- 家族葬にしたいけれど、結局いくらかかるのか見当がつかない
- 見積もりを見ても、何にお金がかかっているのか分からない
- 見積もりより高くなったという話を聞いて不安になる
- 親の口座が凍結されたら、葬儀代はどこから出せばいいのか
- 喪主になる自分が全部立て替えるのか、きょうだいで分けるのか
- 香典を辞退したら、家の持ち出しが増えるのではないか
- 病院から葬儀社を早く決めるよう言われて、比べる時間がない
- 葬祭費や埋葬料という言葉を聞いたが、自分で申請するものなのか
- 相続放棄を考えているが、親のお金で葬儀代を払っていいのか
上記のような悩みに答えます。
家族葬は、親しい人だけで見送る小さな葬儀として知られていますが、費用は「家族葬だからいくら」とは決まりません。地域、参列する人数、葬儀社のプランの組み方で総額が大きく動くうえ、見積もりの書き方も葬儀社ごとに違うので、比べようとしても比べにくいのが実情です。検索で上位に出る葬儀社や葬儀の紹介サイトは、相場や安くする工夫は詳しく書いていますが、葬儀が終わったあとの「誰の、どこのお金で払うか」は扱いにくい立場にあります。親の口座が止まったときの払戻しの制度、きょうだいでの負担の決め方、申請しないと出ない葬祭費や埋葬料、相続税の計算での扱い、相続放棄との関係は、葬儀の打ち合わせの席では説明されないことがあります。そこで、費用の内訳と見積もりが膨らむところという基本を押さえたうえで、総額を「払える上限」から決める順番と支払い元の確保まで、法務省・国税庁・厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。
家族葬の費用は「葬儀一式+飲食+返礼品+宗教者への謝礼」の合計で見ます。金額は地域・人数・葬儀社で大きく違うため、先に払える上限と支払い元を決め、見積もりを2社以上で比べてください。親の口座が止まっても、預貯金の払戻し制度で同じ金融機関から150万円まで引き出せる場合があり、埋葬料や葬祭費は申請しないと受け取れません。
2026年10月時点の制度で確かめています
家族葬の費用は4つの合計で見る

家族葬の費用は、葬儀社に払う「葬儀一式」だけではありません。飲食、返礼品、宗教者への謝礼を足した4つの合計が、家が実際に払う総額です。
4つに分けて見る理由は、それぞれ払う相手と決まり方が違うからです。葬儀一式は葬儀社のプランで決まり、飲食と返礼品は参列する人数で増減し、宗教者への謝礼は葬儀社の見積もりに入っていない場合があります。葬儀社によってプランに含まれる範囲は違います。飲食・返礼品・謝礼が入らないプランもあるので、含まれる範囲を確かめてください。
| 費用のまとまり | 主な中身 | 金額が動く要因 |
|---|---|---|
| 葬儀一式 | 斎場・祭壇・棺・搬送・安置・火葬の手配・人件費など | プランの内容、安置の日数、斎場の種類 |
| 飲食 | 通夜のあとの食事、火葬のあとの会食など | 参列する人数、会食をするかどうか |
| 返礼品 | 会葬のお礼の品、香典へのお返し | 参列する人数、香典を受け取るかどうか |
| 宗教者への謝礼 | 読経や戒名へのお礼、お車代など | 宗派、菩提寺の有無、依頼の範囲 |
この記事では、相場として「平均◯万円」という数字は出しません。民間の調査はいくつもありますが、地域や人数の前提がそろっておらず、出典や集計の方法もばらばらで、自分の家の総額を決める根拠にはなりにくいからです。代わりに、自分の家の総額を出す手順を下の「総額は払える上限から決める」で詳しく書きます。
たとえば、親戚を合わせて十人ほどで見送り、会食をせずに火葬場で解散する家と、同じ家族葬でも近所の人や親の友人が来て通夜と会食をする家とでは、同じ葬儀社の同じプランでも、飲食と返礼品で総額が大きく変わります。菩提寺があってお寺に読経を頼む家と、宗教者を呼ばない家とでも、謝礼の分が丸ごと違います。
迷ったときは、見積もりを受け取ったら、まずこの4つのまとまりに書き分けてみてください。どのまとまりが見積もりに入っていて、どれが入っていないかが見えると、総額の見当がつきます。
一般葬との差は香典の出入りで変わる
家族葬は一般葬より支払いが少なくなると思われがちですが、家の持ち出しで見ると、差は思ったほど大きくならないことがあります。参列者が少ない分、受け取る香典も少なくなるからです。
ここで「家族葬」という言葉の範囲を確かめておきます。法律で決まった定義はなく、葬儀社によって呼び方も違います。公正取引委員会の「葬儀の取引に関する実態調査」では、参列者50名未満を家族葬、50名以上を一般葬として集計していました。ただしこれはその調査の中だけの区切りで、2016年に葬儀業者に聞いた古い数字です(出典:公正取引委員会「葬儀の取引に関する実態調査報告書」)。調査には葬儀の種類ごとの件数や売上の合計も載っていますが、それは回答した葬儀業者の売上の合計であって、遺族が払った総額の統計ではありません。そのため、この記事では割り算をした1件あたりの額は出しません。
一般葬と家族葬で、家のお金の出入りがどう変わるかを並べると次のとおりです。
- 葬儀一式:斎場が小さくなる、祭壇を簡素にするなどで下がる場合がある
- 飲食・返礼品:参列者が少ない分だけ下がる
- 宗教者への謝礼:葬儀の規模では変わらない場合もある
- 受け取る香典:参列者が少ない分だけ減る。辞退すればなくなる
たとえば、参列者が多い一般葬では、飲食や返礼品の支払いが増える一方、香典もまとまって入ってきます。家族葬にして香典を辞退すると、支払いは減りますが、入ってくるお金もなくなるので、家が負担する差し引きの額は支払いの減り方ほどには縮まないことがあります。
ですから、一般葬と家族葬を比べるときは、支払いの総額だけでなく、香典を受け取るか、受け取るならどのくらいの人が来そうかまで含めて考えるのが現実的です。家族葬を選ぶ理由が費用だけなら、香典の出入りも含めた差し引きで、どれだけ違うのかを葬儀社に試算してもらってください。
見積もりより高くなりやすいところ
最初の見積もりから請求額が上がる場合、日数や人数で変わる項目と、見積もりの外にある項目が原因になりやすいです。どこが動くのかを打ち合わせの時点で聞いておけば、後から驚かずに済みます。
見積もりは、安置の日数や参列者の数など、まだ決まっていないことを仮に置いて作られることがあります。火葬場の空き具合で安置の日数が延びる、参列者が想定より増える、急いで決めたために必要な物が含まれていなかった、といった変化は、見積もりの段階では誰にも分かりません。しかも、病院で亡くなると搬送先を早く決めるよう言われることがあり、比べる時間がないまま話が進みがちです。
追加になりやすい項目は次のとおりです。
- 安置の日数が延びたときの安置料やドライアイスの追加
- 参列者が増えたときの飲食・返礼品の追加
- 搬送の距離や回数が増えたときの追加
- 棺・骨壺・祭壇の花などを上のランクに変えたとき
- 火葬料や式場の使用料が見積もりの外になっている場合
- 宗教者への謝礼・お車代・会食への参加の有無
たとえば、病院から葬儀社を急かされた場合は、搬送と安置だけを先に頼み、葬儀そのものの契約は見積もりを見てから決める、という順番にできるかを聞いてみてください。搬送と安置の費用がいくらかかるかも、先に聞いてください。安置まで済めば、考える時間を取りやすくなります。そのあいだに、ほかの葬儀社からも見積もりを取れます。
打ち合わせでは、「この見積もりから増える可能性がある項目はどれか」「その項目は1日、または1人増えるといくら上がるのか」と聞き、答えを見積書の余白に書いてもらうと、あとで請求書と照らし合わせられます。プランに含まれていない物があとから足されることがあります。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
高くなりやすいのは、安置の日数・ドライアイス・返礼品・飲食など、人数や日数で増える行です。総額を先に知っておきたいなら、家族葬の資料を取り寄せて、プランに何が含まれ何が別料金かを並べておくと、いざというときに慌てずに済みます。
総額は払える上限から決める

葬儀の費用は、見積もりを見てから払えるかを考えるのではなく、先に「払える上限」を決めて、その中に収まる葬儀を組み立てるほうが、総額が膨らみにくくなります。
打ち合わせでは、目の前の選択肢を一つずつ選ぶうちに総額が膨らむことがあります。どの項目も「親のためなら」と思うと削りにくく、上限が決まっていないと、どこで止めればいいのか判断できません。上限は、親の気持ちを軽んじるためではなく、家族がこのあとも暮らしていくための線です。
- 1払える上限を決める支払い元と立て替える人も一緒に
- 2内訳を4つに分ける葬儀一式・飲食・返礼品・謝礼
- 3見積もりを2社以上で比べる同じ人数・同じ形で頼む
- 4追加になりやすい項目を聞く余白に書いてもらう
上限を決めるときに考えるのは、次の3つです。
- 親が葬儀のために残したお金や、入っていた保険・互助会があるか
- 親の預貯金から払戻しで引き出せる額(下の「親の口座が凍結されても払える仕組み」)
- 喪主やきょうだいが立て替えられる額と、あとでどう精算するか
親が互助会や保険に入っていたかどうか分からない場合は、親あての郵便物、通帳の引き落とし、保険証券の控えを探すと手がかりが見つかることがあります。分からないまま葬儀社を決めると、あとで互助会の積立てが見つかっても使えない場合があるので、探せる範囲だけでも先に見ておいてください。
見積もりを2社以上で比べるときは、同じ人数、同じ形(通夜をするか、会食をするか、宗教者を呼ぶか)で頼むのがこつです。条件がそろっていないと、安く見える方が実は中身が少ないだけ、ということが起きます。
誰がいくら負担するかは、きょうだいで話し合って決めておくと揉めにくくなります。まとまらないときは弁護士に相談してください。喪主が葬儀社と契約し、いったん支払いを引き受けることもありますが、あとで親の遺産から出すのか、きょうだいで分けるのかは家族で決めることです。揉めないためには、葬儀の前に「上限」「誰が立て替えるか」「香典をどう扱うか」の3つだけでも、きょうだいでメールやメッセージで共有しておくと、あとで記録として残ります。
たとえば、長男が喪主になり、遠方に住む妹が参列だけする家なら、葬儀社との契約と支払いは長男、精算は遺産分割のときにまとめて、と決めておけば、妹も納得しやすくなります。決めた内容と、領収書の写しをきょうだいに共有しておくと、後から「そんなに使ったとは聞いていない」という行き違いを防げます。
親の口座が凍結されても払える仕組み
金融機関が口座の名義人の死亡を知ると、口座は止まり、原則として相続人全員の手続きがそろうまで引き出せなくなります。ただし、遺産分割の前でも、相続人が一人で一定額まで払い戻せる制度があります。
法務省の説明では、払戻しの目的として生活費・葬儀費用・相続債務の弁済などが挙げられています。また、家庭裁判所の判断を経ず、ほかの相続人の同意がなくても、金融機関の窓口で請求できるとされています。
払い戻せる額の決まり方は次のとおりです。
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 計算のしかた | 口座ごとに「相続開始時の残高×3分の1×請求する相続人の法定相続分」 |
| 同じ金融機関での上限 | 150万円まで(口座ごとではなく、金融機関ごと) |
| 同意 | ほかの相続人の同意は要らない |
| 家庭裁判所 | 判断を経なくてよい |
出典:法務省「相続法の改正」
たとえば、法務省の説明にある例では、次のように計算します。
預金600万円の口座・法定相続分2分の1の長男:600万円 × 3分の1 × 2分の1 = 100万円
計算の結果が150万円を超える場合は、同じ金融機関からは150万円までです。計算は口座ごとに行い、同じ金融機関から払い戻せる合計は150万円までです。複数の金融機関に口座があれば、金融機関ごとに150万円の上限があります。
法務省の説明では、払い戻した分は、あとの遺産分割で、その相続人がすでに取得した分として扱われる仕組みです(民法の規定)。ですから、葬儀費用のために払い戻した場合は、葬儀社の領収書と払戻しの記録をセットで残しておき、遺産分割のときにきょうだいに示せるようにしておいてください。
窓口で求められる書類(親が亡くなったことと、自分が相続人であることが分かる戸籍など)は金融機関によって違うので、行く前に電話で確かめると二度手間を防げます。相続放棄を考えていない場合は、戸籍の取り寄せに時間がかかって葬儀の支払い期日に間に合わないとき、いったん喪主が立て替え、あとで払戻しから精算する、という順番も考えられます。相続放棄を考えている場合は、払戻しや立て替えの前に、下の「相続放棄を考えているなら払う前に確認」を先に読んでください。
葬祭費と埋葬料は申請しないと出ない
親が亡くなると、入っていた公的な医療保険から、葬儀や埋葬の費用の一部が出ます。ただし、どれも自動では振り込まれず、家族が申請して初めて受け取れます。
手続きが葬儀のあとの慌ただしい時期に重なるため、気づかないまま過ぎてしまう家もあります。
- 埋葬料 5万円
- 勤め先の健康保険に申請
- 葬祭費 額は市区町村などで違う
- 市区町村の窓口に申請
会社員などが入る健康保険では、被保険者が亡くなったとき、その人に生計を維持されていて埋葬を行う人に、埋葬料として5万円が出ます。そういう人がいない場合は、実際に埋葬を行った人に、5万円の範囲で埋葬にかかった費用(埋葬費)が出ます。協会けんぽの説明では、家族が健康保険の扶養に入っていて亡くなった場合は、被保険者に家族埋葬料が出ます。
国民健康保険や後期高齢者医療制度に入っていた親の場合は、市区町村などの制度として葬祭費が支給されるのが一般的です。額や支給の扱いは条例(国保組合は規約)で決まっていて、全国一律ではありません。
※葬祭費の額は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
いつまでに申請すればいいかについては、どの制度も、受け取る権利は「請求できるときから2年」で時効により消えます。いつから数えるかは制度の運用で変わるので、亡くなった日から早めに申請しておくのが確実です。
- 埋葬料:亡くなった親が入っていた健康保険(勤め先の健康保険組合や協会けんぽ)
- 葬祭費:亡くなった親が住んでいた市区町村の窓口(国保組合は組合)
たとえば、年金暮らしの親が後期高齢者医療制度に入っていた場合、自治体によっては、保険証を返す窓口で葬祭費の申請の案内を受けられることがあります。申請には、葬儀を行った人が分かる書類(葬儀の領収書や会葬礼状など)を求められることがあるので、葬儀社からもらった書類は捨てずにまとめておいてください。
出典:健康保険法(厚生労働省 法令等データベース)/国民健康保険法(同)/高齢者の医療の確保に関する法律(同)
葬儀代は相続税の計算で差し引ける
親の遺産に相続税がかかる場合、相続人などが負担した葬式費用は、遺産の総額から差し引いて計算できます。ただし、葬儀にかかったお金のすべてが対象になるわけではありません。
国税庁の説明では、差し引けるのは亡くなった人の葬式に通常欠かせない費用です。一方、残された家族のためのお返しや、葬儀のあとの法事、お墓の購入は、葬儀そのものとは別のものとして扱われます。
| 差し引けるもの | 差し引けないもの |
|---|---|
| 火葬・埋葬・納骨の費用 | 香典返しのための費用 |
| 遺体や遺骨の回送の費用 | 墓石や墓地の購入、墓地を借りる費用 |
| お通夜など、葬式の前後に通常欠かせない費用 | 初七日など法事のための費用 |
| お寺への読経料などのお礼 |
出典:国税庁 No.4129「相続財産から控除できる葬式費用」
注意したいのは、この扱いが関係するのは、相続税がかかる家だけだということです。遺産が基礎控除の額以下で相続税がかからない家では、差し引く場面そのものがありません。
たとえば、相続人である喪主が、葬儀社への支払い、お寺へのお礼、香典返しをまとめて払った場合、差し引ける対象になるのは、葬儀社への支払いのうち葬式に通常欠かせない費用と、お寺への読経料などのお礼です。香典返しは入りません。葬儀社の請求書に法事やお墓の費用が混ざっていれば、その分も入りません。お寺へのお礼は領収書が出ない場合もあるので、日付・相手・金額をメモに残しておくと、あとで説明するときの材料になります。
自分の家に相続税がかかるかどうか、いくら差し引けるかの計算は、ここでは扱いません。ここからは税理士に相談するか、税務署の電話相談で確かめてください。相談するときは、葬儀社の見積書と請求書・領収書、お寺へのお礼のメモ、香典返しの明細を分けて持っていくと、どれが対象になるかを具体的に聞けます。
家族葬にしない場合の条件
家族葬は選びやすい形ですが、次のような場合は、一般葬や、通夜や告別式をしない火葬だけの形のほうが、家族の負担が軽くなることがあります。
選び方の条件を書いておくのは、「家族葬が選ばれやすいから」と決めてしまい、あとで親の知人への対応に追われる家があるからです。葬儀の形は、費用だけでなく、葬儀のあとの手間まで含めて選ぶものです。
- 親の交友関係が広く、葬儀のあとに自宅へ弔問に来る人が多くなりそうな場合は、一般葬のほうが一度で済みやすい
- 香典を受け取り、支払いの一部に充てたい場合は、参列者の多い一般葬のほうが持ち出しが少なくなることがある
- 親や家族が宗教的な儀式を望まず、遠方の親戚も呼ばない場合は、火葬だけの形も選択肢になる
- 菩提寺がある場合は、火葬だけにすると納骨を断られることがあるので、先にお寺に相談する
たとえば、地域の活動に長く関わっていた親を家族葬で見送り、亡くなったことを後から知らせた場合、四十九日までのあいだに弔問の人が次々に訪れ、そのたびにお返しを用意することになる家もあります。反対に、親しい人がほとんど亡くなっていて、子どもだけで見送るなら、家族葬や火葬だけの形のほうが、親の生活に合っていることもあります。
親が元気なうちに、葬儀の形や呼んでほしい人の話をしておくのは、縁起でもないことではありません。聞きにくければ、「もしものとき、誰に知らせればいいか」から聞くと話しやすくなります。
相続放棄を考えているなら払う前に確認
親に借金があるかもしれず、相続放棄を考えているなら、葬儀代を親の預金から払う前に、扱いを専門家に確かめてください。
相続放棄は、自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する手続きです(期間は家庭裁判所に請求して伸ばせる場合があります)。その前に親の財産を処分すると、すべて引き継いだ(単純承認した)ものとみなされることがあります(民法921条)。葬儀費用を親の預金から出すことが、この「処分」にあたるかどうかは、使い方や金額、事情によって判断が分かれます。
- 放棄を少しでも考えているなら、払う前に、家庭裁判所の手続きに詳しい弁護士・司法書士に相談する
- 預貯金の払戻し制度を使って引き出すことも、同じように先に確かめる
- 払った場合は、領収書と何にいくら使ったかの記録を残す
たとえば、葬儀のあとに親あての督促状が届き、借金があると分かってきた、という順番で事情が見えてくる家もあります。そのときに、葬儀代を親の口座から出していたかどうかが問題になることがあるので、借金の心配が少しでもあるなら、親の預金から払うか立て替えるかも含めて、払う前に弁護士・司法書士に確かめてください。立て替えた分を後から遺産で精算してよいかも、あわせて確認します。
相談先は、弁護士・司法書士のほか、親の最後の住所地の家庭裁判所でも手続きの案内を受けられます。期限や手続きの流れは、下の相続放棄の記事で詳しく書いています。
出典:民法915条(e-Gov法令API)/民法921条(e-Gov法令API)
葬儀のあとに来る手続きと実家

葬儀の費用を払い終えても、亡くなったあとの手続きは続きます。期限のあるものから順に、日付を書き出しておくと慌てずに済みます。
最初の期限は、死亡の事実を知った日から7日以内の死亡届です。葬儀社に提出を手伝ってもらえることもありますが、火葬の許可に関わるので、誰が出すかを葬儀の打ち合わせで確かめておいてください(出典:戸籍法86条(e-Gov法令API))。次に来るのが、相続放棄の3か月です。埋葬料や葬祭費の申請、預貯金の払戻し、葬儀費用の領収書の整理も、この時期に重なります。
亡くなった日を入れると、自分の家の期限の日付が一覧で出る計算ツールもあります。
亡くなったあとの手続き全体の順番は、こちらにまとめています。
親が住んでいた実家が残る場合は、次は実家をどうするかの話になります。空き家のまま置いておくあいだも、固定資産税や管理の手間はかかり続けます。相続の方向が決まったら、実家の片付けや売るかどうかも、期限と合わせて考え始めてください。
よくある質問
お布施はいくら包めばいいですか?
宗派や地域、お寺との関係で大きく違うため、この記事では目安の額を書きません。菩提寺がある場合は、お寺に直接「皆さんはどのくらいお包みしていますか」と聞いてかまいません。お寺へのお礼は、相続税がかかる家では読経料などとして葬式費用に含まれることがあるので、日付と金額をメモしておいてください。
喪主は誰がやるものですか?
喪主は家族の話し合いで決めます。配偶者や長男が務める家もあれば、親の近くに住んでいる子が務める家もあります。喪主が支払いまで全部引き受けるとは限らないので、喪主と、立て替える人と、精算の方法を分けて決めておくと揉めにくくなります。
病院から葬儀社を早く決めるよう言われたらどうすればいいですか?
搬送と安置だけを先に頼み、葬儀の契約は見積もりを見てから決められるかを葬儀社に聞いてください。安置まで済めば、ほかの葬儀社の見積もりを取る時間ができます。比べるときは、人数と葬儀の形をそろえて頼みます。
親が互助会や葬儀の保険に入っていたか分からないときは?
親あての郵便物、通帳の引き落としの記録、保険証券の控えを探すと手がかりが見つかることがあります。分かったら、葬儀社を決める前に、その互助会や保険会社に使い方を問い合わせてください。葬儀のあとに見つかった場合も、受け取れるものがないか確かめる価値があります。
自宅で葬儀をすることはできますか?
自宅で通夜や葬儀を行う家もあります。ただし、棺を運び入れる広さや、近所への配慮、安置の環境などの条件があるので、できるかどうかは葬儀社に家の間取りを伝えて相談してください。費用の見方は、斎場の使用料がかからない分を除けば、同じく4つのまとまりで考えられます。
葬祭費や埋葬料は、いつまでに申請すればいいですか?
どの制度も、受け取る権利は請求できるときから2年で時効により消えます。いつから数えるかは制度の運用で変わるので、亡くなったあと早めに申請してください。埋葬料は親が入っていた健康保険、葬祭費は親が住んでいた市区町村の窓口に申請します。
生前に親と葬儀の話をしてもいいのでしょうか?
葬儀の形や呼んでほしい人、葬儀のために残しているお金があるかを聞いておくことは、親の希望を叶えるためにも役立ちます。切り出しにくければ、「もしものとき誰に知らせればいいか」から聞くと話しやすくなります。互助会や保険の有無も、このときに確かめておくと安心です。
順番のおさらい
- 費用の見方:葬儀一式+飲食+返礼品+宗教者への謝礼の4つの合計で見る。プランに含まれる範囲は葬儀社で違う
- 一般葬との差:参列者が少ない分、香典も減る。支払いだけでなく差し引きで比べる
- 膨らむところ:安置の日数・人数・見積もりの外の項目。増える可能性のある項目を余白に書いてもらう
- 総額の決め方:払える上限と支払い元を先に決め、同じ条件で見積もりを2社以上取る。きょうだいとは上限・立て替え・香典の扱いを共有する
- 口座が止まったら:預貯金の払戻し制度で、口座ごとに残高×3分の1×法定相続分、同じ金融機関から150万円まで。払い戻した分は遺産分割で精算する
- 葬祭費・埋葬料:健康保険なら埋葬料5万円、国民健康保険・後期高齢者医療なら葬祭費。申請しないと出ず、時効は請求できるときから2年
- 相続税:相続税がかかる家では、葬式費用を差し引ける。香典返し・お墓・法事の費用は入らない。計算は税理士か税務署の電話相談へ
- 家族葬にしない場合:弔問の人が多くなりそうな家は一般葬、儀式を望まない家は火葬だけの形も選べる
- 相続放棄を考えているなら:親の預金から払う前に弁護士・司法書士へ。迷うなら払う前に確認し、記録を残す
- 葬儀のあと:死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内、相続放棄は3か月以内。実家が残るなら、次は実家の話
家族葬の費用でいちばん困るのは、金額そのものより、比べる時間も払う当てもないまま決めさせられることです。払える上限と、誰がどのお金で払うかを先に決め、領収書と記録を残しておけば、葬儀のあとの精算や申請、相続の話し合いまで、同じ書類でつなげて進められます。悲しみの中ですべてを完璧に決める必要はなく、まず上限と記録の2つを押さえてください。
葬祭費の額と申請の窓口、預貯金の払戻しで求められる書類は、市区町村や金融機関によって違います。手続きの前に確認してください。
