- 親の預貯金がいくらまでなら、負担限度額認定を受けられるのか
- 夫婦の場合、母の分の貯金や年金まで数えるのか
- 父と母が別々の世帯になっていても、配偶者の分は見られるのか
- 認定を受けると、特養の食費と部屋代は1か月でどれくらい変わるのか
- タンス預金や株、投資信託、生命保険は預貯金に入るのか
- 申告しなかった預貯金が後から分かったら、どうなるのか
- 有料老人ホームやグループホームでも使えるのか
- 親が認知症で通帳を出せないとき、子は何から手をつければいいのか
上記のような悩みに答えます。
負担限度額認定は、特別養護老人ホームなどに入った人の食費と居住費を、所得と預貯金に応じた1日の上限まで下げる仕組みで、介護保険法では「特定入所者介護サービス費」と呼ばれています。調べると要件の表と段階ごとの金額表はすぐ見つかりますが、表だけでは「うちの親はどの段階なのか」が決まりません。親の通帳と年金の通知を手元に置いて段階を順番に判定する手順、預貯金が基準をわずかに超えたときに1か月でいくら差が出るか、通らなかったときに次に何を当てはめるかは、自治体の案内ページや施設紹介の記事ではあまり前に出てきません。そこで、対象になる施設と費用、判定の順番、預貯金の数え方という基本を押さえたうえで、金額の差の出し方と、認定が通らない場合の次の手まで、介護保険法と施行規則の条文、厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。
負担限度額認定を受けると、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・ショートステイなどの食費と居住費が、段階ごとに決まった1日の上限までに下がります。使えるのは、世帯全員(別の世帯にいる配偶者も含む)が住民税非課税で、本人の年金収入などと、本人と配偶者の預貯金等の合計が基準以下の人です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホームには使えません。
介護費の自己負担シミュレーター(要介護度と負担割合から月額の目安を出す)
この記事の数字は2026年10月時点のものです。負担限度額と預貯金の基準は、2026年8月1日から適用されている額(2026年8月時点)で書いています。
負担限度額認定で下がるのは食費と居住費だけ
負担限度額認定で下がるのは、施設での食費と居住費(ショートステイでは滞在費)だけです。介護サービスそのものの自己負担(1〜3割の部分)は、この認定では変わりません。
こう分かれているのは、介護保険の給付の作りによります。施設に入ったときの保険給付(施設介護サービス費)は、かかった費用から「食事の提供に要する費用、居住に要する費用その他の日常生活に要する費用」を除いた部分に出ると条文で決まっていて、食費と居住費は原則として全額を自分で払う側にあります(介護保険法48条)。そのうえで、所得と資産の状況で決められた人に限り、食費と居住費の一部を介護保険から施設に支払う仕組みが、負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)です(介護保険法51条の3)。
対象になるのは、条文に並んでいる次の6つのサービスだけです。
- 特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
- 地域密着型の特別養護老人ホーム
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護(医療型のショートステイ)
出典:介護保険法48条(e-Gov法令API)/介護保険法51条の3(e-Gov法令API)
有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、介護保険の上では「介護保険施設」ではありません。有料老人ホームで介護保険を使うのは、居宅サービスの一つである特定施設入居者生活介護で、この6つの列挙には入っていません。サ高住は住宅で、介護が要るときは外から訪問介護などを使うのが基本です(特定施設の指定を受けたものは、有料老人ホームと同じ特定施設入居者生活介護になります)。認知症のグループホームも列挙に入っていないので、どれも認定を受けても食費や家賃は下がりません(介護保険法8条)。
たとえば、母が自宅で暮らしながら月に数日ショートステイを使っている場合でも、ショートステイは対象なので、認定を受ければ泊まった日の食費と滞在費が下がります。一方、同じ母が住宅型の有料老人ホームに移ると、認定証を持っていても食費と家賃は契約どおりの額になります。施設の候補を並べる段階で、この認定が効く施設かどうかで費用の見え方が大きく変わります。
グループホームの費用が認定の外でどう決まるかは、次の記事で確かめられます。
認知症の親のグループホーム費用は月いくらか|内訳・年金で払えるか・軽減の有無
迷ったときは、まず親が使う(使いそうな)サービスが6つのどれかに当たるかを先に見てください。当たらなければ、預貯金の条件を調べる前に、ほかの軽減の仕組み(下の「通らなかったときの次の手」)に進んだほうが早く答えに着きます。
親が当てはまるかを3つの順番で判定する

親が認定を受けられるかは、①住民税が非課税か、②本人の年金収入などがいくらか、③本人と配偶者の預貯金等がいくらか、の3つを順番に見ると決まります。①で外れたら、②と③は見なくてかまいません(例外は下の「通らなかったときの次の手」の特例です)。
順番が大事なのは、段階が②で決まり、③の上限は段階ごとに違うからです。預貯金の上限だけを先に見て「650万円以下だから大丈夫」と判断すると、実は②で第3段階②に当たっていて上限が500万円だった、という取り違えが起きます。
- 1世帯と配偶者の住民税全員が非課税か(別世帯の配偶者も含む)
- 2本人の年金収入など非課税の年金も含めて、その他の合計所得金額と足す
- 3段階を決める82.65万円以下は第2段階、82.65万円超120万円以下は第3段階①、120万円超は第3段階②
- 4預貯金等の合計本人と配偶者の分を足し、段階ごとの上限と比べる
①世帯全員と配偶者が住民税非課税か
最初の条件は、親の世帯の世帯主とすべての世帯員、それに親の配偶者が、市町村民税を課されていないことです。条文は「世帯員並びにその者の配偶者」と書いていて、配偶者は同じ世帯かどうかを問いません。婚姻届を出していない事実上の夫婦も含まれます。配偶者が行方不明の場合や配偶者からの暴力を受けた場合などは、条文で除かれています(介護保険法施行規則83条の5)。
同じ世帯にいる子が住民税を課されていれば、親の世帯は課税世帯になり、①の時点で第1〜第3段階には当たりません。生活保護を受けている人は第1段階で、預貯金の要件はありません。
②本人の年金収入とその他の所得で段階を決める
①を満たしたら、本人の公的年金の収入額(遺族年金や障害年金などの非課税の年金も含む)と、その他の合計所得金額を足します。この合計で段階が決まります。
| 段階 | 対象になる人(第2〜第3段階は、世帯全員と配偶者が住民税非課税であることが前提) |
|---|---|
| 第1段階 | 生活保護を受けている人など/老齢福祉年金を受けている人 |
| 第2段階 | 年金収入等の合計が82.65万円以下 |
| 第3段階① | 年金収入等の合計が82.65万円超120万円以下 |
| 第3段階② | 年金収入等の合計が120万円超 |
| 第4段階 | 住民税が課税されている世帯(原則として対象外) |
出典:介護サービス情報公表システム「利用者負担の軽減について」(厚生労働省)/介護保険法施行規則83条の5(e-Gov法令API)
年金の額は、毎年届く年金額の通知で確かめられます。遺族年金や障害年金を受けている場合は、その通知も出して額を足してください。
③本人と配偶者の預貯金等を足して上限と比べる
最後に、本人と配偶者が持っている現金・預貯金・有価証券などを合計し、②で決まった段階の上限と比べます。上限は次の項目の表のとおりです。
たとえば、父が亡くなり遺族年金と自分の老齢年金を受けている母の場合、老齢年金の額だけを見て「82.65万円以下だから第2段階」と考えがちですが、遺族年金を足すと120万円を超えて第3段階②になることがあります。第3段階②なら預貯金の上限は単身で500万円なので、母の貯金が500万円を超え650万円以下なら、第2段階のつもりでは通るはずの申請が通りません。
編集部の整理では、判定の材料になる書類は「住民税の課税・非課税が分かるもの」「年金の額が分かる通知(非課税の年金も)」「本人と配偶者の通帳」の3つです。この3つを並べてから順に当てはめると、段階の取り違えを防げます。
預貯金の上限は段階と夫婦かで決まる
預貯金等の上限は、第1段階に近いほど高く、配偶者がいればさらに1,000万円上乗せされた額になります。2026年8月時点の基準は次のとおりです。
| 段階 | 単身(配偶者なし) | 夫婦(配偶者あり) |
|---|---|---|
| 第1段階(老齢福祉年金を受けている人) | 1,000万円以下 | 2,000万円以下 |
| 第2段階 | 650万円以下 | 1,650万円以下 |
| 第3段階① | 550万円以下 | 1,550万円以下 |
| 第3段階② | 500万円以下 | 1,500万円以下 |
| 40〜64歳(第2号被保険者・段階にかかわらず) | 1,000万円以下 | 2,000万円以下 |
出典:介護サービス情報公表システム「利用者負担の軽減について」(厚生労働省)/介護保険法施行規則83条の5(e-Gov法令API)
生活保護を受けている人(第1段階)には、預貯金の要件はありません。40〜64歳で要介護認定を受けている人は、年金収入による段階分けの違いがなく、単身1,000万円・夫婦2,000万円の1本です。65歳になって第1号被保険者に変わると、預貯金の上限が段階ごとの額に変わるので、そのときに改めて判定を受けることになります。
夫婦の上限は「夫婦それぞれ」ではなく「本人と配偶者の合計」で見ます。条文は「当該要介護被保険者及びその者の配偶者が所有する」資産の合計額と書いています(介護保険法施行規則83条の5)。配偶者が自宅に残って暮らしていても、配偶者名義の預貯金は数に入ります。
たとえば、第2段階に当たる父が特養に入り、母が自宅で暮らしている場合、父と母の預貯金を足した合計が夫婦の上限1,650万円以下なら対象になります。同じ父でも母がすでに亡くなっていれば単身の上限650万円で見るので、父の預貯金が650万円を超えていれば対象になりません。
編集部の整理では、上限の表は「親1人の通帳」ではなく「夫婦の通帳を全部足した額」と比べます。母の通帳を見せてもらえるかどうかで判定が変わるので、父の申請を考える段階で、母にも話を通しておくと手戻りがありません。
預貯金に入るもの・入らないもの
預貯金等に入るのは、現金・預貯金・有価証券・投資信託など、残高や時価がすぐ分かる資産です。生命保険・自動車・宝石や絵画などは、国の通知で預貯金等に含めない扱いになっています。
条文は「現金、預貯金、合同運用信託、公募公社債等運用投資信託及び有価証券その他これらに類する資産」と書いていて、何が「これらに類する資産」かは市町村長が認定します(介護保険法施行規則83条の5)。その運用の目安として、厚生労働省の通知が対象になるものとならないものを表にしています。
| 区分 | 国の通知での扱い |
|---|---|
| 預貯金(普通・定期) | 含む |
| 有価証券(株式・国債・地方債・社債など) | 含む |
| 投資信託 | 含む |
| 金・銀(購入先の口座残高で時価が分かるもの) | 含む |
| 現金(タンス預金) | 含む(自己申告) |
| 生命保険・自動車 | 含まない |
| 腕時計・宝石など時価の把握が難しい貴金属、絵画・骨董品・家財 | 含まない |
出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1390(補足給付の支給要件・認定の事務)
同じ通知では、住宅ローンなどの借入金がある場合は、その額を預貯金等の合計から差し引く運用とされています。差し引くには、金銭消費貸借契約書など借入の額が分かる書面が要ります。個人名義でも事業のための借入、税金や保険料の滞納額は差し引く負債に含みません。
この表に不動産の行はありませんが、だからといって「家や土地はまったく見られない」とは言えません。下で書く課税世帯向けの特例では、住んでいる家など以外に使える資産がないことが要件の一つになっています。
たとえば、母に普通預金、証券口座の投資信託、自宅の現金、終身保険の解約返戻金がある場合、預貯金等に数えるのは預金・投資信託・現金で、生命保険は入りません。段階ごとの上限と比べるのは、この預金・投資信託・現金の合計です。
※預貯金等に入るかどうかの個別の扱いや、負債を差し引けるかは自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
編集部の整理では、迷う資産は自分で「入らないはず」と決めずに、申請の前に市区町村の介護保険の担当に、資産の種類と残高を書いたメモを見せて聞くほうが確実です。
負担限度額の1日の上限と1か月の差

認定を受けると、食費と居住費は段階ごとの1日の上限(負担限度額)までになり、基準費用額との差を介護保険が施設に払います。1か月の差は「(基準費用額−負担限度額)×日数」で出せます(介護保険法51条の3)。
基準費用額は、国が告示で決めている食費・居住費の1日の額です。施設は利用者との契約で食費・居住費を決めるので、実際の額が基準費用額と違うことがあります。下の金額は国の基準の額で、親の施設の額は契約書と重要事項説明書で確かめてください。
食費(1日)
| 段階 | 施設に入所 | ショートステイ |
|---|---|---|
| 基準費用額 | 1,545円 | 1,545円 |
| 第1段階 | 300円 | 300円 |
| 第2段階 | 390円 | 600円 |
| 第3段階① | 680円 | 1,030円 |
| 第3段階② | 1,420円 | 1,360円 |
居住費(1日)
| 部屋の種類 | 基準費用額 | 第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② |
|---|---|---|---|---|---|
| ユニット型個室 | 2,066円 | 880円 | 880円 | 1,370円 | 1,470円 |
| ユニット型個室的多床室 | 1,728円 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,470円 |
| 従来型個室(特養など) | 1,231円 | 380円 | 480円 | 880円 | 980円 |
| 従来型個室(老健・介護医療院) | 1,728円 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,470円 |
| 多床室(特養など) | 915円 | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 多床室(老健・介護医療院・室料を徴収する場合) | 697円 | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 多床室(老健・介護医療院・室料を徴収しない場合) | 437円 | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 |
出典:介護サービス情報公表システム「利用者負担の軽減について」(厚生労働省)
たとえば、第2段階の母が特養の多床室に入ると、食費は1日(1,545円−390円)=1,155円、居住費は1日(915円−430円)=485円軽くなり、30日で食費34,650円、居住費14,550円、合わせて49,200円の差です。母が払う食費と居住費は1日820円、30日で24,600円になり、認定がない場合の基準費用額どおりの30日73,800円と比べた額です。
特養の多床室で段階ごとに並べると、食費と居住費の自己負担は次のとおりです。
| 段階(特養・多床室) | 1日の食費+居住費 | 30日 | 基準費用額との差(30日) |
|---|---|---|---|
| 基準費用額(認定なし) | 2,460円 | 73,800円 | ― |
| 第1段階 | 300円 | 9,000円 | 64,800円 |
| 第2段階 | 820円 | 24,600円 | 49,200円 |
| 第3段階① | 1,110円 | 33,300円 | 40,500円 |
| 第3段階② | 1,950円 | 58,500円 | 15,300円 |
ここから、預貯金が基準をわずかに超えたときの重さが分かります。
たとえば、第2段階に当たる単身の父の預貯金等が650万円を超えていると、認定は原則として受けられず、施設の額が基準費用額どおりなら、特養の多床室で30日49,200円、30日を12回重ねた12か月で590,400円の差になります。同じ父がユニット型個室なら、食費(1,545円−390円)と居住費(2,066円−880円)で1日2,341円、30日で70,230円の差です。
この差は、介護サービス費の自己負担(1〜3割)とは別に出てくる金額です。介護サービス費まで含めた月の総額は、下の記事と冒頭のシミュレーターで組み立てられます。
編集部の整理では、預貯金が上限の近くにある家ほど、まず1か月の差を出してから話を進めると判断がぶれません。施設の部屋の種類と段階が決まれば、上の掛け算で親の場合の額が出ます。
申請の仕方と認定証の使い方
認定は自動では付きません。親の住む市町村に申請書を出し、交付された認定証を、介護保険の被保険者証と一緒に施設へ見せて初めて食費と居住費が下がります。
申請書に書くのは、当てはまる段階、氏名・生年月日・住所・個人番号、入っている施設の名称と所在地、入所した日、被保険者番号、前の年に受けた年金の種類などです(介護保険法施行規則83条の6)。申請するときは被保険者証を提示します。
- 親の住む市区町村の介護保険の担当に、申請書の様式と添付する書類を聞く
- 申請書に、段階・施設の名称・入所した日などを書く
- 当てはまる段階と入所した日を確かめる書類、預貯金等の状況を市町村が金融機関に確認することへの同意書を添える
- 被保険者証を提示して、市町村に申請する
- 交付された認定証を、被保険者証と一緒に施設(ショートステイの事業所)に見せる
出典:介護保険法施行規則83条の6(e-Gov法令API)/介護保険法施行規則83条の7(e-Gov法令API)
添付書類のうち、段階と入所日を確かめる書類は、市町村が公簿などで確認できるときは省略できると条文にあります。同意書は、市町村が銀行などに預貯金の状況を確認することへの同意を示す書面です。通帳の写しを何か月分出すかといった具体的な中身は、条文には書かれていません。
※申請書の様式、添付書類の省略の扱い、代わりに申請できる人の範囲は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
申請した月の初日から効く
国の通知では、認定の効力は申請した日の属する月の初日にさかのぼる取扱いです。申請の前の月まではさかのぼらないので、入所やショートステイの利用が決まったら、その月のうちに申請しておくと取りこぼしがありません。
通帳の写しの準備に時間がかかって申請が間に合わなかったなど、認定証を施設に見せられなかったことがやむを得ないと市町村が認めた場合は、支払った額から負担限度額を差し引いた分を後から支給できる規定もあります(介護保険法施行規則83条の8)。これは市町村が認めたときに「支給できる」という規定で、申請が要ります。
出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1390/介護保険法施行規則83条の8(e-Gov法令API)
親が認知症で通帳を確かめられないとき
親が認知症などで、自分で通帳を探したり申請書を書いたりできないことがあります。子が代わりに申請できるか、そのとき何が要るかは市区町村ごとに扱いが違うので、最初の問い合わせで「親本人が手続きできない」と伝えて聞くのが近道です。担当のケアマネジャーや、入所先の施設の相談員が手続きの流れを知っていることもあります。
通帳のありかが分からない場合は、親あての郵便物(銀行や証券会社からの取引の通知)から口座を洗い出し、分かった範囲を市区町村に伝えます。申請に添える同意書は、市町村が金融機関などに預貯金の状況を確認することへの同意を示す書面です(介護保険法施行規則83条の6)。分かっている口座は漏らさず伝えてください。
たとえば、遠方に住む長女が母の特養入所に合わせて申請する場合、入所の日程が決まった時点で市区町村に電話し、様式を郵送してもらえるか、通帳の写しの範囲はどこまでかを先に聞いておくと、入所した月のうちに出せます。
編集部の整理では、申請が遅れる原因になりやすいのは書類そのものより「親の口座が全部でいくつあるか分からない」段階です。入所の話が出たら、通帳探しを最初の作業にしてください。
有効期限と毎年の申請し直し
認定証には有効期限があります。国の通知では、毎年8月1日から翌年7月31日までの期間で判定するので、毎年申請し直すのが基本です。
条文は「有効期限を定めて」認定証を交付すると書くだけで、期間の長さは書いていません(介護保険法施行規則83条の6)。期間の扱いは厚生労働省の通知によるもので、さらに市区町村の判断で有効期限を2年とする運用をしているところもあります。国の通知の流れでは、前の年度に認定を受けていた人に市町村が申請を促す形なので、案内が届いたら期限までに出し直します。
出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1390/厚生労働省「補足給付の現状について」
※認定証の有効期限の定め方と更新の案内の時期は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
年の途中で状況が変わったときにも、手続きが要ります。世帯の誰かが住民税を課されるようになった、預貯金が上限を超えた、といった理由で要件に当てはまらなくなったら、認定証を遅滞なく市町村に返すと条文で決まっています(介護保険法施行規則83条の6)。
たとえば、母の特養入所後に同居の孫が就職して住民税を払うようになると、世帯の課税状況が変わります。そのままにしておくと、後から再判定されて差額を求められることがあるので、変化が分かった時点で市区町村に連絡してください。
編集部の整理として、毎年の申請し直しは「夏の手続き」として家族の予定表に入れておくと忘れません。年金額の通知や通帳の記帳も、その時期にまとめて確かめておくと翌年が楽になります。
偽りの申告と世帯分離の扱い
預貯金を偽って認定を受けると、市町村は支給した額の全部または一部を取り戻せるうえ、支給を受けた額の100分の200に相当する額以下の金額、つまり最大で2倍までを徴収できます(介護保険法22条)。
市町村は、申請のときの同意書に基づいて、銀行などに預貯金の状況を確認できます。申告していない口座が後から分かれば、認定の前提が崩れます。
一方、国の通知は、認知症などで本人が自分で通帳を用意できず、後から預貯金が基準を上回っていたと分かった場合でも、不正の意図がなければ加算金の対象にはならないとしています。通知が挙げているのはこの場合だけなので、ほかの申告漏れまで同じ扱いになるとは言えません。分かった時点で市区町村に伝えることが大切です。
世帯を分ける話もありますが、配偶者については、住民票の世帯を分けても預貯金も課税状況も数えると条文が決めています(介護保険法施行規則83条の5)。父と母の世帯を分けても、母が住民税を課されていれば父は第1〜第3段階に当たらず、母の預貯金も父の分と合わせて見られます。
認定を受けるために世帯を分けたり、預貯金を誰かに移したりする方法は、この記事では扱いません。実際の暮らしが変わって世帯や資産が動いた場合は、その状態で市区町村が判定します。
判定は申請した日の世帯の状況と預貯金で行うと国の通知にあります。
編集部の整理では、預貯金の申告は「全部出して、迷うものは聞く」で進めるのが確実です。上限を超えて認定を受けられない月の差額は上の掛け算で前もって出せますが、偽りの申告で後から徴収される額は、受けた期間が長いほど膨らみます。
認定が通らなかったときの次の手

住民税が課税されている世帯(第4段階)や、預貯金が上限を超えた場合は、原則として認定は受けられません。それでも、課税世帯向けの特例、介護サービス費の月の上限、医療費控除の3つは、別の仕組みとして当てはめられます。
課税世帯でも特例が使える場合
介護保険施設か地域密着型の特養に入所している人で、世帯の人数が2人以上(別世帯の配偶者がいれば1人を加える)であり、次の4つすべてに当てはまれば、課税世帯でも負担限度額の対象になります(介護保険法施行規則83条の5)。ショートステイはこの特例の対象外です。
- 世帯の年間の収入などから、施設の利用者負担・食費・居住費の年額を引いた額が82.65万円以下
- 世帯主・世帯員・配偶者の預貯金等の合計が450万円以下
- 住んでいる家など日常生活に必要な資産以外に、使える資産がない
- 災害など特別な事情がある場合を除き、介護保険料などの滞納がない
年額の差し引きの計算は条文の式が細かいので、親の世帯の収入と施設の費用を書き出して、市区町村の介護保険の担当に当てはめてもらってください。
介護サービス費には月の上限がある
認定とは別に、介護サービス費の自己負担(1〜3割の部分)には、世帯の所得に応じた1か月の上限があり、超えた分は申請すると高額介護サービス費として戻ります。
| 区分 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 住民税課税〜課税所得380万円未満 | 44,400円(世帯) |
| 住民税世帯非課税 | 24,600円(世帯) |
| 世帯非課税で、年金収入等の合計が82.65万円以下 | 15,000円(個人) |
出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.997/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
給付を受ける権利は2年で時効になります(介護保険法200条)。いつから数えるかは市区町村に確認してください。
施設の費用は医療費控除の対象になる
特養の利用料は、介護費・食費・居住費の自己負担額の2分の1が医療費控除の対象になり、老健と介護医療院は自己負担額の全額が対象です。理美容代などの日常生活費は入りません。施設が出す領収証には医療費控除の対象額が書かれるのが基本なので、親の確定申告のときに使えます。
在宅で続けるという選択の条件
認定が通らず施設の費用が重いと分かったときは、施設に入らず在宅で続ける道も並べてください。編集部の整理では、在宅で続けられるかどうかの目安は、親に必要な介護が訪問介護やデイサービスなどで回るか、夜間や急な体調の変化に誰がどう動くかが決まっているか、介護する家族の仕事と暮らしが続けられるか、の3つです。ショートステイは負担限度額認定の対象なので、在宅のまま泊まりを組み合わせる形でも、要件に当てはまれば食費と滞在費は下がります。
施設を選ぶ場合は、認定が使えない前提で、候補ごとに重要事項説明書の食費・居住費と介護サービス費を同じ表に並べて比べると、月の額の違いがはっきりします。施設の種類ごとの選び方は、在宅か施設かの入口のページにまとめています。
親の介護費用が毎月いくらか分からない人へ|うちの親の場合の出し方
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
負担限度額認定で下がるのは、特別養護老人ホームなどの介護保険施設とショートステイの食費・居住費です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は対象外なので、候補を比べるときは、認定が使える施設かどうかを先に分けておくと計算を間違えません。地域の施設の資料をまとめて取り寄せられる検索サイトもあります。
入所したあとの実家をどうするか
親が施設に入ると、次に来るのは実家の扱いです。預貯金の上限や負担限度額は毎年見直されるので、実家の管理費や固定資産税を誰の口座から払うかで、親の預貯金の残り方も変わります。
親が住まなくなった家でも、すぐに売る・貸すを決める必要はありません。先に、郵便物の転送、光熱費の契約、鍵と見回りの担当を家族で決めておくと、施設の費用と実家の費用を同じ表で見られるようになります。
よくある質問
負担限度額認定の預貯金の上限はいくらですか?
2026年8月時点で、単身なら第2段階650万円、第3段階①550万円、第3段階②500万円以下です。配偶者がいる場合は夫婦の合計で、それぞれ1,650万円・1,550万円・1,500万円以下になります。40〜64歳の人は段階にかかわらず単身1,000万円・夫婦2,000万円以下です。
預貯金を申告しなかったら、ばれますか?
申請のときに出す同意書に基づいて、市町村は銀行などに預貯金の状況を確認できます。偽りの申告で認定を受けると、支給された額を取り戻されるうえ、支給を受けた額の2倍までを徴収されることがあります(介護保険法22条)。迷う資産は、申請前に市区町村に聞いてください。
有料老人ホームやグループホームでも使えますか?
使えません。対象は特養・老健・介護医療院・地域密着型の特養と、2種類のショートステイの6つだけです。有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームは、認定を受けても食費や家賃は下がりません。
申請する前の月の分はさかのぼりますか?
国の通知では、認定の効力は申請した月の初日からです。申請の前の月まではさかのぼりません。準備が間に合わなかったことがやむを得ないと市町村が認めた場合に限り、後から支給できる規定があるので、間に合わなかったときは市区町村に相談してください。
親の貯金が上限を超えています。どうすればいいですか?
判定は申請した日の世帯の状況と預貯金で行います。上限を超えていれば原則として認定は受けられませんが、高額介護サービス費と医療費控除は別の仕組みなので、当てはまるか確かめられます。認定を受けるために名義を移すような方法は扱いませんので、迷う場合は市区町村に事情を話して聞いてください。
親が申請できないとき、子が代わりに申請できますか?
代わりに申請できる人の範囲と、そのときに要る書類は市区町村ごとに扱いが違います。最初に「親本人が手続きできない」と伝えて、様式と必要なものを聞いてください。ケアマネジャーや施設の相談員に手続きの流れを聞くのも近道です。
毎年更新が必要ですか?
国の通知では、毎年8月1日から翌年7月31日までの期間で判定するので、毎年申請し直すのが基本です。有効期限を2年としている市区町村もあります。案内が届く時期と期限は、親の住む市区町村で確かめてください。
順番のおさらい
- 下がるもの:特養・老健・介護医療院・地域密着型特養・ショートステイの食費と居住費だけ。有料老人ホーム・サ高住・グループホームは対象外
- 判定の順番:世帯全員と配偶者の住民税非課税→本人の年金収入等で段階→本人と配偶者の預貯金等を段階の上限と比べる
- 預貯金の上限:単身は第2段階650万円・第3段階①550万円・第3段階②500万円。夫婦は合計で1,000万円を上乗せした額
- 預貯金に入るもの:預貯金・有価証券・投資信託・口座で時価が分かる金銀・現金。生命保険・自動車・宝石などは入らない
- 1か月の差:(基準費用額−負担限度額)×日数で出す。施設の実際の額は契約書で確かめる
- 申請:市町村に申請書と同意書を出し、認定証を被保険者証と一緒に施設に見せる。効力は申請した月の初日から
- 有効期限:毎年8月1日から翌年7月31日が基本で、毎年申請し直す。状況が変わったら返す
- 偽りの申告:支給を受けた額の2倍まで徴収されることがある。配偶者は世帯を分けても数える
- 通らなかったとき:課税世帯の特例、高額介護サービス費、医療費控除、在宅で続ける選択を当てはめる
- 入所のあと:実家の管理と費用を誰が持つかを決める
負担限度額認定は、表を眺めるより、親の書類を3つ並べて順番に当てはめるほうが早く答えが出ます。住民税の課税状況、年金の額の通知、夫婦の通帳がそろえば、段階と1か月の差まで自分で出せます。その数字を持って市区町村に聞けば、申請するかどうか、通らなければ何を当てはめるかを、その場で決められます。
申請書の様式・添付書類の省略・有効期限の定め方・代理での申請は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

