- 病院から電話が来たけれど、何を聞けばいいのか頭が真っ白になった
- 今日のうちに行くべきか、明日の朝でいいのか決められない
- 新幹線や飛行機の距離で、すぐには駆けつけられない
- 仕事をどう休めばいいのか、上司に何と言えばいいのか分からない
- 親の持病や飲んでいる薬を、自分はよく知らない
- 実家の鍵を誰が持っているのか、はっきりしない
- 入院の保証人や同意書を求められたら、遠くからどうすればいいのか
- すぐに行けない自分が情けなく、申し訳ない気持ちになる
- また次に倒れたら、同じように慌てることになりそうで怖い
上記のような悩みに答えます。
遠距離介護の緊急時は、離れて暮らす親が倒れた、救急車で運ばれた、入院したという連絡を、遠くで受け取る場面です。検索すると、見守りサービスや看護サービスの会社、施設紹介の会社の案内が上に並び、遠距離介護の定義やメリット・デメリット、見守りの種類は詳しく書かれています。ただ、連絡を受けてから何をどの順でやるのか、すぐに行けないときに遠くから何ができるのか、仕事をどう休むのかといった、電話を切った直後に家族が知りたいことには、自社のサービスの紹介が中心のため、あまり踏み込んでいないものが目立ちます。そこで、最初の電話で確かめることと救急車を呼ぶか迷うときの窓口という基本を押さえたうえで、「今日行くか、明日か」の決め方、遠くからできること、介護休暇と介護休業の使い分け、入院の保証人、入院中に始めておくこと、次の緊急への備えまで、育児・介護休業法や介護保険法の条文と、厚生労働省・総務省消防庁の資料で確かめながら整理しました。商品名や料金の比較はしません。
離れて暮らす親が倒れたと連絡を受けたら、最初の電話で「どこの病院か」「いまの状態」「そばに誰がいるか」「病院が家族に何を求めているか」の4つを確かめてください。行くかどうかは、病院が家族に求めていることで決めます。すぐに行けなくても、電話でできることは多くあります。仕事は介護休暇で当座をしのぎ、介護が続くと分かったら介護休業を体制づくりに使い、入院中に親の住む地域の地域包括支援センターとつながっておくと、退院のときに慌てずに済みます。
2026年10月時点の制度で確かめています
親の介護が始まりそうなとき全体の順番は、入口の記事にまとめています。
最初の電話で確かめる4つ
病院や救急隊、近所の人から「お父さんが倒れた」と電話が来たら、その電話で次の4つを確かめてください。ここが分かれば、今日のうちに自分が何をするかが決まります。
- どこの病院か(病院名・診療科・病院の代表番号)
- いまの状態はどうか(検査中か、入院が決まったか、手術の予定があるか)
- そばに誰がいるか(救急隊・近所の人・ほかの家族か、誰もいないか)
- 病院が家族に何を求めているか(すぐ来てほしいのか、電話での説明と同意で足りるのか、書類や持ち物があるのか)
連絡を受けた直後は、「すぐ行きます」とだけ答えて電話を切ってしまいがちです。けれど、病院の名前を聞き漏らすと、移動中にかけ直す先が分かりません。病院が家族に何を求めているかを聞かないまま飛び出すと、着いてから「今日は面会できません」「書類は後日で大丈夫でした」となることもあります。4つを聞いてから動くほうが、結果として早く確実に親のところへたどり着けます。
聞いた内容は、その場でメモに残してください。あわせて、病院からの連絡を受ける家族の電話番号を伝え、「この番号にかけてください」と頼んでおくと、そのあとの連絡が一本になります。電話をくれた人がいれば、その人の名前と連絡先も控えておきます。
たとえば、近所の人から「救急車で運ばれた」とだけ連絡が来た場合は、病院名がまだ分からないことがあります。そのときは、運ばれた先が分かったら知らせてほしいと頼み、自分の番号を伝えておきます。病院が分かったら、代表番号に電話して家族だと名乗り、救急で運ばれたと聞いたと伝えます。病院から直接電話が来た場合は、相手の名前と部署を最初に聞いておくと、かけ直したときに話が早く進みます。
医師から病状の説明を受けても、その場で全部を理解しようとしなくてかまいません。病状の見立ては医師の領分です。家族が電話で確かめるのは、「家族にいつ、何をしてほしいか」です。そこさえ聞けば、次に何をするかは自分で決められます。
救急車を呼ぶか迷う連絡が親から来たら
親本人から「なんだか具合が悪い」と電話が来た場合、救急車を呼ぶべきか迷う状態なら、救急安心センター事業(♯7119)という相談窓口があります。迷う余地のない緊急なら、迷わず119番です。
♯7119は、急な病気やけがで、救急車を呼んだほうがいいのか、すぐに病院に行ったほうがいいのかに迷ったときに、電話で相談できる窓口です。総務省消防庁の資料では、緊急性があるかどうか、応急手当の方法、病院へ行く手段、受診できる医療機関などについて、専門家から助言を受けられる仕組みと説明されています。
ただし、♯7119は全国どこでも使えるわけではありません。実施していない地域があり、受付時間も地域によって違います。使えるかどうかは、親の住む地域で確かめておく必要があります。親が電話をかけるのは、親の住む地域の窓口です。
| 迷ったときの窓口 | 押さえておくこと |
|---|---|
| ♯7119(救急安心センター事業) | 救急車を呼ぶか、病院に行くかを迷ったときの電話相談。実施していない地域があり、受付時間も地域で違う |
| 119番 | 迷う余地のない緊急のとき。迷わずかける |
| 子の自分 | 親のそばに行ける人(近くの家族・近所の人)に連絡し、様子を見てもらえるか頼む |
※♯7119を実施しているか、受付時間がいつかは、親の住む地域によって違います。お住まいの市区町村(親御さんの住所地)で確認してください。
出典:総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)の全国展開」
遠くにいる子にできるのは、症状を電話で見立てることではなく、親が窓口につながるまでを手伝うことです。親が慌てて番号を思い出せないこともあるので、平時のうちに、実家の電話の近くに♯7119が使えるかどうかと119番を書いた紙を貼っておくと、いざというときに迷う時間が減ります。
たとえば、親から「なんだか具合が悪いけど、救急車を呼ぶほどか分からない」と電話が来たとします。どう判断するかは子の役目ではありません。親の住む地域で♯7119が使えるなら、その場でかけるよう伝え、使えない地域や時間帯なら119番をためらわないよう伝えます。そのうえで、近くに住む家族や近所の人に電話して、様子を見に行ってもらえるか頼みます。電話を切ったあとも、親と連絡がつく状態を保っておいてください。
今日行くか、明日か、の決め方
行くかどうかは、病院が家族に何を求めているかで決めます。「今日来てほしい」と言われたら今日、「説明は電話で足りる」「手続きは後日で大丈夫」と言われたら、無理に夜の移動をせず、翌日以降の段取りを組みます。
遠距離の子が迷うのは、「すぐに行かない自分は冷たいのではないか」という気持ちがあるからです。けれど、夜遅くに着いても面会できないことがあり、移動で疲れた状態では、翌日の説明を落ち着いて聞けないこともあります。病院が家族に求めていることを聞き、それに合わせて動けば、親にとっても病院にとっても、行き違いが少なくなります。
| 病院から言われたこと | 動き方の目安 |
|---|---|
| 今日中に来てほしい・説明したいことがある | 仕事の連絡を済ませて、今日のうちに向かう |
| 入院が決まった。手続きと持ち物は後日でよい | 翌日以降に向かう段取りを組み、今日は電話でできることを進める |
| 説明は電話で足りる。様子を見て連絡する | 連絡を待ち、家族の分担と仕事の調整を先にする |
| 何を求めているかはっきりしない | 「家族はいつまでに行けばよいか」をもう一度聞く |
きょうだいがいる場合は、誰が最初に行くかもここで決めます。決め方は、近くに住んでいる人、休みを取りやすい人、親が頼りにしている人の順で考えると、話がまとまりやすくなります。誰か一人が全部を背負う形にせず、「最初に行く人」「電話で病院とやり取りする人」「実家の鍵や近所への連絡をする人」と役割を分けておくと、遠くにいる人にも仕事が残ります。
たとえば、夜に「入院になりました。明日、主治医から説明があります」と連絡が来た場合は、今夜の移動より、明日の説明の時間に間に合う段取りを組むほうが確実です。今夜のうちに上司に連絡し、明日の休みを取り、きょうだいに状況を伝えておきます。反対に、「ご家族に今日中に来ていただきたい」と言われた場合は、迷わず今日向かってください。その場合も、出発前に病院の代表番号と、着いたら誰を呼べばよいかを聞いておくと、着いてから迷いません。
行けない日があっても、それで親を放っておいたことにはなりません。病院に「すぐには行けないが、電話はいつでも出られる」と伝えておけば、病院は家族と連絡が取れる前提で動けます。行けない日は、次の項で挙げる「遠くからできること」に時間を使ってください。
すぐ行けないときに遠くからできること

すぐに行けなくても、電話でできることは多くあります。病院への連絡先の登録、持病と薬の情報を伝えること、実家の鍵と火の元、近所への連絡は、遠くからでも進められます。
遠くからできることを先に済ませておくと、現地に着いたあとの時間を、医師の説明や入院の手続きに使えます。着いてから鍵を探し、薬の名前を調べていると、限られた休みがすぐに過ぎてしまいます。
- 1病院に連絡先を伝える家族の窓口を一本にする
- 2持病と薬を伝えるお薬手帳の場所を確かめる
- 3鍵と火の元を頼む合鍵を持つ人に連絡
- 4近所と郵便を頼むペットや新聞も一緒に
1つめは、病院に家族の連絡先を伝えることです。電話を受ける家族を決め、その番号と、つながらないときの二番手の番号を伝えます。病院の側から見ると、家族と連絡がつかないことは、退院の段取りを考えるうえで気にかける点の一つです。診療報酬の通知では、病院が退院の支援を考える「退院困難な要因」の例として、家族や親族と連絡が困難なことが挙げられています。連絡先をはっきりさせておくことが、そのまま病院とのやり取りを楽にします。
出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添1
2つめは、持病と薬の情報です。救急で運ばれたとき、病院は飲んでいる薬や持病を知りたがります。実家にお薬手帳や薬の袋があれば、その場所を近くの家族や近所の人に伝え、病院に持って行ってもらえるか頼みます。子が薬の名前を知らなくても、「かかりつけの医院はどこか」が分かれば、病院に伝えておきます。
3つめは、実家の鍵と火の元です。親が急に家を出たとき、ガスや暖房、戸締まりが気になります。合鍵を持っている人に連絡して、様子を見てもらえるか頼んでください。合鍵を誰が持っているか分からない場合は、このとき家族で確かめ、次の緊急に備えて決め直すきっかけにします。
4つめは、近所への連絡と、ペット・郵便・新聞です。親がペットを飼っていれば、預け先の手配が急ぎになります。新聞や郵便がたまったままにならないよう、配達を止めるか、近所の人に取り込んでもらえるか頼みます。
たとえば、平日の昼に連絡を受けてすぐには職場を離れられない場合でも、昼休みのうちに病院へ連絡先を伝え、合鍵を持つ親戚に電話し、かかりつけの医院の名前をきょうだいに確かめるところまでは進められます。夕方に仕事を終えて向かうころには、着いたら何をすればよいかがはっきりしています。遠くにいる子が担う役は、現地にいる人に頼みごとを割り振り、情報を一つにまとめる「司令塔」です。
仕事は介護休暇から、続くなら介護休業
仕事は、当座は介護休暇でしのぎ、介護がしばらく続くと分かったら介護休業を体制づくりに使う、という順で考えてください。2つは別の休みで、使い方が違います。
介護休暇は、要介護状態の対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで取れる休みです(育児・介護休業法16条の5第1項)。1日単位だけでなく時間単位でも取れます(業務の性質から時間単位で取ることが難しい人は、労使協定で時間単位の対象外とされることがあります)。時間単位は、始業の時刻から続けて、または終業の時刻まで続けて取る形で、途中で抜けて戻る「中抜け」までは法律で求められていません。病院からの呼び出しで午後だけ抜ける、といった使い方に合います。
介護休業は、同じ対象家族について通算93日まで、3回まで分けて取れる休みです。親が倒れた直後に全部を使い切ると、退院や施設を考える時期に残りがなくなります。介護休業は、介護サービスや家族の分担を決める期間にあてる使い方もあり、通算の日数を使い切らないよう、取る時期を考えておく必要があります。
| 介護休暇 | 介護休業 | |
|---|---|---|
| 日数 | 年5日(対象家族が2人以上なら年10日) | 同じ対象家族について通算93日まで |
| 単位 | 1日単位・時間単位 | 3回まで分けて取れる |
| 緊急時の使い方 | 病院の説明・入院の手続き・役所の相談 | 退院後の体制づくり・サービスの手配 |
| 申出 | 会社に申し出る | 申出日の翌日から2週間を経過する日以後を開始予定日にすれば、その日から休める(それより前だと会社が開始日を指定できる) |
どちらも、対象になる家族は、法2条4号で定める配偶者・父母・子・配偶者の父母と、施行規則3条で定める祖父母・兄弟姉妹・孫です。配偶者の親が倒れた場合も対象になります。要介護状態は「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」とされていて、要介護認定を受けていることは条件ではありません。倒れた直後で認定の申請前でも、この状態に当たるかを会社に相談できます。
法律上、事業主は介護休暇や介護休業の申出を拒めません(育児・介護休業法12条1項・16条の6第1項)。ただし、労使協定で対象外とされた労働者などの例外があります。自分が対象外にされていないかは、就業規則で確かめられます。介護休業は、申出の翌日から2週間を経過する日より前を開始予定日にした場合、会社が開始日を2週間を経過する日までの範囲で指定できるので、急に倒れたときは、まず介護休暇や年次有給休暇でつなぐ形が考えられます。
出典:育児・介護休業法16条の5(e-Gov法令API)/育児・介護休業法12条(e-Gov法令API)/育児・介護休業法16条の6(e-Gov法令API)/育児・介護休業法2条(e-Gov法令API)/育児・介護休業法施行規則(e-Gov法令API)/厚生労働省「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」/厚生労働省 介護休業制度/ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」
たとえば、金曜の夜に「入院しました」と連絡が来て、月曜に主治医の説明がある場合は、月曜を介護休暇にあて、そのあとは仕事に戻りながら電話で病院とやり取りする形が取れます。「退院後は一人で暮らすのが難しい」と言われたら、そこで介護休業を考え、認定の申請やサービスの手配にあてます。
上司への最初の連絡は、「親が倒れて入院した。明日は休みたい。今後の休み方は人事に相談したい」の3点で足ります。介護休業をいつ取るかは、落ち着いてから決めてかまいません。休業を取る時期の考え方は、別の記事で詳しくまとめています。
介護休業のタイミングはいつ?93日を3回に分けて体制づくりに使う
入院の手続きと保証人
入院が決まると、病院から入院の申込書や同意書、身元保証人や連帯保証人の欄がある書類を求められることがあります。遠くにいる場合は、何を、いつまでに、誰が出せばよいかを病院に聞き、郵送や代理で出せるものから進めてください。
入院の書類で遠距離の子が困るのは、「保証人がいないと入院させてもらえないのでは」という心配です。この点について、厚生労働省は通知で、入院による治療が必要なのに、身元保証人等がいないことのみを理由に医師が患者の入院を拒むことは、医師法19条1項に抵触するとしています(平成30年4月27日)。身元保証人等がいないことのみを理由に医師が入院を拒むことは、医師法19条1項に抵触するというのが通知の考え方です。
ただし、この通知は「身元保証人等がいないことのみを理由に」拒むことについての通知です。病床の空きや病状など、ほかの理由で病院が判断することまで否定しているわけではありません。また、病院が家族の連絡先や、入院費の支払いの相談を求めること自体は、この通知が禁じているものではありません。保証人の欄が埋められないときは、隠さずに病院の窓口に事情を話し、代わりに何を出せばよいかを相談してください。
出典:厚生労働省「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」
遠くから進めるときに病院へ聞くことは、次のとおりです。
- 入院の書類は、郵送やファクスで出せるか、家族が来たときでよいか
- 保証人の欄は、誰が書く必要があるか。埋められないときはどうすればよいか
- 入院中に要る物(着替え・日用品)は、病院の貸し出しで足りるか
- 入院費の支払いは、いつ、どの方法でできるか
- 病院で家族の相談を受ける窓口(相談員)はどこか
たとえば、ひとりっ子で、配偶者も仕事で動けず、保証人を頼める親戚がいない場合は、そのことを最初の手続きの時点で病院に伝えておきます。黙っていると、書類がそろわないまま時間が過ぎ、病院とのやり取りがぎくしゃくします。早めに伝えておけば、病院の相談窓口が、ほかの手立てを一緒に考えてくれることがあります。
入院中に始めておくこと

入院中に、親の住む地域の地域包括支援センターと、病院の相談窓口につながっておいてください。退院の話が出てから動き始めると、間に合わないことがあります。
退院の話は、子の気持ちが落ち着く前に来ることがあります。一人で暮らせるのか、介護のサービスが要るのかを、退院の日が決まってから一度に決めるのは、遠くにいる子には大きな負担です。入院中から相談先を持っておくと、退院の話が出たときに、誰と一緒に考えればよいかが決まっています。
地域包括支援センターは、介護保険法115条の46に根拠がある施設で、市町村が設置できるとされています。115条の45第2項1号の総合相談支援事業として、心身の状況や暮らしの実態の把握、関係する制度の情報提供、関係機関との連絡調整などを行っています。親が入院中であることを伝えたうえで、まず電話で問い合わせてください。名称や担当区域は自治体によって違うので、親の住所から担当のセンターを確かめてください。
※地域包括支援センターの名称と担当区域は、親の住む自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
出典:介護保険法115条の46(e-Gov法令API)/介護保険法115条の45(e-Gov法令API)
入院中に始めておくことは、親がすでに介護保険を使っているかどうかで変わります。
- 親にケアマネジャーがいる場合:入院したことと病院名を、ケアマネジャーに伝えます。居宅介護支援の運営基準では、ケアマネジャーの事業所は利用を始めるときに、入院が必要になったら担当ケアマネジャーの氏名と連絡先を病院に伝えるよう、利用者や家族に求めることになっています。ケアマネジャーが入院を早く知るほど、病院との情報のやり取りが始まります
- 認定を受けていて、状態が大きく変わった場合:認定の有効期間の途中でも、区分の変更を申請できます(介護保険法29条・33条の2)
- 認定を受けていない場合:退院後に介護が要りそうなら、入院中から要介護認定の申請を相談します。申請の窓口は親の住む市区町村です
出典:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(e-Gov法令API)/厚生労働省「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」/介護保険法33条の2(e-Gov法令API)
認定の申請に対する処分は、介護保険法27条11項で、申請のあった日から30日以内にしなければならないとされています。ただし、心身の状況の調査に日時を要するなど特別な理由がある場合は、30日以内に見込みの期間と理由を通知したうえで、延期できる定めもあります。実際にかかる日数は市区町村によって違うので、申請のときに窓口で聞いておいてください。
病院の側でも、退院の支援を考えるときに見る点があります。先に触れた診療報酬の通知では、「退院困難な要因」の例として、緊急入院であること、要介護認定が未申請か、区分変更の申請が未了の疑いがあることなどが挙げられています。病院の相談窓口の呼び名や部署名は病院ごとに違いますが、まず病院の代表番号に電話し、「退院後の暮らしについて相談したい」と伝えて、相談の窓口を聞いてください。
たとえば、元気に一人暮らしをしていた親が転んで入院し、退院後は前のようには動けないかもしれない、と言われた場合は、入院中のうちに地域包括支援センターへ電話し、「親が入院した。退院後に介護が要るかもしれない。認定の申請はどうすればいいか」と聞きます。同じ話を病院の相談窓口にも伝えておけば、病院と地域の両方から、退院に向けた話が進み始めます。
退院の話が出て、施設を探す必要が出てきたときの段取りは、別の記事でまとめています。
次の緊急に備えて1枚にそろえるもの
親が落ち着いたら、次の緊急のために、連絡先・鍵・薬・病院の情報を1枚にまとめておいてください。今回慌てたところが、そのまま次に備える項目になります。
緊急の連絡を受けたときに困るのは、「その場で調べないと分からないこと」です。病院の名前、かかりつけの医院、飲んでいる薬、合鍵の場所、近所で頼れる人の連絡先。どれも、平時なら落ち着いて確かめられることばかりです。1枚にそろえておけば、次に電話を受けたとき、最初の4つを聞いたあと、すぐに遠くからできることに移れます。
| そろえるもの | 中身 | 置き場所の例 |
|---|---|---|
| 連絡先 | きょうだい・近くの親戚・近所の人・地域包括支援センター・かかりつけの医院 | 子のスマホと実家の電話の近く |
| 鍵 | 合鍵を誰が持っているか、どこにあるか | 家族で共有するメモ |
| 薬と持病 | お薬手帳の置き場所、持病、かかりつけの医院 | 実家の決まった場所と子の手元 |
| 救急医療情報キット | 地域で配っていれば、持病や連絡先を書いて冷蔵庫などに置く | 地域の決まりに合わせる |
| 窓口 | ♯7119が使えるか、119番 | 実家の電話の近くに貼る |
救急医療情報キットは、持病やかかりつけの医院、緊急時の連絡先などを書いた紙を容器に入れ、冷蔵庫などに置いておく取組です。厚生労働省の検討会の資料では、各地域で活用されている取組として紹介されています。国の制度として全国どこでも配られているわけではなく、配っているかどうか、対象になる人、費用は地域によって違います。親の住む市区町村の高齢福祉の担当課か、地域包括支援センターで聞いてください。
※救急医療情報キットを配っているかどうかは、親の住む地域によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
出典:厚生労働省「救急医療情報の活用に係る関係者間の事前協議の推進」
たとえば、今回、合鍵を持っている人が分からずに困ったなら、帰省したときに合鍵を一本作り、近くに住む親戚か信頼できる近所の人に預けるかを家族で決めます。お薬手帳の場所が分からなかったなら、親と一緒に置き場所を決め、子の側でも写真に撮っておきます。親に頼むときは、「心配だから」より「次に電話が来たとき、こっちが慌てないため」と、子の都合として話すほうが、親も受け入れやすくなります。
1枚にまとめたら、きょうだい全員が同じものを持っておいてください。
異変に早く気づく仕組みを足す
次の緊急に備えるもう一つの手は、異変に早く気づく仕組みを足すことです。倒れてから連絡が来るのを待つのではなく、「いつもと違う」に家族が先に気づければ、近くの人に様子を見てもらうまでの時間を縮められます。
見守りには、電話の時間を決めるといった人のやり取りから、家電の使い方やセンサーで暮らしの様子を知らせる機器、押すと家族や窓口に届く通報の機器まで、いくつかの型があります。どれを選ぶかは、親が嫌がらずに使えるか、知らせが来たときに誰が動けるかで決まります。
自治体の見守りも確かめておいてください。市区町村によっては、緊急通報の機器や見守りの仕組みを用意しているところがあります。ただし、実施しているかどうか、対象になる人、自己負担は市区町村ごとに違います。なお、国の地域支援事業実施要綱では、緊急通報体制等整備事業は地域支援事業として実施できないものとされていて、緊急通報の仕組みは介護保険の地域支援事業ではありません。聞く先は、親の住む市区町村の高齢福祉の担当課か地域包括支援センターです。
※自治体の緊急通報や見守りの有無・対象・自己負担は、親の住む地域によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
見守りの型を選ぶときに考えることは、次のとおりです。
- 親が毎日欠かさずしていることは何か(電話に出る・冷蔵庫を開ける・電気をつける)
- 親がカメラや機械を嫌がるかどうか
- 知らせが来たとき、近くで様子を見に行ける人がいるか
- 実家にインターネットの回線があるか
たとえば、親がカメラを嫌がり、毎朝お茶を入れる習慣がある家なら、家電の使い方で知らせる型が合うことがあります。近くに頼れる人がいない家なら、知らせのあとに地域の窓口に相談できるかを先に聞いておきます。見守りの機器は、倒れることを防ぐ道具ではなく、「いつもと違う」に早く気づくための道具です。
型ごとの違いと選び方は、別の記事で詳しく比べています。
見守りサービスの選び方|親に合う型を順番に決める/見守り家電は冷蔵庫・電球・ポットのどれがいい?
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
近所の人や親の住む市区町村の見守りで毎日の様子が分かるなら、機器を足さなくても次の緊急に備えられます。離れていて、電話に出ない日が続いたときに確かめる手立てがないなら、親の暮らしの動きを家族のスマホに知らせる見守り機器を置く家もあります。通販なら同じ型の機器を並べて比べられるので、親の操作が要らず、何が家族に届くかを親に説明できるものを選んでください。
遠距離のままでは続かない合図

緊急が一度で終わり、親が元の暮らしに戻れたなら、遠距離のままで続けられます。ただ、次のような合図が出てきたら、遠くから電話で回す形だけでは続かなくなってきています。
どれかの条件が崩れると、緊急の電話のたびに子が一人で走り回る形になり、仕事も気持ちも持たなくなります。遠距離のままで続けられる条件は、次のとおりです。
- 親が自分で食事や買い物、通院を回せている
- 近くに、様子を見に行ける家族や近所の人がいる
- 帰省や手続きが、介護休暇と年次有給休暇の範囲に収まっている
- 異変に気づく仕組みと、気づいたあとに動く人が決まっている
反対に、続かなくなってきた合図は次のとおりです。
- 入退院をくり返すようになった
- 電話で話がかみ合わない日が増えた
- 近くで頼れる人が引っ越した、体調を崩した
- 緊急の連絡のたびに、休みが足りなくなってきた
こうした合図が出てきたら、地域包括支援センターに相談して、介護保険のサービスで暮らしを支えられないかを考える時期です。物忘れが気になってきた場合は、受診や相談の段取りを先に知っておくと慌てません。
たとえば、ここ最近、転んでの入院が続き、そのたびに子が介護休暇を使って駆けつけている、という家では、緊急への備えを厚くするより、退院後の暮らしそのものを見直すほうが先になります。介護休業を取り、認定の申請、ケアマネジャー探し、サービスの手配をまとめて進める節目と考えてください。遠距離であることを責める必要はありません。遠くにいる子にできるのは、現地で動く人と仕組みを整えることです。
入院や退院をきっかけに介護が要りそうになったら、次は要介護認定と、介護にかかるお金の話になります。
認定を受けると、どんなサービスがいくらで使えるのか、介護休業中のお金はどうなるのか。こうしたことを先に知っておくと、地域包括支援センターや病院の相談窓口で、何を聞けばよいかがはっきりします。介護休業中は、雇用保険から条件を満たした場合に介護休業給付金が出る仕組みがあり、支給も同じ家族について93日・3回までです。
認定とお金の流れは、次の記事で順番にまとめています。
よくある質問
遠方に住む親が入院しているのですが、どうしたらよいですか?
まず病院に、家族に何をいつまでにしてほしいかを聞いてください。そのうえで、病院に家族の連絡先を伝え、書類を郵送で出せるか、着替えなどは貸し出しで足りるかを確かめます。入院中のうちに、親の住む地域の地域包括支援センターと病院の相談窓口につながっておくと、退院の話が出たときに慌てずに済みます。
遠距離の親の見守りはどうすればいいですか?
親が毎日欠かさずしていることと、知らせが来たときに近くで動ける人がいるかを先に確かめてください。そのうえで、電話の時間を決める、家電やセンサーの機器、自治体の見守りといった型から、親が嫌がらずに使えるものを選びます。
遠距離介護の交通費は誰が払いますか?
交通費を誰が払うかは、家族の話し合いで決めます。きょうだいがいる場合は、行く回数の多い人に負担が偏りやすいので、最初の緊急が落ち着いた時点で、誰が何を担い、費用をどう分けるかを話しておくと、あとでもめにくくなります。
きょうだいの誰が行くか、どう決めればいいですか?
近くに住んでいる人、休みを取りやすい人、親が頼りにしている人の順で考えると、まとまりやすくなります。最初に行く人のほかに、病院と電話でやり取りする人、鍵や近所への連絡をする人を決めておけば、遠くにいる人にも担えることが残ります。
地域包括支援センターは緊急のときでも相談に乗ってくれますか?
地域包括支援センターは、心身の状況や暮らしの実態の把握、関係する制度の情報提供、関係機関との連絡調整などを行う相談の窓口です。救急の対応をする窓口ではないので、命に関わるときは119番です。入院したあと、退院後の暮らしや認定の申請を相談する先として使ってください。
保証人がいないと入院できませんか?
厚生労働省は、入院による治療が必要なのに、身元保証人等がいないことのみを理由に入院を拒むことは、医師法19条1項に抵触するという通知を出しています。身元保証人等がいないことのみを理由に入院を断ることは医師法19条1項に抵触する、というのが通知の考え方です。ただし、病院が家族の連絡先や支払いの相談を求めることはあるので、事情を早めに病院の窓口に伝えてください。
順番のおさらい
- 最初の電話:病院・いまの状態・そばにいる人・病院が家族に求めることの4つを聞く
- 救急車を呼ぶか迷うとき:♯7119は迷ったときの電話相談で、実施していない地域がある。迷う余地のない緊急は119番
- 行くかどうか:病院が家族に求めていることで決める。きょうだいで役割を分ける
- 遠くからできること:病院への連絡先、持病と薬、鍵と火の元、近所と郵便
- 仕事:当座は介護休暇(時間単位も可)、介護が続くと分かったら介護休業を体制づくりに
- 入院の手続き:何をいつまでに誰が出すかを聞く。保証人がいないことのみを理由に入院を拒むことは医師法に抵触するとの通知がある
- 入院中:地域包括支援センターと病院の相談窓口につながり、必要なら認定を申請する
- 次の備え:連絡先・鍵・薬・キット・窓口を1枚にそろえ、きょうだいで共有する
- 見守り:異変に早く気づく仕組みを、親が嫌がらない型で足す
- 続かない合図:入退院のくり返しや休みの不足が出てきたら、暮らしそのものを見直す
遠距離の緊急で子が担うのは、誰より早く駆けつけることではなく、現地で動く人に頼みごとを割り振り、病院・地域・会社との連絡を一本にまとめることです。最初の電話で4つを聞き、行けない日は電話でできることを進め、入院中に地域とつながっておけば、遠くにいても、できることは進められます。今回慌てたところを1枚に書き出しておくことが、次の電話を受けたときの自分を助けます。
認定・お金|要介護認定が出て、月にいくら出ていくか/親の介護、何から始める?
♯7119の実施地域、救急医療情報キットの配布、自治体の見守り、地域包括支援センターの名称と担当区域は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

