- 実家の母が、いつの間にか料理をしなくなっていた
- これって認知症なのか、それとも歳のせいなのか分からない
- 本人に聞くと「ちゃんと食べてる」としか言わない
- 久しぶりに帰省したら、父の顔がひと回り小さく見えた
- 冷蔵庫に傷んだ物や、同じ物がいくつも入っていた
- 一人暮らしで、ふだん何を食べているのか見当がつかない
- 病院に行こうと言うと、機嫌が悪くなる
- 配食サービスを勧めたら、嫌がられそうな気がする
- 自分の考えすぎかもしれない、とも思う
上記のような悩みに答えます。
ここで扱うのは、子どもの側から見た「親がご飯を作ってくれない」ではなく、離れて暮らす高齢の親が自分の食事を作らなくなった、痩せてきた、という場面です。検索すると、料理をしなくなる原因の一覧や、宅配の弁当の比べ方が多く出てきますが、その多くは「原因が分かれば次は宅食を選ぶ」という流れで書かれていて、本人が「食べている」と言い張るときの確かめ方や、受診の話と暮らしの支えの話をどう分けるかには、あまり触れていません。そこで、作らなくなる理由・相談先・食事の確保という基本を押さえたうえで、帰省と電話で暮らしの変化を記録する方法、自治体の配食と民間の宅食の違い、様子見を選ぶときの条件まで、介護保険法と施行規則の条文で確かめながら整理しました。病名や体重の基準、栄養の量は医師に聞く話なので、ここでは扱いません。
親が食事を作らなくなったり痩せてきたりしても、本人を問い詰める必要はありません。まず理由の見当をつけたうえで、家族だけでも地域包括支援センターに相談できます。体重が減っている場合は、受診の話を主治医経由で進めてください。食事は配食・宅食・ヘルパーなどで確保できますが、配食の有無と料金は自治体によって違います。
2026年10月時点の制度で確かめています
食事が減った親のこと、まず家族で相談を
最初にすることは、親に「ちゃんと食べなさい」と言うことではありません。家族の側で理由の見当をつけ、家族だけで公的な相談窓口に話を持っていくことです。食事そのものの手当ては、その後で順番に決めていけば間に合います。
順番を先に並べておきます。
- 帰省と電話で、作らなくなった理由の見当をつける(買い物・火・歯・気力・物忘れ)
- 親の住む地域の地域包括支援センターに、家族だけで電話する
- 体重や食べる量の減りが気になるなら、かかりつけ医に家族から伝える段取りを決める
- 作り置き・宅食・配食・ヘルパーのうち、親が受け入れやすいもので食事をつなぐ
- 1理由の見当をつける帰省と電話で
- 2地域包括に電話家族だけで
- 3主治医に伝える痩せてきたなら
- 4食事をつなぐ受け入れやすい形で
問い詰めるのを後回しにするのは、食事のことは親の自尊心に触れやすい話題だからです。長く台所を預かってきた親にとって、「作れていない」と言われるのは、暮らしを自分で回せていないと言われるのと同じに聞こえることがあります。本人が「食べている」と答えるのは、うそをついているというより、そう答えるしかない場面に立たされているからだと考えたほうが、話がこじれません。
たとえば、帰省した日に冷蔵庫を開けて、傷んだ惣菜を見つけたとします。その場で「これ、いつの?」「ご飯はどうしてるの?」と続けて聞けば、親は口を閉ざし、次の帰省では冷蔵庫を片づけてから迎えるようになるかもしれません。同じものを見ても、その日は黙って日付と中身をメモしておき、帰ってからセンターに「冷蔵庫に古い物が残っていた。本人は食べていると言う」と伝えれば、家族以外の人と一緒に次の手を考えられます。
迷ったときは、「親に認めさせること」と「家族の側の準備」を分けて考えてください。理由の見当をつけることと、センターへの電話は、本人の同意を待たずに今日から始められます。食事の手当てを決めるのは、その材料がそろってからで十分です。
なお、ここ数日でほとんど何も口にしていない、水分もとれていない、呼びかけへの反応がいつもと違う、といった急な変化があるなら、この順番を待たずにかかりつけ医や医療機関、救急に連絡してください。
作らない理由の見当を帰省と電話でつける

高齢の親が料理をしなくなる理由は一つではなく、理由によって家族が打つ手が変わります。原因を決めるのは医師ですが、「どこでつまずいているのか」の見当は、帰省と電話で家族がつけられます。
料理は、献立を考える、買い物に行く、材料を持ち帰る、火を使って調理する、食べる、片づける、という長い作業のつながりです。どこか一か所が難しくなるだけで、全体が止まります。買い物に出るのがつらくなった、火を使うのが怖くなった、入れ歯が合わず噛める物が限られてきた、作っても一緒に食べる人がいなくて張り合いがない、段取りが覚えにくくなった。どれも外から見ると同じ「料理をしなくなった」に見えますが、手当ての仕方は別々です。
家族にできるのは、診断ではなく観察です。次の点を、帰省の日と電話で少しずつ確かめておくと、相談先や医師に伝えるときの材料になります。
| 見ること・聞くこと | どこで確かめるか | 考えられる見当 |
|---|---|---|
| 冷蔵庫に同じ物が重なっていないか、傷んだ物はないか | 帰省の日 | 物忘れ・買い物の段取り |
| ゴミ袋の中身(総菜の容器ばかりか、生ごみが出ているか) | 帰省の日 | 調理をしているか |
| コンロのまわり、鍋の焦げ、火を使った形跡 | 帰省の日 | 火の扱いへの不安 |
| 買い物にはどこまで、何で行っているか | 電話 | 足腰・移動の手段 |
| 硬い物や好きだった物を避けていないか | 帰省の日・電話 | 歯・入れ歯 |
| 「作る気がしない」「一人だと面倒」という言葉が出るか | 電話 | 気力・張り合い |
電話での聞き方にも工夫が要ります。「ご飯食べてる?」と聞くと、「食べてる」の一言で終わることもあります。「今日のお昼は何にしたの?」「近くのスーパーはまだやってる?」と、暮らしの中身を具体的に尋ねるほうが、自然に様子が見えてきます。答えが毎回同じ、昨日のことを思い出しにくそう、といった様子も、そのまま記録しておきます。
たとえば、冷蔵庫に牛乳や豆腐が何本も重なっている場合と、冷蔵庫はほとんど空で、レトルト食品と菓子パンの袋ばかりが目立つ場合とでは、見当が違ってきます。前者は買ったことを忘れているのかもしれず、後者は買い物か調理のどこかが負担になっているのかもしれません。作り置きを持って行っても手を付けていないなら、温め直す手間か、味や硬さが合っていないことも考えられます。
見たことは、日付を付けて家族のメッセージのやり取りに残しておくだけで十分です。暮らしの変化として記録しておけば、「なんとなく痩せた気がする」ではなく、「冷蔵庫の中身がこう変わった」「電話でこう話していた」と、相手に伝わる形で相談できます。
受診の話か、暮らしの支えの話かを分ける
食事を作らない・痩せてきたという変化は、受診で確かめる話と、暮らしの支えで補う話が混ざっています。この二つを分けて考えると、家族が次に何をすればいいかが見えやすくなります。
二つを分けるのは、手当ての窓口が違うからです。体重が目に見えて減っている、食べる量が明らかに減った、という変化は、体の側に理由があるかもしれず、それを確かめられるのは医師だけです。一方で、買い物に行けない、火が怖い、作る気がしない、という変化は、食事を届ける・一緒に作る・買い物を手伝う、といった暮らしの支えで補えることがあります。両方が重なっていることもあり、どちらか一方だけを手当てしても、もう一方が残ることがあります。
家族の目で分けるときの考え方を並べます。
- 痩せてきた、食べる量が明らかに減った:かかりつけ医に相談する話
- 噛みにくそう、入れ歯が合っていない様子:歯科を含めて、かかりつけ医やセンターに相談する話
- 買い物や調理の段取りでつまずいている:暮らしの支えで補う話(同時に、物忘れが気になるなら医師にも伝える)
- 作る気がしない、張り合いがない:暮らしの支えと、人とのつながりの話(気分の落ち込みが続くなら医師にも伝える)
体重が何キロ減ったら危ないのか、という基準をここでは書きません。体格や持病によって見方が変わるので、家族が数字で線を引くより、「痩せたように見える」「服がゆるくなった」と気づいた時点で、かかりつけ医に伝えるほうが確実です。家族の役目は、判断することではなく、変化を医師に届けることです。
たとえば、冷蔵庫は整っていて買い物もできているのに、本人の顔が明らかに細くなっている場合は、暮らしの支えより先に受診の話が来ます。反対に、体重はそれほど変わって見えないが、総菜とパンばかりの食事が続いている場合は、まず食事の届け方を考え、そのうえで次の通院のときに様子を伝えておく、という順番が合っています。
「母が料理をしなくなった、これは認知症なのか」と不安になる気持ちは自然です。ただ、家族が病名を当てはめて本人に伝えると、本人が身構えてしまうこともあります。物忘れが気になるなら、その様子を記録してかかりつけ医やセンターに伝える。名前を付けるのは医師の仕事だと割り切っておくと、家族の気持ちも少し楽になります。
かかりつけ医には誰から、どう伝えるか

痩せてきた親を受診につなぐときは、家族がいきなり本人を説得するより、まずかかりつけ医に家族から様子を伝える道を作るほうが進みやすくなります。主治医から「少し調べてみましょう」と言われるほうが、子から言われるより、本人が受け入れやすい場合もあります。
受診を嫌がる親には、「どこも悪くない」と思っていたい気持ちがあることもあります。子に「痩せたから病院へ」と言われると、自分の暮らしぶりを責められているように感じることがあります。話を出す人と経路を先に決めておけば、家族が正面から押し切らずに済みます。
「何科に連れて行けばいいのか」で迷うなら、まずはいま通っているかかりつけ医です。血圧や持病で定期的に通っている医師がいれば、次の通院に付き添い、家族から見たことを伝えます。どの診療科で何を調べるかは医師が決めることなので、家族が専門の病院を探して回る必要はありません。かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターに「どこに相談すればいいか」を聞いてください。
付き添えないときは、通院の前に、家族から見た変化を短い手紙にまとめて本人に持たせる、または医療機関に電話で伝えられるかを問い合わせる、といった方法もあります。どこまで対応してもらえるかは医療機関によって違うので、無理のない形を選びます。伝える内容は、前の項目で記録したものをそのまま使えば足ります。
- いつごろから料理をしなくなったか
- 冷蔵庫や台所で見たこと
- 痩せたと感じた時期と、服のゆるみなど目で見た変化
- 本人が食事について話していること
- 噛みにくそう、飲み込みにくそうといった様子があるか
たとえば、本人に「次の通院、一緒に行っていい?」と頼んで断られたとします。その場で押し切らず、話題を変えておき、後日センターかかかりつけ医に「本人は付き添いを嫌がっている」と相談します。家族以外の人から声をかけてもらうほうが、受け入れやすいこともあります。
本人に話すときは、主語を子の側に置くと、責められている感じが薄れます。「痩せたから病院へ行って」ではなく、「電話の声が少し疲れて聞こえて気になってる。次の通院、一緒に話を聞かせてもらえないかな」という形です。受診そのものより、付き添いの了解を取るところから始めるほうが、本人が身構えにくくなります。
家族だけで地域包括に電話するときの準備
地域包括支援センターは、介護保険法に根拠がある公的な相談窓口で、家族だけで相談することもできます。費用や受付方法(電話など)は、お住まいの市区町村やセンターに確認してください。親の食事が心配、という段階で連絡してかまいません。
センターの根拠は介護保険法115条の46です。条文では、介護予防の支援と包括的支援事業を行い、地域の住民の心身の健康の保持と生活の安定のために必要な援助を行うことで、保健医療の向上と福祉の増進を包括的に支援する施設とされ、市町村が設置できると定められています。言い換えると、高齢の人の健康と暮らしの困りごとを、介護が始まる前の段階からまとめて受け付けるために、市町村が置く窓口です。
電話の前に、次のことをメモにしておくと話が早く進みます。
- 親の住所(相談先は自分ではなく、親が住む地域を担当するセンター)
- 料理をしなくなった時期、冷蔵庫や台所で見たこと
- 痩せたと感じた変化と、かかりつけ医の有無
- 本人が食事について何と言っているか
- 親が一人暮らしかどうか、自分がどのくらいの間隔で帰れるか
「相談したら、無理やり介護を始めさせられるのでは」と心配する人もいますが、相談は情報を集め、進め方を一緒に考えるためのもので、何かを決める場ではありません。家族の話を聞いたうえで、地域にある食事の支えや見守りの仕組み、本人が受け入れやすい関わり方を教えてもらえることがあります。どんな対応ができるかは地域と状況で違います。
たとえば、親の担当センターがどこか分からないなら、親が住む市区町村の介護保険や高齢者福祉の窓口に電話して、「この住所を担当する地域包括支援センターはどこか」と聞けば教えてもらえます。センターにつながったら、「母が料理をしなくなり、少し痩せたように見える。本人は食べていると言う。家族として何から始めればいいか」と、見たことをそのまま話せば十分です。
この段階でいちばんもったいないのは、「まだ介護というほどではない」と電話を先送りすることです。センターは、介護保険を使うかどうか決まっていない段階の相談も受けています。「いまは様子を見ていい」と言われたなら、それも答えの一つで、次にどんな変化があったら連絡すればいいかを聞いておけます。
※地域包括支援センターは市町村が設置するか、市町村から委託を受けた法人が運営するため、名称(「高齢者あんしんセンター」など)と担当区域は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
食事のつなぎ方と、配食・宅食の違い

食事を確保する方法は、家族の作り置き、民間の宅食、自治体の配食、ヘルパーの大きく四つに分けられます。どれが合うかは、作らなくなった理由と、親が何なら受け入れるかで決まります。
選び方を理由から考えるのは、手段ごとに補える部分が違うからです。買い物がつらいだけなら、食材の配達やネットスーパーで足りることもあります。火が怖いなら、温めるだけで食べられる物が向いています。作る気がしないなら、誰かと一緒に作る、誰かが訪ねてくる時間を作る、といった関わりが効くこともあります。食事そのものを届けても、温め直す手間が負担なら手を付けないまま残ります。
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 家族の作り置き | 帰省の間隔が短く、本人が子の料理なら食べる | 温め直しや取り出しが負担だと残りやすい |
| 民間の宅食 | 自治体の事業が使えない、または対象外 | 料金と食事の形は業者ごとに違う |
| 自治体の配食 | 事業がある自治体で、対象に当たる | 有無・対象・自己負担は自治体ごとに違う |
| ヘルパー(訪問介護) | 調理や買い物の手助けが続けて要る | 介護保険で使うには認定などの手続きが要る |
自治体の配食には、介護保険の仕組みの中で行われるものがあります。介護保険法115条の45第1項第1号ハは、市町村が行う介護予防・日常生活支援総合事業のうち、生活の支えを行う事業を定めています。その中身を定めた介護保険法施行規則140条の62の7では、市町村が定める支援として、栄養の改善を目的とした配食の支援や、定期的な安否の確認と緊急時の対応を行う支援が挙げられています。法律の条文そのものに「配食」の言葉はなく、施行規則のほうに出てくる点は、調べるときに知っておくと迷いません。
ただし、この支援の対象は、要支援の認定を受けた人や、市区町村の基本チェックリストで対象と判断された人などです。高齢の人なら誰でも使えるものではなく、実施するかどうかや中身も、市町村が決めます。これとは別に、自治体が独自に配食や見守りの事業をしていることもありますが、有無も対象も回数も自己負担も、自治体ごとに違います。
- 実施は市町村が決める
- 対象に当たるかの確認が要る
- 問い合わせは地域包括か市区町村
- 見守りの有無は事業ごとに違う
- 業者を選べば注文できる
- 対象や届けられる地域は業者ごとに違う
- 料金と内容は業者ごとに違う
- 見守りの有無は業者による
たとえば、要支援の認定を受けている親なら、まずセンターに配食の事業があるかを聞いてみる価値があります。認定を受けていない親でも、自治体独自の事業の対象になることがあるので、問い合わせだけはしておきます。どちらにも当たらなかったときに、民間の宅食を検討する、という順番にすると、使える公的な仕組みを見落としにくくなります。
親が配食を嫌がりそうなら、届く食事より「届けに来る人」を前に出して話すと受け入れられることがあります。「毎日誰かが顔を見に来てくれるなら、こちらも安心できる」と、子の側の安心として頼む形です。最初から毎日にせず、試しに少し頼んでみる、という入り方も選べます。
※自治体の配食・見守りの事業の有無、対象、回数、自己負担は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
出典:介護保険法施行規則140条の62の7(e-Gov法令API)
嫌がる・様子見にするなら決めておく合図
本人が配食も受診も嫌がる、兄弟も「大丈夫でしょ」と言う。そうした事情で、いまは様子見を選ぶこともありえます。その場合は、「こうなったら動く」という合図を、家族で先に決めておくことが条件です。
様子見そのものは、無責任な選択ではありません。親の暮らしに口を出しすぎないことにも意味があります。ただ、合図を決めない様子見は、何かが起きるまで誰も動かないのと変わりません。合図を言葉にしておけば、様子見は「放っておく」ではなく、「決めた変化が見えたら動く」という家族の約束になります。
家族で言葉にしておく合図の例です。
- 服がゆるくなった、顔が細くなったなど、痩せたと分かる変化が続いた
- 冷蔵庫に傷んだ物が残る、同じ物が重なる状態が続いた
- 鍋を焦がした、火を消し忘れたと聞いた
- 電話で食事の話がかみ合わない日が増えた
- 本人から「食欲がない」「作るのがしんどい」という言葉が出た
合図を決めたら、当たったときに誰がセンターやかかりつけ医に電話するかまで決めておきます。担当が決まっていないと、合図に当たっても「誰かが連絡するだろう」で時間が過ぎます。
たとえば、近くに住む兄は「母は元気だから様子見でいい」と言い、遠くに住む妹は痩せたのが気になっている、という家を考えてみます。この場合、様子見に反対して言い合うより、「次の帰省で冷蔵庫に古い物が残っていたら、兄がセンターに電話する」と、合図と担当を決めるほうがまとまりやすくなります。兄の見立てを尊重しつつ、妹の心配にも行き先ができます。
「自分の考えすぎかもしれない」という迷いが残るなら、様子見を選ぶ場合でも、センターへの相談だけは一度済ませておくのが現実的です。一度話しておけば、合図に当たったときに「前に相談した者です」と話を始められます。何かあってからでは遅いと感じているなら、その気持ちを、合図と担当という形に置き換えておくことが、様子見を選ぶときの備えになります。
手助けが続くなら、次は認定の話
食事の手助けが続けて必要になってきたら、次に来るのは介護保険の要介護認定の話です。ヘルパーに調理や買い物を手伝ってもらう、介護保険の仕組みで配食の支援を受ける、といった手段は、認定などの手続きが入口になることがあります。
「介護保険の申請はまだ早いのでは」と感じるのは自然なことです。申請したからといって、すぐにサービスを使い始めなければならないわけではありません。申請するかどうかも、センターで一緒に考えられます。
介護保険法27条では、認定の申請に対する処分は、申請のあった日から原則30日以内にしなければならないとされています。ただし、調査に時間がかかるなどの理由があれば、見込みの期間と理由を通知したうえで延ばせることも同じ条に定められていて、実際にかかる日数は自治体や状況によって違います。
※認定の実際の処理日数は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
認定が出たら何が使えて、月にいくらかかるのかは、次の記事で順番にまとめています。
認定・お金|要介護認定が出て、月にいくら出ていくか/要介護3・2割負担の月額はいくら?
同じ「ちょっと心配」の段階で、外出やお風呂のことも気になっているなら、こちらも参考になります。
親が外出しなくなったら先に地域包括支援センターへ/親がお風呂に入らないとき叱る前に確かめること/親の介護、何から始める?
よくある質問
母が料理をしなくなりました。認知症でしょうか?
料理をしなくなる理由は、物忘れのほかにも、買い物の負担、火への不安、歯や入れ歯、気力の低下などいくつもあり、家族が見た目で決めることはできません。気になる様子を記録して、かかりつけ医や地域包括支援センターに伝えてください。病名を付けるのは医師の仕事です。
痩せてきた親は何科に連れて行けばいいですか?
まずは、いま通っているかかりつけ医に相談するのが現実的です。どの診療科で何を調べるかは医師が決めます。かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターに相談先を聞いてください。
自治体の配食サービスはありますか?料金はいくらですか?
介護保険の仕組みの中で、市町村が配食の支援を定めていることがありますが、対象は要支援の認定を受けた人などに限られ、実施するかどうかも市町村が決めます。自治体が独自に行う配食の事業もありえますが、有無・対象・自己負担は自治体ごとに違います。親の住む地域の地域包括支援センターか市区町村に問い合わせてください。
地域包括支援センターには、本人抜きで相談できますか?
家族だけで相談できます。費用や受付方法はセンターに確認してください。相談したからといって介護サービスを使うことが決まるわけではありません。相談先は、自分ではなく親の住所を担当するセンターです。
本人が「ちゃんと食べている」と言います。信じて様子を見ていいですか?
本人の言葉を否定せず、冷蔵庫やゴミ、電話での話しぶりなど、暮らしの中身で確かめてください。様子見を選ぶなら、痩せたと分かる変化や、冷蔵庫に傷んだ物が残る状態が続いたら動く、という合図と担当を家族で決めておくことが条件です。
介護保険の申請はまだ早いでしょうか?
早いかどうかは、親の暮らしぶりと状態で変わります。申請してもサービスを使い始めることが決まるわけではないので、迷ったらセンターで一緒に確かめてください。ヘルパーに調理を手伝ってもらいたいなら、認定などの手続きが入口になることは覚えておいてください。
順番のおさらい
- まず家族で:問い詰める前に、理由の見当とセンターへの電話から始める
- 理由の見当:冷蔵庫・ゴミ・コンロ・買い物・歯・気力を、帰省と電話で記録する
- 二つに分ける:痩せた変化は受診の話、買い物や調理のつまずきは暮らしの支えの話
- 受診の段取り:かかりつけ医に家族から伝え、主治医から話を出してもらう
- 地域包括:家族だけで電話できる。相談しても介護が始まるわけではない
- 食事のつなぎ方:作り置き・宅食・配食・ヘルパーを理由に合わせて選ぶ。配食は自治体差
- 様子見:動く合図と、合図に当たったときの担当を家族で決めておく
- 次に来ること:手助けが続くなら認定の話。申請はサービスを使う決心とは別
高齢の親が食事を作らなくなったとき、家族がまず手放していいのは、「本人に認めさせなければ」という考えです。台所と冷蔵庫を見て記録し、家族だけでセンターに話を持っていくことは、親の気持ちを待たずに始められます。そのうえで、痩せた変化は主治医に、作れない部分は暮らしの支えに、と行き先を分けておけば、どちらか一方だけを抱えて迷うことはなくなります。
配食・見守りの事業の有無、地域包括支援センターの名称と担当区域は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

