墓じまいのやり方、何から始める?|決める人・改葬許可・順番の見取り図

障子の続く和室
  • 実家の墓を墓じまいしたいが、何から手を付ければいいのか分からない
  • 墓の名義が亡くなった親のままで、自分が進めていいのか自信がない
  • 叔父や叔母に反対されそうで、言い出せずにいる
  • お寺にどう切り出せばいいのか、離檀料を言われたらどうするのか
  • 改葬許可という言葉を聞いたが、どこに何を出すのか知らない
  • 遺骨を移す先を、永代供養にするか納骨堂にするか決められない
  • 墓が遠くて、何度も通えない
  • 費用を兄弟でどう分けるか、話が進まない
  • 実家の片付けや売却と、墓じまいのどちらを先にすればいいのか

上記のような悩みに答えます。

墓じまいは、今ある墓から遺骨を取り出し、墓石を片付けて区画を管理者に返すまでの一連の作業を指す言い方で、法律の用語ではありません。そのうち、遺骨を別の墓や納骨堂へ移す部分が、法律でいう「改葬」にあたり、市区町村長の許可が要ります。検索の上位は石材店や霊園、供養の事業者の解説で、手順や費用の項目は詳しい一方、墓じまいをしないほうがよい条件や、そもそも誰が決められるのか、実家の片付けや相続の手続きとどちらを先にするのかは、薄くなりがちです。そこで、改葬許可の書類と出し先、全体の手順という基本を押さえたうえで、決める人の確かめ方、親族とお寺への話し方、しないほうがよい条件、実家と相続との順番まで、墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)・同施行規則・民法の条文と厚生労働省の統計で確かめながら整理しました。

先に答え

墓じまいは、誰が決められるのかを確かめるところから始まります。墓地の使用者と、祭祀を継ぐ人が誰かを確認してから親族に話し、そのあとで改葬許可の手続きに進む順番です。墓じまいをしないほうがよい条件もあるため、実家の片付けや相続との前後関係と合わせて、始める前に確かめます。

2026年10月時点の制度で確かめています

目次

許可が要るのは「遺骨を移す」部分

障子の続く和室

墓じまいは全体の呼び名で、改葬はその中の「遺骨を移す」手続きです。墓じまいという言葉は法律に出てきませんが、改葬は墓埋法で定義され、許可が要る行為として決められています。

墓埋法は改葬を、埋葬した死体を他の墳墓に移すこと、または埋蔵・収蔵した焼骨を他の墳墓や納骨堂に移すこと、と定めています(墓埋法2条3項)。そして、改葬をしようとする人は、市町村長(特別区は区長)の許可を受けなければなりません(5条1項)。許可を出すのは市区町村であって、お寺や霊園ではありません。

二つを分けて考えると、何を誰に頼むのかが整理しやすくなります。

墓じまいの中で、許可が要るのは遺骨を移す部分
墓じまい(全体の呼び名)

  • 墓石を片付けて区画を返すまでの一連の作業
  • 段取りは墓地の管理者・家族と決める
改葬(法律の手続き)

  • 遺骨を別の墓や納骨堂へ移すこと
  • 今ある墓の市区町村に許可を申請する

厚生労働省の衛生行政報告例では、令和6年度(2024年度)に全国で176,140件の改葬がありました(うち無縁墳墓等の改葬が3,006件)。これは改葬の件数で、墓じまいの件数そのものではありませんが、遺骨を別の場所に移す手続きが、特別な家だけのものではないことは分かります。

たとえば、親が亡くなって実家の墓に納骨し、そのあと子の住む町の納骨堂に移したい、という場合は、墓石を片付ける話と、遺骨を移す手続きの両方が出てきます。自分の家の場合にどの書類が要るかは、移す先が決まった段階で、今の墓がある市区町村の窓口に聞くと確実です。

許可なく遺骨を移した場合は、2万円以下の罰金又は拘留若しくは科料の対象になります(21条1号)。編集部の整理では、墓じまいを「墓石の工事」として考え始めるより、「遺骨をどこへ移すか」と「その許可を誰が取るか」から考えるほうが、あとの段取りがすっきりします。

最初に確かめるのは「誰が決めるか」

墓じまいで最初にやることは、墓地の使用者(名義の人)と、祭祀を継ぐ人が誰かを確かめることです。決める人がはっきりしないまま親族やお寺に話を持っていくと、話の途中で止まります。

これが入口になるのは、改葬許可の書類の上で、墓地の使用者が特別な立場に置かれているからです。施行規則は、申請する人が墓地使用者等でない場合、墓地使用者等の改葬についての承諾書(またはそれに対抗できる裁判の謄本など)を申請書に添えるよう定めています(施行規則2条2項2号)。つまり、使用者本人が申請するのか、使用者の承諾を得て別の人が申請するのかで、そろえる書類が変わります。

もう一つの立場が、祭祀を継ぐ人です。民法は、系譜・祭具・墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継し、亡くなった人の指定があればその人が承継する、と定めています(民法897条1項)。慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が定めます(同条2項)。墓は、預金や実家のような相続財産の分け方とは別の枠で引き継がれます。

確かめること どこで分かるか 分からないとき
墓地の使用者(名義) 寺・霊園の管理者に問い合わせる。使用の許可証や契約の書類 親の名義のままなら、名義を移す手続きを管理者の規約で確認する
祭祀を継ぐ人 親の指定(遺言など)、家の慣習、親族の話し合い 慣習が明らかでなく話がまとまらないときは、家庭裁判所・弁護士へ
申請する人 墓地使用者等本人か、その承諾を得た人か 承諾書が要るかを、墓のある市区町村の窓口で確認する

たとえば、墓の名義が亡くなった父のままで、長男が墓を守ってきた家なら、まず寺に名義の扱いを聞き、規約に沿って長男に名義を移してから進める、という流れが考えられます。一方、兄弟の誰が墓を継ぐのかで意見が分かれている家は、墓じまいの手順に入る前に、誰が継ぐかを先に決める必要があります。墓地の使用権の扱いは、寺や霊園の規約によって違います。

誰が祭祀を継ぐべきかの判断や、遺産の分け方への当てはめは、この記事では扱いません。家庭裁判所の手続きの案内や弁護士に、親の指定の有無、これまで誰が墓を管理してきたか、親族の意見をまとめたメモを持って相談してください。編集部としては、「誰が決めるか」が紙の上で説明できる状態になってから、次の段に進むことをすすめます。

墓じまい後の遺骨の行き先を先に決める

遺骨の行き先(新しい納骨先)は、お寺に墓じまいを切り出す前に、候補まで絞っておきます。行き先が決まらないと、改葬許可の申請書が書けません。

施行規則は、改葬許可申請書に書く事項の一つとして「改葬の場所」を挙げています(施行規則2条1項)。さらに、添付書類として「市町村長が特に必要と認める書類」を求めることができ(同条2項3号)、この運用として、新しい納骨先が受け入れることを示す書類を求める市区町村もあります。何が要るかは市区町村で違うので、行き先を決めたら、その書類が出してもらえるかも受け入れ先に聞いておきます。

行き先の候補は、次のように分けて考えると比べやすくなります。

  • 別の墓(子の住む町の墓地に新しく墓を建てる、など)
  • 納骨堂(建物の中に遺骨を納める)
  • 永代供養や樹木葬といった名前で受け入れている墓地・寺
  • 散骨(方法と場所で扱いが違うので、自治体の条例や案内を先に確認する)

永代供養や樹木葬は、受け入れ先が付けている名前です。条文が遺骨の移し先として挙げているのは「他の墳墓又は納骨堂」です(墓埋法2条3項)。名前より、遺骨がどこに、どういう形で、いつまで納められるのか、あとで取り出せるのか、管理料がかかるのかを、契約の書類で比べてください。散骨については、行う方法や場所によって扱いが違い、今の墓の市区町村でどんな書類が要るかも含めて、自治体の案内を確かめてから決めます。

たとえば、子が都市部に住んでいて、今後は年に何度も参りたいという家なら、通いやすい場所の納骨堂や墓地が候補になります。逆に、継ぐ人がいないことが墓じまいの理由なら、あとの管理を受け入れ先に任せられる形が向いています。同じ「墓じまい」でも、理由によって行き先の選び方は変わります。

編集部の整理では、行き先の決め手は「誰が、どのくらいの頻度で参るか」と「この先、誰が管理するか」です。この二つを家族で言葉にしておくと、受け入れ先を比べるときに迷いが減ります。

親族・兄弟に話す順番と費用の分け方

書類に記入する手元

親族や兄弟には、お寺や受け入れ先と話を進める前に伝えます。法律上、親族全員の同意が改葬許可の要件になっているわけではありませんが、先に話すかどうかで、あとの揉めやすさが変わります。

施行規則で承諾書が求められるのは、申請する人が墓地使用者等でない場合の、墓地使用者等の承諾だけです(施行規則2条2項2号)。叔父や叔母、兄弟の同意は、添付書類には挙がっていません。それでも先に話すことをすすめるのは、揉めないための実務上の順番としてです。決まってから知らされた親族が反対に回ると、お寺との話や遺骨の取り出しの日程にまで影響が出ることがあります。

話す順番は、次のように組むと進めやすくなります。

  1. 兄弟で、墓じまいを考えている理由と、遺骨の行き先の候補を共有する
  2. 墓を参っている親族(叔父・叔母など)に、決める前の段階で相談として伝える
  3. 出た意見を踏まえて行き先と時期を決め、改めて親族に知らせる
  4. 決まった内容を、お寺や霊園の管理者に伝える

費用の分け方について、この記事で条文を確かめたものはありません。墓は祭祀を継ぐ人が引き継ぐものなので、継ぐ人が負担を中心になって考える家もあれば、兄弟で等分する家もあります。編集部の整理では、揉めにくいのは、費用の項目(撤去の工事、新しい納骨先、寺へのお礼など)を一覧にしたうえで、誰がどれを出すかを、見積が出る前に大まかに決めておくやり方です。

たとえば、長男が墓を継いでいて、妹二人は遠方という家では、手続きと寺とのやりとりは長男、新しい納骨先の費用は三人で分ける、といった分け方が考えられます。反対意見が出たときは、反対の理由が「墓がなくなること」なのか「相談がなかったこと」なのかを聞き分けると、話の落としどころが見えます。参る場所が遠くなることが理由なら、行き先の選び方で答えられることもあります。

親族との話し合いがどうしてもまとまらないときは、弁護士に相談できます。そのときは、墓地の使用者が誰か、祭祀を継ぐ人が誰か、親族それぞれの意見をまとめて持っていくと、話が早く進みます。

お寺・霊園への墓じまいの伝え方と離檀料

お寺や霊園の管理者には、行き先の候補が決まり、親族に話を通したあとで、墓じまいを考えていることと、その理由を伝えます。改葬許可の申請に要る書類の一つを、管理者に作ってもらう必要があるからです。

施行規則は、改葬許可申請書に、墓地や納骨堂の管理者が作成した、埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情があるときは、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)を添えるよう定めています(施行規則2条2項1号)。自治体の申請書に管理者が記入する欄がある形もありますが、様式は自治体によって違います。いずれにしても、今の墓の管理者の協力が要る手続きです。

伝えるときは、次の順で話すと、相手も状況をつかみやすくなります。

  • これまで墓を守ってもらったことへのお礼
  • 墓じまいを考えている理由(継ぐ人がいない、遠くて参れない、など)
  • 遺骨の行き先の候補と、時期の見通し
  • 改葬許可の申請に要る書類と、取り出しや撤去の段取りについての相談

遺骨を取り出す前に、読経などの儀式をするかどうか、どう進めるかは、寺の考え方によって違います。作法を決めつけず、管理者に「こちらではどうされていますか」と聞くのが確実です。墓石の撤去を頼める業者に決まりがあるかどうかも、このときに確かめておきます。

離檀料については、法律で払う義務があるかどうかを、この記事では判断しません。もし求められたら、その場で決めずに、金額と内訳を書面で示してもらい、家族で確かめます。納得できないときは、自治体の窓口や弁護士に相談してください。なお、墓埋法13条は、墓地等の管理者が埋葬・埋蔵・収蔵・火葬の求めを正当な理由なく拒めないと定める条文で、書類の記入についての規定ではありません。条文を持ち出して迫るより、事情を説明して協力をお願いする形のほうが、話は進みます。

たとえば、長年参ってきた寺に、継ぐ人がいないことを率直に伝えて相談する、という切り出し方が考えられます。編集部の整理では、お寺との話は「交渉」ではなく「これまでのお礼と、これからの相談」として始めることをすすめます。

墓じまいの手順を番号で見る

全体の手順は、決める人の確認から始まり、改葬許可証を受けてから遺骨を取り出す、という順番です。許可より先に遺骨を動かさないことが、全体を通しての決まりです。

ここで示す順番は、編集部が実務の流れとして整理したものです。条文が定めているのは、改葬を許可を受けてから行うことです(墓埋法5条1項)。申請書の記載事項には「改葬の場所」と、申請者と墓地使用者等との関係が含まれ(施行規則2条1項)、添付書類には管理者の証明が入ります(同条2項1号)。

墓じまいは、決める人の確認から始まる
  1. 1決める人を確かめる墓地の使用者と、祭祀を継ぐ人
  2. 2行き先を決める新しい納骨先の候補を絞る
  3. 3親族に話す決める前に相談として伝える
  4. 4管理者に伝える埋葬の事実を証する書面を頼む
  5. 5改葬許可を申請する今ある墓の市区町村へ
  6. 6取り出しと返還許可証を受けてから、遺骨の取り出し・墓石の撤去・区画の返還
  7. 7新しい納骨先へ許可証を出して納骨する

一つずつの中身は、次のとおりです。

  1. 決める人を確かめる:墓地の使用者(名義)と祭祀を継ぐ人を、管理者への問い合わせと家族の話で確認する
  2. 行き先を決める:新しい納骨先の候補を絞り、受け入れの書類が出せるかを聞く
  3. 親族に話す:決める前の段階で、理由と行き先の候補を伝える
  4. 管理者に伝える:埋葬の事実を証する書面の作成をお願いし、取り出しと撤去の段取りを相談する
  5. 改葬許可を申請する:今ある墓の市区町村に、申請書と添付書類を出す
  6. 取り出しと返還:許可証を受けたら、遺骨を取り出し、墓石を撤去して区画を返す
  7. 新しい納骨先へ:改葬許可証を受け入れ先の管理者に出して、納骨する

期間がどのくらいかかるかは、寺や霊園の都合、市区町村の手続き、新しい納骨先の受け入れの時期で決まります。決まった月数を前提に予定を組むより、管理者・市区町村・受け入れ先のそれぞれに「次に何が要るか」を聞き、日程をつないでいくほうが現実的です。

たとえば、墓が遠方にあって何度も通えない家なら、管理者への連絡と市区町村への問い合わせは電話や郵送で先に進め、現地に行く日を遺骨の取り出しに合わせる、という組み方が考えられます。申請を郵送で受け付けるかどうかは市区町村によるので、事前に窓口で確かめてください。

改葬許可の書類と出し先

改葬許可の申請先は、今ある墓(遺骨が今ある場所)の市区町村です。新しい納骨先の市区町村でも、自分の住所地の市区町村でもありません。

墓埋法は、改葬の許可を出すのは「死体又は焼骨の現に存する地」の市町村長だと定めています(墓埋法5条2項)。許可を与えるときは、改葬許可証を交付します(8条)。申請書には、施行規則が定める事項を書き、決められた書類を添えます。

区分 中身 根拠
申請書に書く事項 亡くなった人の本籍・住所・氏名・性別、死亡年月日、埋葬又は火葬の場所と年月日、改葬の理由、改葬の場所、申請者の住所・氏名・亡くなった人との続柄・墓地使用者等との関係 施行規則2条1項
添付書類① 今の墓の管理者が作成した、埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面(特別の事情があるときは、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面) 施行規則2条2項1号
添付書類② 申請者が墓地使用者等でない場合は、墓地使用者等の承諾書など 施行規則2条2項2号
添付書類③ その他、市町村長が特に必要と認める書類(自治体によっては受け入れ先の書類など) 施行規則2条2項3号

申請書の様式は、施行規則ではなく市区町村ごとに決められています。窓口でもらう形の自治体もあれば、ホームページから取り出せる自治体もあります。手数料は、かかるかどうかも、額も市区町村で違います。

※改葬許可申請書の様式・添付書類・手数料は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。墓が別の市区町村にあるときは、申請先になる墓のある市区町村の窓口に問い合わせます。

遺骨が複数ある墓や、古い遺骨で亡くなった年月日や火葬の場所が分からないときの書き方は、窓口で相談できます。分かる範囲の情報を手元にまとめてから問い合わせると、話が早く進みます。

交付された改葬許可証は、新しい納骨先の管理者に出します。管理者は、受け取った許可証を、受理した日から5年間保存することになっています(墓埋法16条1項)。許可証を受け取ったら、受け入れ先に渡すまで、ほかの書類と分けて保管してください。

墓じまいの費用の内訳と見積の取り方

墓じまいの費用は、墓の大きさや場所、受け入れ先の種類、寺との関係によって違うため、この記事では金額を示しません。項目ごとに分けて、複数の見積で幅を見るのが確実です。

金額が一つに決まらないのは、費用がいくつもの相手に分かれて発生するからです。墓石の撤去は工事の業者に、新しい納骨先は受け入れ先に、儀式のお礼は寺に、書類の手数料は市区町村に、とそれぞれ別の相手に払うことになり、どれも条件で変わります。

費用の項目は、次のように分けて考えます。

項目 払う相手 見積で確かめること
墓石の撤去・区画を戻す工事 工事の業者 撤去の範囲、運び出しの条件、追加料金がかかる場合
遺骨の取り出し・運ぶ手間 業者または家族 取り出しを誰がするか、運ぶ方法
新しい納骨先の費用 受け入れ先 最初に払う額、管理料の有無、何年まで納めるか
儀式のお礼 寺 儀式をするかどうかと、その進め方
離檀に関するお金 寺(求められた場合) 金額と内訳を書面で
改葬許可の手数料 市区町村 かかるかどうかと額
交通費・書類の取り寄せ 家族 現地に行く回数

見積は、同じ条件(撤去の範囲、運び出しの方法など)を伝えて複数の業者から取り、項目ごとに並べてください。撤去を頼める業者に決まりがあるかどうかを、見積を取る前に管理者に確かめておくと、取り直しになりにくくなります。

お金がないときは、急いで全部を一度に進める必要はありません。行き先の種類によって費用のかかり方が違うので、受け入れ先を複数比べる、兄弟で分担する、時期をずらす、といった選び方があります。次の項目の「しないほうがよい条件」に当たるなら、墓じまい自体を急がない判断もあります。

たとえば、墓石が大きく区画も広い墓と、小さな区画の墓とでは、撤去の工事の中身が違います。編集部の整理では、相場の数字を探すより、自分の家の墓について「何を、誰に、どこまで頼むか」を一覧にしてから見積を取るほうが、あとで想定外の請求が出にくくなります。

墓じまいをしない場合の条件

住宅の外観

墓じまいは、継ぐ人がいない、遠くて守れない、といった事情があるときに考える選択肢です。次の条件に当たるなら、急いで進めなくてかまいません。

  • 墓を継ぐ人がいて、その人が守っていくつもりでいる
  • 親族が今も墓を参っていて、なくなることを望んでいない
  • 管理料が払えていて、急いで動く理由が特にない
  • 親が元気で、墓をどうしたいか本人の意向を聞ける
  • 誰が決めるのか(墓地の使用者・祭祀を継ぐ人)がまだはっきりしない

この条件を先に置いたのは、編集部の整理として、遺骨を取り出して区画を返す前に、決める人と親族の考えを確かめておきたいからです。墓じまいを勧める立場の事業者の解説では、この「しない」という選択は書かれにくいところです。編集部が注意したいのは、親族に相談しないまま決める、親の意向を聞かずに進める、行き先を比べずに急ぐ、といった、順番を飛ばす場面です。

特に、親が生きているうちなら、墓じまいをするかどうかより先に、親がどうしたいかを聞いておくことに意味があります。民法は、祭祀を継ぐ人について、亡くなった人の指定があればその人が承継すると定めているので(民法897条1項)、親の考えを聞いておくことは、あとで誰が決めるかの手がかりにもなります。

たとえば、長男が「自分の代で墓を守るのは難しい」と感じていても、親がまだ元気なら、親と兄弟で一度話し、継ぐ人がいるのか、いなければ行き先をどうするかを、親の言葉で聞いておくほうが、あとで迷いません。一方、継ぐ人がおらず、管理料の支払いも途切れそうな家なら、決める人の確認と親族への相談だけでも、早めに始めておくことをすすめます。

放置した墓がどうなるかは、墓地の使用規則や管理料の扱いによって変わり、何年で撤去されるかを一律には言えません。気になるときは、管理者に規則を聞いてください。編集部の整理では、「しない」と決めることも立派な結論で、迷っているうちは、決める人の確認と親族への相談だけを先に進めておけば十分です。

墓じまいと実家の片付け・相続の順番

墓じまいは、実家の片付けや相続の手続きと時期が重なりやすいので、どれを先にするかを決めてから動きます。先に考えるのは、期限が決まっている手続きのほうです。

順番を考える理由は、それぞれの扱いが違うからです。墓は祭祀を継ぐ人が引き継ぎ、相続財産の分け方とは別の枠です(民法897条)。一方、実家の家財や預金は相続財産で、相続放棄を考えているときに処分すると、単純承認(すべて引き継ぐこと)とみなされることがあります(民法921条1号。保存行為などは除かれます)。また、実家の名義を移す相続登記には、自分のために相続が始まったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内という申請の義務があります。遺産分割が後から成立した場合は、その日から3年以内です(不動産登記法76条の2)。

期限のある手続きを先に、墓じまいはその流れの中で
  1. 1相続の方向を決める放棄を考えているなら、家財を処分する前に
  2. 2実家の片付け方向が決まってから、探して記録し、仕分ける
  3. 3実家の名義相続登記は3年以内
  4. 4墓じまい決める人と行き先が決まってから、改葬許可へ

家の中にある仏壇や位牌の扱いは、寺の考え方や家の事情によって違うので、片付けの前に、寺や受け入れ先に相談してください。

たとえば、親が亡くなって間もなく、実家を売るかどうかも決まっていない家なら、まず相続の方向と実家の片付けを進め、墓じまいは決める人と行き先が固まってからにする、という順番が考えられます。逆に、実家はすでに兄弟の一人が住み継ぐと決まっていて、墓だけが遠方に残っている家なら、墓じまいを先に進めてもかまいません。相続放棄を考えている家は、墓じまいの費用を親の預金から出すかどうかも含めて、出す前に弁護士・司法書士に確かめてください。

遺品整理は相続を決めてから|先に探す物と進め方

相続登記の期限と手順|実家の名義を移す前に

実家が残るなら、墓じまいの次は、実家を売るか残すかを決める番です。

実家をどうする|実家が空き家になりそうな人へ

実家を売るときの空き家の特例の要件

葬儀の費用や、亡くなったあとの手続きを期限の順番で見直したいときはこちらです。

家族葬の費用の考え方

亡くなったあと|期限の順番

よくある質問

墓じまいにかかる費用は、全部でいくらですか?

墓の大きさや場所、新しい納骨先の種類、寺との関係によって違うため、この記事では金額を示していません。撤去の工事・新しい納骨先・寺へのお礼・手数料と項目を分け、同じ条件で複数の見積を取って幅を見てください。

墓じまいのあと、遺骨はどうすればいいですか?

別の墓、納骨堂、永代供養や樹木葬という名前で受け入れている墓地や寺、散骨などの行き先があります。改葬許可の申請書には改葬の場所を書くので、行き先は申請の前に決めておきます。散骨は方法と場所で扱いが違うので、自治体の条例や案内を確かめてください。

墓じまいを後悔するのは、どんなときですか?

編集部が注意したいのは、親族に相談しないまま決める、親の意向を聞かずに進める、行き先を比べずに急ぐ、といった、順番を飛ばす場面です。継ぐ人がいる、親族が参っているといった条件に当たるなら、急がない判断もあります。

墓を放置していたら、何年で撤去されますか?

何年で撤去されるかは、墓地の使用規則や管理料の扱いで変わり、一律には言えません。管理料が払えなくなりそうなときは、放置する前に管理者に規則を聞き、継ぐ人と行き先を家族で話し始めてください。

親族の同意がないと、墓じまいはできませんか?

改葬許可の添付書類として承諾書が求められるのは、申請する人が墓地使用者等でない場合の、墓地使用者等の承諾です(施行規則2条2項2号)。親族全員の同意は添付書類に挙がっていません。ただ、親族が参っている墓なら、決める前に相談しておくほうが、あとの揉めごとを防げます。

改葬許可は、新しい墓のある市区町村に出すのですか?

申請先は、遺骨が今ある墓の市区町村です(墓埋法5条2項)。新しい納骨先や自分の住所地の市区町村ではありません。申請書の様式や添付書類は市区町村ごとに違うので、墓のある市区町村の窓口で確かめてください。

お金がなくて、墓じまいができません。

全部を一度に進める必要はありません。受け入れ先の種類を比べる、兄弟で分担する、時期をずらす、といった選び方があります。継ぐ人がいて管理料が払えているなら、墓じまい自体を急がない判断もあります。

順番のおさらい

  1. 墓じまいと改葬:墓じまいは全体の呼び名で、遺骨を別の墓や納骨堂へ移す部分が改葬。改葬には市区町村長の許可が要る
  2. 決める人:墓地の使用者と祭祀を継ぐ人を先に確かめる。使用者でない人が申請するなら使用者の承諾書が要る
  3. 行き先:申請書に改葬の場所を書くので、新しい納骨先は先に決める
  4. 親族・兄弟:同意は法律上の要件ではないが、決める前に相談として伝える。費用は項目ごとに分担を決める
  5. お寺・霊園:お礼と理由と行き先を伝え、埋葬の事実を証する書面を頼む。離檀料は金額と内訳を書面で確かめる
  6. 手順:決める人 → 行き先 → 親族 → 管理者 → 改葬許可 → 取り出しと返還 → 新しい納骨先へ
  7. 改葬許可:今ある墓の市区町村に出す。様式・添付書類・手数料は市区町村で違う
  8. 費用:項目ごとに分け、同じ条件で複数の見積を取る
  9. しないほうがよい条件:継ぐ人がいる、親族が参っている、親の意向を聞けるなら急がない
  10. 実家・相続との順番:期限のある相続の方向と相続登記を先に考え、墓じまいはその流れの中で進める

墓じまいは、工事や手続きの段取りよりも、「誰が決めるか」と「遺骨をどこへ移すか」が先に決まっているかどうかで、進みやすさが大きく変わります。決める人を確かめ、親族に先に話し、行き先を決める。この三つが済んでいれば、お寺への相談も改葬許可の申請も、順番どおりに進められます。迷っているうちは、しないという選択肢も残したまま、決める人の確認から始めてください。

出典:墓地、埋葬等に関する法律2条(e-Gov法令API)/同5条/同8条/同13条/同16条/同21条/墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条(e-Gov法令API)/民法897条(e-Gov法令API)/民法921条(e-Gov法令API)/不動産登記法76条の2(e-Gov法令API)/厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」(e-Stat)

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この記事を書いた人

親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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