親の介護のお金がないときにできること|軽減制度・申請の順番・相談先

テーブルの上の書類
  • 親の年金だけでは、介護の支払いが毎月足りなくなってきた
  • 足りない分は、子の自分が出すしかないのか
  • 法律で、子には親の介護費を払う義務があるのか
  • 軽くする制度があると聞いたが、どれから申請すればいいのか分からない
  • 高額介護サービス費は、放っておいても戻ってくるのか
  • 施設の食費や部屋代は、下げられるのか
  • 預貯金がいくらまでなら、軽減の対象になるのか
  • 兄弟でどう分ければいいのか、話の切り出し方も分からない
  • 結局、どこに相談すればいいのか

上記のような悩みに答えます。

親の介護のお金が足りないときに使える制度は、介護保険の払い戻し・施設の食費と居住費の軽減・税の控除・福祉の貸付と、いくつもの窓口に分かれています。制度名の一覧は検索すればすぐに出てきますが、親の所得と預貯金がどの段階なら、どの制度が、どの順で効くのかを判定の順番で並べた説明は、見た範囲では多くありませんでした。また、資金の捻出方法や施設探しに話が移り、子が法律上どこまで求められるのかを条文で確かめたものも少なめです。そこで、毎月・年1回・施設・最後の手という順番で制度を当てはめたうえで、扶養の条文と、ケアプランの組み直しで自己負担そのものを下げる考え方まで、厚生労働省の資料と法令の条文で確かめながら整理しました。

先に答え

親の介護のお金が足りないときは、子が肩代わりする前に、親の所得と預貯金で使える軽減制度を順に確かめます。毎月は高額介護サービス費、年に1回は医療と介護の合算と医療費控除、施設やショートステイの食費と居住費は負担限度額認定です。どれも申請しないと使えません。それでも足りなければ、地域包括支援センターや福祉事務所、社会福祉協議会に相談します。

親の要介護度と負担割合から、毎月の自己負担の目安を先に出しておくと、どこから削れるかが見えやすくなります。

介護保険の自己負担を計算する

この記事の数字は2026年11月時点の数字です。

目次

子が出す前に、制度を順に当てる

テーブルの上の書類

足りない分を子が出すかどうかを決めるのは、親が使える制度を全部当ててからで遅くありません。制度はそれぞれ申請しないと動かないので、申請していないぶんだけ、本来は払わなくてよいお金を親か子が払っている状態になります。

軽減の制度は、ひとつの窓口にまとまっていません。介護保険の払い戻しは市区町村の介護保険の担当、医療と介護の合算は加入している医療保険、医療費控除は税務署、貸付は社会福祉協議会と、制度ごとに受け付ける先が違います。どこか1か所に相談すれば全部が自動で当てはまる仕組みにはなっていないので、家族の側で順番を持っておく必要があります。

申請する順番
  1. 1毎月の上限を申請する高額介護サービス費
  2. 2年1回の払い戻しと控除医療と介護の合算・医療費控除
  3. 3施設とショートの食費・居住費負担限度額認定と社会福祉法人の軽減
  4. 4それでも足りないとき包括・福祉事務所・社協に相談

順番の考え方は、出ていくお金の周期に合わせることです。毎月の自己負担に天井をかける制度を最初に申請し、1年分をまとめて見る制度を次に、施設やショートステイを使っている家は食費と居住費の軽減を、そして制度を当てきっても足りないときに福祉の相談へ進みます。

たとえば、在宅でデイサービスと訪問介護を使っている親なら、施設の食費・居住費の制度は今は関係がなく、まず高額介護サービス費の申請が済んでいるかを確かめるところから始まります。反対に、特別養護老人ホームに入っている親なら、介護サービス費の上限に加えて、食費と居住費の軽減が月の支払いを大きく左右します。同じ「お金が足りない」でも、親がどこで介護を受けているかで、最初に開く書類が変わります。

制度を当てる前に、親の手元で次の4つをそろえておくと、どの窓口でも話が早く進みます。

  • 介護保険の被保険者証と負担割合証
  • 住民税が課税か非課税かが分かる通知
  • 本人と配偶者の通帳(預貯金の合計を出すため)
  • ここ数か月分の介護サービスと医療の領収書

毎月いくら出ていっているのかをまだ数字で持っていない場合は、先に介護費の出し方を確かめておくと、制度を当てたあとの差が比べやすくなります。

親の介護費用はいくらかかるか、出し方の順番

毎月の上限は高額介護サービス費

介護サービスの自己負担には、世帯の所得区分ごとに1か月の上限があり、超えた分は介護保険から支給されます。ただし、支給を受けるには市区町村への申請が必要で、放っておいて戻るものではありません。

上限は、世帯の課税状況と所得で次のように分かれています。「世帯」とある区分は、同じ世帯で介護サービスを使っている人の自己負担を合わせて見ます。

区分 1か月の上限
課税所得690万円以上 140,100円(世帯)
課税所得380万円以上690万円未満 93,000円(世帯)
課税世帯で課税所得380万円未満 44,400円(世帯)
市町村民税世帯非課税 24,600円(世帯)
世帯非課税で、年金等収入とその他の合計所得の合計が82.65万円以下 15,000円(個人)
生活保護受給者等 15,000円(個人)

出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.997/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)

82.65万円の基準は2026年8月1日からの値です。親の年金が少なく、世帯全員が非課税の家では、世帯で24,600円、本人だけを見る区分なら15,000円が1か月の天井になります。

注意したいのは、上限がかかるのは介護保険の枠の中で使ったサービスの自己負担だという点です。施設の食費・居住費や、区分支給限度基準額を超えて使った分は、この計算とは別に考えます。

申請には時効があります。介護保険の給付を受ける権利は、行使できる時から2年で時効により消えます(介護保険法200条)。いつから数えるかは条文に書かれていないので、市区町村に確認してください。

出典:介護保険法200条(e-Gov法令API)

たとえば、親が一人暮らしで世帯全員が非課税、年金等収入とその他の合計所得の合計が82.65万円以下なら、個人の上限15,000円が当てはまる可能性があります。同じ非課税でも、合計がその基準を超えていれば、世帯の24,600円の区分になります。区分は自分で計算して決めるより、市区町村から届く通知や窓口で確かめるほうが確実です。

2回目以降も毎月申請が要るのか、最初の1回でよいのかは、市区町村で違う可能性があります。申請の窓口では、①どの月から対象になっているか、②2回目以降の手続きはどうなるか、③振込先の口座はどこになるか、の3つを聞いておくと、その後の手間が読めます。被保険者証と、振込先の口座が分かるものを用意しておくと話が早くなります。※お住まいの市区町村で確認してください。

医療と介護を合わせて年1回戻る

医療と介護の両方に自己負担がかかっている家は、1年分を合わせた額が限度額を超えると、超えた分が支給される仕組みがあります。通称で高額医療・高額介護合算療養費制度と呼ばれるもので、計算の期間は毎年8月1日から翌年7月31日までです。

この制度は、月ごとの上限(介護の高額介護サービス費、医療の高額療養費)が先に引かれたあとの合計を見ます。月ごとの上限のうえに、さらに年間の限度額がかかる、と考えると位置がつかめます。暦年(1月〜12月)ではないので、年の途中で区切って計算すると合いません。

70歳以上の人の年間の限度額は、所得の区分で次のとおりです(区分の名前は通称です)。

区分 年間の限度額
現役並み所得者(所得690万円以上など) 212万円
現役並み所得者(所得380万円以上690万円未満など) 141万円
現役並み所得者のうち所得380万円未満の人 67万円
一般 56万円
低所得II(市町村民税世帯非課税) 31万円
低所得I(世帯全員の各種所得がない世帯) 19万円(複数人が介護サービスを受けた場合は31万円)

出典:介護保険法施行令22条の3(e-Gov法令API)

支給されるのは、限度額を超えた額が500円以上のときです。合算できるのは同じ医療保険の世帯内の自己負担に限られ、たとえば夫が後期高齢者医療、妻が国民健康保険のように加入している医療保険が違う夫婦は合算されません。親がどの区分に当たるかは、保険証や限度額の認定の区分で確かめてください。

出典:介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)

たとえば、要介護の母が介護サービスを使い、同じ後期高齢者医療に入っている父が入退院をくり返していた年は、2人分の医療と介護の自己負担を合わせて見ることになります。片方だけを見ていると届かない限度額にも、合わせると届くことがあります。

申請先と書類は、加入している医療保険の窓口と、市区町村の介護保険の担当に確かめます。合算は8月〜翌7月、後で書く医療費控除は1〜12月と、数える期間が違います。領収書は月ごとに分けて保管しておくと、どちらの期間でも拾いやすくなります。

施設とショートの食費・居住費を下げる

木枠のガラス戸

特別養護老人ホームなどの施設やショートステイの食費と居住費は、介護保険の給付に含まれず、自己負担が原則です。ただし、世帯全員が市町村民税非課税で、預貯金が基準以下の人は、負担限度額認定を受けると1日の負担に上限がかかります。

この軽減が使えるのは、特養・老健・介護医療院・地域密着型特養・短期入所生活介護・短期入所療養介護の6つのサービスだけです。在宅のデイサービスやホームヘルパーには効きません。有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームも、この列挙には入っていません。

出典:介護保険法51条の3(e-Gov法令API)

段階は、所得と預貯金の両方で決まります。65歳以上の人の要件の要点は次のとおりです(世帯全員が市町村民税非課税であることが前提)。

段階 所得の要件 預貯金等(単身/夫婦)
第1段階 生活保護受給者等 要件なし
第1段階 老齢福祉年金受給者(世帯全員が市町村民税非課税) 1,000万円/2,000万円以下
第2段階 年金収入等とその他の合計所得の合計が82.65万円以下 650万円/1,650万円以下
第3段階① 同じ合計が82.65万円超120万円以下 550万円/1,550万円以下
第3段階② 同じ合計が120万円超 500万円/1,500万円以下

出典:介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)

非課税の要件は、同じ世帯の人だけでなく配偶者にもかかり、配偶者が別の世帯でも対象になります。預貯金は本人と配偶者の合計で見ます。年金収入には、非課税の年金も含まれます。

どのくらい下がるかを、代表的な額で見ると次のとおりです(施設に入所した場合の1日の額)。

項目 基準費用額 第2段階 第3段階①
食費 1,545円 390円 680円
居住費(特養の多床室) 915円 430円 430円

食費と居住費は施設との契約で決まるので、実際の額は施設で確認してください。部屋の種類ごとの額は、負担限度額認定の記事にまとめています。

負担限度額認定の段階と申請の仕方

たとえば、母が特養の多床室に入っていて、年金等の合計が82.65万円以下、預貯金が単身で650万円以下なら第2段階に当たり、食費と居住費の1日の負担が表の額まで下がります。同じ母でも、別の世帯の父が住民税の課税を受けていれば、非課税の要件を満たさず対象になりません。

申請先は市区町村で、預貯金の状況を金融機関に確認することへの同意書を添えて出します。認定証には有効期限があり、原則は毎年8月1日から翌年7月31日までの期間で更新が要ります。効力は申請した月の初日にさかのぼるのが国の通知の扱いなので、入所やショートステイの予定が決まったら、利用が始まる月のうちに申請しておくと取りこぼしがありません。認定証は施設に見せて使います。※お住まいの市区町村で確認してください。

社会福祉法人の軽減を確かめる

負担限度額認定を受けても支払いが厳しいときは、社会福祉法人等による利用者負担の軽減を確かめます。軽減の程度は利用者負担の4分の1が原則で、負担額が4分の1だけ減る形です。

この制度は、市区町村が一律に行うものではありません。軽減を行うかどうかは社会福祉法人等が決め、行う法人が都道府県と市町村に申し出る仕組みです。厚生労働省の周知文でも、事業を実施していない社会福祉法人等もあると注記されています。利用する側は、市区町村に申請して確認証を受け取り、軽減を行っている法人の事業所に確認証を見せて初めて軽減されます。

対象になるのは、市町村民税世帯非課税で次の要件をすべて満たし、市町村が生計が困難と認めた人です。生活保護を受けている人も対象です。

  • 年間収入が単身で150万円以下(世帯員が1人増えるごとに50万円を加算)
  • 預貯金等が単身で350万円以下(世帯員が1人増えるごとに100万円を加算)
  • 日常生活に使う資産のほかに、活用できる資産がない
  • 負担能力のある親族等に扶養されていない
  • 介護保険料を滞納していない

出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.677(WAM NET)

対象のサービスは、特養(介護福祉施設サービス)、ショートステイ(短期入所生活介護)、訪問介護、通所介護などで、特養とショートステイは、負担限度額認定による補足給付が支給されている場合に限り、食費・居住費の負担も軽減の対象に入ります。列挙に老健・介護医療院や有料老人ホームは入っていません。老齢福祉年金を受けている人の軽減は2分の1が原則です。免除は行われず(生活保護を受けている人の個室の居住費は全額が軽減の対象です)、実際の程度は市町村が個別に決めて確認証に書きます。

適用の順番も決まっています。負担限度額認定(補足給付)が出たあとの負担に軽減をかけ、高額介護サービス費は軽減したあとの負担で判定します。3つを好きな順で重ねるのではなく、補足給付 → 法人の軽減 → 高額介護サービス費の順に計算されるということです。

たとえば、社会福祉法人が運営する特養に入っている母が第2段階の認定を受けていても、その法人が軽減を行っていなければ、この制度は使えません。入所を考えている段階なら、施設の相談員に「利用者負担の軽減を実施しているか」を聞いておくと、入ってから分かるより早く月の負担が読めます。申請は市区町村、実施の有無は施設と、確かめる先が2つあると覚えておいてください。

確定申告で戻る医療費控除

介護の自己負担の一部は、所得税の医療費控除の対象になります。施設やサービスの種類で対象になる範囲が違うので、領収書の区分を見てから申告します。

医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費から、保険などで補てんされた分を引き、さらに10万円か総所得金額等の5%の少ない方を引いた部分が控除される仕組みです。5%の基準が使われるのは総所得金額等が200万円未満の人なので、年金収入が少ない親は10万円に届かなくても控除が出る場合があります。控除の上限は200万円です。高額介護サービス費など払い戻しを受けた分は、医療費から差し引いて計算します。

サービス 医療費控除の対象になる範囲
特養(地域密着型を含む) 介護費・食費・居住費の自己負担の2分の1
老健・介護医療院 介護費・食費・居住費の自己負担の全額
訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリ・ショートステイ(療養介護)など 単独で対象
訪問介護(生活援助中心型を除く)・デイサービス・ショートステイ(生活介護)など 上の医療系サービスと併せて使った場合だけ対象
生活援助中心の訪問介護・グループホーム・有料老人ホーム・福祉用具の貸与など 対象外

出典:国税庁 タックスアンサーNo.1125/国税庁 タックスアンサーNo.1127

施設の理美容代などの日常生活費は対象外です。対象の額は、施設や事業所が出す領収書に書かれるのが基本なので、まず領収書の「医療費控除の対象額」の欄を見てください。

おむつ代は、傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けていて、おむつを使う必要があると認められ、医師の「おむつ使用証明書」がある場合に対象になります。要介護認定を受けたことだけでは対象になりません。2年目以降は、市町村が主治医意見書の内容を確認した書類などで証明書に代えられる場合があります。

出典:国税庁 タックスアンサーNo.1122

たとえば、デイサービスだけを使っている親は、その自己負担が控除の対象になりません。同じ親が訪問看護も使い始めると、デイサービスの分も対象に入るようになります。ケアプランにどのサービスが入っているかで控除の範囲が動くので、ケアプランの写しと領収書を並べて確かめるのが近道です。

ここでは、親が自分の年金から払った分を、親の確定申告で申告する形を前提にしています。控除の対象は、自分か、自分と生計を一にする親族のために払った医療費なので、子が払っている場合の扱いは、生計を一にしているかどうかで変わります。どちらで申告するかは、税務署か国税庁の相談窓口に確認してください。

それでも足りないときの相談先

制度を当てきっても毎月の支払いが回らないときは、地域包括支援センター、福祉事務所、社会福祉協議会の3つが相談先になります。どこに何を相談するかを先に分けておくと、窓口で状況を説明しやすくなります。

まず全体を相談するのは、地域包括支援センターです。市町村が置く(または委託する)施設で、総合相談・権利擁護・ケアマネジメントの支援を行うと介護保険法115条の45・46に定められています。お金の話だけでなく、サービスの量や施設の検討も、まず包括に相談できます。名称と担当の区域は自治体で違います。

出典:介護保険法115条の46(e-Gov法令API)

  • 生活保護の介護扶助:生活保護を受ける人の介護サービスの費用を扱う制度で、特養・老健・介護医療院などの施設介護も、居宅の介護も範囲に入ります(生活保護法15条の2)。介護サービスの費用は介護扶助として原則として事業者へ直接支払われます。保護を受けるには、まず福祉事務所への申請が必要です
  • 生活福祉資金:都道府県の社会福祉協議会が行う貸付で、窓口は市区町村の社会福祉協議会です。低所得者世帯・障害者世帯・高齢者世帯(65歳以上の人がいる世帯)が対象で、福祉費の用途には介護サービスを受けるのに必要な経費が含まれます
  • 介護保険料の減免:市町村は、条例で定めるところにより、特別の理由がある人の保険料を減免したり、徴収を猶予したりできます(介護保険法142条)。どんな理由が対象かは市区町村ごとに違います

出典:生活保護法15条の2(e-Gov法令API)/厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」

生活福祉資金は借りるお金で、もらえる給付ではありません。福祉資金は据置期間が貸付けの日から6か月以内、償還期限は据置期間のあと20年以内で、貸付の決定に当たっては返せる見込みも見られます。利子は、この記事の時点の厚生労働省のページでは、連帯保証人を立てる場合は無利子、立てない場合は年1.5%です。返済が続くことを前提に、ほかの制度を当てきってから相談する順番になります。

出典:厚生労働省「貸付条件等」

たとえば、親に持ち家があって年金が少ない場合、生活保護の対象になるかどうかは、家の扱いを含めて福祉事務所が判断することになります。ここで「家があるから無理」と家族だけで決めてしまうと、相談の入口で止まってしまいます。可否の見込みは家族では判断せず、親の年金額・預貯金・家の状況を書き出して、福祉事務所で聞いてください。

相談に行くときは、親の年金の通知、通帳、介護サービスの請求書、これまでに受けた認定証の写しを持っていくと、窓口で状況を説明する時間が短くなります。※お住まいの市区町村で確認してください。

ケアプランを組み直して負担を下げる

制度で戻るお金を待つだけでなく、毎月の自己負担そのものを下げる方法として、ケアプランの組み直しがあります。在宅で介護サービスを使う要介護の人のケアプラン作成(居宅介護支援)は、費用の全額が保険から給付され、利用者の自己負担はありません(介護保険法46条)。要支援の人や施設に入った人は仕組みが別なので、担当のケアマネジャーか地域包括に確認してください。

出典:介護保険法46条(e-Gov法令API)

見直すときに見るのは、区分支給限度基準額と負担割合の2つです。要介護度ごとの月の枠の中で使った分は1〜3割の自己負担ですが、枠を超えた分は全額自己負担になります。高額介護サービス費は保険から支給された分をもとに計算する仕組みなので、枠を超えた分まで上限で止まる前提にはしないでください。超えた分の扱いは、市区町村かケアマネジャーに確認してください。たとえば要介護3の枠は1か月270,480円(1単位10円の地域の目安)で、ここからはみ出した月は、はみ出した分を10割で払うことになります。

負担割合は、合計所得金額が160万円以上で、かつ年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身280万円以上(2人以上の世帯は346万円以上)だと2割、合計所得金額が220万円以上で、同じ合計が単身340万円以上(2人以上の世帯は463万円以上)だと3割です。負担割合証の記載が、いま何割で計算されているかの答えになります。

出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」

ケアマネジャーに相談するときは、次の順で聞くと、どこを削れるかが見えます。

  • 今の計画で、月の合計は枠の何割まで使っているか
  • 枠を超えている月はあるか、あるならどのサービスか
  • 同じ目的を、自己負担の少ない組み合わせで置き換えられないか
  • ショートステイを使う月の食費・滞在費は、いくらになるか

たとえば、ショートステイを続けて入れた月だけ枠を超えている家なら、その月の日数を調整するだけで、10割で払う部分がなくなることがあります。反対に、家族の手が足りずに枠いっぱいまで使っている家で無理に減らすと、介護する側の負担が増えて、在宅そのものが続かなくなることがあります。削るのは「枠を超えている部分」と「目的が重なっている部分」から、と決めておくと話が具体的になります。限度額の仕組みは、限度額の記事で詳しく整理しています。

介護保険の限度額は月いくらまで使えるか

子はどこまで払うのか

カップを持つ手

民法は、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養をする義務があると定めています(877条1項)。ただし、どの程度・どんな方法で扶養するかは、まず当事者の協議で決め、協議が調わないときや協議ができないときは、家庭裁判所が親の必要の程度や扶養する側の資力などを考えて定めます(879条)。

条文に書かれているのは「扶養をする義務」で、金額や「ここまで」という基準は書かれていません。子の生活がどうであれ全額を払うべきだという形でも、子は一切払わなくてよいという形でもなく、事情を考えて決める仕組みになっています。直系血族と同居の親族は互いに扶け合わなければならないという規定(730条)もありますが、家庭裁判所が内容を定める規定は877条以下の扶養のほうに置かれています。

条文 書かれていること
民法877条 直系血族・兄弟姉妹は互いに扶養の義務。特別の事情があれば家庭裁判所が三親等内の親族にも負わせられる
民法878条 扶養する人が複数いるときの順序は、協議が調わなければ家庭裁判所が定める
民法879条 扶養の程度・方法は、協議が調わなければ家庭裁判所が一切の事情を考えて定める
民法880条 協議や審判のあと事情が変わったら、家庭裁判所が変更・取消しをすることができる

出典:民法877条(e-Gov法令API)/民法879条(e-Gov法令API)

子が肩代わりしないで済むのは、親の年金と預貯金で、制度を当てたあとの月の支払いが回る場合です。だからこそ、話し合いの前に、高額介護サービス費・負担限度額認定・法人の軽減を当てたあとの月額を出しておくことに意味があります。制度を当てる前の額で「足りない」と話を始めると、子が出す額が実際より大きく見えてしまいます。

兄弟で話すときは、①親の収入と、制度を当てたあとの月の支払いを紙に並べる、②足りない額を出す、③誰がいくら、いつまで出すかを決める、の順にすると、感情の話から入らずに済みます。たとえば、近くに住む兄弟が通院の付き添いを担い、遠方の兄弟がお金を多めに出すといった分け方も、話し合いで決められることのひとつです。協議がまとまらないときは、家庭裁判所に定めてもらう手続きに進むことになります。一度決めた内容も、事情が変わったときは、家庭裁判所に変更や取消しを求められます(880条)。

一人っ子で相談する兄弟がいない場合や、介護そのものを担えないと感じている場合の考え方は、それぞれの記事で整理しています。

一人っ子の親の介護、ひとりで抱えないための順番

親の介護をしたくないとき、扶養の義務と頼れる先

次は在宅か施設かを考える

制度を当て、ケアプランを組み直しても在宅の支払いが回らないときは、施設を含めて暮らし方を考える段階に入ります。施設を考えるなら、親の年金で入れる種類から当たるのが順番です。

施設の種類で、使える制度の数が変わります。負担限度額認定は特養・老健・介護医療院などが対象です。社会福祉法人の軽減は特養などで、法人が実施している場合に限ります。介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)は負担限度額認定の対象外で、介護サービス費の分は医療費控除の対象にもなりません。

年金だけで入れる老人ホームの種類と探し方

在宅か施設か|在宅の限界が見え、施設を考え始めた人へ

認定とお金の記事は、ハブにまとめています。

認定とお金|要介護認定が出て、月にいくら出ていくか

よくある質問

親の介護で貯金がない場合、どうすればいいですか?

負担限度額認定や社会福祉法人の軽減では、預貯金の上限が要件の一つになっています。まず高額介護サービス費の申請が済んでいるかを確かめ、施設やショートステイを使っているなら負担限度額認定を申請します。それでも回らないときは、地域包括支援センターに相談し、福祉事務所や社会福祉協議会への相談も検討します。

親を施設に入れたいがお金がないときは、どうすればいいですか?

特養・老健・介護医療院など、負担限度額認定の対象になる施設から考えると、食費と居住費の負担を下げられる可能性があります。入所を考える施設が社会福祉法人なら、利用者負担の軽減を実施しているかも聞いておきます。介護付き有料老人ホームは負担限度額認定の対象外なので、比べるときは費用の仕組みが違うことを前提にしてください。

親の介護代を払えない場合、どうすればいいですか?

滞納が続く前に、ケアマネジャーと地域包括支援センターに状況を伝えてください。ケアプランの組み直しで月の自己負担を下げられることがあり、制度の申請漏れが見つかることもあります。包括に状況を伝えたうえで、生活保護の介護扶助や生活福祉資金は福祉事務所・社会福祉協議会に相談します。

親の介護費用は誰が負担するのですか?

介護保険の自己負担は、サービスを使う親本人が払う形です。親だけで払えないとき、子がどこまで負担するかは、民法のうえでは当事者の協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所が事情を考えて定めます。金額の決まった基準はないので、制度を当てたあとの不足額を出してから家族で話すのが順番です。

高額介護サービス費の申請を忘れていた分は戻りますか?

さかのぼって申請できるのは、時効の2年が過ぎていない月の分です。いつから2年を数えるかは条文に書かれていないため、市区町村の介護保険の窓口で、どの月までが対象かを聞いてください。案内の封筒が親の郵便物に紛れていないかも、あわせて確かめておくと安心です。

要介護認定を受けていれば、障害者控除は使えますか?

要介護認定を受けただけでは、障害者控除の対象になりません。65歳以上で、障害の程度が知的障害者や身体障害者に準ずるとして市町村長等の認定を受けた人などが対象です。認定の手続きは市区町村の窓口に確かめてください。

出典:国税庁 タックスアンサーNo.1185

順番のおさらい

  1. 子が出す前に:制度を毎月・年1回・施設・最後の手の順に当て、そのあとの不足額で考える
  2. 毎月の上限:高額介護サービス費は世帯の区分ごとに天井がある。申請しないと支給されず、2年で時効
  3. 年1回の合算:医療と介護の自己負担を8月から翌年7月で合わせて見る。同じ医療保険の世帯内だけ
  4. 食費と居住費:負担限度額認定は施設とショートステイだけ。世帯全員(配偶者を含む)の非課税と、預貯金の要件がある
  5. 法人の軽減:実施するかは社会福祉法人等が決める。原則4分の1の軽減で、補足給付のあとにかかる
  6. 医療費控除:施設とサービスの種類で対象が違う。デイサービスは医療系と併用したときだけ
  7. 足りないとき:包括で全体を、福祉事務所で生活保護を、社協で貸付を相談する
  8. ケアプラン:枠を超えた分と目的が重なる分から組み直す。居宅介護支援の自己負担はない
  9. 子の負担:扶養の程度と方法は協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所が定める
  10. 次に来ること:在宅が回らなければ、年金で入れる施設の種類から考える

親の介護のお金で行き詰まりやすいのは、足りない額を「制度を当てる前の数字」で見ているときです。申請していない制度があるうちは、子が出す額はまだ決まっていません。親の書類をそろえて順に当て、残った不足額を家族の協議の材料にする。この順番を守るだけで、子の家計まで巻き込む前に打てる手が見えてきます。

高額介護サービス費の手続き、負担限度額認定の窓口、介護保険料の減免、生活福祉資金の窓口、社会福祉法人の軽減を実施しているかどうかは、自治体や施設によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

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この記事を書いた人

親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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