- 特養と有料老人ホームは、結局なにが違うのかがつかめない
- 特養は費用が軽いと聞くけれど、どうしてそうなるのか知りたい
- 親は要介護3なのに、特養にはすぐ入れないと言われた
- 特養は申し込んだ順番に入れるのだろうか
- 特養の空きを待つ間、家でどうつなげばいいのか
- 親の年金と貯金で、特養と有料のどちらなら払い続けられるのか
- 有料老人ホームに入ったあとで、特養に移ることはできるのか
- 入居一時金を払ったあとに合わなかったら、お金は戻るのか
上記のような悩みに答えます。
特養と有料老人ホームの比較は、施設の検索サイトや運営会社の解説で、運営主体・入居条件・設備を表に並べるところまでは厚く書かれています。けれども、親の要介護度や所得でどちらを選ぶかの判断の軸、特養の入所が申込順ではないこと、食費・居住費の軽減が特養には効いて有料老人ホームには効かないことは、表を眺めるだけでは見えてきません。そこで、入れる人の条件・介護の受け方・費用の形という基本を押さえたうえで、所得の低い親ほど費用の差が開く仕組みと、待つか入るかを決める3つの物差しまで、介護保険法・老人福祉法の条文と厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。
特養(特別養護老人ホーム)は原則要介護3以上の人が入る介護保険施設で、入所は申込順ではなく必要性の高い人から決まります。有料老人ホームは民間の住まいで、入居の条件も費用もホームごとです。費用の差は食費・居住費の軽減が効くかどうかで大きくなり、所得の低い親ほど特養のほうが軽くなります。待つか入るかは、要介護度・所得と預貯金・いまの在宅があと何か月続けられるかの3つで決めます。
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特養と有料老人ホームはどこが違うか

特養は介護保険法で「介護保険施設」とされる3つのうちの1つで、有料老人ホームは老人福祉法で都道府県知事への届出によって設置される住まいです。名前はどちらも「ホーム」ですが、介護保険とのつながり方が違い、その違いが入居の条件と費用の形にそのまま出てきます。
介護保険施設は、特養・介護老人保健施設(老健)・介護医療院の3つだけです(介護保険法8条25項)。特養で受ける介護は「施設サービス」で、費用の1〜3割を払います。有料老人ホームは介護保険施設ではなく、介護保険を使うときは、ホームが特定施設入居者生活介護の指定を受けていればホームの介護を、指定がなければ外の訪問介護などを使います。設置は許可制ではなく、都道府県知事への届出制です(老人福祉法29条)。
| 特別養護老人ホーム | 有料老人ホーム | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 介護保険施設 | 都道府県知事に届け出る住まい |
| 入れる人 | 原則要介護3以上(要介護1・2は特例入所) | ホームが表示する入居時の要件による |
| 入る順番 | 必要性の高い人を優先(申込順ではない) | ホームとの契約 |
| 介護の受け方 | 施設の職員から施設サービスを受ける | 介護付はホームから、住宅型は外の事業所から |
| 費用の形 | 介護サービス費の1〜3割+食費・居住費 | 家賃・食費・管理費など+介護サービス費の1〜3割 |
| 食費・居住費の軽減 | 負担限度額認定の対象 | 対象外 |
| 前払金 | ― | 家賃等の前払金を受け取るホームがある |
出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/老人福祉法29条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)
表のうち、家族の判断を大きく動かすのは「入る順番」と「食費・居住費の軽減」の2行です。特養は申し込んでも空きが出るまで入れず、その順番は申し込んだ日ではなく、介護の必要の程度と家族の状況で決まります。一方で、所得と預貯金が一定以下の親なら、特養の食費・居住費は負担限度額認定で下がり、有料老人ホームにはこの仕組みがありません。
たとえば、要介護4で年金が少ない父と、要介護2で年金に余裕のある父とでは、同じ表を見ても答えが変わります。前の父は特養の対象で、食費・居住費の軽減も使える見込みがあるので、特養に申し込む意味が大きくなります。後の父は特養が特例入所の話になり、軽減の対象にもなりにくいので、入居の要件が合う有料老人ホームが現実的な候補になります。
比べ始めたら、施設の名前の横に「介護保険施設か、住まいか」と「食費・居住費の軽減が効くか」を書き込んでください。この2つが分かれば、下の段で見る入居の条件と費用の話が、親のどの数字に結びつくかが見えてきます。
入れる人の条件の違い
特養に入れるのは原則として要介護3以上の人で、要介護1・2の人は特例入所に当たるときだけです。有料老人ホームは、法令で要介護度の線が引かれておらず、ホームごとに入居時の要件を表示します。
特養の「原則要介護3以上」は、介護保険法の本文ではなく省令で決まっています(介護保険法施行規則17条の9)。要介護1・2の人は、心身の状況や置かれている環境などから、家での生活が難しいことについてやむを得ない事由があると認められたときに入所できる特例入所です(同規則17条の10)。要介護3以上であっても、入所できるかどうかと順番は施設の判定で決まるので、要介護度だけで入れるとは決まりません。
有料老人ホームは、厚生労働省の指針にそって、入居時の要件を4つの区分で表示します。
- 入居時自立:入居の時点で自立している人
- 入居時要介護:入居の時点で要介護の認定を受けている人
- 入居時要支援・要介護:要支援か要介護の認定を受けている人
- 入居時自立・要支援・要介護:自立の人も、認定を受けている人も入れる
出典:介護保険法施行規則17条の9(e-Gov法令API)/同規則17条の10(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)
認知症のある親を受け入れるかどうかも、申し込む施設やホームに親の状態を伝えて確かめる話になります。
たとえば、要介護2で認知症の診断がある母を、一人暮らしのまま家で支えるのが難しくなってきた場合、特養は特例入所に当たるかどうかの判断になり、その判断は施設と市町村の側にあります。同じ母でも、入居時要介護や入居時自立・要支援・要介護の区分の有料老人ホームなら、要件の上では対象になります。特例入所に当たるかの見通しを申し込む施設に聞くのと並行して、有料老人ホームの候補も持っておくと、話が止まりません。
要介護度が変わる見込みがあるときは、区分変更の申請で認定が変わってから特養の対象になることもあります(要介護認定は介護保険法27条)。いまの要介護度と、主治医やケアマネジャーが見ている今後の見込みを、両方とも手元に書いておいてください。
特養の入所は申込順ではない
特養の入所は、申し込んだ日の順番では決まりません。空きより申込者が多いとき、施設は介護の必要の程度と家族等の状況を勘案して、必要性が高いと認められる人を優先的に入所させるよう努めなければならない、と運営基準で決まっています(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準7条2項)。
この優先の決め方は、施設が独自に作るのではなく、関係する自治体と関係団体が協議して作る「入所に関する指針」にそって進みます。厚生労働省の通知は、指針に入所判定の対象者の選び方・必要性の高さを判断する基準・施設が基準を当てはめて決める手続きを盛り込み、施設には入所を検討する委員会を置いて合議で決めることを求めています。指針は公表され、施設は入所を希望する人に内容を説明します。通知が例として挙げる勘案事項は、要介護度と、単身世帯か・同居の家族が高齢や病弱か、といった家族の状況です。
出典:指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準7条(e-Gov法令API)/指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(厚生労働省・PDF)
申込者の数は、厚生労働省の調査(地域密着型の特養を含む)で、2025年4月1日時点の要介護3以上が約20.6万人、そのうち在宅の人が約8.6万人、要介護1・2の人が約1.8万人です。ただし厚生労働省自身が、この数には長く名簿に載っている人も含まれ、いま入所を必要としている人に限らないと注記しています。数の大きさで「何年待ち」と考えるより、親の地域の指針で、親の状態がどう評価されるかを見るほうが判断に近づきます。
出典:特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)(厚生労働省・PDF)
※特養の入所の判定に使う入所指針と1単位の単価(地域区分)は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。入所指針は都道府県が作っている場合もあるので、お住まいの都道府県・市区町村の入所指針を確認してください。
たとえば、要介護3で同居の娘が日中働いている母と、要介護3で高齢の父と二人暮らしの母とでは、要介護度が同じでも家族の状況の評価が違ってきます。申込書に家族の状況を書く欄があれば、介護している家族の年齢や仕事、夜間の介護の有無を、具体的に書いてください。
「要介護3でも入れない」と言われたときは、入れないのではなく、順番がまだ来ていないことを指している場合があります。申し込んだ施設に、入所の判定がいつ・どう行われるのか、親の状態が変わったら申込書を出し直せるのかを聞いておくと、待つ間に打てる手が見えてきます。
介護の受け方の違い
特養では施設の職員から施設サービスを受け、有料老人ホームでは、介護付ならホームから、住宅型なら外の事業所から介護を受けます。同じ「ホームで暮らす」でも、誰が介護を担い、何を家族が選ぶかが違います。
介護付有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームで、介護が必要になっても、ホームの介護を使いながら居室で暮らし続けられる類型です。その間は、訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・通所介護・通所リハビリテーションを介護保険で別に付けることはできません。住宅型は、介護が必要になったら入居者が自分で選んだ地域の訪問介護などを使う類型で、ホームの居室は介護保険法の「居宅」に含まれます(介護保険法8条2項)。
| 介護を担う人 | 外の訪問介護・デイサービス | 家族が選ぶこと | |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 施設の職員(施設サービス) | 施設の中で受ける | 施設を選ぶ |
| 介護付有料老人ホーム | ホーム(特定施設入居者生活介護) | 介護保険では別に使えない | ホームを選ぶ |
| 住宅型有料老人ホーム | 自分で選んだ外の事業所 | 使う | ケアマネジャーと事業所も選ぶ |
| 介護老人保健施設 | 看護・医学的管理の下での介護と機能訓練 | 施設の中で受ける | 退所後の行き先も考える |
出典:有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)/指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(厚生労働省)/介護保険法8条(e-Gov法令API)
老健は、心身の機能の維持回復を図り、家での生活に戻れるようにする支援が必要な要介護者に、看護・医学的管理の下での介護や機能訓練を行う施設です(介護保険法8条28項)。特養と同じ介護保険施設ですが、目的は家に戻るための支援で、特養のように長く暮らす場所として入る施設ではありません。
医療の面では、介護付有料老人ホームは、利用者30人以下なら看護職員を常勤換算で1以上置く、国の最低基準です(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準175条1項2号ロ)。夜間の看護や看取り、たんの吸引などにどこまで対応するかは施設やホームごとなので、見学のときに重要事項説明書で確かめてください。医療ケアが続く親の行き先は、次の記事で施設の種類ごとに見ています。
たとえば、いまのデイサービスと訪問看護を続けたい母なら、住宅型ではその契約をそのまま持って入れる形が取れます。介護付に入ると、デイサービスや訪問看護は介護保険では別に付けられず、ホームの介護と看護職員に切り替わります。
月の費用の形の違い

特養の月の費用は、施設サービス費の単位数に地域の単価と負担割合を掛けた額に、食費・居住費を足した形です。有料老人ホームは、家賃・食費・管理費などのホームの額に、介護サービス費の自己負担を足した形です。
特養の食費・居住費は、施設介護サービス費の給付に含まれず、原則として自己負担です(介護保険法48条1項)。介護サービス費のほうは、施設サービス費の1日の単位数で決まり、令和6年度改定後の基本単位数は、従来型個室・多床室が要介護3で732単位、ユニット型個室が要介護3で815単位です。1単位の単価は地域区分で10円から10.90円まで分かれ、負担割合は原則1割、所得によって2割・3割です。
たとえば、1単位10円の地域で、1割負担の要介護3の母が特養の多床室に入り、負担限度額認定を受けずに食費・居住費が基準費用額どおりの場合、介護サービス費は732単位×30日=21,960単位で、自己負担は21,960円です。食費は1,545円×30日で46,350円、居住費は915円×30日で27,450円、合わせて73,800円で、月の目安は95,760円です。同じ母がユニット型個室なら、介護サービス費は815単位×30日で24,450円、居住費は2,066円×30日で61,980円になり、食費と合わせて132,780円です。
この額は加算を含まない目安で、日用品や理美容などの日常生活費も別です。認定を受けない人の食費・居住費は施設との契約で決まるので、実際の額は施設で確かめてください。
有料老人ホームのうち介護付は、介護サービス費が特定施設入居者生活介護の1日の単位数で決まり、要介護3で679単位です。
1単位10円の地域で1割負担なら、679単位×30日=20,370単位で、介護サービス費の自己負担は20,370円です。これに家賃・食費・管理費などのホームの額が加わります。
住宅型は、外の訪問介護などを区分支給限度基準額の中で使った分の1〜3割で、要介護3の限度額は1単位10円の地域の目安で月270,480円です。家賃・食費・管理費・入居一時金はホームごとに決まり、国の統計で示された相場はないので、この記事では取り上げません。
出典:指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生労働省)/介護報酬の算定構造(厚生労働省・PDF)/地域区分(厚生労働省・PDF)/介護サービス情報公表システム「利用者負担の軽減について」(厚生労働省)
費用を比べるときは、特養も有料老人ホームも「介護サービス費」と「それ以外」に分けて書き出してください。差が出るのは「それ以外」の側で、介護サービス費は冒頭のシミュレーターで組み立てられます。
所得の低い親ほど差が開く
特養の食費・居住費は、所得と預貯金が一定以下なら負担限度額認定で下がりますが、有料老人ホームの家賃・食費にはこの仕組みがありません。そのため、所得の低い親ほど、特養と有料老人ホームの月の差が大きくなります。
負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)の対象は、特養・老健・介護医療院・地域密着型の特養と、2種類のショートステイの6つです(介護保険法51条の3)。介護保険が出すのは、食費・居住費の基準費用額と、段階ごとの負担限度額との差額です。有料老人ホームやサ高住、介護付の特定施設入居者生活介護はこの列挙に入っておらず、食費・居住費が軽くなることはありません。
| 段階 | 所得の条件(世帯全員が市町村民税非課税) | 預貯金等(単身) | 預貯金等(夫婦) |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護を受けている人など/老齢福祉年金を受けている人 | 要件なし/1,000万円以下 | 要件なし/2,000万円以下 |
| 第2段階 | 年金収入等が82.65万円以下 | 650万円以下 | 1,650万円以下 |
| 第3段階① | 年金収入等が82.65万円超120万円以下 | 550万円以下 | 1,550万円以下 |
| 第3段階② | 年金収入等が120万円超 | 500万円以下 | 1,500万円以下 |
| 第4段階 | 市町村民税の課税世帯 | 対象外(課税層の特例減額あり) | ― |
出典:介護保険法51条の3(e-Gov法令API)/介護サービス情報公表システム「利用者負担の軽減について」(厚生労働省)
年金収入等は、公的年金の収入額(非課税年金を含む)とその他の合計所得金額の合計です。「世帯全員」には、世帯を分けた配偶者も含まれ、預貯金等は本人と配偶者の合計で見ます。
たとえば、上の母が第2段階に当たる場合、特養の多床室の食費は1日390円、居住費は1日430円になり、30日で24,600円です。基準費用額どおりの73,800円より49,200円軽く、介護サービス費21,960円と合わせた月の目安は46,560円です。さらに介護サービス費は高額介護サービス費の対象で、世帯全員が市町村民税非課税で年金収入等が82.65万円以下の人は個人の上限が月15,000円なので、単身でこの上限が当てはまれば、申請で6,960円が戻り、月の負担は39,600円になります。
ユニット型個室で段階ごとに並べると、食費と居住費の30日の額は次のとおりです。
| 段階(特養・ユニット型個室) | 1日の食費+居住費 | 30日 |
|---|---|---|
| 基準費用額(認定なし) | 3,611円 | 108,330円 |
| 第1段階 | 1,180円 | 35,400円 |
| 第2段階 | 1,270円 | 38,100円 |
| 第3段階① | 2,050円 | 61,500円 |
| 第3段階② | 2,890円 | 86,700円 |
- 負担限度額認定の対象
- 第2段階の多床室なら食費と居住費は30日24,600円
- 介護サービス費は高額介護サービス費の対象
- 負担限度額認定の対象外
- 家賃・食費・管理費はホームの額のまま
- 介護付の介護サービス費も高額介護サービス費の対象
同じ第2段階の母が介護付有料老人ホームに入ると、介護サービス費は高額介護サービス費の対象になりますが、家賃・食費・管理費はホームの額のままで、所得による軽減はありません。年金の少ない親ほど、この差がそのまま毎月の持ち出しになります。
認定は申請しないと受けられません。認定証には有効期限があり、原則は8月1日から翌年7月31日までですが、有効期限の定め方は市区町村の判断で、2年としている市区町村もあります。更新の時期と手続きは、お住まいの市区町村で確認してください。段階の判定と申請の進め方は、次の記事にまとめています。
入居一時金と契約の違い

有料老人ホームには、家賃などを前払金として一括で受け取るホームがあり、入居後3か月以内に契約が終わったときの返還が法令で決まっています。特養の費用は、介護サービス費の自己負担と食費・居住費などで組み立てられ、この前払金の仕組みとは別の形です。
有料老人ホームの設置者は、家賃・敷金・介護などの対価として受け取る費用のほかに、権利金その他の金品を受け取ってはいけません(老人福祉法29条)。終身にわたる家賃などの全部または一部を一括で受け取る前払金は、算定の基礎を書面で示し、返還に備えた保全措置を講じることが義務です。いわゆる入居一時金は、この前払金に当たります。
前払金を受け取るホームは、入居後3か月以内に契約の解除や入居者の死亡で契約が終わったとき、前払金を返す契約を結ぶ義務があります(老人福祉法施行規則21条)。返す額は、月額の家賃などを30で割り、入居した日から終わった日までの日数を掛けた額を前払金から差し引いて出します。3か月を過ぎても、想定居住期間の中で契約が終わったときは、日割りで出した家賃などを差し引いた額が返還の対象になります。
- 前払金の算定の基礎(想定居住期間と月額)が書面に書かれているか
- 返還に備えた保全措置の方法が重要事項説明書に書かれているか
- 入居後3か月以内に終わったときの返還の計算が契約書に書かれているか
- 解約の予告期間が長く、返還の対象期間を事実上短くしていないか
出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則21条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針について(厚生労働省・PDF)
厚生労働省の指針は、解約の予告期間を設けて前払金の返還の対象期間を事実上短くしてはいけないとしています。指針は都道府県が指導に使う基準なので、契約書の解約の条項と、重要事項説明書の前払金の欄を並べて読んでください。
たとえば、特養の空きを待つ間のつもりで前払金のあるホームに入り、入居から間もなく特養から入所の連絡が来た場合、入居後3か月以内の契約の終了なので、前払金は日割りの家賃などを差し引いて返還の対象になります。同じ連絡が入居から半年後に来た場合は、想定居住期間と日割りの計算で返る額が決まるので、契約前に「途中で出たらいくら戻るか」をホームに計算してもらってください。
待つか入るかを決める3つの物差し
特養を待つか、有料老人ホームに入るかは、親の要介護度、所得と預貯金、いまの在宅があと何か月続けられるか、の3つで決められます。どれか1つだけで決めず、3つを並べて見てください。
1つ目の要介護度は、特養の判定の対象になるかを決めます。要介護3以上なら申し込む価値がはっきりし、要介護1・2なら特例入所に当たるかの見通しを施設に聞く話になります。2つ目の所得と預貯金は、負担限度額認定の段階に当たるかを決め、当たる親ほど特養との月の差が開きます。3つ目の在宅の限界は、待てる期間の長さそのものです。
- 1要介護度を確かめる要介護3以上か、要介護1・2で特例入所の見通しがあるか
- 2所得と預貯金を見る負担限度額認定の第1〜第3段階に当たるか
- 3在宅の限界を見積もる介護者の体と仕事、夜間の介護、医療ケア
- 4決める待つ、待ちながら別の場所でつなぐ、有料に入る
たとえば、要介護4で第2段階に当たる母を、同居の娘が夜間も含めてあと半年は見られそうな場合、特養に申し込み、待つ間はショートステイなどでつなぐ道に分があります。軽減が効く特養と、効かない有料老人ホームとの差が、毎月の持ち出しで見て大きいからです。
反対に、要介護2で市町村民税の課税世帯に当たる父を、一人暮らしで支えるのがもう難しい場合は、特養は特例入所の判断を待つことになり、入れても食費・居住費の軽減は原則として対象外です。この父なら、入居の要件が合う有料老人ホームを先に探し、特養の申込は並行させる考え方が現実的になります。
編集部の整理では、3つの物差しのうち家族が最初に数字にできるのは、2つ目の所得と預貯金です。親の年金の通知と通帳を見て段階の見当をつけ、そのうえで要介護度と在宅の限界をケアマネジャーと話すと、待つか入るかの話が感覚ではなく数字で進みます。
待つ間の選択肢
特養の順番を待つ間は、在宅サービスを増やす、ショートステイを使う、老健に入る、有料老人ホームに入って特養に申し込んでおく、の4つの道があります。どれを選んでも、特養の申込は続けられます。
在宅サービスは、要介護度ごとの区分支給限度基準額の中で使えます。要介護3なら1単位10円の地域の目安で月270,480円、要介護4なら309,380円、要介護5なら362,170円までで、その1〜3割を払います。ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)は負担限度額認定の対象で、第2段階なら食費は1日600円です。老健は家に戻るための支援の施設なので、入るときに退所後の行き先を一緒に考えておく必要があります。
- 在宅サービスを増やす:限度額の中で訪問介護やデイサービスの回数を見直す
- ショートステイを使う:家族の休息や、介護者の出張の間をつなぐ
- 老健に入る:退院後のリハビリが要るときの選択肢で、退所後の行き先を決めておく
- 有料老人ホームに入る:入居していても特養に申し込むことはできる
有料老人ホームに入居していても、特養に申し込むことはできます。入居している間は家賃などを払いながら待つことになるので、前の段で見た前払金の返還の仕組みと、毎月の持ち出しが何か月続けられるかを先に計算しておいてください。
出典:介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)/介護保険法8条(e-Gov法令API)
たとえば、要介護3の父が入院中で、退院後すぐに家に戻るのは難しいと言われた場合、病院の相談員から老健の名前が出ることがあります。老健を出る時期に特養の順番が来ていなければ、次の行き先を探すことになります。老健に入るときは、出たあとに家へ戻るのか、有料老人ホームに入るのかを、入所の時点で家族で決めておくと慌てずに済みます。
どちらにも入らず在宅で続ける条件
特養にも有料老人ホームにも入らず、家で続ける道もあります。続けられるかどうかは、介護の量、夜間の体制、医療ケアの担い手、家族の暮らしの4つで決まります。
要介護度と限度額の範囲で在宅サービスを組み直し、ショートステイで家族の休みを作ると、施設に入る時期を遅らせられることがあります。逆に、次の条件のどれかが崩れているなら、在宅を続けることが親と家族のどちらにも重くなっているサインです。
- 介護の量:必要な訪問介護やデイサービスが、限度額の中に収まっている
- 夜間の体制:夜中のトイレや見守りを、家族か訪問のサービスで担えている
- 医療ケア:たんの吸引や服薬の管理などを、訪問看護や家族で担えている
- 家族の暮らし:主に介護する人の体調と仕事が、あと数か月は続けられる見通しがある
たとえば、要介護3で認知症のない母が、昼はデイサービスに通い、夜は同居の息子が見ている場合、息子の仕事に夜勤がなく、母の夜中の起き上がりが少なければ、在宅を続ける条件はそろっています。同じ母でも、息子の転勤が決まったり、夜中に何度も起きるようになったりすると、4つ目と2つ目の条件が崩れ、施設を考える段階に入ります。
親が施設に入ることを拒んでいるときは、在宅を続けるのか、施設を勧めるのかの前に、本人の気持ちを聞く順番があります。次の記事で、話の切り出し方をまとめています。
4つの条件は、ケアマネジャーとの面談のたびに見直してください。在宅で続ける判断は一度きりではなく、条件が変わったら、特養の申込や有料老人ホームの見学に進む合図として使えます。
探し方と申し込みの進め方
特養は申し込んで順番を待ち、有料老人ホームは見学して契約するので、2つの探し方を並行させると時間を無駄にしません。どちらも、親の要介護度・所得・医療ケアを書いた紙を持って始めます。
特養の申込の方法と入所の判定の仕方は、地域の入所指針で決まります。指針は公表されているので、親の住む市区町村の高齢者福祉の担当か、申し込みたい施設に、申込書の出し方と判定の時期を聞いてください。有料老人ホームは、重要事項説明書を書面で受け取って比べます。有料老人ホームの介護の内容や運営の状況は都道府県に報告され、都道府県が公表しています。
- 親の要介護度・負担限度額認定の段階・医療ケアを紙に書く
- 特養は、地域の入所指針と申込の方法を市区町村か施設に聞いて申し込む
- 有料老人ホームは、入居時の要件と類型で候補を絞り、重要事項説明書を取り寄せる
- 見学で、介護の受け方・医療の対応・前払金の返還の条件を確かめる
- 特養の順番と、在宅の限界・有料老人ホームの持ち出しを並べて決める
有料老人ホームの見学では、特養に申し込んでいる、または申し込む予定であることを伝えたうえで、途中で退去するときの扱いも確かめてください。
候補の有料老人ホームを地域で探すときは、施設の検索サイトで類型と地域を絞り、資料を取り寄せる方法があります。資料が届いたら、介護サービス費とそれ以外の額を、特養の目安と同じ表に書き写して比べてください。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
特養に申し込みながら、待つ間の候補として有料老人ホームも並べておくと、在宅が続かなくなったときに慌てずに済みます。老人ホームの検索サイトでは、地域と予算で絞って有料老人ホームの資料をまとめて取り寄せられます。届いた資料は、月額に含まれるものと別にかかるものを、特養の目安と同じ表に書き出して比べてください。
入居したあとの実家
親が特養や有料老人ホームに入ったあとに残るのは、空いた実家をどうするかという問題です。入居の手続きが終わったころに、郵便物や固定資産税の通知、家の傷みとして表に出てきます。
特養のように長く暮らす場所に入った場合、親が家に戻る見通しは立ちにくくなります。そのときに話し合うのは、まず「誰がいつ家の様子を見に行くか」で、貸すか売るかはその後の話です。親の判断ができるうちに、家の扱いについての希望を聞いておくと、あとで家族の意見が割れたときの手がかりになります。
たとえば、母が特養に入り、実家に誰も住まなくなった場合、郵便の転送と、月に何度誰が見に行くかを決めておくだけで、ポストがあふれて近所から連絡が来る事態を避けられます。
親が老人ホームに入ったまま亡くなり、空いた実家を相続して売る場合も、要介護認定などの条件を満たせば、空き家の特例の対象にできることがあります。空き家の3,000万円控除の要件と、老人ホームに入っていた場合の条件
次に来ることを先に知っておくと、入居のあとの実家の問題を慌てずに迎えられます。
よくある質問
特養で気をつけることは何ですか?
入所は申込順ではなく、必要性の高い人を優先するので、申し込んでもいつ入れるかは分かりません。入れる人は原則要介護3以上で、要介護1・2は特例入所に当たるときだけです。夜間の看護や看取りなどの対応は施設ごとなので、見学で確かめてください。
特養の費用が軽くなるのはなぜですか?
介護サービス費が単位数で決まることに加え、所得と預貯金が一定以下なら、負担限度額認定で食費・居住費が段階ごとの上限まで下がるからです。有料老人ホームの家賃・食費にはこの仕組みがありません。認定の段階に当たらない課税世帯の親では、差は小さくなります。
要介護3なのに特養に入れないのはなぜですか?
要介護3以上は判定の対象になる条件で、入所の順番は、介護の必要の程度と家族の状況などを入所指針の基準で評価して決まります。空きより申込者が多いと、順番が来るまで待つことになります。親の状態や家族の状況が変わったら、施設に伝えて申込の内容を見直してもらってください。
有料老人ホームに入ってから特養に移れますか?
有料老人ホームに入居していても、特養に申し込むことはできます。前払金のあるホームでは、入居後3か月以内の契約の終了なら返還の対象で、それ以降は想定居住期間と日割りの計算で返る額が決まります。入居前に、途中で出た場合の返還額を確かめておいてください。
夫婦で一緒に入れますか?
特養は一人ひとりが入所の条件と判定の対象なので、夫婦の一方が要介護1・2なら、その人は特例入所に当たるかの話になります。有料老人ホームは、入居時の要件が入居時自立・要支援・要介護の区分なら、夫婦の状態が違っても要件の上では対象になります。
養護老人ホームとは何が違いますか?
養護老人ホームは、65歳以上で、環境上の理由と経済的な理由から家での養護が難しい人を、市町村の措置で入所させる施設です(老人福祉法11条)。介護保険で申し込む特養や、ホームと契約する有料老人ホームとは、入り方が違います。親の住む市区町村の福祉事務所や高齢者福祉の担当に相談します。
順番のおさらい
- どこが違うか:特養は介護保険施設、有料老人ホームは届出の住まい
- 入れる人:特養は原則要介護3以上、有料老人ホームは入居時の要件の表示による
- 入所の順番:特養は申込順ではなく、入所指針で必要性の高い人を優先
- 介護の受け方:特養は施設、介護付はホーム、住宅型は外の事業所
- 月の費用:特養は単位数×単価×負担割合+食費・居住費、有料はホームの額+介護サービス費
- 所得との関係:負担限度額認定は特養に効き、有料老人ホームには効かない
- 契約:有料老人ホームの前払金は入居後3か月以内の終了で返還の対象
- 決め方:要介護度・所得と預貯金・在宅の限界の3つ
- 待つ間:在宅サービス・ショートステイ・老健・有料に入って申し込む
- 在宅で続ける条件:介護の量・夜間・医療ケア・家族の暮らし
- 探し方:特養の申込と有料老人ホームの見学を並行させる
- 入居のあと:空いた実家を誰が見に行くかから話す
特養と有料老人ホームのどちらがよいかは、施設の評判では決まりません。親の要介護度と、年金と預貯金から見た負担限度額認定の段階、そしていまの在宅があと何か月もつかが分かれば、待つのか、待ちながらつなぐのか、有料老人ホームに入るのかは、絞りやすくなります。迷ったら、その3つを紙に書いて、ケアマネジャーか地域包括支援センターに持っていくところから始めてください。

