- 親が亡くなって、実家の名義変更はいつまでにやらないといけないのか知りたい
- 相続登記をしないと、本当に過料を取られるのか
- 何年も前に亡くなった父の分も、義務化の対象になるのか
- 登記簿を見たら、名義が祖父のままだった
- きょうだいで、誰が実家を継ぐのかまだ決まっていない
- 遠方のきょうだいと連絡が取りにくく、話し合いが進まない
- 戸籍を全部集めるのが大変そうで、本籍地も遠い
- 費用はいくらかかるのか、自分でできるのか、司法書士に頼むべきか
- 実家を売るつもりでも、先に名義変更が要るのか
上記のような悩みに答えます。
相続登記は、亡くなった親の名義になっている家や土地を、引き継ぐ人の名義に書き換える手続きです。2024年4月1日から申請が義務になり、期限を過ぎると過料の対象になりうると聞いて、慌てて調べ始めた人も多いはずです。司法書士の事務所や法務省の案内は、期限・流れ・必要書類を正しく並べてくれますが、「きょうだいの話がまとまらない」「名義が祖父のまま」「実家をどうするか決まっていない」といった家族の事情に沿った順番は、あまり整理されていません。そこで、期限と過料、手続きの流れ、ケース別の書類、登録免許税という基本を押さえたうえで、話がまとまらないときの進め方、自分でやるか頼むかの分かれ目、登記の後の実家の話まで、不動産登記法の条文と法務省・法務局の案内で確かめながら整理しました。
相続登記は、相続が始まったことと、家や土地を取得したことを知った日から3年以内に申請するのが原則で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日より前に相続を知って未登記のものは2027年3月31日までです。話がまとまらないうちは、相続人申告登記で期限の義務だけ先に果たせます。
2026年10月時点の制度で確かめています
相続登記は相続を知った日から3年以内
相続で家や土地の所有権を取得した人は、自分のために相続が始まったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2)。遺産分割の話し合いで後から取得した人は、遺産分割の日から3年以内に、その結果どおりの登記を申請します。正当な理由がないのにこれを怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。
それまでは登記は任意で、期限はありませんでした。
期限の数え方で押さえたいのは、起点が「亡くなった日」ではなく「知った日」だという点です。
| 場面 | 期限の起点 | 期限 |
|---|---|---|
| 遺言や法定相続分で取得した | 相続が始まったことと、取得したことを知った日 | 3年以内 |
| 遺産分割の話し合いで取得した | 遺産分割の日(先に知った日から3年が走っているので、まとまらなければ申告登記) | 3年以内 |
| 2024年4月1日より前に相続を知った | 下の項で説明 | 2027年3月31日まで |
出典:不動産登記法76条の2(e-Gov法令API)/不動産登記法164条(e-Gov法令API)/法務省「相続登記の申請義務化についてのよくある質問」
過料が気になる人も多いと思いますが、条文の要件は「正当な理由がないのに」怠ったことです。法務省の説明では、義務違反が分かった場合、登記官がまず申請をするよう催告する手続が示されています。また、正当な理由の例として、相続人がとても多くて戸籍集めや相続人の把握に時間がかかる、遺言の有効性や遺産の範囲が争われている、申請する人自身が重い病気である、DVなどの被害で避難している、経済的に苦しくて登記の費用を出せない、といった事情が挙げられています。ただし、これは例示であって、当てはまれば必ず過料を免れるというものではなく、認めるかどうかは登記官が個別の事情で判断します。「仕事が忙しい」「実家が遠い」は例に入っていません。
たとえば、父が亡くなり、母と子ふたりが相続人という家で考えてみます。葬儀の後に遺言書が見つかり、実家を長男に継がせると書かれていたなら、長男は遺言の内容を知った時点から3年を数えることになります。遺言がなく、半年後にきょうだいで話し合って長男が継ぐと決めたなら、その話し合いがまとまった日から3年以内に、長男名義の登記をします。ただし、知った日から3年以内にまとまらないときは、先に相続人申告登記で義務を果たしておきます。
3年は長く見えますが、相続放棄や相続税の申告の期限が先に来て、気づけば後回しになりがちな手続きです。まずは亡くなった日と、遺言の有無を知った日を書き出し、自分の家の期限を一度紙に書いておくと、後回しにしても期限だけは見失いません。亡くなった後の期限を日付で並べたいときは、計算ツールが使えます。
何年も前の相続も相続登記の対象

義務化の前に亡くなった親の分も対象です。2024年4月1日より前に相続が始まったことを知っていて、まだ登記していない家や土地は、2027年3月31日までに相続登記を申請します。
施行前の相続も対象で、期限は2027年3月31日までと法務省の説明に示されています。
何年も前の相続で起きやすいのは、次のような状態です。
- 父が亡くなったとき、母が住み続けるので名義はそのままにしていた
- 固定資産税は誰かが払っているが、名義は亡くなった親のまま
- 登記簿を取ってみたら、名義が祖父や曾祖父のままだった
- 当時の遺産分割の話し合いが、書面に残っていない
たとえば、父が亡くなってから十年近くたち、実家には母がひとりで住んでいる家を考えてみます。固定資産税の通知は母に届いているので、家族は名義も母になっていると思い込んでいた、という行き違いが起きることもあります。登記簿を取って父の名義のままだと分かったら、2027年3月31日を期限として、誰の名義にするかを母と子で決めることになります。
名義が祖父のままだった場合は、祖父の相続と父の相続の二つが重なっている状態で、「数次相続」と呼ばれます。関わる相続人が増え、書類も増えます。ここは下の「司法書士に頼むかの分かれ目」の項で、頼むほうに傾く場面として扱います。
何年も前の相続で最初にやることは、法務局で登記簿の内容(登記事項証明書)を取って、今の名義人が誰なのかを確かめることです。家族の記憶や固定資産税の通知の宛名ではなく、登記簿で確かめてから動いてください。
名義変更の順番は「誰が継ぐか」から
名義変更の手続きは、「誰が継ぐかを決める」「書類を集める」「法務局へ申請する」の順に進みます。書類集めから始めたくなりますが、誰が継ぐかによって集める書類が変わるので、決める順番を先にすると二度手間になりません。
誰が継ぐかを先に決める理由は、登記の申請書に書く「新しい名義人」と、それを裏づける書類が、継ぎ方によってまったく違うからです。継ぎ方は大きく三つあります。
| 継ぎ方 | どんなときか | 申請の中心になる書類 |
|---|---|---|
| 遺言 | 親が遺言書を残していた | 遺言書 |
| 遺産分割の話し合い | 相続人全員で誰が継ぐか決めた | 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書 |
| 法定相続分 | 話し合わず、法律の割合のまま全員の共有にする | 相続人全員の戸籍など |
- 1誰が継ぐかを決める遺言・遺産分割の話し合い・法定相続分
- 2書類を集める戸籍・住民票・固定資産の価格が分かる書類
- 3法務局へ申請する不動産のある地域の法務局へ
- 4期限取得したと知った日から3年以内
遺言がある場合は、まず遺言書の中身と形式を確かめます。自筆の遺言書は、法務局に預けられていたものを除き、家庭裁判所の検認を経てから使います。遺言がない場合は、相続人全員で話し合い、合意した内容を遺産分割協議書にまとめて、全員が署名と実印の押印をします。
母が健在で実家に住み続けている家では、母の名義にするのか、子の名義にするのかで迷うことが多いはずです。母の名義にすれば、母が亡くなったときにもう一度相続登記が必要になります。子の名義にすれば、その手間は減りますが、母が住み続けることを家族でどう約束しておくかの話が要ります。どちらがよいかは家ごとの事情で、ここに正解はありません。ただ、法定相続分のまま全員の共有にしておくと、家全体を売るときなどは共有者全員の合意が必要になるため、きょうだいの誰かと連絡が取れないと止まってしまいます。この点は先に知っておいてください。
誰が継ぐかを決める話し合いは、時間がかかりやすいところです。実家を誰が使うのか、売るのか、残すのかという先の話とセットで考えると、決めやすくなります。取り分の妥当性やもめたときの落としどころは、司法書士ではなく弁護士の領分です。
話がまとまらないなら相続人申告登記
誰が継ぐかがまとまらないうちに3年が近づいてきたら、相続人申告登記という仕組みで、期限の義務だけを先に果たせます。法務局に「自分が相続人です」と申し出ると、申し出た相続人は相続登記の義務を果たしたものとみなされます。
遺産分割がまとまらないうちに期限が近づく場合に、期限の義務だけ先に果たせる仕組みです。法務省の案内では、申出に登録免許税はかからず、法定相続情報一覧図の写しや法定相続情報番号を戸籍の代わりに使えます。
ただし、相続人申告登記には限りがあります。
- 義務を果たしたことになるのは、申し出た本人だけ(全員分にするには、それぞれ申し出る。連名でまとめて申し出ることはできる)
- 遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に、結果どおりの相続登記が改めて必要
- 権利関係を示す登記ではないので、これだけでは実家を売ったり、抵当権を付けたりできない
- 1相続人申告登記を申し出る申し出た本人の義務だけ果たせる
- 2遺産分割の話し合いを続ける誰が継ぐかを決める
- 3分割の結果どおりに相続登記遺産分割の日から3年以内
たとえば、きょうだい三人のうち一人が遠方に住んでいて連絡が取りにくく、実家を誰が継ぐかの話が進まない家を考えてみます。期限が気になる長男と長女は、相続人申告登記を申し出れば、自分たちの義務は果たせます。連絡の取れない次男の分は、次男自身が申し出ない限り、次男の義務は残ったままです。そのうえで、話がまとまった日から3年以内に、決まった人の名義で相続登記をします。
申告登記は「時間を買う」手段であって、ゴールではありません。申し出たことで安心して話し合いが止まると、売りたいときに売れない状態が続きます。申告登記をしたら、話し合いを再開する時期の目安を家族で決めておくと、先送りのまま年月がたつのを防げます。きょうだいと連絡が取れない、話し合いに応じない、という段階なら、手続きは司法書士、話し合いの調整や争いは弁護士に相談してください。
相続登記の必要書類はケースで変わる

どのケースでも共通して要るのは、亡くなった親の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)と住民票の除票、相続人の戸籍、新しく名義人になる人の住民票、固定資産の価格が分かる書類、それに登記の申請書です。そこに、継ぎ方ごとの書類が加わります。
継ぎ方によって、申請に添える書類が変わります。遺言なら遺言書、話し合いなら全員が合意したことを示す書類、法定相続分なら相続人が誰と誰なのかを示す戸籍が中心になります。
| ケース | 共通の書類に加えて要るもの |
|---|---|
| 遺言で継ぐ | 遺言書(自筆のものは検認済みのもの) |
| 遺産分割の話し合いで継ぐ | 遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書 |
| 法定相続分のまま共有にする | 相続人全員の戸籍と住民票 |
いちばん手間がかかるのは、親の出生から死亡までの戸籍集めです。戸籍法の改正で戸籍の広域交付が始まり、本籍地が遠くても、住まいや勤務先の近くの市区町村の窓口で、全国の戸籍をまとめて請求できるようになりました。ただし、使える条件があります。
- 請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母(直系尊属)・子や孫(直系卑属)の戸籍。兄弟姉妹やおじ・おばの戸籍は対象に挙がっていない
- 請求できるのは窓口に来た本人だけで、郵送や代理人による請求はできない。顔写真付きの身分証が要る
- コンピュータ化されていない一部の戸籍や、一部事項証明書は対象外
たとえば、子が亡くなった親の戸籍を集める場合は、親は直系尊属なので、広域交付で近くの窓口からまとめて請求できます。一方、子のいない叔父が亡くなり、そのきょうだいが相続人になる場合は、広域交付だけでは足りない可能性があり、本籍地の市区町村に郵送で請求することになります。
集めた戸籍の束は、法務局の法定相続情報証明制度を使うと、相続人の関係を一枚にまとめた法定相続情報一覧図の写しにしてもらえます。交付の手数料は無料で、相続登記だけでなく、相続人申告登記で戸籍の代わりに使えます。預金の解約も控えているなら、使えるかを金融機関に確認してください。
※戸籍や住民票の手数料、窓口の受付時間は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
出典:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」/法務局「法定相続情報証明制度について」
費用の中心は登録免許税と書類代
相続登記の費用は、法務局に納める登録免許税と、戸籍や住民票などの書類代が中心です。司法書士に頼む場合は、そこに報酬が加わります。
登録免許税は、登記をするときに国に納める税金で、相続による所有権の移転は、不動産の価額の1000分の4です。この「価額」は、毎年市区町村から届く固定資産税の課税明細書に載っている「価格」(固定資産課税台帳の価格)のことです。明細書に並んでいる「課税標準額」とは別の欄なので、取り違えないでください。明細書を失くしていたら、市区町村の窓口で証明書を取れば確かめられます。
| 費用 | 中身 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 法務局に納める税金 | 固定資産課税台帳の価格の1000分の4 |
| 書類代 | 戸籍・住民票・印鑑証明書など | 市区町村の手数料(自治体ごと) |
| 司法書士の報酬 | 頼んだ場合だけ | 司法書士ごとに違う |
税金が軽くなる仕組みもあります。不動産の価額が100万円以下の土地は、相続登記の登録免許税がかかりません(共有で持分だけ取得する場合は、不動産全体の価額に持分の割合をかけた額で見ます)。この免税は土地だけが対象で、建物には使えず、期限は2027年3月31日までです。また、相続で土地を取得した人が、その登記をしないまま亡くなった場合(数次相続)、その亡くなった人を名義人とする登記の登録免許税も、土地については免税になります。どちらも、申請書に免税の根拠を書かないと受けられないので、法務局の案内で書き方を確かめてください。
出典:法務省「登録免許税の計算」/法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」
たとえば、田舎の実家で、山林や農地の小さな土地がいくつも付いている家は、土地ごとに価格を見ると100万円以下のものがあり、その土地の分は免税になることがあります。一方、建物は価格が低くても免税の対象外です。課税明細書を土地と建物に分けて見て、どれが免税になりうるかに印を付けておくと、申請書を作るときや司法書士に見積もりを頼むときに話が早く進みます。
費用を見積もるときは、課税明細書を手元に置き、土地と建物の価格を書き出すところから始めてください。司法書士の報酬は事務所ごとに違うので、頼むかどうか迷っているなら、明細書と相続人の顔ぶれを伝えて、複数の事務所に見積もりを聞いてみるのが確実です。
司法書士に頼むかの分かれ目
相続人が親の配偶者と子だけで、話し合いもまとまっていて、実家が一か所にある、という単純な相続なら、自分で申請する人もいます。名義が祖父のまま(数次相続)、相続人に連絡が取れない人がいる、不動産が何か所にもある、という場合は司法書士に頼むほうに傾きます。
名義が祖父のままの場合や相続人に連絡が取れない場合は、戸籍の範囲が広がり、誰の同意が要るかの確認も増えるため、司法書士に頼むほうに傾きます。
| 状況 | 自分でやる | 司法書士に頼む |
|---|---|---|
| 相続人が配偶者と子だけ・話し合いがまとまっている | 向く | どちらでも |
| 名義が祖父のまま(数次相続) | 難しい | 向く |
| 連絡が取れない相続人がいる | 難しい | 向く |
| 平日に法務局や役所へ行けない | 難しい | 向く |
自分でやる場合は、申請書の書き方や必要書類を、不動産のある地域を担当する法務局の手続案内で確かめてください。申請の方法や手続案内の予約の要否は、法務局の案内で確認してください。
たとえば、母と子ふたりが相続人で、実家を長男が継ぐと全員が合意している家なら、長男が戸籍を集め、遺産分割協議書を作り、手続案内で確かめてから申請する、という流れで自分で進める人もいます。一方、登記簿を取ったら名義が祖父のままで、祖父の子の中にすでに亡くなっている人もいる、という家では、相続人が一気に増えるので、最初から司法書士に相談しておくと安心です。
相談先は、困っていることの中身で選びます。
- 書類を整えて登記を申請したい:司法書士
- きょうだいの話し合いがもめている、取り分で争いがある:弁護士
- 相続税の申告が要るか、いくらかかるか:税理士
相続税の申告が要るかどうかは、遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかで分かれます。個別の税額は税理士に聞いてください。基礎控除の式は国税庁 No.4152「相続税の計算」で確かめられます。司法書士に相談するときは、登記簿の内容(登記事項証明書)、固定資産税の課税明細書、相続人の顔ぶれのメモ、遺言書があればその写しを持っていくと、見積もりと進め方をその場で聞けます。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
相続人が1人で書類もそろうなら、法務局の窓口で相談しながら自分で申請できます。何代も前の名義のまま、相続人が多い、遺産分割の話し合いがまとまっていない、という場合は、司法書士に頼むと戸籍の取り寄せから申請まで任せられます。頼む前に、報酬と登録免許税・書類代を分けた見積をもらってください。
相続登記を急がない場合の条件
次のような場合は、期限までに慌てて決めなくてよい、または登記の義務そのものが生じない場合があります。ただし、相続放棄をしない限り登記の義務は残り、期限は進んでいます。
- 相続放棄をする(または検討中で、まだ3か月の期間内にいる)
- 遺産分割がまとまらず、相続人申告登記で期限の義務を果たした
- 期限まで十分な時間があり、誰が継ぐかを家族でじっくり決めたい
申告登記で義務を果たした場合も、遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に結果どおりの相続登記が別に必要です。
相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされるので、相続登記の義務も負いません。相続放棄は、原則として自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内(家庭裁判所に請求して伸ばせる場合があります)に、家庭裁判所に申述します。放棄を考えているなら、相続登記や実家の片付けより、放棄するかどうかを先に決めてください。家財などを処分する前に、家庭裁判所か弁護士に確認してください。
出典:民法915条(e-Gov法令API)/民法938条(e-Gov法令API)/裁判所「相続の放棄の申述」
期限があるからといって、誰が継ぐかまで急いで決める必要はありません。決めきれないうちは、相続人申告登記という手段があります。
たとえば、親が亡くなって間もなく、借金があるかもしれないと分かってきた家では、登記の書類集めより先に、放棄するかどうかの判断と、借金の調べを優先します。逆に、借金の心配がなく、実家を誰が使うかもほぼ決まっている家なら、急ぐ理由はないにしても、先延ばしにする理由もないので、話がまとまったうちに登記まで済ませてしまうのが楽です。
急がなくていい場合でも、「誰が相続人か」「名義が今どうなっているか」だけは早めに確かめておいてください。この二つが分かっていれば、放棄・申告登記・相続登記のどれを選ぶ場合でも、次の一手を迷わずに選べます。相続放棄の期限と数え方は、別の記事で詳しくまとめています。
登記が済んだら、実家をどうするか

相続登記は、実家の話のゴールではなく入口です。名義が決まったら、次は売るのか、残して管理するのかを決めることになります。実家を売るには、先に相続登記が必要です。
登記が済むと名義人がはっきりするので、固定資産税の支払いと家の管理の分担も、この時点で家族で決めておくと迷いません。誰も住まない家は、傷みも早く、近所との関係も気になってきます。
| 選ぶ道 | 先に確かめること |
|---|---|
| 売る | 空き家の3,000万円控除などの特例が使えるか、その期限 |
| 残して管理する | 固定資産税を誰が払うか、見回りや草刈りを誰がするか |
| 決められない | いつまでに決めるかの目安と、その間の管理の分担 |
実家を売る場合に使える空き家の3,000万円特別控除には、相続の開始から3年を経過する日の属する年の年末までに売る、という期限があります。相続登記の期限(取得を知った日から3年以内)と似ていますが、起点も数え方も別物です。登記を後回しにしていると、売りたくなったときに登記から始めることになり、特例の期限に間に合わなくなることがあります。
出典:国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
たとえば、母が施設に入り、誰も住まなくなった実家を、いずれ売ろうと考えている家なら、相続登記を済ませた時点で、特例が使えるかどうかと期限を確かめておくと、売り時を逃しません。逆に、きょうだいの誰かが将来戻って住むかもしれないと考えているなら、それまでの固定資産税と管理の分担を、登記と同じタイミングで決めておくと、後でもめにくくなります。
登記を終えたら、そのまま実家の行き先の話に進んでください。
空き家の3,000万円控除の要件は?|実家を売る前に確かめること
亡くなったあとの手続きを、期限の順番で見直したいときはこちらです。
よくある質問
相続登記をしないと、本当に過料を取られますか?
正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。法務省の説明では、義務違反が分かった場合、登記官がまず申請をするよう催告する手続が示されています。期限に間に合いそうにないなら、相続人申告登記で義務を果たしておく方法があります。
何年も前に亡くなった親の家も、相続登記の対象ですか?
対象です。2024年4月1日より前に相続を知った家や土地で、まだ登記していないものは、2027年3月31日までに申請します。まずは登記事項証明書を取って、今の名義人が誰なのかを確かめてください。
法務局に行かないと相続登記はできませんか?
申請の方法と手続案内の予約は、不動産のある地域を担当する法務局の案内で確認してください。書き方に不安があるなら、手続案内で確かめてから申請すると、書類の不備で出し直す手間を減らせます。
実家を売るつもりでも、先に相続登記は要りますか?
要ります。売却するには、先に相続登記が必要です。相続人申告登記だけでは売却はできないので、売ると決めたら、継ぐ人を決めて相続登記まで済ませてください。
相続放棄を考えている場合、相続登記はどうなりますか?
相続放棄をした人は初めから相続人でなかったことになるので、相続登記の義務も負いません。放棄は原則として自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内(家庭裁判所に請求して伸ばせる場合があります)に家庭裁判所に申述するので、登記や片付けより先に、放棄するかどうかを決めてください。
母が健在で実家に住んでいる場合も、名義変更は要りますか?
父の名義のままなら、相続登記の義務の対象です。母の名義にするか子の名義にするかは家族の話し合いで決めることで、母の名義にすれば、母が亡くなったときにもう一度相続登記が必要になります。決めきれないうちは、相続人申告登記で期限の義務を果たしておけます。
期限に間に合わなかったら、どうすればいいですか?
気づいた時点で、すぐに申請の準備を始めてください。過料の対象になるのは正当な理由なく怠った場合で、相続人がとても多い、遺言の有効性が争われている、といった事情は正当な理由の例として法務省が挙げています。事情がある場合は、そのことを説明できるように記録を残し、司法書士に相談してください。
順番のおさらい
- 期限:取得したと知った日から3年以内。遺産分割で取得したなら分割の日から3年以内。怠ると10万円以下の過料の対象
- 古い相続:2024年4月1日より前に相続を知って未登記なら、2027年3月31日まで。まず登記事項証明書で名義人を確かめる
- 順番:誰が継ぐかを決める → 書類を集める → 法務局へ申請
- まとまらないとき:相続人申告登記で、申し出た本人の義務を先に果たす。分割後は改めて3年以内に相続登記
- 書類:親の出生から死亡までの戸籍と、継ぎ方ごとの書類。広域交付と法定相続情報一覧図で集める手間を減らす
- 費用:登録免許税は固定資産課税台帳の価格の1000分の4。100万円以下の土地は免税。ほかに書類代、頼めば報酬
- 頼むかどうか:単純な相続なら自分でも。数次相続・連絡の取れない相続人がいるなら司法書士。争いは弁護士、相続税は税理士
- 急がない場合の条件:相続放棄をするなら放棄が先。申告登記で義務を果たしたなら、話し合いを続けてよい
- 登記の後:売るなら空き家の特例の期限を確かめる。残すなら固定資産税と管理の分担を決める
相続登記で家族がいちばん消耗するのは、期限に追われて、誰が継ぐかを急いで決めてしまうことです。名義人を登記簿で確かめ、期限を日付で書き出し、話がまとまらなければ申告登記で時間を確保する。この順番を守れば、実家を売るのか残すのかという本題を、落ち着いて家族で決められます。
戸籍や住民票の手数料は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。法務局への申請の方法は、不動産のある地域を担当する法務局で確認してください。

