老人ホームの種類と違い、親の状態からの選び方|要介護度・予算・医療の必要度

住宅の外観
  • 老人ホームの種類が多すぎて、どれが何なのか分からない
  • 公的な施設と民間の施設は、何がどう違うのか知りたい
  • 親は要介護1なのに、特養には入れないと言われた
  • 認知症がある親を受け入れてくれるのはどこか
  • 特養と老健では、どちらがお金がかからないのか
  • 介護付きと住宅型の違いが、説明を読んでもつかめない
  • 入ったあとに介護が重くなったら、出て行くことになるのか
  • 施設に入らずに、このまま家で続ける道はないのか

上記のような悩みに答えます。

老人ホーム選びは、親の介護が重くなったときや退院を言われたときに、名前の似た選択肢をいくつも前にして始まる作業です。種類の一覧を見ても、親の今の状態からどの順番で候補を絞るのか、介護保険施設かどうかで費用の仕組みがどう分かれるのか、入居したあとに住み続ける書面をどう確かめるのかは、一覧だけでは分かりません。そこで、種類・入居の条件・費用の決まり方という基本を押さえたうえで、候補を絞る順番と、施設に入らずに家で続ける条件まで、介護保険法・老人福祉法・高齢者住まい法の条文と厚生労働省・国税庁の資料で確かめながら整理しました。

先に答え

老人ホームや介護施設は、介護保険で入る「介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院)」と、それ以外の「住まい(有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホーム・軽費老人ホームなど)」に分かれ、介護保険の使い方と食費・居住費の軽減の有無が違います。候補は、親の要介護度・認知症の有無・医療の必要度・在宅に戻る見込みの順に見ると絞れます。民間の住まいを選ぶときは、介護が必要になったあとも住み続けられるかを契約前の書面で確かめてください。

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2026年10月時点の制度で確かめています

目次

老人ホームはまず2つに分かれる

住宅の外観

老人ホームと呼ばれるものは、介護保険法で「介護保険施設」とされる3つと、それ以外の住まいに分かれます。最初にこの線を引くと、介護保険の給付の形と、食費・居住費の軽減が使えるかが、どちら側かで分かれます。

介護保険施設は、特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院の3つだけです(介護保険法8条25項)。ここで受ける介護は「施設サービス」で、介護保険の給付の形も施設向けのものになります。一方、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・グループホームは介護保険施設ではありません。介護付きの有料老人ホームは居宅サービスの一つである特定施設入居者生活介護を、住宅型やサ高住は外の訪問介護などを、グループホームは地域密着型サービスを使う、という形で介護保険につながっています。軽費老人ホームと養護老人ホームは老人福祉法の施設で、こちらも介護保険施設ではありません。

介護保険施設か、それ以外の住まいか
介護保険施設

  • 特養・老健・介護医療院
  • 介護保険の施設サービスを受ける
  • 食費・居住費の軽減(負担限度額認定)の対象
それ以外の住まい

  • 有料老人ホーム・サ高住・グループホーム・軽費・養護
  • 特定施設入居者生活介護や外の居宅サービスを使う
  • 食費・居住費の軽減の対象外

出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/介護保険法51条の3(e-Gov法令API)

「公的施設」と「民間施設」という分け方もありますが、介護保険法が決めているのは「介護保険施設かどうか」という線です。家族が費用と手続きを考えるときは、「介護保険施設かどうか」で線を引いたほうが、あとの話がずれません。

たとえば、要介護3以上の母の行き先として、特養と介護付き有料老人ホームの2つが候補に挙がったとします。特養は介護保険施設なので、所得と預貯金が一定以下なら食費・居住費が下がる仕組みの対象で、確定申告の医療費控除でも施設の自己負担の一部が対象になります。介護付き有料老人ホームは介護保険施設ではないので、どちらの仕組みも当てはまりません。介護の中身が似て見えても、お金の流れは線のこちらと向こうで別になります。

候補を集め始めたら、施設の名前の横に「介護保険施設」か「住まい」かを書き込んでから比べてください。この1語があるだけで、費用の比べ方と、市区町村に何を聞けばいいかが変わります。

種類ごとの違いを1枚の表で

種類ごとの違いは、「誰が対象か」「介護を誰から受けるか」「費用のどこに介護保険が効くか」の3つで並べると見えてきます。名前は似ていても、この3つの答えは種類ごとに違います。

入居の対象は、法令で決まっている種類と、ホームごとに決める種類があります。特養・グループホーム・サ高住・軽費・養護は法令や基準に対象の書き方があり、有料老人ホームは厚生労働省の指針にそって、ホームが「入居時の要件」を表示します。介護の受け方は、施設の職員から受けるのか、外の事業所と自分で契約するのかで分かれます。

種類 主な対象 介護を受ける形 食費・居住費の軽減
特別養護老人ホーム 原則要介護3以上(要介護1・2は特例入所) 施設の職員(施設サービス) 対象
介護老人保健施設 在宅に戻るための支援が必要な要介護者 看護・医学的管理の下での介護・機能訓練 対象
介護医療院 長く療養が必要な要介護者 医学的管理の下で療養上の管理・看護・介護 対象
介護付き有料老人ホーム ホームの入居時の要件による ホームの特定施設入居者生活介護 対象外
住宅型有料老人ホーム ホームの入居時の要件による 自分で選んだ外の訪問介護など 対象外
健康型有料老人ホーム ホームの入居時の要件による 介護が必要になったら契約を解除して退去する類型 対象外
サービス付き高齢者向け住宅 60歳以上か、要介護・要支援の認定を受けている人 外の居宅サービスが基本 対象外
グループホーム 認知症で要支援2以上の人 共同生活の住居で受ける介護 対象外
軽費老人ホーム 60歳以上で、自立した生活に不安があり家族の援助が受けにくい人 介護は別に介護保険の契約 対象外
養護老人ホーム 65歳以上で、環境上の理由と経済的理由から家での養護が難しい人 外の介護保険サービスなど 対象外

出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)/高齢者住まい法施行規則3条(e-Gov法令API)

表の「食費・居住費の軽減」は、負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)のことです。対象は特養・老健・介護医療院・地域密着型の特養と、2種類のショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)で、有料老人ホーム・サ高住・グループホームは入っていません(介護保険法51条の3)。

表の上の3つ(介護保険施設)は、対象が要介護者であることと、在宅復帰の支援や長期の療養といった目的で決まります。たとえば、要介護1で認知症のない一人暮らしの父なら、特養は原則の対象から外れ、グループホームは認知症が前提なので対象になりません。候補に残るのは、入居時の要件が合う有料老人ホームやサ高住、条件に当たれば軽費老人ホームです。医療や在宅復帰の事情があれば、老健や介護医療院も候補に加わります。

この表は候補を消すための表として使ってください。親の状態に当てはまらない行を先に消し、残った行の中で費用と場所を比べる順番にすると、見学に行く数を減らせます。

親の状態から候補を絞る順番

候補は、要介護度、認知症の有無、医療ケアの中身、在宅に戻る見込み、住所地と予算の順に見ると絞れます。前の段で決まることが、後ろの段の選択肢を狭めるので、順番を入れ替えないのがこつです。

要介護度を最初に見るのは、特養・老健・介護医療院が要介護者を対象にしていて、特養はさらに原則要介護3以上だからです。認知症の有無は、グループホームが候補に入るかどうかを決めます。医療ケアは、施設の種類ごとに担い手が違うので、続く処置があれば種類が大きく動きます。在宅に戻る見込みは、老健と、長く暮らす場所とを分けます。最後に、地域密着型のサービスは原則住民票のある市町村の事業所が対象なので、住所地で候補がさらに絞られます。

親の状態から候補を絞る順番
  1. 1要介護度を確かめる要支援か、要介護1・2か、要介護3以上か
  2. 2認知症の有無を見る要支援2以上で認知症ならグループホームも候補
  3. 3医療ケアを書き出す誰が担うかで施設の種類が変わる
  4. 4在宅に戻る見込みを考える戻るなら老健、長く暮らすなら特養など
  5. 5住所地と予算で絞る地域密着型は原則住民票のある市町村

各段で家族が手元にそろえたいのは、次のものです。

  • 要介護度:介護保険の被保険者証や認定の結果の通知で、いまの区分を確かめる
  • 認知症:主治医やケアマネジャーに、認知症の診断があるかを確かめる
  • 医療ケア:たんの吸引や胃ろう、インスリンなど、続く処置の名前と回数を書き出す
  • 在宅の見込み:主治医や病院の相談員に、家に戻れる見通しを聞く
  • 住所地と予算:親の住民票のある市町村と、親の収入・預貯金から出せる月々の額を控える

たとえば、要介護2で認知症の診断がある母なら、1段目で特養は特例入所の対象になるかどうかの話になり、2段目でグループホームが候補に加わります。同じ要介護2でも、認知症がなく、退院後にリハビリで家に戻ることを目指す父なら、4段目で老健が話に上がります。要介護度が同じでも、2段目と4段目の答えで候補は別のものになります。

医療ケアが続く親の行き先は、施設の種類ごとに医療の担い手が違うので、3段目で詳しく確かめてください。認知症の親のグループホームの条件と費用も、次の記事にまとめています。

医療ケアが必要な親が入れる施設と介護医療院

認知症の親のグループホームの費用と入れる条件

編集部の整理では、この順番は家族だけで最後まで進めなくてかまいません。1段目と2段目は書類と主治医で確かめられ、3段目と4段目は病院の相談員やケアマネジャーと一緒に考える段です。家族が担うのは、5段目の住所地と、親の希望と、出せるお金を持っていくことです。

特養・老健・介護医療院の違い

介護保険施設の3つは、目的で分かれます。特養は介護を受けながら長く暮らす場所、老健は家に戻るための支援の場所、介護医療院は長く療養が必要な人が医学的管理の下で暮らす場所です。

特養の入所の対象は、法律の本文ではなく省令で、原則要介護3以上と決まっています(介護保険法施行規則17条の9)。要介護1・2の人は、心身の状況や置かれている環境などから、家での生活が難しいことについてやむを得ない事由があると認められたときに入所できる特例入所です(同規則17条の10)。要介護3以上でも、入所できるかどうかと順番は施設の判定で決まるので、申し込んだらすぐ入れるわけではありません。

老健は、心身の機能の維持回復を図り、家での生活に戻れるようにする支援が必要な要介護者に、看護・医学的管理の下での介護・機能訓練などを行う施設です(介護保険法8条28項)。介護医療院は、長く療養が必要な要介護者に、療養上の管理・看護・医学的管理の下での介護などを行う施設です(同条29項)。どちらも要介護者が対象で、要支援の人は入れません。

出典:介護保険法施行規則17条の9(e-Gov法令API)/同規則17条の10(e-Gov法令API)/介護保険法8条(e-Gov法令API)

特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 介護医療院
目的 介護を受けながら暮らす 家での生活に戻るための支援 長く療養が必要な人の療養と介護
入れる人 原則要介護3以上(要介護1・2は特例入所) 要介護者 要介護者
医療費控除の対象 施設の自己負担の2分の1 施設の自己負担の全額 施設の自己負担の全額

出典:国税庁 タックスアンサーNo.1125

「特養と老健はどちらが安いか」という問いには、3つの施設の食費・居住費が同じ軽減の仕組みに入っていること、そのうえで部屋の種類と負担限度額の段階で額が変わることを先に押さえてください。確定申告の医療費控除では、老健と介護医療院は施設の自己負担(介護費・食費・居住費)の全額、特養はその2分の1が対象で、理美容代などの日常生活費はどちらも対象外です。月々の額だけでなく、控除まで含めて比べると答えが変わることがあります。

たとえば、要介護3の父が入院中で、退院後に特養の順番を待つ間の行き先を探している場合、病院や相談員から老健の名前が出ることがあります。ただ、老健の目的は家に戻るための支援なので、そこを長く暮らす場所と考えて入ると、退所の話が出たときに次の行き先を一から探すことになります。老健に入るときは、出たあとに家へ戻るのか、特養など別の施設に移るのかを、入所と同時に家族で決めておいてください。

要介護3の自己負担がどう決まるかは、次の記事で確かめられます。

要介護3の自己負担はいくらか|2割負担になる人の目安

民間の住まいは介護の受け方で分かれる

テーブルの上の書類

有料老人ホーム・サ高住・グループホームは、介護をホームの職員から受けるのか、外の事業所と契約して受けるのかで分かれます。有料老人ホームの中も、厚生労働省の指針で介護付き・住宅型・健康型の類型に分けられ、ホームは施設名と一緒に類型を表示します。

有料老人ホームは、都道府県知事への届出で設置されるホームです(老人福祉法29条1項)。介護付きと表示できるのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームだけで、介護が必要になってもホームの介護を使いながら居室で暮らし続けられる類型です。住宅型は、生活支援などのサービスが付き、介護が必要になったら入居者が自分で選んだ地域の訪問介護などを使いながら暮らし続ける類型です。健康型は、食事などのサービスが付く高齢者向けの住まいで、介護が必要になったら契約を解除して退去する類型です。

住まい 介護を提供する人 外の訪問介護・デイサービス 確かめること
介護付き有料老人ホーム ホーム(特定施設入居者生活介護) 介護保険では別に使えない 看取りや医療的な対応をどこまでするか
住宅型有料老人ホーム 自分で選んだ外の事業所 使う ケアマネジャーと事業所を自分で選べるか
健康型有料老人ホーム ホームの契約で確かめる ホームの契約で確かめる 介護が必要になったあとの行き先
サービス付き高齢者向け住宅 外の事業所(特定施設の指定を受けたものは別) 使う 特定施設の指定を受けているか
グループホーム 共同生活の住居の職員 介護保険の地域密着型サービス 住民票のある市町村の事業所か

出典:有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)/老人福祉法29条(e-Gov法令API)/指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(厚生労働省)

介護付きと住宅型の違いは、外のサービスの使い方に出ます。介護付きで特定施設入居者生活介護を受けている間は、訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・通所介護・通所リハビリテーションを介護保険で別に付けることはできません。住宅型の居室は介護保険法で「居宅」に含まれるので、家にいるときと同じように訪問介護や訪問看護を使えます(訪問看護は、主治の医師が、治療の必要の程度が省令の基準に当たると認めた人が対象です)。サ高住は、高齢者向けの賃貸住宅などに状況把握と生活相談のサービスを付けて都道府県知事の登録を受ける住まいで、登録は5年ごとの更新です(高齢者住まい法5条)。

グループホームは、認知症である要介護者が共同生活の住居で介護を受ける地域密着型サービスで、要支援の人は要支援2だけが対象です(要支援1は入れません)。認知症の原因の病気が急性の状態にある人は除かれます(介護保険法8条20項)。

たとえば、今は身の回りのことが自分でできる母が、なじみのデイサービスを続けたいと考えている場合、住宅型やサ高住なら外のサービスをそのまま使い続ける形が取れます。同じ母が介護付きに入ると、デイサービスは介護保険では別に付けられず、ホームの介護に切り替わります。どちらが合うかは、今使っているサービスを続けたいか、ホームにまとめて任せたいかで変わります。

元気なうちに入れる住まいの違いは、次の記事で類型ごとに見ています。

元気なうちに入れる自立型老人ホームの種類と選び方

介護付き有料老人ホームの費用と入居の条件

民間の住まいを比べるときは、「介護付き」「住宅型」の言葉を、介護を誰から受けるかに言い換えて家族で共有してください。言い換えができると、今のケアマネジャーとの関係を続けるのか、ホームに任せるのかという、家族が本当に決めることが見えてきます。

軽費老人ホームと養護老人ホーム

軽費老人ホームは、無料または低額な料金で入れる老人福祉法の施設です。養護老人ホームは、市町村の措置で入る施設で、介護保険で申し込む施設ではありません。

軽費老人ホームは、無料または低額な料金で老人を入所させ、食事の提供などの日常生活上必要な便宜を行う施設です(老人福祉法20条の6)。入所できるのは、原則として60歳以上で、身体機能の低下などで自立した日常生活に不安があり、家族の援助を受けることが難しい人です(軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準13条)。一般にケアハウスと呼ばれることもあります。軽費老人ホームの利用料のうちサービスの提供に要する費用は、入所者の所得の状況などを勘案して都道府県知事が定める額です(同基準16条)。要介護度は入所の条件に入っていないので、介護が必要になったときの介護サービスは、別に介護保険の契約になります。

養護老人ホームは、市町村の措置で入所する人を養護し、自立した日常生活と社会的活動への参加に必要な援助を行う施設です(老人福祉法20条の4)。市町村が入所の措置をとるのは、65歳以上で、環境上の理由と経済的理由の両方から、家で養護を受けることが難しい人です(同法11条1項1号)。経済的理由は、世帯が生活保護を受けていること、本人と生計を維持している人の前年の所得に市町村民税の所得割の額がないこと、災害などで世帯の生活が困窮していること、のいずれかです(老人福祉法施行令6条)。

出典:老人福祉法20条の6(e-Gov法令API)/軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準13条(e-Gov法令API)/同基準16条(e-Gov法令API)/老人福祉法11条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行令6条(e-Gov法令API)

軽費老人ホーム 養護老人ホーム
入り方 施設との契約 市町村の措置
主な対象 60歳以上で、自立した生活に不安があり家族の援助が受けにくい人 65歳以上で、環境上の理由と経済的理由から家での養護が難しい人
費用 サービスの提供に要する費用は、所得の状況などを勘案して都道府県知事が定める額 市町村に確かめる
窓口 施設、都道府県・市区町村の高齢者福祉の担当 市区町村の福祉事務所・高齢者福祉の担当

軽費老人ホームの利用料の額や段階、養護老人ホームの入所の判定は、条文だけでは決まりません。軽費老人ホームは都道府県知事の定め、養護老人ホームは市町村の判断によります。

※軽費老人ホームの利用料の定めと、養護老人ホームの入所の措置の扱いは自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

たとえば、60歳以上の一人暮らしの母が、介護認定は受けていないものの、食事の支度が負担になり、家族の援助も受けにくい場合、軽費老人ホームは候補になりえます。一方、経済的に苦しいというだけでは養護老人ホームの要件には足りず、環境上の理由も合わせて市町村が判断します。「お金がないから養護」と決めつけず、まず市区町村の高齢者福祉の担当に、両方の施設について親の状況を伝えて聞いてください。

費用の仕組みは施設の種類で分かれる

施設の費用は、介護サービスの自己負担、食費・居住費(住まいでは家賃・食費・管理費など)、日用品などの実費に分かれます。介護保険施設かどうかで、食費・居住費が軽くなる仕組みと医療費控除の扱いが変わります。

介護サービスの自己負担は原則1割で、本人の合計所得金額が160万円以上で、年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身280万円以上(2人以上の世帯は346万円以上)なら2割、合計所得金額が220万円以上で、年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身340万円以上(2人以上の世帯は463万円以上)なら3割です。施設の種類で仕組みが分かれるのは、この割合ではなく、介護保険の給付の外にある食費・居住費と、医療費控除の扱いです。

介護保険施設の食費・居住費は、施設介護サービス費の給付に含まれず、原則として自己負担です(介護保険法48条)。そのうえで所得と預貯金が一定以下の人には、基準費用額と負担限度額の差額を介護保険が出す仕組み(補足給付)があり、負担限度額認定を受けると食費・居住費が下がります(同法51条の3)。グループホームの家賃・食材料費・光熱水費や、介護付き有料老人ホームの家賃・食費・管理費も保険外ですが(同法42条の2・41条)、こちらには補足給付がありません。

出典:介護保険法48条(e-Gov法令API)/介護保険法51条の3(e-Gov法令API)/介護保険法42条の2(e-Gov法令API)/介護保険法41条(e-Gov法令API)/厚生労働省「介護保険制度の概要」(PDF)

施設の種類 食費・居住費の軽減 医療費控除(施設の自己負担として)
特別養護老人ホーム 対象 2分の1
介護老人保健施設・介護医療院 対象 全額
グループホーム 対象外 対象外
介護付き有料老人ホーム 対象外 対象外

出典:国税庁 タックスアンサーNo.1125/国税庁 タックスアンサーNo.1127

グループホームと有料老人ホームの利用料は、介護サービス費としては医療費控除の対象外ですが、医療機関の診療費や訪問看護など、別に支払う医療費は別の扱いです。

計算例

たとえば、第2段階に当たる親が特別養護老人ホームの多床室に入る場合、居住費は1日430円で、基準費用額の915円より1日485円軽くなります。30日の月なら14,550円の差です。

基準費用額は負担限度額認定を受けた人の計算に使う額で、認定を受けない人の食費・居住費は施設との契約で決まります。実際の額は施設で確かめてください。段階ごとの条件(所得と預貯金)と、食費の額は次の記事にまとめています。

食費と居住費を軽くする負担限度額認定の条件と申請

施設の月額や入居一時金の相場は、この記事では取り上げません。施設ごとに決まっていて、確かめられる一次の統計がないためです。その代わりに、親の側から見る方法をとります。親の年金と預貯金を書き出し、候補ごとに「介護の自己負担」「食費・居住費(家賃・食費・管理費)」「日用品などの実費」の欄を作って、施設からもらった書類で埋めていくと、毎月の持ち出しが見えます。介護保険施設なら、負担限度額認定に当たるかどうかで食費・居住費の欄が大きく動きます。

月々の介護費の全体像は、次の記事とシミュレーターで確かめられます。

親の介護費用が毎月いくらか分からない人へ|うちの親の場合の出し方

住み続けられるかを契約前に確かめる

民間の住まいを選ぶときに確かめたいのは、介護が重くなったあとも住み続けられるかです。類型の説明は目安で、個々のホームの扱いは、契約前に受け取る重要事項説明書と契約書で決まります。

有料老人ホームの設置者は、入居しようとする人に、提供するサービスの内容や費用負担の額など、入居契約の重要な事項を説明する文書を書面で交付することになっています(老人福祉法29条7項、同法施行規則20条の7)。この文書を、一般に重要事項説明書と呼んでいます。有料老人ホームの介護の内容や運営の状況は都道府県知事に報告され、知事が公表するので、ホームの外からも調べられます。

出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則20条の7(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)

重要事項説明書や契約書で、住み続けられるかを確かめる点は次のとおりです。

  • 類型:介護付き・住宅型・健康型のどれか
  • 入居時の要件:入居時自立、入居時要介護、入居時要支援・要介護、入居時自立・要支援・要介護の4区分のどれか
  • 介護が必要になったときの扱い:居室で続けるのか、別の部屋へ移るのか
  • 契約の解除:どんな場合にホームから契約を解除されるのか
  • 医療的な対応と看取り:どこまで対応し、入院したときの部屋と費用はどうなるか

「良い老人ホームの見分け方」「ダメな老人ホームの特徴」を、見学の印象だけで判断するのは難しい作業です。説明の担当者が話したことが、書面のどの欄に書いてあるかを確かめられるホームかどうかは、外からでも見える違いです。

たとえば、入居時自立のホームに元気な父が入り、数年後に介護が必要になった場合、介護付きなら居室でホームの介護を受ける形が類型としての説明ですが、部屋の移動や看取りをどうするかはホームの契約で決まります。健康型なら類型そのものが退去の説明です。グループホームは認知症の人の共同生活の住居なので、医療の必要が増えたときにどうするかは事業所に確かめる項目です。同じ「入居できた」でも、その先の道は契約書の文言で分かれます。

契約の前に、「介護が重くなったら」「入院したら」「医療ケアが必要になったら」の3つの場面を家族で書き出し、それぞれ書面のどこに答えがあるかを担当者に指してもらってください。答えが書面にない場面があれば、それがそのホームで確かめ足りていない点です。

施設に入らず在宅で続ける条件

施設を選ばない道もあります。家での介護を支える人とサービスがそろい、家族の暮らしが崩れずに続けられる間は、在宅で続けることができます。

在宅で使える介護保険のサービスには、訪問介護や訪問看護、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所)があります。ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)は負担限度額認定の対象サービスにも入っているので、家での介護の合間に施設を短く使う形も費用の面から組み立てられます。特養の順番を待つ間を在宅でつなぐ形も、これらのサービスの組み合わせで考えられます。

在宅で続けるときにそろえたい条件は、次のとおりです。

  • 担当のケアマネジャーがいて、サービスの組み合わせを見直してもらえる
  • 医療ケアがあるなら、主治医と訪問看護の体制がある
  • 夜間や家族がいない時間に、誰が見守り、何かあったら誰に連絡するかが決まっている
  • 家族が介護のために仕事や暮らしを崩していない
  • 親自身が家での暮らしを続けたいと考えている

たとえば、要介護2で認知症の診断がある母を、近くに住む娘が週に何度か見に行っている場合、デイサービスとショートステイを組み合わせれば家での暮らしを続けられることがあります。反対に、夜中に家を出て行ってしまうことが増え、家族が夜通し見守れない状態になると、「夜間の見守り」の条件がそろわず、在宅は難しくなります。条件は家ごとに重みが違うので、ケアマネジャーと一緒に、外せない条件から確かめてください。

親が施設に入ることを拒んでいるときは、施設の話から入るより、在宅で続ける条件のどれが崩れそうかから話すほうが進みます。

親が施設を拒むときは在宅で続ける条件から話す

在宅か施設かは、どちらが正しいかで決めるものではありません。条件がそろっている間は在宅で続け、崩れた条件が出てきたら施設を探し始める、と家族で線を引いておくと、退院や急な悪化の場面で慌てて決める量が減ります。

探し方・見学・相談先

日の差す和室

施設探しは、相談先を決め、親の状態を書いた紙を作り、介護保険施設と住まいの両方から候補を出して、書面で比べてから見学に行く順で進めます。

相談の入り口は、親がすでに要介護認定を受けていれば担当のケアマネジャー、入院中なら病院の相談員、まだ何も始めていなければ親の住む地域の地域包括支援センターです。特養などの介護保険施設は申込みの方法を施設に確かめ、軽費老人ホームや養護老人ホームは市区町村の高齢者福祉の担当にも聞きます。グループホームや地域密着型の特養は、原則として親の住民票のある市町村の事業所が対象なので、子の住む近くに呼びたいときは、先に市町村に扱いを確かめてください。

見学で聞いておきたいのは、次の項目です。

  • 入居の条件:要介護度・認知症・医療ケアの受け入れ
  • 介護が重くなったとき:居室で続けられるか、退去の条件は何か
  • 夜間の体制:夜に誰がいて、急な体調の変化に誰がどう動くか
  • 入院したとき:部屋の扱いと費用、戻れる条件
  • 費用の内訳:介護の自己負担、食費・居住費(家賃・管理費)、日用品などを分けた書類があるか

見学では夜と休日の様子が見えにくいので、夜と休日の体制は、見えたものではなく聞いた答えと書類で判断します。資料を取り寄せるときは、親の要介護度・認知症の有無・医療ケアを書いた紙を添えて問い合わせ、受け入れの可否を確かめてください。

たとえば、遠方に住む息子が、親の住む町の施設を探す場合、平日に何度も見学に行くのは難しいことがあります。そのときは、地域包括支援センターやケアマネジャーに候補の種類を絞ってもらい、資料と重要事項説明書を先に取り寄せて比べ、見学は残った候補に絞ると、通う回数を抑えられます。

※地域密着型サービス(グループホーム・地域密着型の特養)を他の市町村で使えるかどうかの扱いは自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

施設探しの全体の流れは、在宅か施設かを考える人向けのまとめにも並べています。

在宅か施設か|在宅の限界が見え、施設を考え始めた人

※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

親の状態から候補の種類が絞れたら、その種類のホームを地域で探して資料を取り寄せる段階です。老人ホームの検索サイトでは、種類・地域・予算で絞り込んで資料請求や見学の予約ができます。資料は2〜3か所分を取り寄せて、入居の条件と月額を同じ表で比べると決めやすくなります。

みんなの介護で老人ホームの資料を取り寄せる

入居したあとの実家のこと

親が施設に入ったあとに残るのは、空いた実家をどうするかという問題です。入居の手続きが落ち着いたころに、郵便物や固定資産税の通知、家の傷みといった形で表に出てきます。

特養や介護医療院のように長く暮らす場所に入った場合、親が家に戻る見通しが立たないことがあります。そのときは、空き家になった実家を誰が見に行くか、貸すか売るか、いずれ相続するときにどう扱うかを、親の判断ができるうちに話しておくかどうかが分かれ目になります。入居の直後に家の話を切り出すのは気が引けますが、最初の話題は「売ること」ではなく「いま誰が家の様子を見るか」でかまいません。

たとえば、母が特養に入り、実家に誰も住まなくなった場合、郵便の転送と、月に何度誰が家を見に行くかを決めておくだけでも、近所から「ポストがあふれている」と連絡が来る事態を避けられます。家の扱いを決めるのは、その次の段階です。

実家|親が施設に入った・実家が空いた人

入居を決める場面では施設のことで手一杯になりますが、次に来ることを先に知っておくと、実家の問題を慌てずに迎えられます。

よくある質問

特養と老健はどちらが安いですか?

どちらも介護保険施設で、食費・居住費は同じ負担限度額認定の仕組みの対象です。額は部屋の種類と負担限度額の段階で変わるので、施設の種類だけでは決まりません。確定申告の医療費控除では、老健は施設の自己負担の全額、特養はその2分の1が対象になる違いがあります。

要介護1・2でも特養に入れますか?

特養の入所は原則要介護3以上で、要介護1・2の人は、家での生活が難しいことについてやむを得ない事由があると認められたときの特例入所になります。入所できるかどうかと順番は施設の判定で決まるので、申し込む施設に、特例入所の扱いを聞いてください。

認知症の親はどこに入れますか?

グループホームは認知症の人が共同生活をする住まいで、要支援2以上の人が対象です。特養は要介護度、有料老人ホームは入居時の要件が、入れるかどうかの目安になります。認知症の人を受け入れるかどうかは、申し込む施設に確かめてください。グループホームは原則として親の住民票のある市町村の事業所が対象なので、住む場所も合わせて確かめてください。

介護が重くなったら退去になりますか?

類型で道が分かれます。健康型の有料老人ホームは介護が必要になったら退去する類型で、介護付きはホームの介護で居室で暮らし続けられる類型です。ただし個々のホームの扱いは契約で決まるので、重要事項説明書と契約書で、介護が必要になったときの扱いと契約の解除の条件を確かめてください。

夫婦で一緒に入れますか?

サ高住は、同居する人が配偶者などであれば入居の要件の範囲に入ります。有料老人ホームは、入居時の要件がどの区分かで、夫婦のどちらかが対象から外れることがあります。夫婦の一方が自立で、もう一方が要支援・要介護のときは、入居時の要件が「入居時自立・要支援・要介護」のホームかどうかを見てください。

親の住む地域以外の施設にも入れますか?

グループホームや地域密着型の特養は、原則として親の住民票のある市町村の事業所が対象です。それ以外の施設や住まいに住む場所の決まりがあるかは施設ごとに確かめてください。子の住む近くに呼びたいときは、親の住む市町村と、呼びたい先の市町村の両方に扱いを聞いておくと進めやすくなります。

最初に誰に相談すればいいですか?

親が要介護認定を受けていれば担当のケアマネジャー、入院中なら病院の相談員、まだ何も始めていなければ親の住む地域の地域包括支援センターが入り口です。親の要介護度・認知症の有無・医療ケアを紙に書いて持っていくと、候補の種類を絞る話から始められます。

順番のおさらい

  1. 2つに分かれる:介護保険施設(特養・老健・介護医療院)か、それ以外の住まいか
  2. 種類ごとの違い:対象・介護を受ける形・食費と居住費の軽減の3つで並べる
  3. 絞る順番:要介護度→認知症→医療ケア→在宅に戻る見込み→住所地と予算
  4. 介護保険施設の3つ:特養は暮らす場所、老健は家に戻る支援、介護医療院は長い療養
  5. 民間の住まい:介護をホームから受けるか、外の事業所から受けるかで分かれる
  6. 軽費と養護:軽費は契約で低額な料金、養護は市町村の措置
  7. 費用の仕組み:食費・居住費の軽減と、施設の自己負担の医療費控除は介護保険施設が対象
  8. 住み続けられるか:重要事項説明書の類型・入居時の要件・契約の解除の欄で確かめる
  9. 在宅で続ける条件:ケアマネジャー・医療の体制・夜間の見守り・家族の暮らし
  10. 探し方:相談先を決め、親の状態を書いた紙で比べてから見学する
  11. 入居のあと:空いた実家を誰が見に行くかから話す

老人ホームの種類は多く見えますが、家族が最初に決めるのは施設の名前ではなく、親の要介護度・認知症・医療ケア・家に戻る見込みという4つの事実です。この4つが紙に書ければ、介護保険施設か住まいか、その中のどれかは、表から自然に絞れます。迷ったときは、その紙を持ってケアマネジャーか地域包括支援センターに行くところから始めてください。

軽費老人ホームの利用料、養護老人ホームの入所の措置、地域密着型サービスの使える範囲は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

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この記事を書いた人

親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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