- 実家に帰るたび、親が玄関の上がり框でよろけている
- 本人は「大丈夫」と言うし、病院の話をすると機嫌が悪くなる
- これは歳のせいなのか、放っておいていいのかが分からない
- 次に転んだら骨折かもしれないと思うと落ち着かない
- 地域包括支援センターという名前は聞くが、何をしてくれる所なのか知らない
- 本人を連れて行かないと相談できないのではないか
- 遠くに住んでいて、転んでも気づけない
- 兄弟は「大丈夫でしょ」と言って取り合ってくれない
- 自分の考えすぎかもしれない、とも思う
上記のような悩みに答えます。
親が段差でつまずくのは、介護の手前にある「まだ何も起きていないが、起きそう」な段階です。検索すると、筋力の落ち方やすり足の直し方、杖や手すりの選び方がたくさん出てきますが、どれも本人が読んで自分で動く前提で書かれていて、「本人が受診を嫌がる」「子が遠くに住んでいる」という家族の側の事情には触れていません。そこで、相談先・家の中の対策・住宅改修という基本を押さえたうえで、家族だけで使える公的な窓口、受診の話を誰からどの窓口経由で出すかの段取り、様子見を選ぶときの条件まで、介護保険法と厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。病名や薬の話は医師に聞くことなので、ここでは扱いません。
受診の説得より先に、地域包括支援センターに家族だけで相談してください。無料で、電話でもよく、相談したからといって介護が始まるわけではありません。
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親が段差でつまずいたら、まず地域包括へ
やることは次の順番です。親を説得するところから始めないのが、いちばんの要点です。
- 地域包括支援センターに、家族だけで電話する(本人を連れて行かなくてよい・無料)
- センターと相談したうえで、かかりつけ医の受診につなぐ(段取りは下の「受診の話は誰から、どの窓口経由で出すか」)
- 受診の話が進まない間も、家の中の段差・コード・マットは今日から直す
- 離れて暮らしているなら、転んだことに気づける見守りを入れる
- 1地域包括に電話家族だけ・無料
- 2かかりつけ医へセンターと相談のうえ
- 3家の中を直す今日からできる
- 4見守りを入れる離れて暮らすなら
この順番にしているのは、親子の間だけで話を進めようとすると、たいてい言い合いで止まるからです。子が「病院に行って」と言えば言うほど、親は「そこまで弱っていない」と示したくなります。第三者の窓口に先に相談しておくと、子が正面から説得する以外の進め方を一緒に考えてもらえます。健康チェックや介護予防の教室のような、本人が受け入れやすい入り口を提案されることもあります(何を用意できるかは地域と状況で違います)。
たとえば、たまにしか帰れない子が、帰省のたびに「病院に行こう」と言い続けて何か月もたった、という場面を考えてみてください。そのあいだ何も決まらず、親は帰省そのものを気重に感じ始めます。先に電話一本でセンターに状況を伝えておけば、次の帰省までのあいだに家族以外が関われる方法があるかを相談できます。訪問などの対応をしてもらえるかは地域と状況で違いますが、子が不在の時間をどう埋めるかを、家族だけで考えずに済みます。
迷ったときの軸は、「親を動かす」ではなく「家族の側の段取りを先に作る」です。上の順番のうち、本人の同意なしで今日できるのは、窓口への電話と家の中を直すことです。ここから手を付けてください。
なお、すでに転んで痛みが続いている、頭を打った、といった場合は、この順番を待たずにかかりつけ医や医療機関に連絡してください。
親が段差でつまずくのを「歳のせい」で片づけない理由

歳のせいかどうかを家族が決める必要はありません。ただ、「歳のせい」で片づけると、対処できるものまで放っておくことになります。
段差でつまずく理由は一つではありません。足が上がりにくい、目が見えにくい、薬の影響、家の中の環境(敷居・コード・スリッパ)など、考えられる理由がいくつもあり、それぞれ対処が違います。足の力が理由なら運動や通う場所の話になり、環境が理由なら家の中を直す話になります。「歳だから仕方ない」とまとめてしまうと、このどれにも手が付かないまま、次の転倒を待つことになります。
一方で、原因の見立ては医療の仕事です。家族が原因を当てる必要はありませんし、当てようとして「認知症では」「病気では」と口にすると、かえって本人を身構えさせます。家族がやることは次の2つに絞れます。
- 受診につなげること(段取りは下の「受診の話は誰から、どの窓口経由で出すか」)
- 家の中の危ないところを減らすこと(本人の同意が要らない範囲から)
たとえば、帰省のときに玄関だけでつまずいている場合と、廊下や居間のような段差の無い場所でもつまずいている場合とでは、家族にできることの順番が少し変わります。玄関だけなら、まず上がり框まわりの環境を直すことが先に来ます。段差の無い場所でもつまずくなら、環境を直すだけでは足りない可能性があるので、センターへの相談と受診を急ぐ理由になります。どちらの場合も、原因を決めるのは医師で、家族は「どこで・いつ・どんなふうに」を見ておくのが役目です。
「自分の考えすぎかもしれない」と感じるなら、なおさら次の相談窓口を使ってください。考えすぎかどうかを一緒に見てもらうところまでが、その窓口の仕事に含まれます。考えすぎだと分かれば、それで安心して帰省を続けられます。
地域包括には家族だけで無料で相談できる
地域包括支援センターには、本人を連れて行かなくても、家族だけで、電話で、無料で相談できます。まだ介護保険を使うほどではない段階の相談こそ、この窓口の本来の仕事です。
地域包括支援センターは、介護保険法115条の46に根拠がある公的な窓口です。条文では、介護予防の支援と包括的支援事業を行い、地域の住民の心身の健康の保持と生活の安定のために必要な援助を行う施設とされています。市町村が設置するか、市町村から委託を受けた法人が運営しています。つまり、施設や介護サービスを売るための窓口ではなく、市町村の仕事として住民の暮らしを支える場所です。相談しても何かを買わされたり、契約を迫られたりする性格のものではありません。
- 相談は家族だけでできます。本人を連れて行く必要はありません
- 電話でもかまいません
- 費用はかかりません
- 「まだ介護保険を使うほどではない」段階の相談が、そもそもこの窓口の仕事です
- 相談したからといって、介護サービスを使い始めることが決まるわけではありません
相談先のセンターは、自分の住所ではなく、親が住んでいる地域を担当するセンターです。親の住所で検索するか、親の住む市区町村の介護保険の窓口に電話して「この住所の担当の地域包括支援センターはどこか」と聞けば教えてもらえます。
電話では、いま見えていることをそのまま伝えれば足ります。たとえば「親が段差でよくつまずく。本人は受診を嫌がっている。家族として何から始めればいいか」です。事前に次のことをメモしておくと、話が早く進みます。
- どこで、いつごろから、どのくらいの頻度でつまずいているか
- 実際に転んだことがあるか、けがをしたことがあるか
- かかりつけ医がいるか、定期的に通っている病院があるか
- 親は一人暮らしか、誰かと暮らしているか
- 自分がどのくらいの間隔で帰れるか
家族が相談すると、センターの側から「健康チェック」「介護予防の教室」といった、本人が受け入れやすい入り口を提案されることがあります。子どもが直接言うより、第三者から話が出るほうが受け入れやすい場合もあります。どんな対応ができるかは地域と状況で違うので、親の了解が取れれば、家を訪ねてもらえるかどうかも含めて聞いてみてください。
編集部の整理では、この段階でいちばん損が大きいのは「まだ早い」と思って電話をしないことです。相談しても何も決まらないなら、失うものはありません。相談した結果「いまは様子見でいい」と言われれば、それも一つの答えになります。
※地域包括支援センターは市町村が設置するか委託を受けた法人が運営するため、名称(「高齢者あんしんセンター」など)と担当区域は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
受診の話は誰から、どの窓口経由で出すか
受診の話は、家族が本人に直接切り出す前に、地域包括支援センターとかかりつけ医に状況を伝え、誰から話を出すかを決めてから進めます。家族だけで抱えないことが、段取りの中心です。
順番を逆にして、先に本人へ話してこじれると、家族の手元に次の打つ手が残りません。親が受診を嫌がる理由は、たいてい「自分はまだ大丈夫だ」と思いたい気持ちで、子から言われるほど否定したくなります。だからこそ、話を出す人と経路を先に決めておく意味があります。
段取りの順番は次のとおりです。
- 地域包括支援センターに、家族から状況を伝える(上の電話のメモを使う)
- かかりつけ医がいるなら、次の通院に付き添えるか、家族から状況を伝えてよいかを医療機関に確かめる
- 本人への話を、家族から出すか、センターの職員やかかりつけ医から出してもらえるかを相談する
- 家族から出すことになったら、センターと話した内容を踏まえ、一度で決着をつけようとしない
「何科に行けばいいか」で迷うなら、いちばん現実的なのはかかりつけ医です。血圧や持病で定期的にかかっている医師がいるなら、次の受診に付き添って、家族から状況を伝えます。どの診療科が合うかは医師が判断することなので、家族が先回りして専門の病院を探す必要はありません。かかりつけ医がいない場合の受診先も、地域包括支援センターで一緒に考えてもらえます。
付き添うときは、上の電話のメモをそのまま持って行ってください。診察室では本人が「別に困っていない」と言うことが多く、家族が見ている場面が伝わらないまま終わりがちです。「玄関でよろける」「段差の無い廊下でもつまずいた」と、見たことを短く伝えれば、医師も判断の材料を得られます。
たとえば、家族から受診の話を出して断られた場合は、無理に続けないでください。その日は家の中を直すことに切り替え、センターに「本人に話したが断られた」と伝えて次の段取りを相談します。センターの職員やかかりつけ医から話を出してもらえるかどうかは、地域と状況で違いますが、相談してみる価値はあります。受診の話は、一度の帰省で決着をつけようとしないほうが長い目で見て進みます。
段差でつまずく家の中は、説得より先に変えられる

受診の話が進まない間も、家の中の段差は今日から減らせます。本人の同意がほぼ要らない範囲を帰省のついでに済ませ、工事が必要な所は、介護保険を使うなら工事の前に市区町村に相談・申請してから進めるのが順番です。
家の中を先に直すのは、説得と違って本人の気持ちを動かす必要がないからです。コードをまとめる、滑るマットを外す、夜間の足元灯をつけるといったことは、「片付けのついで」でできます。本人にとっても「衰えを指摘された」感じが薄く、受け入れられやすい手です。
| 場所 | 今日できること | 本人の同意 |
|---|---|---|
| 廊下・居間 | 床のコードをまとめる/めくれるマットを外す | ほぼ要らない |
| 寝室からトイレ | 夜間の足元灯をつける | ほぼ要らない |
| 玄関の上がり框 | 置き型の踏み台・つかまる所を用意する | 相談して決める |
| 敷居・段差そのもの | 手すり・段差解消の工事(住宅改修) | 必要。介護保険は工事前の事前申請が要る |
手すりの取り付けや段差の解消といった住宅改修は介護保険の対象で、要支援・要介護の認定を受けた人が使えます。使うには、工事の前に市区町村へ事前申請をする必要があります。住宅改修費の支給限度基準額は20万円で、ひとり生涯の枠です(要介護状態区分が3段階上がったときと、転居したときは再度設定されます)。使った費用の一部は自己負担になります。
※住宅改修の上乗せ助成は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
認定を申請すると、介護保険法27条11項では、申請に対する処分は申請のあった日から30日以内にしなければならないとされています。実際にかかる日数は自治体によって違います。
ここで迷いやすいのが、「介護保険の申請はまだ早いのではないか」という点です。認定の申請をする前に工事や購入をした分は、介護保険の対象になりません。認定は申請した日にさかのぼって効くので、申請中で結果が出る前でも、工事の前に市区町村やケアマネジャーに相談すれば進められる場合があります。ただし結果が非該当なら自費になります。一方で、申請したからといってサービスを使い始めなければならないわけではありません。申請が早すぎるかどうかも含めて、地域包括支援センターで相談できます。
たとえば、玄関の上がり框に手すりを付けたいと考えている場合、認定の申請もしないまま工事をしてしまうと、その工事は介護保険の住宅改修として扱われません。急ぎの危険が無いなら、置き型の踏み台やつかまる家具の配置で当面をしのぎ、先に認定を申請し、工事の前に市区町村に事前申請するほうが、生涯の枠を活かせます。申請中に急ぐ事情があるなら、工事の前に市区町村かケアマネジャーに相談してください。反対に、今日にも転びそうな場所があるなら、自費になることを承知で先に手を打つ判断もあります。どちらにするかは、危なさの度合いと費用を比べて家族で決めてください。
住み替えや施設の話まで出て親が強く嫌がる家では、親が施設を拒むときに在宅で続ける条件から話す順番も先に読んでおくと、家の中を整える話と住まいの話を分けて切り出せます。
遠方の親の「次の転倒」に気づく見守り
離れて暮らしている場合の見守りは、転ばせないための道具ではなく、転んだことや暮らしの変化に「気づくのが遅れない」ための道具として選びます。
離れて暮らしていると、転んだこと自体を知らないまま数日が過ぎることがあります。電話に出ない理由が、寝ているのか倒れているのか分からない——これが遠距離介護でいちばん怖いところです。見守りを入れる目的は、この「分からない時間」を短くすることにあります。
見守りの道具は、生活のどこを見るかで選び方が変わります。
| 型 | 向いている家 | 苦手なこと |
|---|---|---|
| センサー型(人感・ドア) | 生活のリズムの変化に気づきたい | 転倒そのものは分からない |
| カメラ型 | 様子を目で確かめたい | 本人が嫌がりやすい |
| 家電型(ポット・電球) | 見張られる感じを出したくない | 反応が遅れる |
| 緊急通報ボタン | 本人が押せる状態のとき | 意識を失うと押せない |
ここを取り違えると、高い機器を入れたのに安心できない、という結果になります。どの型も万能ではなく、それぞれ苦手なことがあります。カメラを嫌がる親なら、センサー型や家電型のように「見られている感じ」が薄い型から試すのが現実的です。本人に話すときも「見張る」ではなく「電話に出なかったときに、こっちが慌てないため」と、子の側の都合として伝えると受け入れられやすくなります。
たとえば、親がカメラを置くことを嫌がり、それでも一人暮らしで夜が心配という場合は、トイレや冷蔵庫のドアの開け閉めを知らせるセンサー型が候補になります。朝になっても一度もドアが開いていなければ、電話をかける、近所の人やセンターに様子を見てもらう、という動きにつなげられます。逆に、本人が自分で押せる元気さがあるなら緊急通報ボタンが役に立ちますが、意識を失ったときには押せないので、ボタンだけで安心しきらないことが大切です。
まずは、いま親の家に何があるかだけ見ておいてください。電話・インターネットの回線、よく使う家電、夜に歩く道筋が分かれば、どの型が合うかの見当がつきます。機器は後から替えられますが、気づけなかった数日は取り戻せません。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
離れて暮らしていて、転んでもすぐに気づけないのが心配なら、見守りセンサーやカメラを先に置いておく家もあります。カメラ型・センサー型・電球型で見え方が違うので、親が「見張られている」と感じないかを一緒に話してから選んでください。
帰省の日に見ておくこと、聞いておくこと
たまにしか帰れないなら、帰省の日は「説得する日」ではなく「様子を見て記録する日」と決めておくと、次の一手が打ちやすくなります。
遠くに住む子が持っている情報は、帰省の日と電話で見聞きしたことだけです。その少ない機会に言い合いをしてしまうと、様子を見る時間が減り、次に帰るまで手がかりが残りません。見ること・聞くことを先に決めておくと、センターやかかりつけ医に伝える材料がそろいます。
- 玄関・廊下・トイレまでの道筋で、つまずきそうな所が増えていないか
- 外に出る回数や、買い物に行っている様子が変わっていないか
- 冷蔵庫の中や郵便物がたまっていないか
- 電話で話がかみ合わない日が出てきていないか
- かかりつけ医の名前と、次の通院の日
- 近所で様子を気にかけてくれる人がいるか
聞き方にも気を配ってください。「最近転んだ?」と聞くと、転んでいても「転んでない」と返ってくることがあります。「この前、玄関で危なかったね」と見たことから話すほうが、本人も話しやすくなります。
たとえば、兄弟が「大丈夫でしょ」と言っている場合も、見たことの記録があれば話が具体的になります。「玄関で何度かよろけていた」「郵便物がたまっていた」と事実を並べれば、感じ方の違いで言い合うより、次にどうするかの話に進めます。記録は、家族で共有するメッセージのやり取りに残しておくだけで十分です。
帰省の日に全部を解決しようとしないことが、長く続けるこつです。見たことを残し、センターに伝え、次の帰省で変化を確かめる。その繰り返しが、急な連絡を受けたときに慌てない土台になります。
様子見にするなら、家族で「動く合図」を決めておく
いますぐ相談や受診に進まない、という判断もありえます。その選択をするなら、「こうなったら動く」という合図を家族で先に決めておくことが条件です。
兄弟が「大丈夫でしょ」と言う、本人も嫌がる、自分も仕事で手が回らない。そうした事情で様子見を選ぶのは、無責任なことではありません。ただ、合図が無い様子見は、次に転ぶまで何も決まらないのと同じになります。先に合図を言葉にしておけば、様子見は「何もしない」ではなく「決めた条件を待つ」選択になります。
合図の例(家族で言葉にしておくもの)
- 一度でも転んだ、または転びかけたと聞いた
- つまずく場所が玄関以外にも増えた
- 外に出る回数が目に見えて減った
- 電話で話がかみ合わない日が出てきた
合図を決めたら、兄弟とも共有しておきます。誰か一人が「まだ早い」と言っても、合図に当たったら動く、と決めておけば、後から「なんで早く動かなかったの」と責め合うことを避けられます。合図に当たったときに誰が地域包括支援センターに電話するかまで決めておくと、いざというときに押し付け合いになりません。
たとえば、兄は近くに住んでいるが様子見でいいと言い、妹は遠くに住んでいて心配している、という家を考えます。この場合、様子見に賛成したうえで「転んだと聞いたら兄がセンターに電話する」と役割を決めておけば、兄にとっても負担が少なく、妹の心配も行き場を持ちます。意見を一つにそろえるより、合図と担当をそろえるほうが、兄弟の間ではまとまりやすいのです。
様子見を選んだ場合も、家の中の対策と、センターへの一度の相談だけは済ませておくことを勧めます。どちらも本人の気持ちを動かさずにでき、合図に当たったときの動き出しが速くなります。
転んだあとに来るのは認定の話
つまずきが続く、あるいは一度でも転んで痛みが残っているなら、次は介護保険の申請の話になります。
この段階で先に知っておくと慌てないのは、次の3つです。
- 要介護認定は誰が申請できるのか、結果はいつ出るのか
- 認定が出たとき、1か月にいくらまで使えるのか(区分支給限度基準額)
- 親の負担は1割か2割か3割か
認定の話は「まだ先」と感じるかもしれませんが、手すりの工事も福祉用具も、介護保険で使うには認定の申請が先に要り、住宅改修は工事の前に市区町村への事前申請も要ります。転倒をきっかけに急に必要になることが多いので、仕組みだけ先に読んでおくと、そのときに地域包括支援センターで聞く内容がはっきりします。
認定・お金|要介護認定が出て、月にいくら出ていくか/要介護3・2割負担の月額はいくら?/親の介護費用が毎月いくらか分からない人へ/介護費の自己負担シミュレーター
段差のほかに気になる様子があるなら、親が外出しなくなったとき・お風呂に入らなくなったときも、同じく地域包括への相談から始めます。
よくある質問
段差でつまずく原因は何ですか?
足が上がりにくい、目が見えにくい、薬の影響、住まいの環境など、原因は一つではありません。見立ては医療の仕事なので、家族が当てる必要はありません。家族は、どこでいつつまずいたかを見ておき、受診につなぐことを考えてください。
何もないところでつまずくのはなぜですか?
これも原因は人によって違い、家族が決めることではありません。段差の無い場所でもつまずくようになったら、上の「動く合図」の一つとして地域包括支援センターに相談してください。受診のときには、その場面を医師に伝えると判断の材料になります。
段差は何センチから危ないのですか?
危ない高さは家の造りや本人の足の状態で変わるので、一律の線はありません。高い段差より、敷居やマットのめくれのように見落としやすい低い段差のほうが気づかれにくいものです。家の中の危ない所を上の表で見直し、工事が要りそうな所は、工事の前に市区町村かケアマネジャーに住宅改修として相談してください。
地域包括支援センターへの相談にお金はかかりますか?
かかりません。家族だけで、電話でも相談できます。相談先は自分の住所ではなく、親の住む地域を担当するセンターです。
手すりや段差の工事に補助は出ますか?
要支援・要介護の認定を受けていれば、介護保険の住宅改修の対象になります。ただし工事の前に市区町村への事前申請が要ります。支給限度基準額は20万円で、ひとり生涯の枠です。認定の申請より前に工事をすると対象にならないので、先に認定を申請し、工事の前に市区町村に相談してください。
介護保険の申請はまだ早いでしょうか?
早いかどうかは親の状態と暮らし方で変わるので、地域包括支援センターで一緒に確かめてください。申請しても、サービスを使い始めることが決まるわけではありません。工事や福祉用具を介護保険で使いたいなら、認定の申請が先に要り、住宅改修は工事の前に事前申請が要ることだけは覚えておいてください。
順番のおさらい
- 説得より先に:地域包括支援センターに家族だけで相談する(無料・電話可・相談=介護開始ではない)
- 歳のせいにしない:原因は一つではない。見立ては医師、家族は場面を見ておく
- 受診の段取り:センターとかかりつけ医に先に伝え、誰から話を出すかを決めてから進める
- 家の中:コード・マット・足元灯は今日から。住宅改修は認定の申請が先で、工事の前に市区町村へ事前申請(支給限度基準額20万円)
- 見守り:「転ばせない」ではなく「気づくのが遅れない」ために入れる
- 帰省の日:説得する日ではなく、様子を見て記録する日にする
- 様子見:家族で「動く合図」と、合図に当たったときの担当を先に決めておく
親が段差でつまずく段階では、親をどう動かすかより、家族の側の段取りをどれだけ先に作っておけるかで、その後の慌て方が変わります。電話一本の相談と、帰省のついでの片付けは、本人の気持ちを待たずに今日できることです。そこまで済ませておけば、次に何かが起きたとき、誰に連絡して何を聞けばいいかがもう手元にあります。
センターの名称や窓口、住宅改修の上乗せ助成は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

