- 「介護付き」と「住宅型」の看板の違いが、中身としてどう違うのか分からない
- 介護保険の自己負担は、毎月いくらになるのか自分で見積もりたい
- 家賃や食費にも、特養のような軽減の認定は効くのか
- 母は認知症があるけれど、入れるホームはあるのか
- 父はまだ自立している。夫婦で一緒に入れるのか
- 看護師はいるのか、痰の吸引が必要になったら住み続けられるのか
- 入居したあとも、通い慣れたデイサービスを使い続けられるのか
- 特別養護老人ホームと比べて、何が違って、どちらを選べばいいのか
上記のような悩みに答えます。
介護付き有料老人ホームは、有料老人ホームのうち、介護保険の「特定施設入居者生活介護」としてホームが自ら介護を行う住まいです。つまずきやすいのは、「介護付き」が施設のうたい文句に見えてしまう点で、実際にはこの名前を表示できる条件が決まっています。検索の上位には紹介サイトや運営会社の記事が並び、サービス内容・設備・選び方は詳しい一方、表示の根拠になる指定の確かめ方、介護保険の自己負担が要介護度ごとの定額で親の分を自分で計算できること、家賃や食費には特養の軽減も医療費控除も効かないこと、そして入居しない場合に在宅で続ける条件は、あまり前に出てきません。そこで、住宅型との違い・入れる条件・費用の決まり方という基本を押さえたうえで、効く制度と効かない制度の線引き、入居後に介護度が上がったときの確かめ方、在宅で続ける条件まで、介護保険法・老人福祉法の条文と厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。
介護付き有料老人ホームは、都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホームで、ホームの職員が介護を行います。介護保険の自己負担は要介護度ごとに1日の単位数で決まる定額で、家賃・食費・管理費はそれとは別に全額自己負担です。外の訪問介護などを使った分だけ払う住宅型とは、介護の受け方と費用の形が違います。
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介護付き有料老人ホームはどんな施設か

介護付き有料老人ホームは、有料老人ホームのうち、都道府県知事から特定施設入居者生活介護の指定を受け、ホームが自ら介護を提供するものを指します。指定のないホームは、設備や職員が整っていても「介護付」と表示できません。
まず有料老人ホームそのものは、老人福祉法で、老人を入居させて入浴・排せつ・食事の介護や食事の提供などの便宜を供与する施設とされ、設置する人は都道府県知事に届け出ることになっています。許可制ではなく届出制です。そのうえで介護保険法は、有料老人ホームなどを「特定施設」とし、そこに入居している要介護者に対して、ホームが作る計画に沿って行う入浴・排せつ・食事などの介護や機能訓練を「特定施設入居者生活介護」と定めています。この介護保険のサービスを行う事業者として指定を受けたホームが、介護付きです。
厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」は、有料老人ホームを類型に分けて表示させています。介護付きは一般型と外部サービス利用型の2種です。
| 指針の類型 | 介護を提供するのは | 介護が必要になったとき(類型の説明) |
|---|---|---|
| 介護付(一般型特定施設入居者生活介護) | ホームの職員 | ホームの介護を使いながら居室で暮らし続けられる |
| 介護付(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護) | ホームが委託した事業所(安否確認や計画づくりはホームの職員) | 同上 |
| 住宅型 | 入居者が自分で選んだ外部の事業所 | 地域の訪問介護などを使いながら居室で暮らし続けられる |
| 健康型 | ― | 契約を解除して退去する類型 |
出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/老人福祉法29条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)
ここで気をつけたいのは、すべての有料老人ホームが特定施設入居者生活介護を行っているわけではない点です。また、入居定員が29人以下で、入居者が要介護者とその配偶者などに限られるホームは「地域密着型特定施設」という別の枠組みになり、指定するのも市町村です。費用の表や単位数が違ってくるので、候補のホームがどの枠組みかを最初に確かめます。
たとえば、紹介サイトで「介護サービスあり」と書かれたホームが2つ並んでいても、一方が介護付(一般型)、もう一方が住宅型で訪問介護事業所を併設しているだけ、ということがあります。日中に介護職員が建物にいる様子は似ていても、介護保険の上では受けているサービスがまったく別で、費用の決まり方も変わります。
編集部の整理では、候補のパンフレットや重要事項説明書で、施設名と一緒に表示されている類型をまず読み上げてください。「介護付(一般型特定施設入居者生活介護)」と書かれていれば、この記事の費用の計算がそのまま当てはまります。
住宅型・健康型・サ高住との違い
介護付きとほかの住まいの違いは、介護を誰が提供し、費用をどう払うかにあります。介護付きはホームの介護をまとめて受けて定額で払い、住宅型とサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は外の事業所と契約して使った分を払います。
この違いは、介護保険の上での置かれ方から来ています。有料老人ホームの居室は介護保険法上の「居宅」に含まれるので、住宅型やサ高住に住む親は、自宅にいるのと同じように訪問介護や訪問看護などの居宅サービスを自分で選んで使います(訪問看護は、主治の医師が必要と認めた人が対象です)。一方、介護付きに入ってホームの特定施設入居者生活介護を受けている間は、訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・通所介護・通所リハビリテーションの6つを、介護保険で別に使えません。ホーム自身が介護を提供しているので、外の訪問介護やデイサービスを保険で重ねない仕組みです。
- ホームの職員が計画に沿って介護する
- 自己負担は要介護度ごとの1日の定額
- 訪問介護やデイサービスなど6つは保険で別に使えない
- 外の事業所と自分で契約して介護を受ける
- 自己負担は使ったサービスの分
- 訪問介護やデイサービスを自分で選んで使う
| 住まい | 根拠になる枠組み | 介護の受け方 | 介護保険の自己負担 |
|---|---|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム | 特定施設入居者生活介護の指定 | ホームの介護 | 要介護度ごとの定額(加算は別) |
| 住宅型有料老人ホーム | 指針の類型 | 外の訪問介護などを自分で選ぶ | 使った分だけ |
| 健康型有料老人ホーム | 指針の類型 | 介護が必要になったら契約を解除して退去 | ― |
| サ高住 | 高齢者住まい法の登録 | 外の訪問介護などを使うのが基本(特定施設の指定を受けたものは介護付きと同じ形) | 使った分だけ(指定を受けたものは定額) |
出典:介護保険法8条(e-Gov法令API)/指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(厚生労働省 法令等データベース)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)
「介護付き有料ホームと有料老人ホームの違い」という問いは、言い換えると「有料老人ホームのうち、特定施設の指定を受けているかどうか」の違いです。介護付きは有料老人ホームの中の一つの形で、別の施設の種類ではありません。
たとえば、週3回のデイサービスに通い慣れている母が住宅型に入る場合は、同じデイサービスに通い続ける道が残ります。同じ母が介護付きに入ると、デイサービスは介護保険では別に使えなくなり、日中の過ごし方はホームの中のサービスに置き換わります。母が通い先の友人関係を大事にしているなら、この違いは費用より重いかもしれません。
編集部の整理では、介護付きか住宅型かを決める前に、「いま親が使っている介護サービスのうち、手放したくないものはあるか」を家族で書き出してください。手放したくないものが外のサービスなら住宅型やサ高住、介護の量が多くて外の事業所の組み合わせでは回らないなら介護付き、という方向が見えてきます。
介護付き有料老人ホームに入れる条件
介護付きに入れるかどうかは、ホームごとに決めて表示している「入居時の要件」で決まります。「介護付きだから要介護の人しか入れない」とは限らず、自立の人を受け入れるホームもあります。
指針は、入居時の要件を4つの区分で表示することにしています。競合の記事で見かける「介護専用型」「混合型」「自立型」という言い方は指針の入居時の要件の表示に使われている語ではなく、指針の表示はこの4区分です。
- 入居時自立:入居するときに自立している人が対象
- 入居時要介護:要介護認定を受けている人が対象
- 入居時要支援・要介護:要支援か要介護の認定を受けている人が対象
- 入居時自立・要支援・要介護:自立の人も、認定を受けている人も対象
出典:有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別表(厚生労働省・PDF)/介護保険法27条(要介護認定・e-Gov法令API)
ここで押さえておきたいのは、介護保険の特定施設入居者生活介護を使えるのは要介護者である点です。要支援の人には「介護予防特定施設入居者生活介護」という別のサービスがあり、自立の人は介護保険の給付を受けずに暮らすことになります。入居時の要件が「自立」を含むホームでも、介護保険の自己負担が発生するのは認定を受けてからです。
認知症があっても入れるかどうかは、法令や指針の区分では決まっていません。入居時の要件の表示は認定の有無の区分なので、認知症の症状にどこまで対応できるかはホームごとの判断になります。年齢についても、この記事で確かめた法令と指針の範囲では、有料老人ホームの入居年齢は一律に決まっていません。
たとえば、要介護2で認知症の診断がある母と、自立している父の夫婦の場合を考えます。入居時の要件が「入居時要介護」のホームでは、母は対象に入りますが父は外れます。「入居時自立・要支援・要介護」のホームなら、2人とも要件の範囲に入ります。そのうえで、母の認知症の症状にホームが対応できるかを、見学のときに具体的な場面で聞く順番になります。
編集部の整理では、問い合わせの前に、親の認定区分(自立・要支援・要介護のどれか)、認知症の診断の有無、ふだんの困りごと(夜中に起きる・薬の管理ができないなど)の3つを1枚にまとめておくと、ホーム側も対応できるかを答えやすくなります。認定を受けていなければ、そのことも書いておいてください。
介護付き有料老人ホームの自己負担は定額

介護付き(一般型)の介護保険の自己負担は、要介護度ごとに決まった1日の単位数で計算する定額です。使ったサービスの回数で増減しないので、親の要介護度と負担割合が分かれば、基本の部分は自分で出せます。
単位は介護報酬の物差しで、1単位が何円になるかは地域区分で決まり、特定施設入居者生活介護では1単位10円〜10.90円の範囲です。下の表は、加算・減算を含まない基本の部分の1日の単位数です。要支援の人は介護予防特定施設入居者生活介護の単位数になります。
| 要介護度 | 1日の単位数(基本の部分) |
|---|---|
| 要支援1 | 183単位 |
| 要支援2 | 313単位 |
| 要介護1 | 542単位 |
| 要介護2 | 609単位 |
| 要介護3 | 679単位 |
| 要介護4 | 744単位 |
| 要介護5 | 813単位 |
出典:厚生労働省 介護報酬の算定構造(特定施設入居者生活介護・PDF)/厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における地域区分」
この式に当てはめた、1単位10円の地域・加算を含まない目安は次のとおりです。
| 要介護度 | 1日(1割) | 30日(1割) | 30日(2割) | 30日(3割) |
|---|---|---|---|---|
| 要支援1 | 183円 | 5,490円 | 10,980円 | 16,470円 |
| 要支援2 | 313円 | 9,390円 | 18,780円 | 28,170円 |
| 要介護1 | 542円 | 16,260円 | 32,520円 | 48,780円 |
| 要介護2 | 609円 | 18,270円 | 36,540円 | 54,810円 |
| 要介護3 | 679円 | 20,370円 | 40,740円 | 61,110円 |
| 要介護4 | 744円 | 22,320円 | 44,640円 | 66,960円 |
| 要介護5 | 813円 | 24,390円 | 48,780円 | 73,170円 |
実際の請求には、ホームの体制や取り組みに応じた加算が上乗せされ、1単位の単価も地域によって10円より高くなるので、表の額より増えることがあります。逆に、看護・介護職員の数が基準に届かないホームでは減算の仕組みもあります。どの加算を取っているかはホームごとに違うので、重要事項説明書の料金の欄で確かめます。なお、外部サービス利用型は計算の仕組みが別で、この表は当てはまりません。
負担割合は親の所得で決まる
負担割合は原則1割で、親の所得が一定以上なら2割か3割になります。判定は「合計所得金額」と「年金収入とその他の合計所得金額の合計」の2段で見ます。
| 負担割合 | 合計所得金額 | 年金収入+その他の合計所得金額(単身) | 同(同じ世帯に65歳以上の被保険者がほかにもいる場合) |
|---|---|---|---|
| 3割 | 220万円以上 | 340万円以上 | 463万円以上 |
| 2割 | 160万円以上 | 280万円以上 | 346万円以上 |
| 1割 | 上の線に届かない | ― | ― |
たとえば、要介護1で1割負担の母が1単位10円の地域の介護付き(一般型)に入ると、基本の部分の自己負担は1日542円、30日で16,260円の目安です。同じ母の負担割合が2割なら30日で32,520円になります。入居後に母が要介護3になれば、1割のままでも30日で20,370円の目安に上がります。
住宅型の場合は、この定額の形になりません。外の訪問介護やデイサービスを使った回数と内容で自己負担が決まるので、同じ要介護度でも、使う量が少なければ少なく、多ければ多くなります。
編集部の整理では、介護保険の部分は「認定の通知」「負担割合証」「ホームの地域の1単位の単価」の3つがそろえば出せます。割合は自分で判定せず、市区町村から届く負担割合証の記載で確かめてください。
家賃・食費・管理費と入居一時金
家賃・食費・管理費などは介護保険の給付の外にあり、全額が自己負担です。金額はホームごとに決まっていて、全国の相場を示す公的な統計は編集部では確認できていません。
介護保険法は、特定施設入居者生活介護の給付の計算から「食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用」を除いています。介護付きの月々の支払いは、要介護度ごとの介護保険の自己負担と、この保険外の費用の2つを足したものになります。
重要事項説明書と料金表で、次の項目を1つずつ書き出してください。
- 家賃(入院中や外泊中も払うか)
- 食費(食べなかった日の扱い)
- 管理費・光熱水費(月額の定額か、使った分か)
- 入居一時金などの前払金(有無と、返還の条件)
- ホーム独自の上乗せのサービス費(介護保険の外で払うもの)
- おむつ代・日用品・医療機関の診療費など、別に払うもの
前払金には3か月の返還ルールがある
入居一時金・介護一時金など、名前にかかわらず家賃などをまとめて先に受け取るお金は、老人福祉法の前払金として扱われます。前払金を受け取るホームは、算定の基礎を書面で示し、返すことになったときに備えて保全措置を講じなければなりません。さらに、入居後3か月以内に契約の解除や入居者の死亡で契約が終わった場合は、前払金を返す契約を結ぶことが義務づけられています。
3か月以内に終わった場合の返す額は、家賃などの月額を30で割った額に、入居した日から契約が終わった日までの日数を掛け、それを前払金から差し引く方法で決まっています。3か月を過ぎても、想定居住期間が終わるまでの解除や死亡なら返す契約を結ぶことになっています。また、家賃・敷金・介護などの対価のほかに、権利金などを受け取ることは禁じられています。
出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則21条(e-Gov法令API)/有料老人ホームの設置運営標準指導指針(厚生労働省・PDF)
指針は、解約の申し出から契約解除までの予告期間を設けて、返還の期間を事実上短くしてはならないともしています。指針は都道府県への行政指導の基準で法律そのものではありませんが、契約書の解約の条項に長い予告期間が書かれていたら、返還の扱いを確かめるきっかけになります。
たとえば、入居して間もなく親が入院し、戻れずに解約することになった場合は、契約が終わった日が入居後3か月以内なら、住んだ日数分の家賃などを引いた残りが返る計算です。具体的な返還額は契約ごとに違うので、ここでは金額の例を出しません。
編集部の整理では、月々の支払いを比べるときは、前払金のあるホームとないホームを月額だけで並べないでください。前払金は家賃などの前払いなので、前払金を含めた住まいの費用で並べ、そこに介護保険の自己負担を足すと、物差しがそろいます。
効く制度と効かない制度
介護付きの費用で軽くなるのは、介護保険の自己負担の部分です。高額介護サービス費は効きますが、特養などで使える負担限度額認定は効かず、国税庁の説明では介護付きの利用料は医療費控除の対象になる介護費用にも入っていません。
高額介護サービス費は効く
特定施設入居者生活介護は介護保険法の「居宅サービス」なので、その自己負担は高額介護サービス費の対象です。1か月の介護保険の自己負担が区分ごとの上限を超えると、超えた分が申請によって戻ります。家賃・食費などが合算に入るかは条文だけでは言い切れないので、介護サービス費の自己負担の部分が対象と考え、細かな扱いは市区町村に確かめてください。
| 区分 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 市町村民税課税〜課税所得380万円未満 | 44,400円(世帯) |
| 市町村民税世帯非課税 | 24,600円(世帯) |
| 世帯非課税で、年金収入+その他の合計所得金額が82.65万円以下 | 15,000円(個人) |
出典:介護保険法51条(e-Gov法令API)/厚生労働省 介護保険最新情報Vol.997/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
たとえば、世帯非課税で年金収入とその他の合計所得金額の合計が82.65万円以下の母が、要介護5で1割負担なら、1単位10円の地域・加算を含まない目安で30日24,390円です。上限は個人15,000円なので、差の9,390円は申請すると戻る計算になります。市町村民税課税〜課税所得380万円未満の世帯で、介護保険を使っているのが2割負担の父だけで要介護5なら、目安48,780円に対して上限は世帯44,400円で、差は4,380円です。
世帯の上限は、同じ世帯で介護保険を使っている人の自己負担を合わせて見ます。介護保険の給付を受ける権利は2年で時効になるので、いつから数えるかは市区町村に確認してください。
負担限度額認定と医療費控除は効かない
所得と預貯金が少ない人の食費・居住費を軽くする負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)の対象は、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・地域密着型の特養・短期入所生活介護・短期入所療養介護の6サービスだけです。特定施設入居者生活介護はこの列挙に入っていないので、認定を受けても介護付きの家賃や食費は下がりません。
医療費控除についても、国税庁の説明では、特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)の費用は、医療費控除の対象になる介護サービスの費用に入っていません。特養・老健・介護医療院とは扱いが違います。ただし、医療機関に払う診療費や薬代は介護の費用とは別に扱われるので、領収書は分けて残しておいてください。
出典:介護保険法51条の3(e-Gov法令API)/国税庁 タックスアンサーNo.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価
編集部の整理では、親の年金で払えるかを考えるときは、保険外の費用は「軽くならない額」としてそのまま積み、介護保険の自己負担だけに高額介護サービス費の上限を当てはめてください。軽減を見込んで計画を立てると、効かない部分で計算がずれます。
職員の配置と医療の体制
介護付きの職員の数は、法令で最低の基準が決まっています。看護職員と介護職員を合わせて、要介護者である入居者3人に対して1人以上(常勤換算)です。
この基準は、特定施設入居者生活介護の事業者が守らなければならない最低の線です。指定の基準は、ほかに次のような配置を決めています。
- 看護職員と介護職員の合計:要介護者である入居者3人またはその端数ごとに1人以上(常勤換算)
- 看護職員(看護師または准看護師):入居者30人以下なら1人以上、30人を超えると50人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上
- 介護職員:常に1人以上を確保
- 生活相談員・機能訓練指導員・計画作成担当者(介護支援専門員)を置く
出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準175条(e-Gov法令API)
基準より多くの職員を置いているホームもあり、その配置は重要事項説明書に書かれます。ただ、条文が決めているのは最低の線なので、基準の数字そのものから手厚いかどうかは言えません。夜間に看護職員を置くかどうかもこの条には書かれていないので、夜の体制はホームごとに確かめます。
医療的なケアでは、痰の吸引と経管栄養が分かれ目になりやすい部分です。介護福祉士が医師の指示の下で行える「喀痰吸引等」は、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう・腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養の5つで、事業所が都道府県知事の登録(登録喀痰吸引等事業者)を受けていることが前提です。介護福祉士以外の職員は、研修を修了して認定特定行為業務従事者の認定証を受けた人が、当分の間の特例として、医師の指示の下で行えます。
出典:社会福祉士及び介護福祉士法施行規則1条(e-Gov法令API)/社会福祉士及び介護福祉士法48条の3(e-Gov法令API)
たとえば、父に胃ろうがあり、夜も痰の吸引が必要な場合は、「介護付きだから大丈夫」とは言えません。ホームが登録喀痰吸引等事業者か、夜間に吸引できる職員がいるか、看護職員がどの時間帯にいるかを、1つずつ聞いて確かめる必要があります。
編集部の整理では、医療の質問は「何ができますか」ではなく、「父の場合、夜中に痰の吸引が必要になったら誰が対応しますか」と、親の状態に引き寄せて聞いてください。答えが重要事項説明書のどこに書かれているかも一緒に聞くと、口頭の説明だけで終わらずに済みます。
特養と介護付きのどちらを選ぶか
特別養護老人ホームは介護保険施設で、介護付き有料老人ホームは介護保険施設ではありません。入所の対象、使える軽減の制度、費用の決まり方が違います。
介護保険施設は、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の3つで、そこで受けるのが施設サービスです。特養の入所の対象は原則として要介護3以上で、これは省令で決まっています。要介護1・2の人は、居宅での生活が困難なことについてやむを得ない事由があると認められる場合の特例入所の扱いになり、要介護3以上でも入所の可否や順番は施設の判定で決まります。一方、介護付きは有料老人ホームで、介護保険の上では居宅サービスの特定施設入居者生活介護を使う住まいです。
| 比べる点 | 特別養護老人ホーム | 介護付き有料老人ホーム |
|---|---|---|
| 介護保険上の位置づけ | 介護保険施設(施設サービス) | 有料老人ホーム(居宅サービスの特定施設入居者生活介護) |
| 入れる人 | 原則として要介護3以上(入所は施設の判定) | ホームごとの入居時の要件 |
| 食費・居住費の負担限度額認定 | 対象(所得・預貯金の条件あり) | 対象外 |
| 医療費控除(介護の費用) | 施設サービスの自己負担額(介護費・食費・居住費)の2分の1が対象 | 対象外 |
| 前払金 | ― | ホームによってある(3か月の返還ルール) |
出典:介護保険法施行規則17条の9(e-Gov法令API)/介護保険法8条(e-Gov法令API)
どちらが安いかを月額の相場で比べることは、ここではしません。特養の負担は、所得と預貯金の条件に当てはまれば負担限度額認定で食費・居住費が下がり、当てはまらなければ下がりません。介護付きは保険外の費用がホームごとに決まります。親の所得と預貯金で、特養のほうの軽減がどこまで効くかを先に確かめると、比べる材料がそろいます。
たとえば、要介護4の母で、年金が少なく預貯金も多くない場合は、特養なら負担限度額認定で食費・居住費が下がる可能性があり、介護付きでは保険外の費用がそのままかかります。反対に、母が要介護2で特養の対象になりにくい段階なら、介護付きや住宅型が当面の選択肢になり、要介護3以上になった時点で特養への申し込みを考える、という順番もあります。
編集部の整理では、特養と介護付きは「どちらかに決める」より、「特養に申し込みながら、入れるまでの住まいを考える」という並べ方もできます。親の認定区分と所得の区分が分かった段階で、市区町村の介護保険の窓口や地域包括支援センターに、特養の申し込みの方法と負担限度額認定の条件を聞いてください。
入居後に介護度が上がったら
入居後に介護度が上がると、介護付き(一般型)では介護保険の自己負担が上の段の単位数に変わります。住み続けられるかどうかは類型の説明だけでは決まらず、個々のホームの契約で決まります。
指針の類型の説明では、介護付きは介護が必要になってもホームの特定施設入居者生活介護を使いながら居室で暮らし続けられる住まいです。ただ、これは類型の性格の説明で、どのホームでも最後まで住めるという約束ではありません。看取りをするか、医療的なケアが増えたときにどうするか、居室を移ることがあるかは、契約書と重要事項説明書の文言で決まります。
- 1費用の段要介護度が変わると単位数が上の段へ
- 2契約の解除の条項どんなときにホームから解除されるか
- 3居室の移動介護居室などへ移る条件と費用
- 4医療のケア吸引・経管栄養などに対応できるか
- 5看取り最期まで過ごせるかの方針
契約前に、次の点を担当者に聞いてください。
- 要介護度が上がったとき、介護保険の自己負担以外に上乗せのサービス費が増えるか
- ホームの側から契約を解除できるのはどんなときか(契約書の条項の場所も)
- 一般の居室から介護のための居室へ移ることがあるか、その場合の費用と前払金の扱い
- 痰の吸引や経管栄養が必要になったとき、ホームで対応できるか
- 看取りの方針と、入院が長引いたときの居室の扱い
たとえば、要介護1で入居した母が要介護4になった場合、1割負担・1単位10円の地域・加算を含まない目安で、介護保険の自己負担は30日16,260円から22,320円に変わります。保険外の家賃・食費は要介護度では変わりませんが、上乗せのサービス費があるホームでは、そちらが増えることがあります。
編集部の整理では、入居前の見学で「いま住んでいる人の中で、医療のケアが増えて退去した人はいるか、そのときどこへ移ったか」を聞いてみてください。答えにくそうなら、契約書の解除の条項を一緒に読んでもらうのが確かです。
入居せず在宅で続ける条件
介護付きに入ることは、選択肢の一つであって正解ではありません。在宅で続けるための条件がそろっているなら、住まいを変えずに介護を続ける道もあります。
在宅では、介護付きに入ると保険で別に使えなくなる訪問介護・通所介護などを、ケアマネジャーと組み合わせて使えます。住宅型やサ高住で受ける介護も同じ居宅サービスなので、介護の受け方の面では、今の家と住宅型は近い位置にあります。介護付きとの違いは、介護をホームにまとめて任せるか、外のサービスを組み合わせるかです。
在宅で続けられるかどうかは、次の条件で考えます。
- 夜間の見守りや排せつの介助を、家族か外のサービスで回せている
- 主たる介護者が、自分の仕事や体調を崩さずに続けられている
- 急に体調が変わったときに、誰かが気づき、連絡できる仕組みがある
- 段差や浴室など、家の中の危険に手が打てている
- 本人が今の家で暮らし続けたいと思っている
たとえば、要介護2の父が一人暮らしで、日中は通所介護、朝夕は訪問介護、週末は子が様子を見ている場合は、上の条件の多くがそろっています。一方、夜中に何度も起きるようになり、同居の母が眠れずに体調を崩し始めたなら、外のサービスを足すか、住まいを変えるかを比べる段階です。
条件のうちそろわないものが1つ出てきたら、まずケアマネジャーに「この条件を在宅で埋めるサービスはあるか」を聞いてください。在宅で埋められないものが重なったときに介護付きを比べると、本人にも住み替えの理由を説明しやすくなります。
探し方と見学で確かめること

介護付きを探すときは、類型と入居時の要件で絞り、重要事項説明書で比べてから見学する順で進めると迷いが少なくなります。見学で設備から見てしまうと、費用の形や医療の体制の確認が後回しになります。
有料老人ホームは都道府県知事への届出制で、ホームから知事に運営状況などが報告され、知事が公表する仕組みがあります。設置者は、入居を考えている人に重要事項を書面で交付しなければなりません。都道府県の公表している情報と、手元の重要事項説明書を見比べると、説明に食い違いがないかを確かめられます。
出典:老人福祉法29条(e-Gov法令API)/老人福祉法施行規則20条の7(e-Gov法令API)
見学では、書面では分からないことを確かめます。
- 介護が必要な入居者が、日中どう過ごしているか
- 食事の内容と、食べる場所の雰囲気
- 職員が日中と夜間にどう配置されているか
- 看護職員がいる時間帯と、夜間の連絡の仕組み
- 重要事項説明書で分からなかった点への答え
※有料老人ホームの届出の窓口や、運営状況を公表している情報の見方は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
たとえば、母と子で見学に行く場合は、事前に重要事項説明書の「類型」「入居時の要件」「料金」「契約の解除」に付せんを貼っておき、見学の最後に担当者に読み合わせてもらうと、聞き漏らしが減ります。本人には住まいの雰囲気を見てもらい、子は書面との食い違いを確かめる、と役割を分けてください。
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介護付きか住宅型かで迷ったら、同じ地域で両方の資料を取り寄せて、重要事項説明書の「類型」と月額に含まれる介護費の範囲を並べて比べるのが近道です。老人ホームの検索サイトでは、地域と種類で絞り込んで資料請求や見学の予約ができます。
入居したあとの実家
親が介護付きに入ったあと、残った実家をどうするかは、入居と同時に考え始める問題です。すぐに決める必要はありませんが、空き家のまま置くと、管理の手間と費用は続きます。
入居後に実家へ戻る見込みがあるか、売って費用に充てるか、家族の誰かが使うかで、取る道が変わります。前払金のあるホームに入るなら、その資金をどこから出すかとも結びつきます。元気なうちに方針を聞いておくと、家族の判断が割れにくくなります。
- 戻る見込みがある:当面は残して、誰が管理するかを決める
- 費用に充てたい:売る時期と、売るときの税の扱いを調べる
- 家族が使う:名義や費用の分担を話す
- 決めきれない:管理の分担だけ先に決め、見直す時期を区切る
たとえば、母が介護付きに入り、父はすでに亡くなっていて実家が空いた場合、母が話せるうちに「売ってよいか」「仏壇や荷物をどうするか」を聞いておけば、あとで兄弟の間で迷わずに済みます。
入居の準備で手いっぱいの時期ですが、本人の意思を確かめやすいのもこの時期です。「戻るか」「売るか」「誰が管理するか」の3つだけでも、入居前に本人の考えを聞いておいてください。
よくある質問
介護付き有料老人ホームと有料老人ホームは何が違いますか?
介護付きは、有料老人ホームのうち、都道府県知事から特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームです。指定のない住宅型や健康型は介護付きと表示できず、住宅型では外の訪問介護などを自分で選んで使います。
介護付き有料老人ホームの介護保険の自己負担はいくらですか?
要介護度ごとの1日の単位数で決まる定額です。
1単位10円の地域・加算を含まない目安で、1割負担なら要介護1で30日16,260円、要介護5で30日24,390円です。
家賃・食費・管理費は別に全額自己負担です。
入居できる条件はありますか?
ホームごとに「入居時の要件」が決まっていて、入居時自立・入居時要介護・入居時要支援・要介護・入居時自立・要支援・要介護の4区分で表示されます。年齢は法令と指針の範囲では一律に決まっていないので、ホームごとに確かめてください。
自立でも入れますか?認知症でも入れますか?
入居時の要件に「自立」を含むホームなら、自立の人も対象です。認知症の人を受け入れるかどうかは区分では決まらないので、症状にどこまで対応できるかを、見学のときに具体的な場面で聞いてください。
入居後もデイサービスや訪問介護を使えますか?
特定施設入居者生活介護を受けている間は、訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・通所介護・通所リハビリテーションを介護保険で別に使えません。通い慣れたデイサービスを続けたいなら、住宅型やサ高住、在宅のほうが続けやすい形です。
高額介護サービス費や負担限度額認定は使えますか?
介護保険の自己負担の部分は高額介護サービス費の対象で、上限を超えた分は申請で戻ります。負担限度額認定は特養などの6サービスだけが対象で、介護付きの家賃や食費は下がりません。
最期まで住み続けられますか?
類型の説明では、介護が必要になってもホームの介護を使って居室で暮らし続けられる住まいです。ただ、看取りの方針や医療的なケアへの対応はホームごとに違うので、契約書と重要事項説明書の文言で確かめてください。
順番のおさらい
- 介護付きとは:特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホームで、ホームの職員が介護する(一般型)
- 住宅型との違い:介護付きは定額で、訪問介護・デイサービスなど6つは保険で別に使えない。住宅型は外のサービスを使った分
- 入居の条件:ホームごとの入居時の要件(4区分)で決まり、認知症への対応はホームごと
- 介護保険の自己負担:1日の単位数×日数×単価×負担割合の定額(加算は別)
- 保険外の費用:家賃・食費・管理費は全額自己負担。前払金には3か月の返還ルール
- 効く制度:高額介護サービス費は効く。負担限度額認定と医療費控除は効かない
- 職員と医療:3人に1人以上は最低の基準。吸引や経管栄養は事業所の登録と職員で決まる
- 特養との違い:介護保険施設かどうか、入所の対象、軽減の制度が違う
- 介護度が上がったら:費用の段・解除の条項・居室の移動・医療・看取りを確かめる
- 在宅で続ける条件:夜間・介護者の体調・急変時・家の安全・本人の意思
- 探し方:類型と入居時の要件で絞り、書面で比べてから見学する
- 実家:戻るか・売るか・誰が管理するかを入居前に聞く
介護付きを選ぶときに家族が決めているのは、「介護をホームにまとめて任せる」という受け方です。その代わりに、外のサービスを自由に組み合わせる道を手放し、保険外の費用は軽くならないまま払い続けます。まずは親の認定区分と負担割合証を手元にそろえ、介護保険の自己負担を計算したうえで、候補の重要事項説明書を取り寄せて家族で同じ順番で読むところから始めてください。
1単位の単価(地域区分)や有料老人ホームの届出・指導の窓口は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

