- パンフレットの月額を見たが、これで全部なのか分からない
- 介護付きは介護費込みで、住宅型は別にかかると聞いた。どれくらい違うのか
- 入居してから要介護度が上がったら、毎月の支払いも増えるのか
- 入居一時金を払ったあと、すぐに退去したら戻ってくるのか
- 医療費やおむつ代は、月額とは別に払うのか
- 特養のように、所得が少ないと食費が軽くなる制度はあるのか
- 親の年金と貯金で、何年くらい払い続けられるのか
- 途中で払えなくなったら、どこに相談すればいいのか
上記のような悩みに答えます。
有料老人ホームの費用は、パンフレットの月額だけを見ても全体がつかめません。月額の表に入っている分と入っていない分があり、介護付きと住宅型では介護費の決まり方そのものが違うからです。検索の上位は紹介サイトや運営会社の解説で、相場や支払い方式は詳しく並んでいますが、介護付きと住宅型を同じ要介護度で並べた介護費の比べ方、住宅型で上限を超えた分が全額自己負担になること、前払金の3か月の返還と保全措置、払えなくなりそうなときの逆算は、あまり見かけません。そこで、費用の3つの層、介護費の2つの形、効く制度と効かない制度を押さえたうえで、親の年金と貯金で何年払えるかの出し方までを、老人福祉法・介護保険法の条文と厚生労働省・国税庁の資料で確かめながら整理しました。
有料老人ホームの費用は、ホームに払う家賃・食費・管理費(と入居時の前払金)、介護保険の自己負担、月額に入らない医療費や日用品の3つに分けて足すと見えてきます。介護付きの介護費は要介護度ごとの定額で、住宅型は使った分だけ、要介護度ごとの上限を超えると全額自己負担です。家賃・食費・管理費には特養のような軽減がないので、何年払えるかは「毎月の不足額」と貯金から先に確かめます。
介護費の自己負担シミュレーター(要介護度と負担割合から月額の目安を出す)
2026年10月時点の制度で確かめています
有料老人ホームの費用は3つに分けて足す

有料老人ホームに入ったあと毎月出ていくお金は、ホームに払う分、介護保険の自己負担、月額の表に入らない実費の3つです。この3つを別々に出してから足すと、「パンフレットの月額より高くなった」という食い違いを入居前に見つけられます。
3つに分けるのは、決まり方がそれぞれ違うからです。ホームに払う分はホームが料金表で決め、介護保険の自己負担は要介護度と負担割合と地域の単価で決まり、実費は親の体調や暮らし方で変わります。介護保険法では、介護付きのホームが受け取る費用のうち食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用は、保険給付の計算の外に置かれています。
| 費用の層 | 中身 | 何で決まるか |
|---|---|---|
| ホームに払う分 | 家賃・食費・管理費、入居時の前払金 | ホームの料金表と契約 |
| 介護保険の自己負担 | 介護付きは定額、住宅型は使った分 | 要介護度・負担割合・1単位の単価 |
| 月額に入らない実費 | 医療費・おむつ・日用品・保険外のサービス | 親の体調と暮らし方 |
PAAの「有料老人ホームの1ヶ月の費用はいくらですか」には、金額の平均ではなく、この3つの足し算で答えるのが確実です。家賃や食費の額はホームごとに料金表で決まっていて、全国の相場を示す公的な統計は編集部では確認できていません。
たとえば、同じホームに要介護1の父と要介護4の母が入る場合、ホームに払う分は料金表どおりで大きく変わらなくても、介護保険の自己負担は要介護度の分だけ差が出ます。さらに母が通院するようになれば、医療費の実費が別に乗ります。
編集部の整理では、候補のホームが見つかったら、紙を1枚用意して3つの層の欄を作ってください。1つ目はホームの料金表から、2つ目はこの記事の表と親の負担割合証から、3つ目はいまの親の通院や買い物の出費から埋めていきます。
老人ホームの費用を種類ごとに見る(特養・老健・グループホームも含めて)
ホームに払う家賃・食費・管理費と前払金
ホームに払う分は、毎月の家賃・食費・管理費などと、入居時にまとめて払う前払金に分かれます。どちらも介護保険の外のお金で、全額が自己負担です。
払い方は、家賃などの全部か一部を入居時に前払金として一括で払う形と、前払金を払わずに毎月払う形があります。老人福祉法は、ホームが受け取ってよいお金を家賃・敷金・介護などの対価に限り、権利金そのほかの金品を受け取ることを禁じています。
料金表では、次の欄を書き出しておくと比べやすくなります。
- 家賃(入院や外泊の間の扱い)
- 食費(食べなかった食事の扱い)
- 管理費・光熱水費(定額か、使った分か)
- 前払金の有無と、何か月分の家賃などに当たるか
- 敷金の有無
前払金がある形と無い形のどちらが得かは、親が何年そのホームに住むかで変わり、入居前には分かりません。前払金は家賃などを先に払っているだけなので、前払金の無い形のほうが月額は高く見えても、払う総額で比べると差が縮むことがあります。
たとえば、2つのホームのうち一方は前払金があって月額が低く、もう一方は前払金が無くて月額が高い場合、月額だけ並べると前者が安く見えます。前払金をホームが想定している居住期間で割って月額に足してから並べると、同じ物差しで比べられます。想定している期間は、重要事項説明書や契約書で確かめます。
編集部の整理では、ホームに払う分は「月額」と「前払金」を別々の行に書き、さらに「前払金を想定期間で割った額」の行を足してください。こうしておくと、払い方の違うホームを並べても、どこで差が出ているかが見えます。
介護付きの介護費は1日の単位数で決まる
介護付きの有料老人ホームの介護費は、要介護度ごとに1日の単位数が決まった定額です。使ったサービスの回数で増減しないので、要介護度と負担割合が分かれば月の目安を出せます。
介護付きと表示できるのは、介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームで、一般型では、ホームの職員が計画に沿って介護を行います。その費用が1日あたりの単位で決まっていて、1単位が何円になるかは地域区分で違います。特定施設入居者生活介護の単価は、その他の地域が10円、1級地が10.90円です。下の表は一般型の、令和6年度改定後の基本の部分の単位数で、加算は含みません。外部の事業者が介護を行う外部サービス利用型には当てはまりません。
| 要介護度 | 1日の単位数 | 30日分の単位数 |
|---|---|---|
| 要介護1 | 542単位 | 16,260単位 |
| 要介護2 | 609単位 | 18,270単位 |
| 要介護3 | 679単位 | 20,370単位 |
| 要介護4 | 744単位 | 22,320単位 |
| 要介護5 | 813単位 | 24,390単位 |
出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造」(社会保障審議会介護給付費分科会 参考資料)/厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における地域区分」/要介護度の認定:介護保険法27条(e-Gov法令API)
たとえば、要介護3で1割負担の母が1単位10円の地域の介護付きに入ると、679単位×30日×10円×1割で、介護費の自己負担は月20,370円の目安です。同じ母が2割負担なら40,740円になります。入居後に要介護4になれば、1割負担のままでも22,320円に上がります。
負担割合は原則1割で、2割・3割になるのは合計所得金額と「年金収入+その他の合計所得金額」の2つの基準を両方満たしたときです。
| 負担割合 | 合計所得金額 | 年金収入+その他(単身) | 同(2人以上の世帯) |
|---|---|---|---|
| 3割 | 220万円以上 | 340万円以上 | 463万円以上 |
| 2割 | 160万円以上 | 280万円以上 | 346万円以上 |
| 1割 | 上に当たらない | ― | ― |
介護付きで特定施設入居者生活介護を受けている間は、訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・通所介護・通所リハビリテーションの6つを介護保険で別に使えません。
編集部の整理では、介護付きの介護費は「要介護度」「負担割合証の割合」「ホームの地域の単価」の3つで出せます。料金表の介護費の欄が表の額より高ければ、どの加算が付いているかを聞いてください。
住宅型の介護費は上限の中で使った分
住宅型の有料老人ホームの介護費は、外の訪問介護やデイサービスを使った分の1〜3割です。要介護度ごとに1か月に保険で使える上限があり、上限を超えた分は全額自己負担になります。
住宅型は、介護が必要になったときに入居者自身の選択で地域の訪問介護などを使う類型です。有料老人ホームの居室は介護保険法の「居宅」に含まれるので、自宅にいるときと同じ居宅サービスの計算になります。その上限が区分支給限度基準額で、単位数で決まっています。
| 要介護度 | 1か月の上限 | 1単位10円の地域の目安 |
|---|---|---|
| 要介護1 | 16,765単位 | 167,650円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 197,050円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 270,480円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 309,380円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 362,170円 |
出典:介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)
訪問介護の1単位の単価は、その他の地域が10円、1級地が11.40円です。上限の円の額は1単位10円で計算した目安なので、単価の高い地域では同じ単位数でも円の額が上がります。
※1単位の単価は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
上限いっぱいに使った場合の1割の自己負担は、1単位10円の地域で、要介護1が16,765円、要介護3が27,048円、要介護5が36,217円です。上限を超えた場合の例として、要介護4で1割負担の父が要介護5の上限にあたる362,170円分のサービスを使うと、上限の309,380円までは1割の30,938円、超えた52,790円は全額自己負担で、合わせて83,728円の目安です。
この「上限いっぱい」は計算の目安で、住宅型の入居者がみな上限まで使うわけではありません。使う量はケアマネジャーが作るケアプランで決まり、少なければ自己負担も表より下がります。
編集部の整理では、住宅型の介護費は入居前にケアプランの案を作ってもらい、「上限の何割を使う案か」を確かめてください。上限に近い案なら、介護が重くなったときに超える分が出やすいと読めます。
同じ要介護度で並べると差はどこで出るか
介護付きと住宅型の介護費の差は、要介護度そのものより、住宅型でどれだけサービスを使うかで決まります。介護付きは使い方にかかわらず定額、住宅型は使い方しだいで上下するからです。
同じ要介護3・1割負担・1単位10円の地域で並べると、介護付きは月20,370円の定額です。住宅型は上限いっぱいに使えば27,048円で、それより少なく使えばその分だけ下がります。
住宅型の介護費が介護付きの定額を上回るのは、使う量が多くなったときだけです。
- 1日679単位の定額で月20,370円
- 使う回数で変わらない
- 訪問介護やデイサービスは保険で別に使えない
- 使った分で上限いっぱいなら27,048円
- ケアプランの中身で上下する
- 上限を超えた分は全額自己負担
要介護3・1割負担・1単位10円の地域で、住宅型を上限いっぱいに使った場合と介護付きの定額の差は、27,048円−20,370円=6,678円です。
ただし、これは介護保険の部分だけの比べ方です。家賃・食費・管理費はホームごとに違い、介護付きでも料金表に介護保険の外の費用の欄が別にあることがあるので、月額の全体はホームの料金表を足すまで比べられません。また、介護付きの単価は特定施設の区分、住宅型の訪問介護の単価は別の区分で決まるので、同じ地域でも1単位の円の額がずれることがあります。
たとえば、要介護2で週の半分をデイサービスで過ごす父なら、住宅型の介護費は上限の一部で収まることがあり、介護付きの定額より低くなる場合があります。夜間も含めて介護の量が多い母なら、住宅型では上限に近づきやすく、介護付きの定額のほうが読みやすくなります。
編集部の整理では、比べるときは「介護付きの定額」と「住宅型のケアプラン案の自己負担」を同じ要介護度で横に並べ、そのうえで両ホームの料金表を足してください。介護費だけで決めると、保険外の差を見落とします。
月額の表に入っていない出費

ホームの月額と介護保険の自己負担のほかに、医療費・おむつ代・日用品・介護保険の外のサービスの費用が、入居者ごとにかかります。これらは料金表の「別途」「実費」の欄に回っていることがあるので、欄の中身を1つずつ聞くことが要ります。
月額に入らないものは、料金表に「別途」「実費」と書かれる費用です。通院や訪問診療の医療費は医療保険の自己負担で、介護保険とは別の仕組みです。
- 医療機関の診療費・薬代(医療保険の自己負担)
- おむつ代などの消耗品
- 理美容・日用品・嗜好品
- 介護保険の外で頼む付き添いや買い物の代行
- 住宅型で上限を超えて使った介護サービス
おむつ代は、国税庁の説明では、おおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けていて、おむつ使用証明書などがある場合に医療費控除の対象になります。条件に当てはまらなければ、ただの日用品の出費として家計から出ていきます。
出典:国税庁 タックスアンサーNo.1122 医療費控除の対象となる医療費
たとえば、通院が月に数回ある父なら、医療費の自己負担のほかに、ホームの職員が付き添う場合の付き添いの費用が料金表で別になっていないかを確かめます。付き添いを家族がする前提なのか、ホームに頼めるのかで、子の仕事の休み方も変わってきます。
編集部の整理では、いまの親の暮らしで毎月出ている医療費・薬代・日用品の額を、通帳や領収証から3か月分ほど書き出してください。入居後もほぼ同じように出ていく部分なので、3つ目の層の見積もりに使えます。
戻るお金と軽くなる制度の線引き
有料老人ホームで効くのは、介護保険の自己負担に対する高額介護サービス費です。特養などで使える負担限度額認定(補足給付)は効かず、家賃・食費・管理費は所得に関係なく全額を払います。
高額介護サービス費は、1か月の介護保険の自己負担が区分ごとの上限を超えたとき、超えた分が申請で戻る仕組みです。特定施設入居者生活介護も居宅サービスなので、介護付きの介護費も対象になります。対象になるのは介護保険の自己負担の部分です。家賃・食費・管理費などの扱いは、市区町村の介護保険の窓口で確かめてください。
| 区分 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 市町村民税課税〜課税所得380万円未満 | 44,400円(世帯) |
| 市町村民税世帯非課税 | 24,600円(世帯) |
| 世帯非課税で、年金収入+その他の合計所得金額が82.65万円以下 | 15,000円(個人) |
出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.997/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」/介護保険法51条(e-Gov法令API)
たとえば、市町村民税課税〜課税所得380万円未満の世帯で、2割負担の母だけが介護保険を使い、住宅型で要介護4の上限いっぱい(309,380円分)を使うと、自己負担は61,876円です。世帯の上限は44,400円なので、差の17,476円は申請すると戻る計算になります。
給付を受ける権利は2年で時効になります。いつから数えるかは、市区町村に確かめてください。
負担限度額認定の対象は、特養・老健・介護医療院・地域密着型の特養・短期入所生活介護・短期入所療養介護の6つで、有料老人ホームは入っていません。医療費控除は、医療費の合計から保険金などを引き、10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)を超えた部分が対象です。住宅型で使う居宅サービスは、訪問看護などの医療系は単独で対象、デイサービスや訪問介護(生活援助中心型を除く)は医療系と併せて使ったときだけ対象です。介護付きのホームの介護費(特定施設入居者生活介護)は、国税庁の区分では医療費控除の対象外です。ホームとは別に払う医療機関の診療費などは別の扱いなので、迷ったら税務署に確かめてください。
出典:介護保険法51条の3(e-Gov法令API)/所得税法73条(e-Gov法令API)
編集部の整理では、子が親の医療費を自分の控除に入れられるかは「生計を一にしている」かで変わり、別居なら一律には決まりません。確定申告の前に税務署で、仕送りの有無を添えて聞いてください。
入居一時金は何のお金か
入居一時金は、家賃などを入居時にまとめて払う前払金です。入居後3か月以内に契約の解除や死亡で契約が終わったときは、住んだ日数分を差し引いて返す契約が義務づけられています。
老人福祉法は、前払金を受け取るホームに、算定の基礎を書面で示すことと、返すことになったときに備えた保全措置を講じることを求めています。前払金は、ホームが想定した居住期間にわたって家賃などに充てられていくお金で、その充て方を「償却」と呼ぶことがあります。償却の仕方は契約ごとに違います。想定した居住期間が終わるまでに契約が終われば、施行規則が定める方法で計算した額が返還の対象です。
| 契約が終わった時期 | 返還の考え方 |
|---|---|
| 入居後3か月以内 | 家賃などの月額÷30×住んだ日数を差し引いた残り |
| 3か月を過ぎ、想定居住期間内 | 契約が終わった日以降の期間について日割計算で出した家賃などの額を、一時金の額から控除する方法 |
| 想定居住期間の後 | 施行規則21条1項の返還の期間には入らない(返還は契約書の定めによる) |
出典:老人福祉法施行規則21条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)
この3か月は、施行規則の文言で「三月」と書かれている期間です。指針は、解約の申し出から契約解除までの予告期間を設けて、返還の対象になる期間を事実上短くしてはならないとしています。指針は都道府県の指導の基準で法律ではありませんが、解約の条項に長い予告期間があれば確かめる材料になります。
たとえば、入居して間もなく親が入院し、そのまま退去を決めた場合は、3か月以内の扱いになるかどうかを、契約が終わる日で確かめます。退去の申し出を出す日によっては3か月を過ぎるので、申し出の前に契約書の返還の条項を読みます。
編集部の整理では、重要事項説明書の前払金の欄で「算定の基礎」「想定居住期間」「保全措置の方法」の3つに付せんを貼ってください。保全措置が講じられているかは、口頭ではなく書面の記載で確かめます。
親の年金と貯金で何年払えるか

何年払えるかは、毎月の支出から毎月の収入を引いた「不足額」を出し、それで貯金を割って確かめます。年齢から決まるものではなく、親の要介護度・負担割合・ホームの料金表で決まります。
先に出せるのは、1か月にいくら足りないか、そして要介護度が上がるとその不足額がどれだけ動くかです。そこから、貯金がもつ期間の目安が出ます。
介護付き・1割負担・1単位10円の地域で、要介護1の介護費は月16,260円、要介護4では22,320円です。差は6,060円で、12か月では72,720円になります。収入が変わらなければ、この分だけ1年の不足額が増え、貯金がもつ期間は短くなります。
PAAにある「◯歳から老人ホームに入る場合の費用」という問いには、年齢そのものは費用を決めないと答えます。決めるのは、そのときの要介護度と負担割合と料金表です。そのうえで、入居時の前払金は貯金から先に引いておき、残った貯金を1年の不足額で割ります。
たとえば、1年の不足額を出したら、要介護度が2段上がった場合の不足額も出しておきます。2つの年数の差が、介護が重くなったときに早まる分です。住宅型なら、ケアプラン案が上限の何割かで、その差がさらに広がるかどうかが読めます。
編集部の整理では、年金の振込額は通知書で、貯金は通帳で、支出はこの記事の3つの層で埋め、「いまの要介護度」と「2段上がったとき」の2行で計算してください。兄弟で分担するかどうかの話も、この2行があると数字で始められます。
払えなくなりそうなときの動き方
払えなくなりそうだと分かったら、不足額が貯金を食い尽くす前に、ケアマネジャー・ホームの相談員・市区町村の介護保険の窓口に相談します。早いほど、選べる道が多く残ります。
最初に見直せるのは、介護保険の自己負担の部分です。高額介護サービス費の申請が漏れていないか、住宅型ならケアプランに上限を超えている月がないかを確かめます。そのうえで、ホームに払う分には補足給付のような軽減が効かないので、住み替えを含めて考える段階に入ります。
- ケアマネジャー:ケアプランの見直し、上限を超えていないか
- ホームの相談員:料金の見直しの余地、退去の手続きと予告期間
- 市区町村の介護保険の窓口:高額介護サービス費、負担割合証
- 地域包括支援センター:住み替え先の候補、生活の相談
- 市区町村の福祉の窓口:生活が立ち行かないときの相談
住み替えの候補は、負担限度額認定で食費・居住費が軽くなる特養などの施設や、介護の量に合った在宅の形です。生活保護を受けて有料老人ホームに住み続けられるかは、ホームと自治体で扱いが違うので、ここでは決めつけず、福祉の窓口とホームの両方に聞いてください。PAAの「お金がない老人ホームの費用はどうすればいいですか」への答えも、相談の順番から始まります。
たとえば、入居から数年で貯金の残りが1年の不足額の2年分ほどになった場合、その時点で特養の申込みや住み替え先の見学を始めれば、退去を急がされる前に動けます。
編集部の整理では、貯金の残りが「1年の不足額の何年分か」を半年ごとに書き出し、数字が小さくなってきた段階で相談の予約を入れてください。相談には、料金表・負担割合証・通帳の写しを持っていくと話が具体的になります。
入らずに在宅で続ける場合の費用
有料老人ホームに入らず在宅で続ける道を選ぶと、家賃・食費は今の暮らしのままで、介護費は住宅型と同じく区分支給限度基準額の中で使った分になります。在宅で続けられる条件がそろっているなら、入らないことも1つの選択です。
在宅の介護費は、住宅型と同じ居宅サービスの計算なので、上の上限の表がそのまま使えます。違うのは、ホームの家賃・管理費がかからない代わりに、食事の用意や夜間の見守りを家族か外のサービスで埋めることです。
生命保険文化センターの2024年度の調査では、介護を行った場所別の月々の費用の平均は、在宅で5.3万円、施設で13.8万円でした。これは調査の平均で、制度の数字ではありません。施設の区分には特養なども含まれ、幅も大きいので、親の場合の見積もりは上の3つの層で出してください。
出典:生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」(生命保険に関する全国実態調査 2024年度)
在宅で続けられるかは、次の点で考えます。
- 食事の用意を家族か配食・訪問介護で回せている
- 夜間に何かあったとき、誰かが気づいて連絡できる
- 主に介護する家族が、仕事や体調を崩さずに続けられている
- 本人が今の家で暮らしたいと思っている
たとえば、要介護2で一人暮らしの母が、訪問介護とデイサービスで食事と入浴が回っているなら、在宅の介護費は上限の中で収まり、ホームの家賃もかかりません。夜間の転倒が増えて、離れて住む子が駆けつけられない状態なら、ホームの費用を比べる段階です。
編集部の整理では、在宅と入居を比べるときは、在宅の側にも「家族が埋めている手間」を書き出してください。お金だけ並べると在宅が安く見えますが、その手間が続かなくなったときが、住まいを変える時期の目安になります。
料金表を取り寄せて比べる
候補のホームが2〜3か所に絞れたら、料金表と重要事項説明書を取り寄せて、同じ欄どうしで並べます。
ホームは、入居を考えている人に費用の負担の額などを説明する文書を書面で交付することになっていて、一般に重要事項説明書と呼ばれています。運営の状況は都道府県知事に報告され、知事が公表する仕組みもあるので、手元の書面と見比べることもできます。
| 並べる欄 | 見ること |
|---|---|
| 類型 | 介護付きか住宅型か(介護費の形が決まる) |
| 月額の内訳 | 家賃・食費・管理費のどれが入っているか |
| 介護費 | 定額の額と加算、または上乗せの費用 |
| 別途の費用 | 医療・おむつ・付き添い・日用品 |
| 前払金 | 有無、想定居住期間、返還の条件、保全措置 |
| 解約 | 予告期間と、ホームから解除できる場合 |
出典:老人福祉法29条11・12項(運営状況の報告と公表・e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則20条の7(e-Gov法令API)
たとえば、2つのホームの月額が近くても、一方は管理費に光熱水費が入っていて、もう一方は別途だということがあります。欄を同じ並びにそろえて初めて、どちらがどれだけ高いかが分かります。
編集部の整理では、取り寄せた書面は家族で回し読みし、分からない欄に付せんを貼って、質問の箇条書きを作ってから見学の予約を入れてください。親の要介護度と負担割合証の写しを手元に置いておくと、ホームからの答えをその場で当てはめられます。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
料金表の月額だけで比べると、住宅型は介護費が別に乗る分、介護付きより高くなることがあります。候補のホームの資料を取り寄せたら、「介護費は月額に含まれるか」「前払金の返還の決まり」「月額に含まれない費用」の3つを同じ表に書き出してください。地域の有料老人ホームの資料をまとめて取り寄せられる検索サイトもあります。
入居したあとの実家をどうするか
親が有料老人ホームに入ると、次に来るのは空いた実家の扱いです。前払金や不足額に実家を充てるかどうかで、ホームの費用の見通しも変わります。
実家を残せば、管理の手間と固定資産税などの費用は続きます。売って費用に充てるなら、売る時期と税の扱いを調べることになり、家族が使うなら名義と費用の分担を話す必要があります。どの道を取るかで、上で出した「払える年数」の計算に入れる貯金の額が変わります。
たとえば、父が入居して母がすでに亡くなっている場合、父が話せるうちに「戻るつもりはあるか」「仏壇や荷物をどうするか」を聞いておくと、あとで兄弟の判断が割れにくくなります。
親が老人ホームに入ったまま亡くなり、空いた実家を相続して売る場合も、要介護認定などの条件を満たせば、空き家の特例の対象にできることがあります。空き家の3,000万円控除の要件と、老人ホームに入っていた場合の条件
入居の準備と同じ時期に、「戻るか」「売るか」「誰が管理するか」の3つだけでも言葉にしておいてください。
よくある質問
有料老人ホームの1ヶ月の費用はいくらですか?
ホームに払う家賃・食費・管理費、介護保険の自己負担、医療費などの実費の3つを足した額です。家賃などはホームごとに違うので、料金表で確かめます。介護費は、介護付きなら要介護度ごとの定額、住宅型なら使った分です。
介護付きは介護費込みで、住宅型は別ですか?
介護付きは介護費が要介護度ごとの定額で、料金表に介護費の欄として載っていることがあります。住宅型は外の事業所を使った分を別に払います。どちらも介護費は家賃・食費とは別の計算です。
要介護度が上がると費用は増えますか?
介護付きは1日の単位数が上の段に変わるので、介護費が増えます。
1割負担・1単位10円の地域なら、要介護1の月16,260円が要介護4で22,320円になる目安です。
住宅型は上限が上がる一方、使う量が増えればその分の介護費が増えます。
入居一時金は戻りますか?
入居後3か月以内に契約の解除や死亡で終わったときは、住んだ日数分を差し引いて返す契約が義務づけられています。3か月を過ぎても、想定居住期間内なら返還の定めがあります。返る額は契約ごとなので、返還の条項を確かめてください。
食費や家賃が軽くなる制度は使えますか?
負担限度額認定は特養・老健・介護医療院などの6つが対象で、有料老人ホームの家賃・食費は下がりません。介護保険の自己負担には高額介護サービス費があり、上限を超えた分は申請で戻ります。
夫婦で入ると費用はどうなりますか?
介護保険の自己負担は1人ずつ計算し、高額介護サービス費は世帯の上限で見る区分があります。家賃や食費の夫婦の扱いはホームごとなので、2人で入った場合の料金表をもらってください。
順番のおさらい
- 費用の形:ホームに払う分、介護保険の自己負担、月額に入らない実費の3つを足す
- ホームに払う分:家賃・食費・管理費と前払金。権利金は受け取れない
- 介護付き:1日の単位数で決まる定額。加算と地域の単価で上下する
- 住宅型:上限の中で使った分の1〜3割。上限を超えた分は全額自己負担
- 比べ方:同じ要介護度で、定額とケアプラン案の自己負担を並べる
- 別途の出費:医療費・おむつ・日用品・保険外のサービス
- 制度:高額介護サービス費は効く。負担限度額認定は効かない。医療費控除は区分で見る
- 入居一時金:家賃などの前払い。入居後3か月以内は日数分を引いて返る
- 何年払えるか:月の不足額×12で貯金を割り、要介護度が上がった場合も出す
- 払えなくなりそうなとき:貯金が尽きる前に、ケアマネジャーと市区町村に相談する
- 在宅の道:食事と夜間を埋められるなら、入らない選択もある
- 比べ方の道具:料金表と重要事項説明書を同じ欄で並べる
- 入居後:実家をどうするかで、払える年数の計算も変わる
有料老人ホームの費用で迷ったら、平均の額を探すより、親の数字で3つの層を埋めるほうが早く答えに近づきます。介護費は要介護度と負担割合で出せ、ホームに払う分は料金表で決まり、実費は今の暮らしから見積もれます。その合計と年金の差が分かれば、何年払えるかも、いつ相談を始めるかも、家族で同じ数字を見ながら決められます。

