介護と仕事の両立がきついときの制度の使い分け|時間休・残業制限・時短・テレワーク

病院の廊下
  • 介護と仕事の両立、もう限界かもしれない
  • 平日の通院の付き添いのたびに有給が減っていく
  • デイサービスの送り迎えの時間に、どうしても間に合わない
  • 残業を断ってもいいのか分からない
  • 遠距離で月に何度も帰るのがきつい
  • 会社に介護のことを言いにくい。評価が下がりそうで怖い
  • パートや契約社員でも使える制度があるのか知りたい
  • 自分の時間がまったくない。仕事を辞めたほうが楽なのでは

上記のような悩みに答えます。

介護と仕事の両立は、休みの制度を1つ知れば片づく話ではありません。「きつい」の中身が、平日の昼の用事なのか、毎朝毎夕の送迎なのか、残業なのか、夜中の呼び出しなのかで、使う制度がまるで違うからです。そこで、介護休暇・残業や深夜業の制限・短時間勤務などの措置・テレワークの中身を押さえたうえで、きつさの場面ごとの対応表、2025年4月から会社に義務づけられた個別の周知と意向確認、制度を介護サービスの時間割に合わせて使う段取り、辞める前に確かめる条件まで、育児・介護休業法の条文と厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。

先に答え

介護と仕事の両立がきついときは、まず「何がきついのか」を分けてください。通院の付き添いのような短い用事は時間単位で取れる介護休暇、毎日の送迎や夕方の時間は会社が用意する短時間勤務や時差出勤などの措置、残業や夜勤は所定外労働や深夜業の制限の請求、と使う制度が変わります。制度は、介護サービスで回る時間割に勤務を合わせるために使うと続けやすくなります。そのため、勤務時間をケアマネジャーに伝えるところから始めます。

2026年10月時点の制度で確かめています

目次

きつさの中身で使う制度は変わる

両立がきついと感じたら、最初にやることは制度を調べることではなく、きつさを場面に分けることです。場面が分かれれば、当てる制度はおのずと絞られます。

「両立がきつい」という言葉には、性質の違う困りごとがいくつも混ざっています。平日の昼に数時間だけ抜けたい用事、毎日決まった時刻に家にいなければならない送迎、仕事が終わらず帰りが遅くなる残業、夜に寝られない呼び出し、そして何週間かかけて段取りを組み直す時期。育児・介護休業法は、こうした場面ごとに別々の制度を用意しています。日単位・時間単位の休み(介護休暇)、毎日の勤務時間を動かす措置(短時間勤務等の措置)、時間外の労働を抑える制限(所定外労働・時間外労働・深夜業の制限)、まとまった休み(介護休業)です。1つの制度で全部を受け止める作りにはなっていないので、きつさを分けずに「とりあえず有給」「とりあえず休職」で対応していると、どこかで日数や気力が尽きます。

分け方は、次の問いで足ります。

  1. それは週に何回、1回に何時間かかる用事か
  2. 毎日決まった時刻に起きることか、ときどき起きることか
  3. 勤務時間の内側の問題か、残業や夜間の問題か
  4. 自分がその場にいる必要が本当にあるか、介護サービスに任せられるか

たとえば、母の通院の付き添いがときどき、午前中だけかかっているなら、それは「ときどき・数時間・勤務時間の内側」の用事です。父のデイサービスの迎えが毎日夕方にあって、定時に会社を出ても間に合わないなら、それは「毎日・決まった時刻」の問題です。同じ「両立がきつい」でも、前者は休みの取り方で、後者は勤務時間の動かし方で解く問題になります。

最後の問いは見落とされがちです。付き添いや送迎のうち、介護サービスや家族の分担に移せるものが見つかれば、制度を使う量そのものが減ります。きつさを書き出すときは、「自分がやっていること」と「自分でなくてもよいこと」に分けておくと、次の対応表に当てはめやすくなります。

何がきついかと制度の対応表

きつさの場面ごとに、当てる制度と頼み方をまとめると次のようになります。頼み方が「申出」か「請求」かで、会社とのやり取りの形も変わります。

ここに並ぶ制度は、どれも「要介護状態にある対象家族」を介護する人が使えるものです。要介護状態とは、けがや病気、障害で、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことで、要介護認定を受けていることは条件ではありません。対象家族は、法と施行規則で、配偶者(事実婚を含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫と決まっていて、同居や扶養は条件になっていません。

出典:厚生労働省「介護休業制度」/育児・介護休業法2条(e-Gov法令API)/育児・介護休業法施行規則(e-Gov法令API)

きつい場面 当てる制度 中身 頼み方
平日の通院の付き添い・面談 介護休暇 年5日(2人以上なら年10日)、時間単位でも取れる 申出(会社は原則拒めない)
毎日の送迎・夕方の時間 短時間勤務等の措置 会社が短時間勤務・フレックス・時差出勤・費用助成のいずれかを用意 申出(中身は会社の制度による)
残業で帰りが遅い 所定外労働の制限・時間外労働の制限 所定労働時間を超える労働、または一定時間を超える残業をさせない 請求(例外あり)
夜勤・深夜の勤務 深夜業の制限 午後10時から午前5時までの労働をさせない 請求(例外あり)
在宅で働きたい テレワーク(在宅勤務等) 会社の努力義務 就業規則を確かめて相談
体制づくりにまとまった時間 介護休業 対象家族ごとに通算93日・3回まで 申出(会社は原則拒めない)

「申出」と「請求」の違いは、会社がどこまで応じなければならないかに表れます。介護休業と介護休暇は、法律上、会社は申出を拒めません(労使協定で対象外とされた場合などの例外あり)。残業や深夜業の制限は、請求すれば会社はその時間に働かせてはならないものの、「事業の正常な運営を妨げる場合」は例外になります。短時間勤務等の措置は、会社に用意する義務がある一方、4つのうちどれを用意するかは会社が選びます。

たとえば、通院の付き添いと夕方の迎えが両方きつい人なら、付き添いは介護休暇、迎えは短時間勤務等の措置、と2つを組み合わせることになります。残業が多い職場で迎えに間に合わないなら、まず残業の制限を請求し、それでも足りなければ始業・終業の時刻を動かす措置を相談する、という順番も取れます。

通院の付き添いは時間単位の介護休暇で

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平日の通院の付き添いや、ケアマネジャーとの面談のような数時間の用事には、介護休暇がよく合います。年次有給休暇を削らずに済み、時間単位でも取れるからです。

介護休暇は、要介護状態の対象家族が1人なら1年度に5日、2人以上なら10日まで取れる休みです(育児・介護休業法16条の5第1項)。日単位だけでなく時間単位でも取れ、その単位は1時間の整数倍で、始業の時刻から続けて、または終業の時刻まで続けて取る形です。勤務の途中で抜けて戻る「中抜け」は、法令が求めている形には入っていないので、認められるかは会社の決まりによります。また、時間単位で取るのが難しい業務の人は、労使協定で時間単位の対象から外されていることがあります。

出典:育児・介護休業法16条の5(e-Gov法令API)/厚生労働省「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」

年次有給休暇との違いは、使い道と賃金の扱いにあります。

  • 年次有給休暇は、介護以外の理由でも使える休み
  • 介護休暇は介護のための休みで、賃金が出るかどうかは会社の就業規則で確かめる
  • 介護休暇の申出は、会社は拒めない(労使協定で除外された人などの例外あり)
  • 2025年4月1日からは、継続して雇われた期間が6か月未満の人を労使協定で除外する決まりがなくなった

出典:育児・介護休業法16条の6(e-Gov法令API)/厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

たとえば、ときどき午前中だけ通院に付き添っている人なら、始業から数時間の介護休暇を取って、午後から出社する使い方ができます。1日休むより休暇の消費が少なく、仕事も半日は進められます。ただ、介護休暇が無給の会社で、収入を減らしたくないなら、付き添いの一部を年次有給休暇で取る、という選び方もあります。どちらを先に使うかは、賃金の扱いと残りの日数を見比べて決めることになります。

親が2人とも要介護状態なら、介護休暇は年10日になります。父の通院と母のケアマネジャー面談が重なる時期には、この差が効いてきます。一方、親が1人で、付き添いが毎週のようにある場合は、年5日では足りなくなります。そのときは、付き添いそのものを通院介助のある介護サービスや家族の分担に移せないかを、ケアマネジャーに相談する段階です。

使い分けで迷ったら、就業規則の介護休暇の項目で「賃金が出るか」「時間単位で取れるか」「中抜けができるか」を見てください。そのうえで、介護休暇を介護の用事に、年次有給休暇を自分の体を休める日に残しておく、という分け方にしておくと、自分の休みがすべて介護に消える事態を避けやすくなります。

毎日の送迎や夕方には短時間勤務などの措置

デイサービスの送り出しや迎えのように、毎日決まった時刻に家にいる必要があるなら、休みではなく勤務時間そのものを動かす制度を使います。それが介護のための「所定労働時間の短縮等の措置」です。

会社は、要介護状態の対象家族を介護する社員(介護休業をしていない人)のために、申出に基づいて、連続する3年以上の期間に使える措置を用意しなければなりません(育児・介護休業法23条3項)。期間は、社員が利用を始める日として申し出た日から数えます。措置の中身は施行規則74条の2で決まっていて、会社は次の4つのいずれかを用意します。

  1. 所定労働時間を短くする制度(短時間勤務)
  2. フレックスタイム制度
  3. 始業・終業の時刻を繰り上げ・繰り下げる制度(時差出勤)
  4. 介護サービスを使ったときの費用を会社が助成する制度など

1から3は、2回以上使えるものとして用意することになっています(4の費用助成ではこの要件はありません)。

出典:育児・介護休業法23条(e-Gov法令API)/育児・介護休業法施行規則(e-Gov法令API)

ここで気をつけたいのは、どれを用意するかは会社が選ぶという点です。法律は「いずれかを用意する」ことを会社に求めているだけなので、「時短を選べる」とは限りません。会社によっては時差出勤だけ、費用助成だけ、ということもあります。また、入社して1年に満たない人などは、労使協定で対象外にされている場合があります。この措置は介護休業をしていない人のためのもので、介護休業の93日とは別に数えます。

たとえば、父のデイサービスの迎えが夕方で、定時に会社を出ても間に合わないとします。会社の措置が時差出勤なら、始業を早めて終業も早める形で、迎えの時刻に間に合わせる組み方ができます。会社の措置が短時間勤務なら、勤務時間を短くする形になります。一方、会社が費用助成を選んでいるなら、勤務時間は変えずに、迎えの時間帯に訪問介護などのサービスを入れて、その費用の一部を会社に助成してもらう、という逆の発想になります。

時短にしたときの給料の扱いは、就業規則と会社の説明で確かめてください。人事に聞くときは「介護のための所定労働時間の短縮等の措置として、うちの会社は何を用意しているか」「使える期間と回数」「給与の扱い」を聞けば、自分の場合に何ができるかがはっきりします。

残業と夜勤は「制限」を請求できる

残業で帰りが遅くなる、夜勤があって夜に家を空けられない、というきつさには、「制限」の請求で対応します。ただし、どれも例外がある制度なので、「残業を一切しなくてよくなる」という制度ではありません。

制限は3種類あり、育児の制度を介護に準用する形で決まっています。

制限 中身 1回の請求期間
所定外労働の制限(16条の8を16条の9で準用) 所定労働時間を超えて働かせない 1か月以上1年以内
時間外労働の制限(17条を18条で準用) 1か月24時間・1年150時間を超えて労働時間を延長しない 1か月以上1年以内
深夜業の制限(19条を20条で準用) 午後10時から午前5時までの間に働かせない 1か月以上6か月以内

どれも、制限を始めたい日の1か月前までに請求します。そして、どれにも「事業の正常な運営を妨げる場合」は例外とする定めがあります。また、引き続き雇われた期間が1年に満たない人などは、請求できないとされている場合があります。深夜業の制限は、深夜に常態として介護できる同居の家族など(省令で条件が決まっています)がいる場合は請求できません。自分が当てはまるかは会社に確かめてください。

出典:育児・介護休業法16条の9(e-Gov法令API)/育児・介護休業法18条(e-Gov法令API)/育児・介護休業法20条(e-Gov法令API)

残業の制限と深夜の制限は、請求できる期間が違う
所定外・時間外の制限

  • 1か月以上1年以内
  • 残業を抑える
深夜業の制限

  • 1か月以上6か月以内
  • 午後10時から午前5時の勤務を外す

所定外労働の制限と時間外労働の制限は、似ていますが強さが違います。所定外労働の制限は、会社が決めた所定労働時間を超える労働そのものをさせない制度です。時間外労働の制限は、残業をゼロにするのではなく、1か月24時間・1年150時間という上限を超えないようにする制度です。迎えの時刻に毎日帰りたいなら所定外、残業はある程度できるが長くは続けられない、という人なら時間外の制限が合います。

たとえば、夕方のデイサービスの迎えは家族が交代でできるけれど、残業が続くと夜の食事や服薬の見守りに間に合わない、という人なら、所定外労働の制限を1年以内の期間で請求し、期間が終わる前に続けるかを見直す、という使い方になります。夜勤のある職場で、夜間に親を一人にできないなら深夜業の制限ですが、請求期間は6か月以内なので、請求期間が終わる前に、続けるかを見直す日を手帳に書いておくと安心です。

請求の出し方は会社の様式や就業規則で確かめてください。会社から「事業の正常な運営を妨げる」と言われたら、どの仕事のどの部分が理由なのかを聞き、時間帯をずらすなどの別の案を一緒に考えてもらうところから始めてください。

テレワークと遠距離介護

在宅勤務ができれば両立が楽になりそうに見えます。ただ、介護のためのテレワークは、法律上は会社の努力義務です。認めてもらえるかは会社の制度しだいなので、まず就業規則を確かめます。

2025年4月1日から、会社は、要介護状態の対象家族を介護する社員(介護休業をしていない人)が申出によって在宅勤務等をできるよう、措置を講ずるよう努めなければならないとされました(育児・介護休業法24条4項)。「努めなければならない」は努力義務で、会社に在宅勤務を認める義務まではありません。つまり、介護を理由に在宅勤務を請求できる、という制度ではないのです。

出典:育児・介護休業法24条(e-Gov法令API)

テレワークを相談するときに確かめたいのは、次の点です。

  • 就業規則やテレワークの規程に、介護を理由にした在宅勤務の制度があるか
  • 在宅勤務できる職種・日数・申請の方法
  • 在宅で働く時間と、介護に手を取られる時間をどう分けるか

遠距離介護の場合、きつさの中身は「帰る日をどう作るか」です。月に何度も実家に帰るなら、帰省の日は、介護休暇の日数(年5日、2人以上なら年10日)を見ながら使い、足りない日を年次有給休暇で補う、と分けると日数を管理しやすくなります。介護休暇を取れる用事の範囲は会社の規則で確かめてください。在宅勤務の制度がある会社なら、実家で働ける日を作れないかも相談できます。

たとえば、親が遠方で一人暮らしをしていて、ケアマネジャーとの面談とサービス担当者の打ち合わせが同じ月に重なる場合は、その2つを同じ帰省の日にまとめてもらうよう頼むだけでも、休みの日数が減ります。実家で急に何か起きたときの動き方は、別の記事で順番を整理しています。

遠距離介護で親に何かあったときの動き方

2025年4月から会社が個別に知らせる

書類に記入する手元

「会社に介護のことを言いにくい」と感じている人に知っておいてほしいのは、2025年4月1日から、介護に直面したと申し出た社員に対して、会社が制度を個別に知らせ、利用の意向を確かめることが義務になったことです。

改正で介護に関わるものは、次のとおりです(いずれも2025年4月1日施行)。

  1. 介護に直面したと申し出た社員への、制度の個別の周知と意向確認(21条4項)
  2. 40歳になった日の属する年度の初めから終わりまで、または40歳になった日の翌日から1年間のうちに、会社が制度の情報を知らせる(21条5項)
  3. 申出がしやすくなるよう、研修・相談窓口・利用事例の提供・方針の周知などのうちいずれかを会社が用意する(22条)
  4. 介護のためのテレワークを会社の努力義務に(24条4項)
  5. 介護休暇で、継続雇用6か月未満の人を除外する決まりの廃止

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」/育児・介護休業法21条(e-Gov法令API)/育児・介護休業法22条(e-Gov法令API)

個別の周知で知らせるのは、介護休業、介護休暇・残業や深夜業の制限・短時間勤務等の措置といった制度、申出先、介護休業給付金に関することです。方法は面談・書面の交付・FAX・電子メール等のいずれかで、FAXや電子メールは社員が希望した場合に限られます。厚生労働省は、取得や利用を控えさせるような周知や意向確認は認められないと案内しています。さらに、申出をしたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています(21条6項)。

この仕組みは、「言い出すこと」自体を制度の入口にしています。何を頼めばいいか分からないまま上司に相談するより、「親の介護が必要な状況になったので、使える制度を教えてほしい」と人事に申し出れば、会社の側から制度の一覧と申出先を示してもらえる形です。

たとえば、親の通院が増え始めた人が、まだ介護休業を取るつもりはないけれど、残業を減らしたいと考えているとします。この場合も、介護が必要な状況になったと申し出れば、残業の制限や短時間勤務等の措置を含めた制度の説明を受けられます。

言いにくさが残るなら、最初は「親が介護を必要とする状況になったので、使える制度の説明を受けたい」と、状況と目的の2点に絞って申し出てください。会社への伝え方や、介護休業を取ると決めたときの申出の段取りは、介護休業の記事で詳しく書いています。

制度は介護サービスの時間割に合わせて使う

勤務の制度は、先に介護サービスで回る1日の時間割を作り、そこに勤務を合わせるために使うと続けやすくなります。

時間単位の介護休暇も、短時間勤務等の措置も、残業の制限も、使える量には限りがあります。それを全部「自分が付き添う時間」に使うと、介護の量が増えたときにすぐ足りなくなります。反対に、デイサービス・訪問介護・ショートステイといった介護サービスで平日の日中が回るように組み、そのすき間だけを制度で埋めると、同じ制度でも使う量が小さくて済みます。

組み方の順番は次のとおりです。

勤務に合わせて、サービスの時間割を組む
  1. 1勤務時間を書き出す出社と退社の時刻・残業の多い曜日
  2. 2ケアマネに伝える仕事の事情も話してよい
  3. 3サービスの時間を決める送り出し・迎え・訪問の時間帯
  4. 4足りない所に制度を当てる介護休暇・措置・制限

ケアマネジャーに仕事の事情を話すのは、遠慮しなくてかまいません。ケアマネジャーには家族の勤務時間も伝えて相談できます。「平日は朝の出社が何時で、帰宅は何時。この曜日は残業が多い」と伝えておけば、送迎の時刻や訪問の時間帯を考える材料にしてもらえます。まだケアマネジャーがいない段階なら、親の住む地域の地域包括支援センターが、介護の相談と、関係機関との連絡調整を受け持つ窓口です(介護保険法115条の45・115条の46)。

※地域包括支援センターの名称と担当区域は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

出典:介護保険法115条の46(e-Gov法令API)/介護保険法115条の45(e-Gov法令API)

たとえば、デイサービスの迎えが夕方で間に合わない場合、自分の勤務を短くする前に、迎えの時刻を遅くできる事業所がないか、迎えのあとに訪問介護を短時間入れられないかをケアマネジャーに聞けます。それでも埋まらない時間だけを、時差出勤や短時間勤務で埋めるのが順番です。夜間に何度も起こされて眠れない場合も、夜間に対応する訪問介護が使えないかを先に相談し、そのうえで深夜業の制限を考える、という並べ方ができます。

在宅の介護サービスをどう組み合わせるか

夜間の訪問介護を使うとき

サービスを増やせば費用もかかります。勤務を減らして収入が下がるのと、サービスを増やして支出が増えるのとでは、どちらが家計にとって続けやすいかを比べる場面も出てきます。費用の出どころの考え方は、介護費用の記事で整理しています。

親の介護費用は誰がどう出すか

介護休業はまとまった体制づくりに

時間単位の休みや勤務時間の調整では足りない、まとまった時間が要る時期には、介護休業を使います。介護休業は、同じ対象家族について3回まで、通算93日まで取れる休みです(育児・介護休業法11条2項)。日数と回数は対象家族ごとに数えます。

出典:育児・介護休業法11条(e-Gov法令API)

この記事で扱ってきた介護休暇や短時間勤務等の措置が「毎日の働き方を変える道具」だとすると、介護休業は「働き方を変える前提になる体制を作り直す期間」です。退院が決まったとき、在宅から施設を考えるときのように、決めることが一度に来る時期に向いています。雇用保険の介護休業給付金もあり、取る時期の決め方、取れる条件、会社への切り出し方、こじれたときの相談先と合わせて、介護休業の記事にまとめています。

出典:ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」

介護休業はいつ取るか(93日を3回に分けて使う)

辞める前に確かめること

仕事を辞めるかどうかを考え始めたら、決める前に、制度とサービスを組み合わせても回らないかを確かめてください。辞めるのは、組み合わせても回らないと分かってからでも遅くありません。

辞めると、制度の多くが使えなくなります。この記事で見てきた介護休暇・残業や深夜業の制限・短時間勤務等の措置・介護休業は、どれも働いている人のための制度で、会社に申し出たり請求したりして初めて使えるものです。辞めたあとに「時間単位で休めれば続けられた」と分かっても、元には戻せません。

次の項目のうち、まだ試していないものがあれば、辞める前にそこから手をつけられます。

  • きつさを場面に分け、対応表のどれに当たるかを書き出したか
  • 会社に介護に直面したと申し出て、制度の個別の説明を受けたか
  • 介護休暇・短時間勤務等の措置・残業や深夜業の制限のうち、使えるものを使ったか
  • ケアマネジャーに勤務時間を伝えて、サービスの時間割を組み直してもらったか
  • きょうだいや親族と、誰が何をするかを話し合ったか
  • 体制を作り直すための介護休業を検討したか
カップを持つ手

反対に、働き方を変える・辞める方向で考えたほうがよい合図もあります。制度を全部使い、サービスも組み直したうえで、それでも毎日の勤務時間の中に介護の対応が入り込み続けているとき。会社に措置の形を相談しても、自分の介護の時間帯にどの措置も合わないとき。そして、自分の体や気持ちが持たず、休みの日も回復しないときです。体や心の不調が続くなら、仕事の判断より先に、医療機関に相談してください。

たとえば、父のデイサービスの迎えに間に合わず「辞めるしかない」と考えていた人が、人事に申し出たところ、会社の措置が時差出勤で、始業を早めれば迎えに間に合うと分かった、という順番もあり得ます。一方、親の状態が変わって夜間も日中も介護が必要になり、在宅のサービスだけでは時間割が埋まらない段階なら、働き方を変えるか、施設を含めた次の選択肢を考える時期です。そのときに初めて、辞めるかどうかを含めた比較に進めます。

相談先は、仕事の制度なら会社の人事、介護の時間割ならケアマネジャーか地域包括支援センターです。会社と話がこじれたときの相談先は、介護休業の記事で整理しています。親の要介護認定がまだなら、認定とお金の話が次の一歩になります。

要介護認定が出たら、月にいくら出ていくか

親の介護、まず何から? 気づいた段階でやること

よくある質問

介護と仕事を両立するのは無理ですか?

無理かどうかは、きつさの中身と、使える制度・サービスの組み合わせで変わります。通院の付き添いは介護休暇、毎日の送迎は短時間勤務等の措置、残業は制限の請求、と場面ごとに当てる制度があります。辞めるかどうかは、それらを組み合わせても回らないと分かってから考えても遅くありません。

パートや契約社員でも使えますか?

正社員でなくても対象になります。ただし、介護休業・介護休暇は、労使協定があるときに週の所定労働日数が少ない人(厚生労働省は週2日以下と案内)などが対象外にされることがあります。有期雇用の人が介護休業を申し出るには、契約が満了することが明らかでないことなどの要件もあります。残業や深夜業の制限にも、勤続1年未満などの除外があります。自分が対象かは就業規則で確かめてください。

介護休暇と介護休業の違いは?

介護休暇は、年5日(対象家族が2人以上なら年10日)まで、時間単位でも取れる短い休みで、通院の付き添いなどに向きます。介護休業は、同じ対象家族について3回・通算93日まで取れるまとまった休みで、体制を作り直す時期に向きます。両方とも会社は原則として申出を拒めません。

時短にすると給料は減りますか?

時短にしたときの給料の扱いは、就業規則と会社の説明で確かめてください。会社の措置が時差出勤やフレックスなら、働く時間の長さを変えずに時刻だけ動かせる場合もあります。

会社に「うちには制度がない」と言われたら?

介護休暇・介護休業・残業や深夜業の制限は法律で決まっている制度で、短時間勤務等の措置は会社に用意する義務があります。就業規則に無いときも、会社の人事に法律の制度を使いたいと伝えて確かめてください。そのうえで人事に、介護に直面したことを申し出て、個別の説明を受けてください。それでも話が進まないときの相談先は、介護休業の記事にまとめています。

ケアマネジャーに仕事の事情を話していいですか?

話してかまいません。ケアマネジャーには家族の勤務時間も伝えて相談できます。出社と退社の時刻や残業の多い曜日を伝えておけば、送迎の時刻や訪問の時間帯を考える材料にしてもらえます。

順番のおさらい

  1. きつさを分ける:週に何回・何時間か、毎日か、勤務時間の内か外か、自分でなくてもよいかで分ける
  2. 対応表に当てる:付き添いは介護休暇、送迎は短時間勤務等の措置、残業と夜勤は制限、在宅は会社の制度、まとまった時間は介護休業
  3. 介護休暇:年5日(2人以上なら年10日)、時間単位で取れる。賃金の扱いは就業規則で確かめる
  4. 短時間勤務等の措置:会社が4つのいずれかを用意する。どれかは会社が選ぶ。連続する3年以上の期間
  5. 制限の請求:所定外・時間外は1か月以上1年以内、深夜は1か月以上6か月以内。例外がある
  6. テレワーク:会社の努力義務。就業規則を確かめる
  7. 会社に申し出る:2025年4月から、会社は制度を個別に知らせ、意向を確かめる
  8. サービスの時間割が先:勤務時間をケアマネジャーに伝え、足りない所に制度を当てる
  9. 介護休業:体制を作り直すまとまった時期に。対象家族ごとに3回・通算93日まで
  10. 辞める前に:制度とサービスを組み合わせても回らないと分かってから考える

両立がきついとき、人はつい「自分がもっと頑張る」か「辞める」かのどちらかで考えがちです。その間には、勤務の時刻を動かす、残業を抑える、時間単位で休む、サービスの時間割を組み直す、という手がいくつもあります。どれか1つで全部を解く必要はなく、きつさの場面ごとに小さな手を重ねていけば足ります。まずは今週、何がきついのかを紙に書き出し、人事への申し出とケアマネジャーへの相談を予定に入れてみてください。

地域包括支援センターの名称と窓口は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。介護休暇の賃金の扱いや、会社が用意する措置の形は会社によって違うので、就業規則で確認してください。

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この記事を書いた人

親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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