介護施設見学で何を見るか|チェックリスト・選び方・契約前に確かめること

病院の廊下
  • 資料は取り寄せたが、見学の当日に何を見ればいいのか分からない
  • 何を聞けばいいのか、失礼にならない質問の仕方が知りたい
  • パンフレットの写真と、実際の暮らしが違っていたらどうしよう
  • 「介護付き」と書いてあれば、介護が重くなっても住み続けられるのか
  • 入居一時金は、合わなくて出たときに戻ってくるのか
  • どんなときに退去を求められるのか、見学で聞いてもいいのか
  • 親を連れて行くべきか、本人が嫌がったらどうするか
  • 見学のあと、兄弟で意見が割れたらどう決めればいいのか

上記のような悩みに答えます。

介護施設の見学は、施設の紹介サイトや運営会社の案内で、予約の取り方・設備や清潔さ・職員の対応・チェックシートまでは丁寧に紹介されています。けれども、どんな条件がそろったら「ここには入らない」と決めるのか、見学の場では見えない夜間の体制や前払金の返還・退去の条件をどの書面のどの欄で確かめるのかは、施設を紹介する側からは書きにくいところです。そこで、見学の前の準備・当日に見るところ・聞くことという基本を押さえたうえで、重要事項説明書と契約書の読み方と、見学の後に家族で決める手順まで、老人福祉法・高齢者住まい法の条文と厚生労働省・消費者庁の資料で確かめながら整理しました。

先に答え

見学は設備を眺める場ではなく、入居してから困ることを確かめて持ち帰る場です。行く前に家族で「ここには入らない」条件を決め、見学では生活の様子と職員の動きを見て、重要事項説明書と契約書の写しを必ずもらってください。決めるのは、その書面を家族で読み合わせてからです。

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目次

見学は確かめて持ち帰る場

病院の廊下

見学で決めるのは「気に入ったかどうか」ではなく、「入居後に困ることが起きないと確かめられたかどうか」です。建物の新しさや玄関の明るさは、入居してから家族が困る場面とは、別の話です。

入居してから家族が慌てるのは、介護が重くなったときにそのまま住めるのか、夜中に具合が悪くなったら誰が動くのか、合わなくて出るとき前払金はどう扱われるのか、といった場面です。こうした点は、見学の短い時間には目に見える形で出てきません。見えないものは、職員に聞いて答えをもらい、書面で裏を取るしかありません。

有料老人ホームの設置者には、入居しようとする人に、提供するサービスの内容や費用負担など入居契約に関する重要な事項を書面で交付して説明することが義務づけられています(老人福祉法29条7項・老人福祉法施行規則20条の7)。見学の場は、この書面をもらい、書面に書かれていないことを質問する場として使うと、持ち帰るものがはっきりします。

見学で見えることと、書面で確かめること
見学の場で見えること

  • 入居者の過ごし方と表情の向き
  • 職員の動き方と声のかけ方
  • 居室・共用部・食事の様子
書面で確かめること

  • 介護をホームが提供するか外部の事業所か
  • 夜間の最少の介護職員等の数
  • 前払金の返還と退去の条件

たとえば、玄関にソファが並ぶ新しいホームと、建物は古いが食堂がにぎやかなホームを比べる場合、見学の印象では前者に気持ちが傾きやすくなります。けれども、介護付の表示の根拠や夜間の人数を書面で比べると、順位が入れ替わることがあります。印象は当日のメモに残し、判断は書面がそろってからにしてください。

見学の帰り道に「何をもらったか」「何を聞けなかったか」を書き出しておくと、次の見学で聞くことが決まり、家族への説明も短く済みます。

老人ホームの種類と違い、親の状態からの選び方

行く前に決める「入らない条件」

見学の前に、家族で「これがあったら入らない」という条件を3つか4つ決めておいてください。見学の場は案内する側の段取りで進むので、その場で線を引こうとすると、良いところだけを持ち帰りやすくなります。

入らない条件は、親の状態から逆算して決めます。施設の良し悪しを一般論で並べるのではなく、「うちの親がこの施設で暮らすと、どこで行き詰まるか」を先に考えておくと、見学で確かめることがそのまま決まります。編集部では、次の4つを土台にして、親の事情で足し引きすることをすすめています。

入らない条件 当てはまる例 確かめる場所
親の状態で受けられない介護・医療がある 必要な医療的ケアに対応していないと説明された 見学での質問と重要事項説明書
夜間の体制が確かめられない 夜間の最少の介護職員等の数を答えてもらえない 重要事項説明書・広告の表示
前払金の返還や退去の条件を書面で出さない 「契約のときに説明します」と写しをもらえない 重要事項説明書・契約書
表示と類型が合わない 「介護付き」とあるのに特定施設の指定が書かれていない 重要事項説明書の類型の欄・自治体の情報

出典:老人福祉法施行規則20条の7(e-Gov法令API)/有料老人ホームに関する不当な表示(消費者庁・PDF)

1つ目の介護・医療は、親の主治医やケアマネジャーに、いま必要なケアと、この先に必要になりそうなケアを聞いてから書きます。2つ目の夜間は、消費者庁の告示で、有料老人ホームが介護職員等の数を表示するなら夜間の最少の人数まで明りょうに書くことになっているので、答えられないこと自体が判断の材料になります。3つ目と4つ目は、書面が出てこない、あるいは書面の中身と説明や表示が合わない、という形で表に出ます。

たとえば、夜中に何度もトイレに起きる父なら、2つ目の夜間の体制が最優先の条件になります。反対に、日中も見守りがあれば足りる母で、持病の通院が続く場合は、1つ目の医療の対応と、通院の付き添いを誰がするかを先に確かめる話になります。同じ4つでも、親によって重みが変わります。

条件を決めるときは、兄弟の誰か1人が書いた案を、全員に回して足し引きしてもらってください。見学の後に意見が割れたとき、事前に合意した条件に立ち戻れるので、話が「好き嫌い」になりにくくなります。

見学の前にそろえること

見学の前にそろえるのは、施設の類型と入居時の要件の表示、親の状態を書いた紙、予約の電話で頼む書面の3つです。この3つがあれば、当日の限られた時間を、確かめることだけに使えます。

有料老人ホームは、厚生労働省の指針にそって、広告やパンフレットで施設名と一緒に類型を表示します。類型は、介護付(一般型特定施設入居者生活介護)・介護付(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護)・住宅型・健康型の4類型です。入居時の要件も、入居時自立・入居時要介護・入居時要支援・要介護・入居時自立・要支援・要介護の4区分で示されます。資料が届いたら、まずこの2つの欄に印を付けてください。

  • 類型:介護をホームが提供するのか、外部の事業所を自分で選ぶのか
  • 入居時の要件:いまの親の認定で入居の対象になるか
  • 親の状態のメモ:要介護度・認知症の有無・医療的ケア・夜間の様子・服薬
  • 予約の電話で頼むもの:重要事項説明書の写しと契約書のひな形
  • 家族の入らない条件:前の段で決めた3つか4つ

出典:有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)

健康型は、介護が必要になったら契約を解除して退去しなければならない類型として、指針の別表に書かれています。要介護の認定を受けている親の候補に健康型が混ざっていたら、その時点で外して構いません。住宅型は、介護が必要になったときに地域の訪問介護などを自分で選んで使う類型で、ケアマネジャーと事業所も家族が選ぶことになります。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、有料老人ホームとは別に、都道府県知事の登録を受けた住まいです(高齢者の居住の安定確保に関する法律5条)。サ高住の登録だけで介護保険の特定施設になるわけではなく、有料老人ホームの定義に当たるサ高住が特定施設入居者生活介護の指定を受けたときに、その介護を行えます。資料に「サ高住」とあれば、特定施設の指定の有無を予約の電話で聞いておいてください。

予約の電話では、見学の日時と一緒に「重要事項説明書の写しを当日いただけますか」と頼むと、当日に慌てずに済みます。手土産の要否は施設の考え方によるので、気になるならこの電話で聞いておけば迷いません。

※施設の指定や届出の情報の調べ方は地域によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

介護付き有料老人ホームの費用と入居の条件

住宅型有料老人ホームの費用と介護の受け方

見学の場で見るところ

当日に見るのは、建物よりも、入居している人の過ごし方と職員の動きです。設備の新しさは写真で分かりますが、暮らしの様子は現地でしか分かりません。

案内の担当者が通る道は、見せたい場所が中心になります。廊下の途中や食堂の端で立ち止まり、入居者が何をして過ごしているか、職員がどんな声のかけ方をしているかを、少し長めに見てください。呼ばれてから職員が来るまでの間合いや、手の空いた職員が入居者のそばにいるか、離れた場所で固まっているかは、書面には出てこない情報です。

見る場所 見るところ メモの書き方
食堂・談話室 入居者が座っているだけか、話したり手を動かしたりしているか 何人ほどが何をしていたか
職員の動き 呼ばれたときの間合い・声のかけ方・入居者の名前を呼んでいるか 気になった場面を1つ
居室 個室か・広さ・手すり・トイレと洗面の位置・持ち込める家具 親の家具が入るか
共用部 におい・床の物・浴室の数と介助の形 気になった点だけ
食事 刻み食やとろみなど、親の食べ方に合わせられるか 試食できたか
掲示物 行事の予定・献立・苦情の受付の案内 写真を撮ってよいか聞く

有料老人ホームの居室は、厚生労働省の指針で個室とし、入居者1人当たりの床面積を13平方メートル以上とすることが示されています。ただし、既存の建物を転用したホームなどには特例があり、指針は都道府県への助言なので、自治体ごとの上乗せもあります。広さの数字だけで判断せず、親の家具とベッドを置いたときに動けるかを、その場で見てください。

出典:有料老人ホームの設置運営標準指導指針について(厚生労働省・PDF)

時間帯は、食事の時間にかかるように予約すると、食事の形と介助の様子が一度に見られます。たとえば、むせやすくなってきた母なら、食事のときに職員がそばにいるか、食べる速さに合わせているかが、居室の広さより大事な判断材料になります。逆に、まだ自分で食べられて、日中の過ごし方が気になる父なら、昼下がりの談話室の様子を見るほうが役に立ちます。

見たことは、その場で短く書き留めてください。2軒目を見たあとでは、どちらの話だったかが混ざってしまいます。

聞くことと聞き方

聞くことは、夜間・看取り・医療・退去・月額以外の費用の5つに絞ると、短い見学でも漏れません。どれも書面に書いてあることの確認と、書面に書いていないことの補足、という形で聞くと、相手も答えやすくなります。

失礼にならない聞き方の基本は、「施設を疑って聞く」のではなく「親の状態を伝えて、そのときどうなるかを聞く」形にすることです。「夜中は職員が少ないのでは」と聞くより、「父は夜中に何度か起きるのですが、そのときはどなたが来てくださいますか」と聞くほうが、具体的な答えが返ってきます。

聞くこと 質問の例 書面で裏を取る欄
夜間の体制 夜間は介護職員等が最少で何人になりますか 職員の数の表示・重要事項説明書
医療的ケア 母はいまこのケアが必要です。入居後に増えたらどうなりますか 重要事項説明書の医療の欄
看取り 最期までここで過ごした方はいますか。そのとき家族は何をしますか 契約書・重要事項説明書
退去 どんな状態になったら退去や住み替えのお話になりますか 契約書の契約解除の条項
月額以外の費用 月額に含まれないもので、毎月かかるものは何ですか 重要事項説明書の費用の欄
介護の提供 介護はホームの職員ですか、外部の事業所ですか 類型の欄・介護サービスの表示

出典:有料老人ホームに関する不当な表示(消費者庁・PDF)/指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準175条(e-Gov法令API)

夜間については、介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)の国の基準に、看護職員は利用者30人以下で常勤換算1以上という定めがありますが、この条には夜間の看護職員の配置は書かれていません。夜間も看護師がいるかどうかは、法令からは言えず、ホームごとの体制です。だからこそ、夜間の人数と、夜中に具合が悪くなったときの連絡の流れを、言葉と書面の両方で確かめてください。

月額以外の費用は、介護付有料老人ホームの家賃・食費・管理費などが介護保険の給付の対象外で、自己負担になることを前提に聞きます(介護保険法41条1項)。消費者庁の告示は、保険給付の対象外の介護サービスについて、内容と費用を明りょうに書かない表示を不当表示としています。おむつ代や通院の付き添い、理美容など、親が使いそうなものを具体的に挙げて「これは月額に入っていますか」と聞くと、答えが曖昧になりません。

たとえば、看取りについて「対応しています」と答えが返ってきたときは、「そのとき夜間はどなたが付きますか」「家族はどこまで立ち会えますか」と、1歩だけ踏み込んでください。同じ「対応しています」でも、ホームによって中身が違うので、答えの中身で比べることになります。

聞いた答えは、相手の言葉のまま書き留め、あとで書面の該当する欄と照らし合わせてください。言葉と書面が食い違ったら、その食い違いをもう一度聞くのが、次の見学の最初の質問になります。

重要事項説明書と契約書を読む

書類に記入する手元

見学で持ち帰る書面のうち、読む順番は、類型、介護の提供の仕方、職員の数の表示、前払金の返還、退去の条件の5つです。この順で読むと、表示と中身が合っているかが上から順に確かめられます。

書面の根拠は施設の種類で違います。有料老人ホームは、入居契約に関する重要な事項を書面で交付して説明することが設置者の義務です(老人福祉法29条7項)。サ高住は、登録事業者が契約を結ぶまでに、登録事項などを書いた書面を交付して説明しなければなりません(高齢者の居住の安定確保に関する法律17条)。軽費老人ホームは、運営規程の概要や職員の勤務の体制などの重要事項を書いた文書を交付して説明し、契約を文書で結ぶことが基準で決まっています(軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準12条)。特養や老健でも、施設に重要事項の説明の文書をもらって読んでください。

読む欄 確かめること 根拠
類型 介護付と表示するなら、特定施設入居者生活介護の指定があるか 厚生労働省の指針
介護の提供 ホームが提供するか、外部の事業所が提供するか 消費者庁の告示
職員の数 常勤換算の数・夜間の最少の数・資格者の常勤と非常勤の別 消費者庁の告示
前払金 算定の基礎・保全措置・入居後3か月以内の返還の計算 老人福祉法29条・同施行規則21条
退去の条件 契約解除の条項・終身をうたう表示の但し書き 契約書・消費者庁の告示

出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則21条(e-Gov法令API)/高齢者の居住の安定確保に関する法律17条(e-Gov法令API)/軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準12条(e-Gov法令API)

「介護付き」の表示と職員の数

厚生労働省の指針は、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホームは「介護付」と表示できず、「介護付き」「ケア付き」などの表示もしてはいけないとしています。名前に「介護」と付いていても、指定を受けたホームとは限らないので、重要事項説明書の類型の欄と、自治体が公表している指定の情報で確かめてください。

職員の数は、法令の最低基準と、そのホームの実際の配置を分けて読みます。介護付の国の基準は、要介護者である利用者3人またはその端数を増すごとに、看護職員と介護職員を合わせて常勤換算で1以上です。これは最低の線で、実際にそのホームが何人を置いているかは、重要事項説明書と、常勤換算の数・夜間の最少の数・資格者の人数を書くことになっている表示で見ます。

前払金の返還

いわゆる入居一時金は、家賃などを一括で受け取る前払金に当たり、受け取るホームは算定の基礎を書面で示し、返還に備えた保全措置を講じることが義務です(老人福祉法29条9項)。入居後3か月が過ぎるまでに契約の解除や入居者の死亡で契約が終わったときは、家賃などの月額を30で割り、入居した日から終わった日までの日数を掛けた額を差し引いて、前払金を返す契約でなければなりません(老人福祉法施行規則21条)。

ただし、実際に戻る額は契約ごとで、「全額戻る」とは言えません。厚生労働省の指針は、解約の予告期間を設けて返還の対象期間を事実上短くしてはいけないとしているので、契約書の解約の条項と、重要事項説明書の前払金の欄を並べて読んでください。この返還の仕組みは老人福祉法の定めで、訪問販売などで使われるクーリング・オフとは別の制度です。サ高住の家賃等の前払金にも、入居後3か月までの返還の定めと保全措置があり、返還額の推移は契約前の書面で示されます。

退去の条件

退去の条件は、契約書の契約解除の条項で確かめます。消費者庁の告示は、終身にわたって住み続けられるかのような表示をしながら、入居者の状態によっては住み続けられない場合があることを明りょうに書かない表示を不当表示としています。「最期まで」とうたうホームほど、その但し書きを探してください。

サ高住は、入院や心身の状況の変化を理由に、事業者が一方的に居住部分を変えたり契約を解約したりできない契約であることが登録の基準です(高齢者の居住の安定確保に関する法律7条)。ただし、理由が生じたあとに入居者と事業者が合意すれば変更や解約はできるので、「入院しても出なくてよい」とまでは言えません。

たとえば、パンフレットに「介護付」とあり、重要事項説明書の類型の欄が住宅型になっていたら、それは前の段で決めた4つ目の入らない条件に当たります。どちらが正しいかをホームに聞き、自治体の指定の情報でも確かめてから、候補に残すか決めてください。

有料老人ホームの費用と入居一時金の考え方

サ高住の費用と契約の確かめ方

親を連れて行くか・特養の見学

親を連れて行くかは、親の体力と気持ちで決めます。1軒目は家族だけで見て候補を絞り、残った候補に親を連れて行く、という分け方にすると、親の負担が軽くなります。

親を連れて行くと、親が実際にその場で落ち着けるか、職員が親にどう話しかけるかが見られます。一方で、何軒も回ると疲れてしまい、見学そのものが負担になることがあります。親に見せるのは、家族の入らない条件を満たした候補だけにしてください。

本人が見学を嫌がるときは、無理に連れて行かず、本人が受け止めやすい言い方を選んでください。ただ、行き先を伏せたまま連れて行く形は避けてください。施設に入ること自体を拒んでいるときは、見学の前に、本人の気持ちを聞く順番があります。

親が施設を拒むときの話し方と進め方

特養(特別養護老人ホーム)は介護保険施設の1つで、入所の対象は原則要介護3以上の人です(介護保険法施行規則17条の9)。要介護1・2の人は、家での生活が難しいことについてやむを得ない事由があると認められたときの特例入所に当たります。特養は申し込んで順番を待つ施設なので、見学では入所の判定の時期や申込書の書き方、空きの連絡が来たときの流れを聞いておくと、待つ間の段取りが立ちます。

特養に「見学は受けていません」「この日時だけです」と言われたときは、見学の代わりに、申込の説明の場で施設の重要事項の説明の文書をもらえるか聞いてください。建物の中が見られなくても、職員の配置や医療の対応、退所の扱いは、質問で確かめられます。

出典:介護保険法施行規則17条の9(e-Gov法令API)/同規則17条の10(e-Gov法令API)

たとえば、要介護4の母で特養に申し込みながら有料老人ホームも見る場合は、有料老人ホームの見学で「特養の順番が来たら移るかもしれない」と伝え、途中で出るときの前払金の扱いを聞いておきます。要介護2の父なら、特養は特例入所に当たるかの見通しを申込先に聞く話になり、有料老人ホームの見学も並行して進める形になります。

特養と有料老人ホームの違いと、待つか入るかの判断

見学の後の決め方

見学の後は、その日のうちに決めず、持ち帰った書面を家族で読み合わせてから決めます。決める材料は、事前に決めた入らない条件、見学のメモ、書面の5つの欄の3つです。

その場で申し込みを勧められても、書面を読む前に決めないでください。前払金や退去の条件は、読み合わせて初めて「うちの親に当てはめるとどうなるか」が見えてきます。家族の中で読む役を分け、1人が書面、1人が見学のメモ、1人が親の状態のメモを持って並べると、抜けが見つかります。

見学から決めるまでの順番
  1. 1入らない条件を決める家族で3つか4つ、見学の前に
  2. 2資料と書面をそろえる類型・入居時の要件・重要事項説明書の写し
  3. 3見学で見て聞く生活の様子・職員の動き・夜間・退去・費用
  4. 4家族で読み合わせる書面の5つの欄と見学のメモを並べる
  5. 5体験入居で確かめる夜と食事と親の気持ちを、泊まって見る

候補を比べるときは、施設ごとに同じ表を作ってください。行に入らない条件と書面の5つの欄、列に施設の名前を並べ、当てはまるかどうかと、答えをもらえたかどうかを書き込みます。印象の良し悪しは、表の下に一言だけ添えます。

兄弟で意見が割れたときは、表に戻って「どの行で意見が違うのか」を特定してください。費用の行で割れているなら、親の年金と預貯金で払える期間の話に、医療の行で割れているなら、主治医やケアマネジャーの見立てを聞く話に置き換えられます。誰が親の近くに住んでいるかで決めるより、行ごとに話すほうが、意見の違いがどこにあるかを確かめやすくなります。

最後の確かめに、体験入居を受けているホームなら使ってください。夜の様子と食事、親がその場で落ち着けるかは、見学の短い時間では分かりません。体験入居の費用と日数、そのあいだの介護の受け方は、ホームごとに決まるので、申込の前に書面で確かめておきます。

たとえば、比べる候補が2軒しかなく、どちらも入らない条件に1つずつ引っかかる場合は、どちらかに妥協する前に、地域と条件を変えて候補を足すことも考えてください。住所を少し広げたり、類型を住宅型まで含めたりすると、条件を満たす候補が見つかることがあります。

在宅か施設か|在宅の限界が見え、施設を考え始めた人

※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

比べる表で、入らない条件をすべて越える施設が2軒以上残っているなら、新しく資料を集める必要はありません。それでも候補が1軒か2軒しかなく、地域と予算に合うほかの施設を見落としていないか気になるときは、老人ホームの検索サイトで地域・予算・入居時の要件を絞って資料をまとめて取り寄せると、同じ表に並べる候補を足せます。取り寄せた資料に重要事項説明書が入っていなければ、見学を予約するときに写しを頼んでください。

みんなの介護で、地域と条件に合う施設の資料を取り寄せる

入らずに在宅で続ける条件

見学をしてみて、どの施設も入らない条件に当たる、あるいは親も家族もまだ家で続けたいと思えたなら、在宅を続ける道を選んでも構いません。続けられるかどうかは、介護の量、夜間の体制、医療ケアの担い手、家族の暮らしの4つで見ます。

施設を探し始めたきっかけが「いまの在宅がこのままでは回らない」という感覚なら、その感覚がどの条件から来ているのかを分けてみてください。施設に入る以外の手が見えることがあります。介護保険の在宅サービスは、要介護度ごとの区分支給限度基準額の範囲で組み立てるので、ケアマネジャーとケアプランを見直すだけで、足りなかった部分が埋まる場合もあります。

  • 介護の量:必要な訪問介護やデイサービスが、限度額の範囲に収まっている
  • 夜間の体制:夜中のトイレや見守りを、家族か訪問のサービスで担えている
  • 医療ケア:服薬の管理や必要な処置を、訪問看護や家族で担えている
  • 家族の暮らし:主に介護する人の体と仕事に、続けられる見通しがある

出典:介護保険法43条(e-Gov法令API)

たとえば、要介護2で認知症のない母が、昼はデイサービスに通い、夜は同居の娘が見ている場合、娘の仕事に夜勤がなく、母の夜中の起き上がりが少なければ、4つの条件はそろっています。同じ母でも、娘に転勤が決まったり、母が夜中に何度も起きるようになったりすると、4つ目と2つ目が崩れ、見学で見た候補に戻ってくる段階に入ります。

見学で集めた書面とメモは、在宅を続けると決めたあとも捨てずに取っておいてください。条件が崩れたときに、ゼロから探し直さずに済みます。

年金だけで入れる老人ホームはあるか、年金額別の考え方

入居したあとの実家

湯のみを持つ手

親が施設に入ると、次に表に出てくるのは、空いた実家をどうするかという問題です。郵便物、固定資産税の通知、家の傷みは、入居のあとも続きます。

入居の直後に決めるのは、貸すか売るかではなく、誰がいつ家の様子を見に行くか、郵便をどこに転送するかです。親の判断ができるうちに、家の扱いについての希望を聞いておくと、あとで兄弟の意見が分かれたときの手がかりになります。見学の段階で、施設に入ったあとの面会や外泊の扱いを聞いておくと、家に戻る機会がどれほどあるかも見当がつきます。

たとえば、母が有料老人ホームに入り、実家に誰も住まなくなった場合、月に何度、誰が見に行くかを最初に決めるだけで、ポストがあふれて近所から連絡が来る事態を避けやすくなります。家の片付けや売却の話は、そのあとに家族の都合を合わせて進めれば足ります。

実家|親が施設に入った・実家が空いた人

次に来ることを先に知っておくと、入居のあとの実家の問題を慌てずに迎えられます。

よくある質問

介護施設を見学するときの質問例はありますか?

夜間の体制、医療的ケア、看取り、退去の条件、月額に含まれない費用の5つを、親の状態に引きつけて聞くと漏れません。「母は夜中にこういう様子ですが、そのときどうなりますか」のように聞くと、答えが具体的になります。答えは相手の言葉のまま書き留め、重要事項説明書の欄と照らし合わせてください。

見学で言ってはいけないことはありますか?

避けたいのは、施設を疑ってかかる言い方より、親の状態を実際より軽く伝えることです。状態を軽く伝えると、そのホームで受けられる介護かどうかを正しく確かめられません。聞きにくいこと、たとえば退去の条件や夜間の人数は、「親がこうなったらどうなりますか」と、親の状態を主語にして聞けば失礼になりません。

見学ではどんな対応をされますか?

施設の担当者が建物と居室を案内し、費用やサービスの説明をする形で進みます。案内の後に申し込みを勧められることもありますが、その場で決める必要はありません。重要事項説明書の写しを持ち帰り、家族で読み合わせてから返事をすると伝えれば足ります。

特養の見学ができないときはどうすればいいですか?

見学の代わりに、申込の説明の場で施設の重要事項の説明の文書をもらえるか聞いてください。入所の判定の時期や申込書の書き方、空きの連絡が来たときの流れも、電話や窓口で確かめられます。建物が見られなくても、職員の配置や医療の対応、退所の扱いは質問で比べられます。

入居一時金は戻ってきますか?

有料老人ホームが前払金を受け取る場合、入居後3か月が過ぎるまでに契約の解除や入居者の死亡で契約が終わったときは、日割りの家賃などを差し引いて返す契約でなければならないと決まっています。ただし、実際に戻る額は契約ごとで、全額戻るとは言えません。契約前に、途中で出たときにいくら戻るかを、書面の数字でホームに示してもらってください。

「介護付き」と書いてあれば、介護が重くなっても住み続けられますか?

「介護付」と表示できるのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームだけで、介護が必要になってもホームの介護を受けながら居室で暮らし続けられる類型です。ただし、どの状態まで住み続けられるかや看取りの扱いはホームごとに違います。契約書の契約解除の条項と、終身をうたう表示の但し書きで確かめてください。

順番のおさらい

  1. 見学の役目:設備を眺めるのでなく、入居後に困ることを確かめて書面を持ち帰る
  2. 入らない条件:受けられない介護・医療、夜間の体制、前払金と退去の書面、表示と類型の4つを家族で先に決める
  3. 見学の前:類型と入居時の要件に印を付け、親の状態のメモを作り、書面の写しを頼む
  4. 見学の場:入居者の過ごし方、職員の動き、居室と食事を、案内の道から外れて見る
  5. 聞くこと:夜間・医療・看取り・退去・月額以外の費用を、親の状態を主語にして聞く
  6. 書面:類型、介護の提供、職員の数、前払金の返還、退去の条件の順に読む
  7. 親と特養:親に見せるのは絞った候補だけ、特養は申込と判定の流れを聞く
  8. 決め方:その日に決めず、同じ表で比べ、割れたら行ごとに話し、体験入居で確かめる
  9. 在宅で続ける条件:介護の量・夜間・医療ケア・家族の暮らしがそろっているか
  10. 入居したあと:実家を誰がいつ見に行くかを最初に決める

見学をいくつ重ねても、印象だけを持ち帰っていると、最後は「なんとなく良さそうだった施設」に決まってしまいます。行く前に家族で入らない条件を決め、見学ではそれを確かめる質問をし、書面を持ち帰って同じ表に並べる、という流れを一度作っておけば、2軒目からは比べる作業になります。親の暮らしを預ける先は、見学の場ではなく、家族で書面を読み合わせた机の上で決めてください。

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この記事を書いた人

親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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