- 遺族年金という言葉は聞くが、何のための年金なのかよく分からない
- 父が亡くなった。家族の中で、誰が遺族年金を受け取れるのか
- 自分はもう成人して働いている。子として何か受け取れるのか
- 兄弟が何人かいる。遺族年金は兄弟で分けるものなのか
- 母が先に亡くなった場合、残された父は受け取れるのか
- 両親とも亡くなったら、子には何も出ないのか
- 親は自営業で、国民年金だけだった
- 残された親は、いくらを、いつまで受け取れるのか
- どこに請求すればいいのか。期限はあるのか
上記のような悩みに答えます。
遺族年金は、亡くなった人に暮らしを支えられていた家族が受け取る公的年金で、国民年金の遺族基礎年金と、厚生年金の遺族厚生年金の二つがあります。ややこしいのは、同じ「遺族」でも、配偶者・子・親のどの立場か、亡くなった親がどちらの年金に入っていたかで、受け取れる年金が入れ替わる点です。見た範囲の解説は、制度の種類と金額の計算を順に説明するものが中心で、子の立場から「わが家では誰に何が出るのか」を、家族の組み合わせごとに振り分けたものは多くありませんでした。そこで、二つの年金の要件・額の決まり方・請求先という基本を押さえたうえで、成人した子が対象から外れる根拠、家族の組み合わせ別の振り分け、高齢の親の世帯に2028年の見直しが関係するかどうかまで、国民年金法・厚生年金保険法の条文と日本年金機構・厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。
遺族年金には国民年金の遺族基礎年金と厚生年金の遺族厚生年金があり、亡くなった親に生計を維持されていた家族のうち、条件を満たす人が受け取ります。成人して障害の状態にもない子は、どちらの年金でも対象になりません。子が成人している家では、受け取る候補は残された親(配偶者)で、請求は年金事務所、権利の時効は5年です。
この記事の数字は2026年11月時点のものです。金額は令和8年度の額で、毎年4月に改定されます。
遺族年金は2種類ある
遺族年金は、国民年金から出る遺族基礎年金と、厚生年金から出る遺族厚生年金の2種類です。どちらも、亡くなった人に生計を維持されていた遺族が対象で、受け取れる人の範囲が大きく違います。
遺族基礎年金を受け取れるのは「子のある配偶者」か「子」だけです(国民年金法37条の2第1項)。配偶者であっても、条件に当たる子と生計を同じくしていなければ対象になりません。一方の遺族厚生年金は、配偶者・子・父母・孫・祖父母と範囲が広く、子がいない配偶者も対象に入ります(厚生年金保険法59条1項)。
| 比べる点 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
|---|---|---|
| 出どころ | 国民年金 | 厚生年金 |
| 受け取れる人 | 子のある配偶者、または子 | 配偶者・子・父母・孫・祖父母(優先順位あり) |
| 亡くなった親の条件 | 国民年金の加入中、または受給資格期間25年以上など | 厚生年金の加入中、または老齢厚生年金を受けていた(受給資格期間25年以上)など |
| 額の決まり方 | 定額(令和8年度は年847,300円)+子の加算 | 亡くなった人の報酬比例部分の4分の3 |
- 子のある配偶者、または子
- 定額(令和8年度は年847,300円)+子の加算
- 配偶者・子・父母・孫・祖父母
- 報酬比例部分の4分の3
どちらにも共通するのが「生計維持」の条件です。日本年金機構の説明では、亡くなった人と生計を同じくしていたこと(同居が典型ですが、別居でも仕送りや健康保険の扶養などで認められる場合があります)と、遺族の前年の収入が850万円未満、または所得が655.5万円未満であることの二つを満たす状態を言います。収入と所得は別の数字なので、源泉徴収票や年金の通知書を見るときは混ぜないでください。
たとえば、会社員だった父が退職後に年金を受けていて、同じ家で母と暮らしていた家なら、遺族厚生年金の入口の条件はおおむねそろっています。反対に、父が自営業でずっと国民年金だけだった家は、そもそも遺族厚生年金の話になりません。同じ「父が亡くなった」でも、出発点がまったく変わります。
わが家がどちらに当たるかを最初に知る近道は、亡くなった親の年金証書か、毎年届いていた年金額の通知書を探すことです。そこに厚生年金の記載があるかどうかで、話の進み方が決まります。
出典:国民年金法37条の2(e-Gov法令API)/厚生年金保険法59条(e-Gov法令API)/日本年金機構 年金用語集「生計維持」
成人した子は遺族年金の対象外

すでに成人していて、障害の状態にもない子は、遺族基礎年金でも遺族厚生年金でも、その子自身は対象になりません。二つの法律が、遺族としての「子」を年齢で区切っているためです。
国民年金法は、遺族基礎年金の「子」を、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、20歳未満で障害等級に該当する障害の状態にあり、かつ現に婚姻をしていない子と定めています(37条の2第1項2号)。厚生年金保険法も、遺族厚生年金の「子」について同じ書きぶりの要件を置いています(59条1項2号)。言い換えると、18歳になった年度の3月31日までの子か、20歳未満で障害等級1級・2級の子で、どちらも結婚していないことが条件です。
この要件は、受け取り始めたあとも続きます。子の受給権は、18歳になった年度の3月31日が終わったとき(障害の状態にある場合を除く)や、20歳に達したときに消えると定められています(国民年金法40条3項・厚生年金保険法63条2項)。
- 18歳になった年度の3月31日を過ぎた子:障害の状態になければ対象外
- 20歳未満で障害等級1級・2級の子(未婚):対象になりうる
- 障害の状態にある子も、20歳に達すると受給権が消える
- 条件に当たる子がいても、子のある配偶者が遺族基礎年金を受けている間などは、子には支給されない
最後の点は見落としやすいところです。日本年金機構は、子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金を支給しないと説明しています。遺族厚生年金も、子のある妻、または子のある55歳以上の夫が受け取っている間は、子には支給されません。
たとえば、30代と40代の兄弟が父を亡くした場合、兄弟のどちらも遺族年金の「子」には当たりません。兄弟で遺族年金を分ける、という場面は起きないということです。一方、兄弟の中に高校生の弟がいる家なら、弟は「子」に当たり、母は「子のある配偶者」として遺族基礎年金の対象になりえます。
ただし、成人した子が「何ももらえない」と決まるわけではありません。国民年金の死亡一時金は、条件しだいで子にも順番が回ってきますし、亡くなった親が受け取っていなかった年金については別の手続きがあります。相続も遺族年金とは別の話です。子の立場では、遺族年金は自分ではなく残された親の手続きだと整理し、そのうえで自分が関わる手続きを一つずつ確かめていくと、取りこぼしが減ります。
出典:国民年金法40条(e-Gov法令API)/厚生年金保険法63条(e-Gov法令API)/日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
誰が遺族年金を受け取るかの振り分け
誰が何を受け取れるかは、「亡くなった親がどちらの年金に入っていたか」と「誰が残されたか」の掛け合わせで決まります。子が成人している家を中心に、よくある組み合わせを表にしました。
| わが家の状況 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | ほかに確かめること |
|---|---|---|---|
| 父が亡くなり母が残る(子は成人) | 対象外(子のある配偶者ではない) | 母が対象になりうる(妻は年齢の要件なし) | 中高齢寡婦加算(母の年齢などの条件あり) |
| 母が亡くなり父が残る(子は成人) | 対象外 | 父が死亡当時55歳以上なら対象になりうる(支給は60歳から) | 母が厚生年金に入っていたか |
| 両親とも亡くなった(子は成人) | 子は対象外 | 子は対象外 | 死亡一時金は条件しだい |
| 亡くなった親が国民年金だけ | 子のある配偶者・子がいなければ出ない | 出ない | 寡婦年金か死亡一時金 |
| 亡くなった親が厚生年金にも入っていた | 子のある配偶者・子がいれば出る | 優先順位の高い遺族が受け取る | 生計維持の条件 |
遺族厚生年金には受け取る順番があり、日本年金機構の説明では、子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母の順に、最も優先順位の高い人が受け取ります。厚生年金保険法59条2項も、配偶者か子が受給権を取得したときは、父母は遺族としないと定めています。
二つ目の行は、取り違えやすいところです。妻には年齢の要件がありませんが、夫には「死亡当時55歳以上」という要件があり、受け取れるのは60歳からです(厚生年金保険法59条1項1号・65条の2)。ただし、夫が遺族基礎年金の受給権を持つときは、60歳までの支給停止の対象になりません。父が55歳未満で母を亡くした場合は、遺族厚生年金の対象になりません。
なお、順位の説明に出てくる「父母」は、亡くなった人から見た父母のことです。たとえば独身の子が亡くなり、その親が遺族として受け取る、という場面の話で、親を亡くした子が受け取る話とは向きが逆になります。こちらも55歳以上であることと、先の順位の人がいないことが条件です。
たとえば、元会社員の父が亡くなり、専業主婦だった母と、独立した子二人が残った家なら、受け取る候補は母一人で、対象になるとすれば遺族厚生年金です(父の加入期間や、母が生計を維持されていたことなどの条件を満たす場合)。同じ家で亡くなったのが母のほうで、母に会社勤めの期間が無かった場合は、父が受け取る遺族年金は出ないことがあります。
自分の家を表に当てはめるときは、亡くなった親の年金の加入歴、残された親の年齢、年の離れた弟や妹がいるかどうかの三つを書き出してから見てください。表は入口の振り分けで、実際に受け取れるかは、加入期間や保険料の納付状況を含めて年金事務所で確かめることになります。
出典:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」/厚生年金保険法65条の2(e-Gov法令API)
遺族基礎年金は子のある家のもの
遺族基礎年金は、国民年金に入っている人が亡くなったときなどに、子のある配偶者か子に支給されます。子が成人している家では、残された親は通常は対象になりません。
亡くなった人の側の条件は、国民年金法37条に三つ並んでいます。
- 国民年金の被保険者が亡くなったとき
- 被保険者だった人で、日本国内に住み、60歳以上65歳未満の人が亡くなったとき
- 保険料を納めた期間と免除された期間を合わせて25年以上ある人が亡くなったとき(日本年金機構は、合算対象期間なども含めた受給資格期間25年以上として説明しています)
前の二つには保険料の納付要件があり、亡くなった日の前日の時点で、被保険者期間の3分の2以上が納付済みか免除になっている必要があります(同条ただし書)。日本年金機構の説明では、死亡日が令和18年3月末日までのときは、亡くなった人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいという特例もあります。高齢で年金を受けていた親の場合は、三つ目の25年以上の経路が通常です。
額は、令和8年度は年847,300円に子の加算額を足した額です(昭和31年4月1日以前生まれの人は年844,900円)。子の人数によって加算がつきます。これは毎年4月に改定される額で、法律の条文には金額そのものは書かれていません。
遺族基礎年金の配偶者は、対象になる子と生計を同じくしていることが要件です(国民年金法37条の2第1項)。子が成人した高齢の親の世帯では、残された親は通常は対象になりません。たとえば、65歳以上の母が父を亡くし、子がみな独立している家なら、母は遺族基礎年金の対象にならず、見るべきは遺族厚生年金のほうです。逆に、年の離れた末っ子がまだ高校生という家なら、母がこの年金の対象になりえます。
迷ったら、まず「18歳になった年度の3月31日までの子(または20歳未満で障害等級1級・2級の子)が家にいるか」を確かめてください。いなければ、遺族基礎年金の検討はそこで終えて、次の遺族厚生年金に進んでかまいません。
出典:国民年金法37条(e-Gov法令API)/日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」/厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
遺族厚生年金の額は報酬比例部分がもと
遺族厚生年金は、亡くなった親が厚生年金に入っていたか、厚生年金を受けていた場合に、生計を維持されていた遺族のうち順位の高い人に支給されます。子が成人した家では、受け取る候補は残された親です。
亡くなった人の側の条件は、厚生年金保険法58条1項に並んでいます。年金を受けていた親の場合に当てはまるのは、日本年金機構の言い方では「老齢厚生年金を受けていた人(受給資格期間25年以上)が亡くなったとき」です。会社で働いている途中で亡くなった場合などは別の経路で、こちらには、亡くなった日の前日に加入期間の3分の2以上が納付済みか免除という保険料の納付要件がかかります。年金を受けていた親の死亡には、この納付要件はかかりません。
額のもとは、亡くなった人の報酬比例部分の4分の3です(厚生年金保険法60条1項1号)。報酬比例部分は、厚生年金に入っていた期間の給料と加入期間で決まる部分で、亡くなった親の老齢基礎年金の分は含みません。そのため、亡くなった親の年金の振込額を4分の3にしても、遺族厚生年金の額にはなりません。
残された親が妻の場合は、年齢の要件がありません。夫の場合は、前の表のとおり、死亡当時55歳以上で、支給は60歳からです。
残された親が65歳以上で、自分の老齢厚生年金も受けている場合は、受け取り方が変わります。自分の老齢厚生年金が先に支給され、遺族厚生年金は、それより額が高い場合に差額だけが出ます(厚生年金保険法64条の2)。この仕組みと計算の例は、母の年金を扱った記事に分けてまとめています。
たとえば、父が長く会社勤めをしていた家と、会社勤めが短く後は自営業だった家では、同じ遺族厚生年金でも額のもとが大きく違います。「遺族年金は月◯万円」という目安の数字を家族に当てはめないほうがよいのは、このためです。
自分たちで額を計算しきる必要はありません。亡くなった親の年金証書と、残された親の年金証書をそろえて年金事務所に相談し、その家の記録で額を確かめてください。
出典:厚生年金保険法58条(e-Gov法令API)/厚生年金保険法60条(e-Gov法令API)/日本年金機構「年金の併給または選択」
加算・寡婦年金・死亡一時金

遺族基礎年金と遺族厚生年金のほかに、残された親の年齢や、亡くなった親の加入歴によって出てくるものが三つあります。中高齢寡婦加算、寡婦年金、死亡一時金です。
| 名前 | 誰に | 主な条件 | 額 |
|---|---|---|---|
| 中高齢寡婦加算 | 遺族厚生年金を受ける妻 | 夫の死亡時に40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子がいない場合など | 令和8年度は年635,500円(65歳になるまで) |
| 寡婦年金 | 国民年金だけの夫を亡くした妻 | 夫の第1号被保険者期間が10年以上、婚姻10年以上、妻が60歳以上65歳未満で支給 | 夫の記録から計算した老齢基礎年金の額の4分の3 |
| 死亡一時金 | 生計を同じくしていた遺族 | 保険料の納付済期間などが36月以上で、遺族基礎年金が出ないとき | 12万〜32万円(納付月数で変わる) |
中高齢寡婦加算は、65歳になると終わります。65歳以上で夫を亡くした母には、はじめから付きません。年金を受けていた夫が亡くなった場合は、夫の厚生年金の加入期間などの条件もあります。昭和31年4月1日以前生まれの妻は、65歳から経過的寡婦加算に切り替わりますが、その額は生年月日で異なります。
寡婦年金と死亡一時金は、亡くなった親が国民年金だけだった家で出番がある給付です。ただし、どちらにも見落としやすい条件があります。夫が老齢基礎年金をすでに受けていた場合、寡婦年金は支給されず、死亡一時金も出ません(国民年金法49条1項・52条の2第1項)。すでに老齢基礎年金を受けていた親が亡くなった家では、この二つは出ない、と押さえておくと読み違いが減ります。
両方の条件を満たす場合は、寡婦年金と死亡一時金のどちらかを選びます。死亡一時金を受け取れる遺族の順番は、配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹で、亡くなった当時に生計を同じくしていたことが条件です。両親とも亡くなった家で、成人した子に順番が回ってくるとすれば、この死亡一時金です。
たとえば、自営業の父が老齢基礎年金を受け取る前に亡くなり、母が60歳以上65歳未満だった場合は、婚姻期間や父の加入期間しだいで寡婦年金の対象になりえます。同じ家でも、父がすでに老齢基礎年金を受けていたなら、寡婦年金も死亡一時金も出ません。父が年金を受け取り始めていたかどうかが、分かれ目になります。
この三つは請求先が市区町村になるものがあり、寡婦年金と死亡一時金は役所の窓口が受け付けます。※お住まいの市区町村で確認してください。
出典:国民年金法49条(e-Gov法令API)/国民年金法52条の2(e-Gov法令API)/日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」
遺族年金はいつまで受け取れるか
残された親が妻で、65歳以上で遺族厚生年金を受け始めた場合は、期限を区切られることはありません。ただし婚姻など、法律で決まった事由に当たると受給権がなくなります。
期限があるのは、若い世代の一部です。夫が亡くなったときに30歳未満で子のない妻は、遺族厚生年金が5年間の有期給付になります。子が受け取る分は、前に見たとおり、18歳になった年度の3月31日が終わったときや、20歳に達したときに終わります。
検索でよく見かける「5年で打ち切り」という話には、もう一つの出どころがあります。厚生労働省は、遺族厚生年金の見直しを2028年4月に施行する予定としていて、その中心は、20代から50代の子のない配偶者の遺族厚生年金を、原則5年の有期給付にすることです。施行直後に新たに対象になるのは、18歳年度末までの子がいない、2028年度末時点で40歳未満の女性と、18歳年度末までの子がいない60歳未満の男性とされています。
高齢の親の世帯にこの見直しが関係するかは、条件で分かれます。厚生労働省は、すでに遺族厚生年金を受けている人、60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人、2028年度に40歳以上になる女性は、見直しの影響を受けないと説明しています。親が60歳を過ぎてから配偶者を亡くした場合は、この「60歳以降に受給権が発生する人」に当たります。ただしこれは現時点の説明で、今後の政令や運用までは確かめられていません。
中高齢寡婦加算も、令和10年4月1日以降に新しく発生する分は、令和35年度まで25年かけて段階的に縮小される予定です。すでに受けている人や、65歳以降に夫と死別した妻のように、もともと加算の対象外の人には影響がないとされています。
たとえば、母が60歳未満で父を亡くす場合と、母が65歳を過ぎてから父を亡くす場合では、見直しとの関係がまったく違います。前者は子の有無や年齢で扱いが分かれるので、見直しの施行時期とあわせて年金事務所で確かめる必要があります。後者は、厚生労働省の説明では影響を受けない側に入ります。
出典:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」/厚生労働省「遺族厚生年金の見直しに対して寄せられている指摘への考え方」
遺族年金の請求の順番と期限
遺族厚生年金の請求先は、年金事務所か街角の年金相談センターです。遺族基礎年金だけを請求する場合は、住所地の市区町村役場に出します。※お住まいの市区町村で確認してください。
- 1亡くなる年金を受けていた親なら、年金を止める届けも確かめる
- 2年金事務所に相談する誰がどの年金を請求できるかを聞く
- 3年金請求書を出す戸籍謄本などを添える
- 4受け取る亡くなった月の翌月分から
遺族年金は、亡くなった月の翌月分から受け取れます。年金請求書には戸籍謄本などの書類を添えますが、何が要るかは家族の状況で変わるので、相談の段階で何が要るかを聞いてから集めると二度手間になりません。
期限で気をつけたいのは時効です。遺族厚生年金・遺族基礎年金を受ける権利は、支給すべき事由が生じた日から5年で時効によって消えます(厚生年金保険法92条1項・国民年金法102条1項)。請求が遅れても5年分まではさかのぼれる、と考えると実態に近いですが、先延ばしにしてよいという意味ではありません。死亡一時金だけは時効が2年で、日本年金機構は、死亡日の翌日から2年を過ぎると請求できなくなると案内しています。
税金の扱いも、手続きの前に知っておくと慌てません。遺族基礎年金・遺族厚生年金は、租税その他の公課の対象になりません(国民年金法25条・厚生年金保険法41条2項)。同じ条文のただし書で、自分の老齢基礎年金・老齢厚生年金は課税の対象とされています。残された親に確定申告が要るかどうかは、税務署で確かめてください。
- 相談に行く前にそろえたいもの:亡くなった親と残された親の年金証書(基礎年金番号が分かるもの)
- 亡くなった日が分かるもの
- 残された親の振込先の口座が分かるもの
- 子が代わりに行くなら、委任状の要否を電話で先に確かめる
一方で、急いで窓口に行かなくてよい家もあります。子がみな成人していて、亡くなった親が国民年金だけで老齢基礎年金を受けていた、残された親もいない、という家では、遺族年金・寡婦年金・死亡一時金のどれも出ません。それでも、亡くなった親の年金を止める手続きや、受け取っていなかった年金の手続きは別にあるので、年金事務所への連絡そのものは省けません。
たとえば、葬儀や役所の手続きに追われて、遺族厚生年金の請求を1年近く後回しにしていた場合でも、5年以内なら受け取れる分は残っています。気づいた時点で、年金証書を持って年金事務所に相談してください。亡くなった日から先の期限を一覧で確かめたいときは、計算ツールが使えます。
出典:厚生年金保険法92条(e-Gov法令API)/国民年金法102条(e-Gov法令API)/国民年金法25条(e-Gov法令API)/厚生年金保険法41条(e-Gov法令API)
遺族年金と相続の手続きは別
遺族年金は、法律が決めた遺族が、自分の名前で請求する年金です。誰が受け取るかは、ここまで見てきた法律の要件と優先順位で決まります。
そのため、遺族年金の手続きと、預金や実家をどう分けるかという相続の手続きは、窓口も流れも別になります。遺族年金は年金事務所、相続放棄は家庭裁判所、相続登記は法務局、と行き先も違います。相続税との関係など税の扱いは、この記事では扱わないので、税務署か税理士に確かめてください。
- 遺族年金:要件を満たす遺族が年金事務所などに請求する
- 死亡一時金:遺族基礎年金が出ないときに、順番の早い遺族が請求する
- 亡くなった親が受け取っていなかった年金:別の手続きがある
- 預金・実家などの遺産:相続人の間で分け方を決める
たとえば、母が遺族厚生年金を受け取り、兄弟は実家の相続を話し合う、という家もあります。このとき、母の遺族年金を兄弟で分けるという話にはなりませんが、母の暮らしの費用をどう見るかは、実家の扱いとあわせて家族で話す価値があります。
もう一つ、相続には放棄の期限があり、こちらは遺族年金の5年よりずっと早く来ます。亡くなったあとにすることの全体と、相続放棄の期限は、次の記事で順番に確かめられます。葬儀の費用の整理もあわせて見ておくと、手元のお金の見通しが立ちます。
年金の手続きと並んで、実家の遺品をいつ片づけるかも気になる時期です。先に探す物と、手をつけないでおく物の分け方は、遺品整理は相続を決めてからで確かめられます。
次は実家をどうするか

残された親の年金の額が見えてきたら、次に来るのは、その親がどこで暮らすか、そして実家をどうするかという決断です。
年金の額は、そのまま住まいの選択肢を左右します。一人になった親が実家に住み続けるなら、家の維持の費用は変わらずかかります。施設を考えるなら、年金の範囲で入れるところがあるかが入口になります。どちらを選ぶかは、親の体の状態と、子がどれだけ通えるかでも変わります。
一方で、急いで実家を手放す必要がない家もあります。残された親が元気で一人暮らしを続けられ、年金で家の維持費をまかなえる見込みがあるなら、住まいの話はしばらく先でかまいません。そのあいだに、家の中の物の量や、名義がどうなっているかを確かめておくと、いざ決めるときに慌てずに済みます。
たとえば、父が亡くなり、母が遺族厚生年金と自分の年金で暮らすことになった家では、まず母の年金の額を年金事務所で確かめ、その額で実家に住み続けるか、施設を考えるかを家族で話す、という順番になります。
よくある質問
夫が死んだら遺族年金はいくらもらえますか?
遺族厚生年金は、亡くなった夫の報酬比例部分の4分の3がもとになり、夫の加入期間と給料で額が変わります。子のある妻なら、令和8年度は年847,300円に子の加算を足した遺族基礎年金も、要件を満たせば対象になります。家ごとの額は、年金証書を持って年金事務所で確かめてください。
遺族年金が5年で打ち切られるのはいつからですか?
いまの制度で5年の有期給付になるのは、夫が亡くなったときに30歳未満で子のない妻です。2028年4月に施行予定の見直しは、20代から50代の子のない配偶者の遺族厚生年金を原則5年の有期給付にすることが中心です。施行直後に新たに対象になるのは、18歳年度末までの子がいない、2028年度末時点で40歳未満の女性と、60歳未満の男性とされています。すでに受給している人、60歳以降に受給権が発生する人、2028年度に40歳以上になる女性は影響を受けないと、厚生労働省は説明しています。
夫が死んだ場合、妻はいつまで遺族年金をもらえますか?
いまの制度では、妻には年齢の要件がなく、夫が亡くなったときに30歳未満で子のない場合を除けば、遺族厚生年金に期限は区切られていません。2028年4月施行予定の見直しで、新たに期限がつく人が出る予定です。婚姻など、法律で決まった事由に当たると受給権がなくなります。中高齢寡婦加算は65歳になると終わります。
夫の遺族年金と自分の年金は両方もらえますか?
65歳以上なら、自分の老齢基礎年金は遺族厚生年金と一緒に受け取れます。自分の老齢厚生年金もある場合は、そちらが先に支給され、遺族厚生年金は差額だけになります。詳しい仕組みは、母の年金を扱った記事にまとめています。
遺族年金は兄弟で分けるものですか?
分けるものではありません。成人していて障害の状態にもない子は、遺族年金の「子」に当たらないためです。遺族年金を受け取るのは、要件を満たした残された親などで、兄弟は相続の話し合いとは別に考えます。
両親とも亡くなったら、子は何も受け取れませんか?
成人した子は遺族年金の対象になりません。ただし、亡くなった親が国民年金の保険料を36月以上納めていて老齢基礎年金を受けていなかった場合などは、死亡一時金を受け取れることがあります(亡くなった当時に生計を同じくしていたことなどが条件です)。亡くなった親が受け取っていなかった年金の手続きも別にあります。
順番のおさらい
- 2種類:遺族基礎年金は子のある配偶者か子のもの。遺族厚生年金は配偶者・子・父母などが順位で受け取る
- 成人した子:18歳になった年度の3月31日を過ぎ、障害の状態にもなければ、どちらの年金でも対象外
- 振り分け:亡くなった親の加入歴と、残された家族の組み合わせで決まる。夫が受け取るのは55歳以上で、支給は60歳から
- 遺族基礎年金:令和8年度は年847,300円+子の加算。子が成人した高齢の親の世帯では通常は対象外
- 遺族厚生年金:報酬比例部分の4分の3がもと。65歳以上で自分の老齢厚生年金がある親は差額になる
- 加算と一時金:中高齢寡婦加算は65歳まで。寡婦年金・死亡一時金は、夫が老齢基礎年金を受けていたら出ない
- いつまで:高齢の妻は期限なし。2028年4月施行予定の見直しは、60歳以降に受給権が発生する人には影響しないと説明されている
- 請求:年金事務所か街角の年金相談センター。遺族基礎年金だけなら市区町村。時効は5年、死亡一時金は2年
- 相続との関係:遺族年金は遺産分割で分けるものではない。相続放棄の期限は別に早く来る
- 次:残された親の年金の額が分かったら、住まいと実家の話へ
子の立場で遺族年金を考えるときは、自分が受け取るものを探すより、「残された親が何を受け取れるか」を確かめて、その請求を取りこぼさないように支えることが中心になります。額の計算を家族で抱え込むより、両親の年金証書をそろえて年金事務所に一度相談するほうが、確かな答えに近づけます。そこで分かった額が、次の住まいの話の土台になります。
死後の手続き全体の流れは、こちらから順に確かめられます。

