠
介護付有料老人ホーム ホームが特定施設入居者生活介護として介護を提供 老人福祉法29条・厚生労働省の指針
住宅型有料老人ホーム 外の訪問介護などを自分で選んで使う 厚生労働省の指針
健康型有料老人ホーム 介護が必要になったら契約を解除して退去(指針の類型の説明) 厚生労働省の指針
サ高住 外の居宅サービスを使う形が基本(特定施設の指定を受けたものもある) 高齢者の居住の安定確保に関する法律5条

出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)/高齢者の居住の安定確保に関する法律5条(e-Gov法令API)

区分が大事なのは、介護が必要になったときの費用の払い方と、住み続けられるかの条件が、「高級」かどうかではなく、この区分と契約で決まるからです。同じように豪華な建物でも、介護付(一般型)なら介護はホームの職員が担い(外部サービス利用型は委託先の事業所が提供します)、住宅型なら外の事業所と別に契約します。健康型は、指針の説明では介護が必要になったら契約を解除して退去する類型です。個々のホームの契約の条件はそれぞれ違うので、類型の名前だけで判断せず契約書で確かめます。

たとえば、見学の印象がよく似た2つのホームがあり、片方の重要事項説明書の類型の欄が「介護付」、もう片方が「住宅型」だったとします。月額の表示が近くても、介護保険の自己負担の払い方は、介護付では要介護度ごとの定額、住宅型では使ったサービスの分と違い、介護が重くなったときの総額の動き方が変わってきます。親がまだ自立していて当分は介護が要らない間は、住宅型は介護の自己負担が小さく済む場面もあります。

パンフレットの「高級」「プレミアム」という言葉はいったん脇に置いて、まず重要事項説明書の類型の欄を見てください。そこに書かれた区分が、この先の費用と暮らし方の読み方を決めます。

介護付き有料老人ホームの費用と入居の条件

住宅型有料老人ホームの費用と、介護の受け方

国の調査で見る月額と前払金

「高級老人ホームの相場」を示した国の数字はありません。手がかりになるのは、厚生労働省の検討会に出された2024年の調査で、ホームの区分ごとに月額の平均と分布、前払金の取り方が出ています。これを見ると、介護付の中でも月額の幅が広く、前払金を取らないホームのほうが多いことが分かります。

調査の月額は「総額月額費用」で、家賃・共益費・基本サービス費・食費・光熱水費を足したものです。介護保険の自己負担と医療の自己負担は入っていません。高い・安いを比べるときは、この中身をそろえないと、介護費込みの表示と込みでない表示を並べてしまいます。

区分(2024年の調査) 総額月額費用の平均 最も多い階級
介護付(特定施設) 261,510円 30万円以上(34.4%)
住宅型 118,020円 10万円未満(33.4%)
サ高住(特定施設でないもの) 153,952円 12〜14万円未満(24.3%)

出典:有料老人ホームにおけるあり方検討会(第6回)参考資料(厚生労働省・PDF)

前払金(いわゆる入居金)の取り方も同じ調査に出ています。特定施設で前払金を徴収している施設は31.0%で、前払金の実額の分布は、0円が52.9%、100万円未満が3.4%、100〜500万円未満が11.4%、500〜1,000万円未満が7.6%、1,000万円以上が8.7%、無回答が16.1%でした。0円を除き、上下5%を外した前払金の平均は7,965,207円、0円を含めた平均は2,039,743円です。住宅型で前払金を徴収している施設は7.0%、サ高住(特定施設でないもの)は3.4%でした。

家賃の払い方も選べるホームが多く、特定施設で「全額月払い」を選べる施設は80.2%でした(複数回答)。「全額前払い」を選べる施設は21.0%、「一部前払い+月払い」は27.5%です。前払いが必要なホームばかりではない、というのが国の調査から言えることです。

介護付の前払金はどう分かれているか
前払金0円

  • 52.9%
前払金1,000万円以上

  • 8.7%

1,000万円を超える前払金は、国の調査の分布では「1,000万円以上」の8.7%に含まれます。その上の金額の内訳は、国の調査には出ていません。ですから「高級なら入居金は◯千万円が相場」と言える根拠は無く、相場の数字を探すより、候補のホームの重要事項説明書で前払金の額と算定の基礎を見るほうが確かです。

参考までに、民間の調査では、施設で介護した人の月々の費用の平均は13.8万円でした(生命保険文化センター・2024年度)。こちらは特養や老健なども含めた施設全体の平均で、介護保険の自己負担も含みます。区分が違う数字なので、介護付の平均と並べて「高い・安い」を決める材料にはしないでください。

出典:生命保険に関する全国実態調査(生命保険文化センター)

たとえば、候補が月額の表示で国の平均を大きく上回る介護付のホームだった場合でも、30万円以上の階級は介護付の中で最も多い階級です。その金額が高すぎるかどうかは平均との比較では決まらず、親の資産で何年払えるか(下の「資産で何年払えるか」の項)で決まります。

編集部の整理では、平均は「どの区分で探すか」の物差しで、個別のホームの値段の良し悪しを決める物差しではありません。月額を比べるときは、介護の自己負担が込みか別かを最初にそろえてください。

老人ホームの費用と、種類ごとの払い方

高い理由を中身に分ける

高級と呼ばれるホームの費用が高い理由は、居室の広さ、職員の配置、共用設備とサービス、前払金の4つに分けられます。この4つのどれにお金を払っているのかを分けて見ると、親にとって要るものと要らないものが見えてきます。

居室について、厚生労働省の指針は、有料老人ホームの一般居室や介護居室は個室とし、入居者1人当たりの床面積を13平方メートル以上とする基準を示しています。広い居室をうたうホームでは、居室の広さが家賃などにどう反映されているかを、重要事項説明書の月額の内訳で確かめます。ただし、指針は都道府県への技術的助言で、自治体の条例や要綱で上乗せがあることもあります。

職員の配置は、表示の意味を知らないと読み違えます。介護付の人員基準は、要介護者である利用者3人またはその端数を増すごとに、看護職員と介護職員を合わせて常勤換算で1以上です(一定の条件を満たすと緩和される特例があります)。これが最低の線で、指針はこれより手厚い配置を表示する区分を決めています。

表示 意味
3:1以上 基準どおり(要介護者3人に職員1人以上)
2.5:1以上 要介護者5人に職員2人以上
2:1以上 要介護者2人に職員1人以上
1.5:1以上 要介護者3人に職員2人以上

出典:有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)/指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準175条(e-Gov法令API)

この表示は、指針では「現在及び将来にわたって提供しようと想定する水準」で、年度ごとの平均で見るものとされています。2.5:1などを表示するホームは、年度ごとに職員の割合を算定して表示と実態のずれを確かめ、入居者に算定の結果と方法を説明することになっています。つまり、ある夜に何人いるかを約束した数字ではありません。

手厚い職員体制の分の費用を、介護保険とは別にホームが受け取れるのは、国の通知の条件を満たす場合に限られます。月額の内訳に「上乗せ介護費」などの項目があれば、それが何の対価で、どの条件で受け取っているのかを聞いてください。

出典:有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)

たとえば、要介護1で夜は1人で眠れている母なら、2:1の配置より、通院の付き添いや食事の形のほうが暮らしに効くことがあります。一方、夜中に何度も呼ぶ父なら、表示の比率に加えて、夜間に何人の職員が付くかを数字で聞く意味が大きくなります。同じ「手厚い」でも、親の状態によって払う価値が変わります。

迷ったら、4つの中身のうち、親の今の状態と、介護が重くなったときに効くものに丸を付けてください。丸の付かない項目にどれだけ払っているかが分かると、同じ予算で一般の介護付を選ぶか、高級をうたうホームを選ぶかの判断がつきやすくなります。

有料老人ホームの費用と入居一時金の考え方

入居金は償却と返還で見る

テーブルの上の書類

入居金は、払ったら終わりのお金ではなく、家賃などを前もってまとめて払う前払金です。見るべきは金額の大きさより、何年分としてどう減っていくか(償却)と、途中で契約が終わったときにいくら戻るか(返還)です。

老人福祉法は、有料老人ホームが家賃や介護などの対価のほかに権利金などの金品を受け取ることを禁じています(29条8項)。前払金を受け取るホームは、算定の基礎を書面で示し、返還に備えた保全措置を講じなければなりません(同条9項)。そのうえで、入居後3か月が過ぎるまでに契約が解除されたり、入居者の死亡で契約が終わったりしたときは、前払金を返す契約を結ぶ義務があります(同条10項・施行規則21条)。

返す額は、家賃などの月額を30で割った額に、入居した日から契約が終わった日までの日数を掛けた額を、前払金から差し引く方法で計算します(施行規則21条2項1号)。この期間は日数で言い換えて説明されることもありますが、条文の言葉は「三月」です。3か月を過ぎても、想定居住期間が過ぎるまでに契約が終わった場合は、日割りで出した家賃などの額を差し引いて返す決まりがあります。

出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則21条(e-Gov法令API)

厚生労働省の指針は、前払金の償却年数を、平均的な余命などから想定される「想定居住期間」とし、終身の契約では、1か月分の家賃などに想定居住期間の月数を掛けた額に、想定居住期間を超えて契約が続く場合に備えて受け取る額を足す形を基本にしています。この「超えた場合に備えて受け取る額」が、いわゆる初期償却です。重要事項説明書の前払金の欄には、次の6つを書く様式になっています。

  • 想定居住期間(償却年月数)
  • 償却の開始日
  • 想定居住期間を超えて契約が続く場合に備えて受け取る額(初期償却額)
  • 初期償却率
  • 入居後3か月以内と、3か月を超えた契約終了それぞれの返還金の算定方法
  • 前払金の保全先

出典:有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)

指針は、解約の予告期間を設けて、返還の対象になる期間を事実上短くしてはいけないとしています。契約書の解約の条項に長い予告期間が書かれていたら、前払金の返還の扱いと合わせて聞いてください。保全措置も、具体的な方法は国の告示で決まっていて、どこで保全しているかは重要事項説明書の「保全先」の欄で確かめます。運営会社が経営に行き詰まったときに前払金がどう扱われるかは、この保全先の欄が手がかりになります。

前払金の欄を読む順番
  1. 1想定居住期間を見る何年分としてまとめて払うのか
  2. 2初期償却を見る想定居住期間を超えて契約が続く場合に備えて受け取る額と率
  3. 3返還の算定方法を見る3か月以内と3か月を超えた場合の2通り
  4. 4保全先を見る返還に備えて誰が保全しているか

たとえば、想定居住期間が同じ2つのホームで、片方は初期償却の率が高く、もう片方は初期償却が無い場合、入居して1年で亡くなったときに戻る額は大きく違ってきます。逆に、想定居住期間を超えて長く暮らした場合に、前払金の償却が終わったあとの月額の払い方がどうなるかは、契約で決まります。どちらが得かは、親がそこでどのくらい暮らすかで決まり、契約の前には分かりません。ですから、返還金の計算例を作ってもらい、入居して早い時期・数年後・想定居住期間の終わりの3つの時点で戻る額を書面で出してもらうと比べやすくなります。

前払金が大きいホームでも、「入居金は戻らない」と決めつけて比べるのをやめないでください。前払金の欄の6つを並べ、返還金の計算例を書面でもらってから、月払いの方式と比べてください。

介護が重くなったとき

介護が重くなったときにかかる費用と住み続けられるかは、介護付か住宅型かで仕組みが違います。高級をうたうホームでも、この違いはそのまま当てはまります。

介護付のホームは、ホーム自身が特定施設入居者生活介護として介護を提供し、介護保険の費用は要介護度ごとの1日の定額の単位数で決まります。そのため、介護付に入っている間は、訪問介護やデイサービスなどを介護保険で別に付けることはできません。住宅型のホームは特定施設ではないので、ホームの居室を「居宅」として、外の事業所の訪問介護などを自分で選んで使います。こちらは区分支給限度基準額の範囲で、使った分の自己負担がかかります。

要介護度 介護付(一般型)の基本の単位数(1日) 住宅型などで使う区分支給限度基準額(1か月)
要介護1 542単位 16,765単位
要介護2 609単位 19,705単位
要介護3 679単位 27,048単位
要介護4 744単位 30,938単位
要介護5 813単位 36,217単位

出典:介護報酬の算定構造(厚生労働省・PDF)/区分支給限度基準額(介護サービス情報公表システム・厚生労働省)/介護保険法43条(e-Gov法令API)

介護付の欄は加算を含まない基本の部分で、ホームごとに体制の加算が乗ります。1単位の単価は地域で違い、特定施設入居者生活介護は1単位10円から10.90円の間です。負担割合は1割が原則で、所得によって2割か3割になります。

計算例

たとえば、要介護3で1割負担の母が介護付のホームに入ると、基本の部分は1日679単位で、30日なら20,370単位です。1単位10円の地域なら約203,700円で、1割負担なら月に約20,370円になります。これが月額の表示とは別にかかるのか、表示に含まれているのかを、ホームに確かめてください。同じ母が住宅型にいて外のサービスを使う場合は、要介護3の限度額27,048単位(1単位10円の地域で約270,480円)の範囲で、使った分の1割を払います。

出典:地域区分(厚生労働省・PDF)/介護保険制度の概要(厚生労働省・PDF)

住宅型は、介護が軽いうちは介護の費用が小さく済む一方で、重くなって使うサービスが増えると、限度額の範囲内でも自己負担が増え、限度額を超えた分は保険が効きません。介護付は、要介護度が上がると1日の単位数が上がりますが、上がり方は上の表の基本の部分で確かめられます(加算は別です)。介護付の自己負担は高額介護サービス費の対象になります。家賃・食費・管理費などは介護保険の給付の対象外で、負担限度額認定による食費・居住費の軽減も介護付のホームにはありません。

住み続けられるかは、費用とは別に契約で決まります。指針の説明では、介護付は介護が必要になってもホームの介護を受けながら居室で暮らし続けられる類型ですが、どこまで対応するか、看取りまで受けるか、どんなときに退去を求めるかはホームごとで、契約書の契約解除の条項に書かれます。住宅型でも、医療の必要が増えたときに外のサービスで支えきれるかはホームと地域の事業所次第です。

迷ったら、見学のときに「要介護4・5になったら、この居室のままですか、移りますか、退去ですか」と3択で聞いてください。答えを重要事項説明書と契約書のどの条項で確かめられるかも、その場で教えてもらいます。

医療付き老人ホームの選び方と、医療ケアの確かめ方

資産で何年払えるかの出し方

親の資産で払えるかどうかは、平均の金額ではなく、親自身の数字を式に入れて出します。式は単純で、前払金を引いた残りの資産を、年間の支払い額で割るだけです。

月額の表示に入っていない費用を足すのを忘れると、年数が実際より長く出ます。介護の自己負担(介護付なら定額の1割〜3割、住宅型なら使った分)、医療費、おむつや理美容などの日用品、通院の付き添いの費用などがこれに当たります。入ってくるお金の側では、年金を差し引けます。

払い続けられる年数の出し方
(使える資産 − 前払金)÷((月額+月額に入っていない費用 − 年金の月額)×12)=払い続けられる年数

式に入れる数字は、すべて親の預金通帳、年金の通知、ホームの重要事項説明書と見積もりから取ってください。編集部がここで例の金額を置かないのは、ホームの月額にも親の年金にも幅がありすぎて、例の数字がかえって判断を狂わせるからです。

出た年数は、前払金の想定居住期間と並べて見ます。払い続けられる年数が想定居住期間より短いなら、前払金を払って入っても、途中で月々の支払いが続かなくなるおそれがあります。その場合は、前払金の少ない方式や、月額の低いホームを候補に足して比べ直します。

  • 預金・有価証券など、すぐに使える資産
  • 実家を売る・貸す場合に見込める額(決まっていなければ入れない)
  • 年金の手取りの月額
  • ホームの月額と、月額に入っていない費用の見積もり
  • 介護の自己負担の見込み(負担割合と要介護度から)

たとえば、実家を売ったお金を前提に入居を決めると、売るまでに時間がかかったり、思った額で売れなかったりしたときに、最初の数か月から資金が詰まります。実家の売却を当てにするなら、売れる前の期間を預金だけで払えるかを別に確かめておきます。反対に、預金だけで想定居住期間を十分に上回る年数が出るなら、実家は急いで売らずに、入居のあとで落ち着いて考えることもできます。

年数の計算に自信がないときは、式に入れた数字の一覧を持って、親の口座を管理している家族と一緒に、ホームの入居相談で「この条件で何年暮らせる計算になるか」を聞いてください。税金や資産の組み替えまで踏み込むなら、税理士やファイナンシャルプランナーの領分です。

お金が尽きたときと契約前の書類

お金が尽きたら出ていかなければならないかは、まず契約書の契約解除の条項と、ホームの対応で確かめます。ですから、入る前に「資産が尽きそうになったらどうなるか」をホームに聞き、書面のどこに書かれているかを確かめておいてください。

確かめる書面は、ホームが入居を希望する人に交付して説明する、入居契約の重要な事項を書いた文書(重要事項説明書)です。設置者は、この書面を交付して重要事項を開示しなければなりません(老人福祉法29条7項)。あわせて、設置者は介護の内容や運営状況などの有料老人ホーム情報を都道府県知事に報告し、知事はそれを公表することになっています(同条11項・12項)。介護付のホームのように介護サービス事業者でもあるところは、介護サービス情報も都道府県知事に報告し、公表されます(介護保険法115条の35)。

何を確かめるか どこで見るか
類型・職員体制の表示・前払金の欄 重要事項説明書
退去を求める条件・支払いが滞ったときの扱い 契約書の契約解除の条項
運営状況・介護の内容 都道府県が公表する有料老人ホーム情報
介護付の職員の数・サービスの内容 介護サービス情報公表システム

出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則20条の7(e-Gov法令API)/介護保険法115条の35(e-Gov法令API)

都道府県の公表の場所や見方は、都道府県ごとに確かめます。※お住まいの市区町村で確認してください。親の住む地域とホームのある地域が違うときは、ホームのある都道府県の公表を見ます。

有料老人ホームの制度は、2027年4月以降に変わる見込みです。契約の時期がそのころに近いなら、ホームに今の契約と制度が変わったあとの扱いを聞いておいてください。

たとえば、前払金を払って入った父の預金が、想定より早く減ってきた場面を考えます。契約書に「支払いが滞ったときは契約を解除できる」と書かれているだけなら、どのくらいの期間でどう進むのかを、入る前にホームに聞いておく必要があります。同じ父でも、ホームが月額の低い居室への移動や、系列の別の住まいへの住み替えを案内している場合は、その条件と費用を書面でもらっておくと、いざというときの選択肢が残ります。

尽きたときの答えをはっきり返せないホームは、それ自体が判断の材料です。聞いた答えと書面の条項を照らし合わせ、食い違いがあればもう一度聞いてください。

介護施設見学で何を見るか、契約前に確かめること

候補を並べて比べる

重要事項説明書の読み方が分かっても、比べる相手が1つしかなければ、その数字が親に合っているかは判断できません。高級をうたうホームを考えるときほど、一般の介護付や住宅型も含めて2〜3の候補を同じ表に並べてください。

並べる項目は、類型、職員体制の表示、居室の広さ、月額の内訳(介護の自己負担が込みか別か)、前払金の額と想定居住期間・初期償却・返還の算定方法、退去の条件の6つです。どのホームも重要事項説明書に書かれている項目なので、書面さえそろえば同じ物差しで比べられます。

比べる項目 候補A 候補B 候補C
類型(介護付・住宅型など)
職員体制の表示
居室の広さ
月額と、月額に入っていない費用
前払金・想定居住期間・初期償却
退去の条件・尽きたときの扱い

候補を集める段階では、パンフレットの写真や「高級」の言葉より、親が暮らす地域と、親の要介護度と医療の必要に合うかで絞ります。ホームの数は地域によって違うので、通える範囲を少し広げると候補が増えることもあります。

たとえば、都市部で高級をうたうホームを1つ見つけた家族が、同じ駅の周りで一般の介護付を2つ足して並べると、職員体制の表示は同じで、違いは居室の広さと共用設備だけ、と分かることがあります。その場合、親が居室で過ごす時間の長さと、共用設備を使えるだけの体力があるかで、差額を払う価値を判断できます。

表を埋めるのに必要なのは、候補ごとの重要事項説明書の写しです。資料を請求するときは、パンフレットと一緒に重要事項説明書をもらえるかを確かめてください。

在宅か施設か|在宅の限界が見え、施設を考え始めた人

※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

すでに候補のホームが2〜3か所あり、重要事項説明書も手元にそろっているなら、新しく資料を集める必要はありません。前払金の返還や職員体制の表示を見比べる物差しは決まったものの、親の予算と条件に合うホームが地域にいくつあるのか分からず、比べる相手がまだ手元にないときは、老人ホームの検索サイトで地域と予算を絞って資料をまとめて取り寄せると、同じ物差しで並べる候補を足せます。届いた資料では、月額の内訳と前払金の欄を先に見てください。

みんなの介護で、予算と条件に合うホームの資料を取り寄せる

高級ホームを選ばなくていい条件

高級をうたうホームを選ばなくても、親の暮らしが守れる場合があります。費用の差が何の差なのかを分けたうえで、次の条件がそろうなら、一般の介護付や住宅型、あるいは在宅で足ります。

高級のホームが上乗せしているのは、主に居室の広さと共用設備、手厚い職員体制の表示、前払金の方式です。介護保険の介護そのものは、介護付(一般型)なら基本の単位数の仕組みが共通で、住宅型なら外の事業所の介護を使う点で共通しています。加算や地域の単価、手厚い職員体制の上乗せ費用はホームごとに違うので、月額の内訳で確かめます。上乗せ分が親に効かないなら、払う理由が薄くなります。

  • 親が居室と食堂の往復で過ごし、広い共用設備を使う体力や関心がない
  • 夜間に呼ぶことが少なく、基準どおりの職員体制で困っていない
  • 前払金を払うと、想定居住期間まで払い続けられる年数が足りない
  • 在宅で、訪問介護やデイサービス、ショートステイの組み合わせが回っている

たとえば、要介護2の母が自宅で日中はデイサービスに通い、夜は1人で眠れていて、介護する娘の体と仕事にも続けられる見通しがあるなら、施設に入る必要そのものがまだありません。同じ母が要介護4になって夜中の介助が増えたら、一般の介護付で職員の夜間体制を確かめるほうが、高級をうたうホームの共用設備より暮らしに効く、という比べ方になります。

高い費用は、それ自体が介護の質を約束するものではありません。払う前に、上乗せ分の中身が親の今と、介護が重くなったあとに効くかを、1つずつ確かめてください。

自立型老人ホームの選び方と、介護が必要になったときの扱い

夫婦で入れる老人ホームの選び方と居室の確かめ方

介護付きマンションの仕組みと、有料老人ホームとの違い

年金だけで入れる老人ホームの探し方

入居したあとの実家

電卓とペン

親が高級をうたうホームに入ると、次に表に出てくるのは空いた実家です。前払金や月額の資金に実家を充てるつもりなら、入居の前後で実家の扱いが資金計画とつながります。

入居の直後に決めるのは、売るか貸すかではなく、誰がいつ家の様子を見に行くか、郵便をどこへ転送するか、固定資産税の通知を誰が受け取るかです。家を持ち続ける間は、空き家でも管理と税金の負担が続きます。実家の売却を資金計画に入れている場合は、上の「資産で何年払えるか」の項で書いたとおり、売れるまでの期間を預金で払えるかを先に確かめておきます。

たとえば、母が入居したあと実家に誰も住まなくなり、兄弟の間で売るか残すかの意見が分かれている場合、まず管理の担当と費用の分け方だけを決めておくと、話し合いを急がずに済みます。親の判断ができるうちに家の扱いの希望を聞いておくと、あとで意見が分かれたときの手がかりになります。

実家|親が施設に入った・実家が空いた人

次に来ることを先に知っておくと、入居のあとの実家の問題を慌てずに迎えられます。

よくある質問

高級老人ホームの相場はいくらですか?

国の資料に「高級老人ホーム」の区分は無く、相場の数字もありません。手がかりになるのは厚生労働省の検討会に出された2024年の調査で、介護付の月額費用の平均は261,510円、30万円以上の階級が34.4%で最も多くなっています。前払金は、0円を除き上下5%を外した平均が7,965,207円です。

入居金が数千万円の高級老人ホームはどこですか?

この記事では施設名を挙げません。2024年の国の調査では、介護付で前払金が1,000万円以上の施設は8.7%で、その上の金額の内訳は出ていません。候補のホームの前払金と返還の条件は、重要事項説明書と都道府県の公表で確かめてください。

入居金は、途中で退去したり亡くなったりしたら戻りますか?

入居後3か月が過ぎるまでに契約が解除されたり、入居者の死亡で終わったりしたときは、月額を30で割った額に入居日数を掛けた額を差し引いて、前払金を返す決まりです。3か月を過ぎても想定居住期間内なら、日割りの額を差し引いて返す決まりがあります。実際に戻る額は初期償却などの契約の中身で変わるので、重要事項説明書の前払金の欄で確かめます。

お金がなくても入れる高齢者施設はありますか?

前払金を取らないホームは多く、2024年の国の調査では介護付で前払金が0円の施設は52.9%、全額月払いを選べる施設は80.2%でした。住宅型の月額費用の平均は118,020円です。年金の範囲で探す方法は「年金だけで入れる老人ホーム」の記事で書いています。

高級老人ホームに入れるのはどんな人ですか?

入居の要件はホームごとに決まっていて、指針は「入居時自立」「入居時要介護」などの区分で表示させています。広告や重要事項説明書の入居時の要件の欄を見て、親の今の要介護度が当てはまるかを確かめてください。費用を払い続けられるかは、上の「資産で何年払えるか」の式で家族が先に出しておきます。

高級なら、介護が重くなっても最後まで住めますか?

費用の高さでは決まりません。介護付は介護が必要になってもホームの介護を受けながら暮らし続けられる類型ですが、看取りや退去の条件はホームごとで、契約書の契約解除の条項に書かれます。健康型は、指針の説明では介護が必要になったら契約を解除して退去する類型です。

順番のおさらい

  1. 区分:高級は呼び名で、法令上の扱いは有料老人ホームの類型かサ高住の区分で決まる
  2. 費用:2024年の国の調査では介護付の月額の平均は261,510円、前払金0円の施設が過半
  3. 高い理由:居室の広さ・職員体制の表示・共用設備・前払金の4つに分けて見る
  4. 入居金:想定居住期間・初期償却・3か月以内と以後の返還・保全先の6つの欄で読む
  5. 介護が重くなったとき:介護付は定額、住宅型は使った分で、住み続ける条件は契約で決まる
  6. 資産:前払金を引いた資産を、月額の外の費用まで入れた年間の支払いで割る
  7. お金が尽きたとき:契約解除の条項と都道府県の公表で、入る前に確かめる
  8. 比べる:一般の介護付や住宅型も含めて、同じ6項目の表に並べる
  9. 選ばなくていい条件:上乗せ分が親の暮らしに効かないなら一般のホームか在宅で足りる
  10. 入居したあと:実家の管理の担当を最初に決める

高級をうたうホームを前にすると、金額の大きさに気を取られて、どこにお金を払っているのかが見えにくくなります。先に重要事項説明書の類型と前払金の欄を開き、親の数字で何年払えるかを出してから、ほかの候補と同じ表に並べる。この順番で進めれば、高いか安いかではなく、親に合っているかどうかで選べます。

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この記事を書いた人

親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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