- 親の遺産で、うちは相続税がかかるのかどうかを先に知りたい
- 基礎控除という言葉は聞くが、うちの家族の場合はいくらまでなのか
- 遺産が5,000万円くらい、1億円くらいなら、税額はどのくらいになるのか
- 父が亡くなって母が健在なとき、母がいるかどうかで税額はどう変わるのか
- 早見表に載っている金額は、そのまま家族で払う額なのか
- 実家の土地はいくらとして数えるのか、預金だけ見ていてよいのか
- 母も亡くなったとき、子どもの税金が増えると聞いて不安になった
- 自分で計算して申告できるのか、税理士に頼むのはどんなときか
上記のような悩みに答えます。
相続税は、亡くなった人の財産を受け取った人にかかる国の税金で、遺産の額と相続人の顔ぶれで決まります。ところが、早見表の数字だけが一人歩きしやすく、その数字が「法定相続分どおりに分けた」「特例を使わない」といった前提の上に乗っていること、そもそも基礎控除を超えなければ申告も納税も要らないことは、表の外に追いやられがちです。銀行や税理士法人の早見表は、見た範囲では表と計算例が中心で、表の前提を表のすぐ横で言い切ったものや、母も亡くなったときの二次相続を同じ表で見せたものは薄めでした。そこで、基礎控除・税率・計算の手順・配偶者の税額軽減という基本を押さえたうえで、表を見る前の判定の順番、表と実際の額がずれる理由、二次相続の見え方、税理士に頼むかの分かれ目まで、国税庁のタックスアンサーと相続税法・民法の条文で確かめながら整理しました。
相続税がかかるのは、借金などを引いた正味の遺産額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるときだけです。超える場合の税額は、遺産額と相続人の組み合わせで決まり、配偶者がいれば配偶者の税額軽減で大きく下がります。早見表の金額は前提つきの目安なので、申告は税理士か税務署で確かめてください。
2026年11月時点の制度で確かめています
まず基礎控除を超えるかを見る

相続税の早見表を開く前に、正味の遺産額が基礎控除を超えるかどうかを確かめてください。基礎控除の額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、正味の遺産額がこの範囲に収まっていれば、相続税の申告も納税も要りません。
国税庁は、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は相続税がかかり、申告と納税が必要だと案内しています。早見表に並ぶ税額のうち0円以外は、どれも基礎控除を超えた家の話です(0円の欄は基礎控除の範囲内の家)。超えない家にとっては、表のどの行を見ても関係のない数字になります。順番を逆にして表から読むと、自分の家に当てはまらない金額を見て不安になる、ということが起こります。
法定相続人の数ごとに、式どおりに計算した基礎控除の額は次のとおりです(3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算した値で、国税庁が人数別の表として公表しているものではありません)。
| 法定相続人の数 | 基礎控除の額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
ここで迷いやすいのが、相続人の数え方です。配偶者は常に相続人になり、ほかの家族は子、次に父母などの直系尊属、その次に兄弟姉妹の順で、先の順位の人がいないときだけ相続人になります。そのうえで、相続税の計算で使う法定相続人の数には、民法とは違う決まりが2つあります。1つは、相続を放棄した人がいても、放棄がなかったものとして数えること。もう1つは、数に入れられる養子が、実の子がいれば1人まで、実の子がいなければ2人までに限られることです(特別養子や配偶者の連れ子の養子などは実の子として扱われます)。
たとえば、母と子2人が残された家なら法定相続人は3人で、基礎控除は4,800万円です。子のうち1人が相続を放棄しても、税の計算ではやはり3人として数えます。民法の上では放棄した人は初めから相続人でなかったことになるので、「相続人が減ったから基礎控除も減る」と考えてしまいがちですが、税の計算はそう動きません。
もう一つの落とし穴は、比べる相手が「預金の残高」ではなく「正味の遺産額」だという点です。正味の遺産額は、遺産の総額から非課税の財産・葬式費用・借入金などの債務を引き、相続時精算課税で贈与を受けた財産や、亡くなる前の一定期間に受けた贈与のうち加算の対象になるものを足したものです。実家の土地と建物も遺産の総額に入るので、預金だけを見て「超えていない」と判断すると見誤ります。
判定に迷ったときは、国税庁のホームページにある「相続税の申告要否判定コーナー」で、財産の種類ごとに入力して確かめる方法があります。家族の財産の一覧(預金・土地と建物・有価証券・保険・借入金)を手元に用意してから使うと、入力の途中で止まらずに済みます。
出典:国税庁 No.4102「相続税がかかる場合」/国税庁 No.4152「相続税の計算」/国税庁 No.4132「相続人の範囲と法定相続分」/国税庁 No.4170「相続人の中に養子がいるとき」
遺産額と相続人別の相続税早見表
基礎控除を超えると分かったら、次の表で税額のおおよその位置をつかんでください。表は、国の速算表と基礎控除の式、民法の法定相続分、配偶者の税額軽減から、編集部が計算した目安です。
表の数字は、下に書いた前提をすべて満たしたときの値です。前提のどれかが外れると、実際の税額は表とずれることがあります。とくに配偶者がいる列は、配偶者の税額軽減を使って配偶者の分が0になった後の、子が払う合計額である点に注意してください。
この表の前提(すべて満たしたときの目安)
- 遺産額は、債務・葬式費用を引いたあとの正味の遺産額(課税価格の合計額)
- 法定相続分どおりに分けた場合
- 配偶者がいる列は、配偶者が法定相続分(2分の1)を取得し、税額軽減で配偶者の税額が0になったときの、子が払う合計額
- 小規模宅地等の特例・生前贈与の加算・2割加算・その他の税額控除(未成年者控除など)は使わない
- 子は全員実子で、相続人に放棄した人はいない
- 1万円未満の端数は小数で表示(実際の申告では千円未満・百円未満の端数処理がある)
| 遺産額(目安) | 配偶者+子1人 | 配偶者+子2人 | 配偶者+子3人 | 子1人のみ | 子2人のみ | 子3人のみ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 4,000万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 40万円 | 0円 | 0円 |
| 5,000万円 | 40万円 | 10万円 | 0円 | 160万円 | 80万円 | 20万円 |
| 6,000万円 | 90万円 | 60万円 | 30万円 | 310万円 | 180万円 | 120万円 |
| 7,000万円 | 160万円 | 112.5万円 | 80万円 | 480万円 | 320万円 | 220万円 |
| 8,000万円 | 235万円 | 175万円 | 137.5万円 | 680万円 | 470万円 | 330万円 |
| 9,000万円 | 310万円 | 240万円 | 200万円 | 920万円 | 620万円 | 480万円 |
| 1億円 | 385万円 | 315万円 | 262.5万円 | 1,220万円 | 770万円 | 630万円 |
| 1億5,000万円 | 920万円 | 747.5万円 | 665万円 | 2,860万円 | 1,840万円 | 1,440万円 |
| 2億円 | 1,670万円 | 1,350万円 | 1,217.5万円 | 4,860万円 | 3,340万円 | 2,460万円 |
| 3億円 | 3,460万円 | 2,860万円 | 2,540万円 | 9,180万円 | 6,920万円 | 5,460万円 |
実際の税額は財産の評価・特例・分け方で変わるので、申告は税理士または税務署に確認してください。
表の見方は、左の列で正味の遺産額に近い行を選び、右へたどって自分の家の相続人の組み合わせの列で止まる、という順番です。遺産額がちょうど表の金額でなければ、上下2つの行のあいだに入ると読みます。2つの行のあいだを直線で割った額は、税率が段階的に上がる仕組みのため正確な値にはなりません。あくまで「どのあたりか」をつかむために使ってください。
表を横に見比べると、同じ遺産額でも、配偶者がいる列といない列で税額の開きが大きいことが分かります。これは配偶者の税額軽減が効いているためで(配偶者がいる分だけ法定相続人の数が1人多く、基礎控除も大きくなっています)、下の「配偶者がいると相続税が下がる」で仕組みを書きます。また、子の人数が増えるほど基礎控除が増え、1人あたりに割り当てる額も小さくなるので、同じ遺産額でも税額は下がっていきます。
たとえば、親の遺産が1億円前後で、母と子2人が残された家なら、表の「配偶者+子2人」の列を見ます。父母ともに亡くなって子2人が受け取る家なら「子2人のみ」の列です。同じ1億円でも見る列が違えば金額は大きく変わるので、まず「いま相続人は誰か」を確かめてから列を選んでください。
この表で分かるのは、相続税がかかる家かどうかと、かかるならどのくらいの幅かまでです。実家の土地の評価や特例の使い方で正味の遺産額そのものが動くので、表の金額を家族の納税額として予定に組み込むのは早すぎます。表で「かかりそうだ」と分かった家は、下の「表と実際の相続税がずれる理由」を読んでから、税理士か税務署に相談する準備に移ってください。
早見表の相続税が出るまでの手順

早見表の数字は、正味の遺産額から基礎控除を引き、残りを法定相続分で分けたと仮定して税率を掛け、合計した総額を、実際に受け取った割合で分ける、という手順で出ています。相続税法15条から17条の流れをそのまま追ったものです。
この手順で押さえておきたいのは、税額が二段階で決まる点です。一段目の「相続税の総額」は、実際の分け方ではなく、法定相続分どおりに分けたと仮定して計算します。二段目で、その総額を、各人が実際に受け取った財産の割合で割り振ります。そのため、家族の中で分け方を変えても総額は動かず、誰がどれだけ負担するかが動きます。配偶者の税額軽減や2割加算は、この割り振りの後にかかります。
- 1正味の遺産額を出す財産から債務・葬式費用などを引く
- 2基礎控除を引く残りが課税遺産総額
- 3法定相続分で分けたと仮定する実際の分け方とは別に計算する
- 4速算表の税率を掛けて合計するこれが相続税の総額
- 5受け取った割合で割り振る配偶者の軽減や2割加算はこの後
税率は、法定相続分で分けたと仮定した一人ひとりの取得金額に当てはめます。「相続人1人あたりの遺産額」に当てはめるのではない点が、自分で計算するときに間違えやすいところです。国税庁の速算表は次のとおりで、取得金額×税率−控除額で税額を出します。
速算表(国税庁 No.4155・相続税法16条)
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
早見表の「1億円・配偶者+子2人」の行と、「5,000万円・子2人のみ」の行を、この手順でたどると次のようになります。前提は上の早見表と同じです。
前提:早見表と同じ(正味の遺産額・法定相続分どおりに分ける・配偶者は税額軽減で0・特例や加算は使わない・1万円未満は小数で表示)
- 遺産1億円・配偶者+子2人:基礎控除 4,800万円 → 課税遺産総額 5,200万円 → 法定相続分で按分 2,600万円→340.0万円 / 1,300万円→145.0万円 / 1,300万円→145.0万円 → 相続税の総額 630.0万円 → 納める合計 315.0万円
- 遺産5,000万円・子2人のみ:基礎控除 4,200万円 → 課税遺産総額 800万円 → 法定相続分で按分 400万円→40.0万円 / 400万円→40.0万円 → 相続税の総額 80.0万円 → 納める合計 80.0万円
一つ目の例で、総額と納める合計が違っているのは、総額のうち配偶者に割り振られた分が税額軽減で0になり、子の分だけが残るからです。二つ目の例は配偶者がいないので、総額がそのまま子2人の納める合計になります。
国税庁も同じ手順の例を載せています。これは課税遺産総額から始まる例で、出てくるのは相続税の総額であって、各人が納める額ではありません。
国税庁の例では(法定相続人が妻と子2人・課税遺産総額1億5,200万円の場合)
- 法定相続分に応ずる取得金額:妻7,600万円、子3,800万円ずつ
- 妻:7,600万円×30%−700万円=1,580万円
- 子:3,800万円×20%−200万円=560万円(子2人とも)
- 相続税の総額:2,700万円
配偶者の税額軽減を使えば、納める額はさらに変わります。
自分で手順をなぞってみると、表の数字がどの前提の上に乗っているかが見えてきます。ただ、実際の申告では、正味の遺産額を出す最初の段で土地の評価や特例が入り、表とのずれの一つは、この段で生まれます。手順は「表の読み方を確かめる道具」として使い、申告の計算そのものは税理士か税務署で確かめてください。
出典:国税庁 No.4155「相続税の税率」/相続税法17条(e-Gov法令API)/民法900条(e-Gov法令API)
配偶者がいると相続税が下がる
配偶者が実際に受け取った正味の遺産額が、1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までなら、配偶者に相続税はかかりません。これが配偶者の税額の軽減で、相続税法19条の2に定めがあります。
早見表で配偶者がいる列の税額が小さいのは、この軽減を使って配偶者の分を0にした前提で計算しているからです。ここで注意したいのは、「1億6,000万円まで必ず無税」ではない点です。法定相続分相当額のほうが多ければ、そちらまでが軽減の範囲になります。逆に、配偶者が受け取る額がこの範囲を超えると、超えた分には税がかかります。
軽減を受けるには、いくつかの条件があります。
- 相続税の申告をすること(納める額が0になっても申告は必要)
- 申告書に軽減の明細を書き、戸籍謄本、遺言書や遺産分割協議書の写し(相続人全員の印鑑証明書つき)などを添えること
- 申告期限までに分けていない財産は、原則として軽減の対象外
- 申告期限までに分けられないときは、「申告期限後3年以内の分割見込書」を出し、3年以内に分ければ対象になる
- 隠したり偽ったりしていた財産は対象外
このうち、申告が要るという点は見落としやすいところです。基礎控除を超えている家で、配偶者の軽減を使って納める額が0になる場合も、軽減は申告書で適用を受ける形なので、申告しなければ使えません。「税金が0なら何もしなくていい」と考えるのは、基礎控除以下の家だけに当てはまる話です。
たとえば、父が亡くなり、母と子2人で分け方の話し合いが長引いている家を考えてみてください。申告期限までに分け方が決まらないと、決まっていない財産は軽減の対象になりません。分割見込書を出して3年以内に分ければ、あとから軽減の対象にできる道はあります。申告後に分割が成立したときは、決められた期間のうちに更正の請求をする手続きになります。
配偶者がいる家は、分け方の話し合いと申告期限を並べて考えておくと安心です。誰が何を受け取るかの落としどころは、家族で決めることで、もめているなら弁護士の領分になります。そのうえで、軽減を使う前提でどう申告するかは、税理士か税務署に、分け方の案と財産の一覧を持って相談してください。
兄弟や孫が受け取るとき
財産を受け取る人が、亡くなった人の配偶者と一親等の血族(子・父母)以外のときは、その人の相続税額に2割が加算されます。兄弟姉妹やおい・めいが受け取る場合が、この2割加算の対象です。
相続人の順位は、子、直系尊属(父母など)、兄弟姉妹の順です。子も父母などの直系尊属もいない人が亡くなったとき、兄弟姉妹が相続人になります。このとき法定相続分も変わり、配偶者と兄弟姉妹が相続人なら配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。配偶者と父母なら配偶者が3分の2、父母が3分の1になります。
- 2割加算の対象外:配偶者、子、父母、代襲相続人となった孫
- 2割加算の対象:兄弟姉妹、おい・めい
- 孫を養子にしていた場合:その孫は、代襲相続人になっている場合を除いて対象
- 加算の額:その人の税額控除前の相続税額×0.2
養子は一親等の法定血族なので、原則として2割加算の対象外です。ただし孫を養子にしていた場合は、子が亡くなっていてその孫が代わりに相続人になっている場合を除き、加算の対象になります。誰が対象になるかは、代襲の有無などで変わるので、自分で決めつけずに確かめてください。
たとえば、子も父母もいないおじが亡くなり、おじの兄弟姉妹(読者の親を含む)が相続人になる場合、早見表の「子のみ」の列はそのまま使えません。相続人の数が違うので基礎控除も違い、法定相続分も違い、さらに受け取った人の税額に2割が加算されます。表の数字を当てはめると、実際の額とずれます。
兄弟姉妹やおい・めいが相続人になる家は、早見表の外にあると考えて、最初から税理士か税務署に相談するのが近道です。相談のときは、亡くなった人の出生から亡くなるまでの戸籍で、相続人が誰になるかを先に確かめておくと、話が早く進みます。
表と実際の相続税がずれる理由
早見表の金額と、実際に申告して納める額は、同じにならないことがあります。ずれる理由は、表の前提に置いた「正味の遺産額」と「分け方」が、実際の家では表どおりにならないことにあります。
表は、正味の遺産額がすでに分かっている前提で作っています。ところが、実際の家では、その正味の遺産額を出すところに、土地の評価、特例、差し引ける費用、足し戻す贈与といった要素が入ります。表の金額が動くのは、税率の段階ではなく、その手前の段(正味の遺産額)と、あとの段(誰がどれだけ受け取るか)だと覚えておくと読み違えが減ります。
- 実家の土地の評価:土地をいくらとして数えるかで、正味の遺産額が上下する
- 小規模宅地等の特例:亡くなった人が住んでいた宅地などで要件を満たすと、330㎡まで評価額を80%減額できる(事業用は400㎡まで80%、貸付事業用は200㎡まで50%)
- 葬式費用と借入金:正味の遺産額から差し引ける
- 生前の贈与:相続時精算課税の財産や、亡くなる前の一定期間に受けた贈与のうち加算の対象になるものは、正味の遺産額に足し戻す
- 生命保険金や死亡退職金:非課税の限度額があり、その計算にも法定相続人の数を使う(財産に含まれる範囲は国税庁のページで確認)
- 分け方と2割加算:総額は同じでも、誰がどれだけ受け取るかで各人の負担が変わる
この中で、取り違えやすいのが小規模宅地等の特例です。80%減額は、土地の評価額を減らす仕組みで、税額が80%減るのではありません。また、330㎡を超える部分は減額されません。使うには申告書に特例を受ける旨を書いて明細書や遺産分割協議書の写しを添えること、対象になりうる宅地を取得した相続人が2人以上いるときは全員の同意があること、原則として申告期限までに分けてあることが必要です。取得する人が配偶者なら取得者ごとの要件はなく、配偶者以外の親族が取得する場合は要件が多くなります。
たとえば、遺産の中心が実家の土地という家では、特例を使えるかどうかで正味の遺産額が大きく動き、納める額が大きく変わることがあります。逆に、預金が中心で土地がない家は、土地の評価と特例の分だけ、ずれの要因が少なくなります。自分の家がどちらに近いかを見れば、表の数字をどこまで信用してよいかの目安になります。
実家の土地や建物の固定資産税の評価額は、毎年市区町村から届く納税通知書に書かれています。※お住まいの市区町村で確認してください。表とのずれを小さくしたいなら、土地の資料、保険証券、借入の明細、亡くなる前に受けた贈与の記録をそろえ、税理士か税務署で「この家は特例を使えるか」から聞くのが順番です。
母も亡くなったときの二次相続
父が亡くなったとき(一次相続)に母が配偶者の税額軽減の範囲内で多く受け取ると、そのときの税は小さくなりますが、母が亡くなったとき(二次相続)には配偶者がいないので、子だけで受け取る形になります。早見表の「配偶者がいる列」と「子のみの列」を続けて見ると、この流れが分かります。
二次相続では、配偶者の税額軽減が使えず、相続人が1人減るので基礎控除も小さくなります。一次相続で配偶者の分が0になっていても、母が受け取った財産は、母が亡くなるときに母の遺産として数え直されます。一次相続だけを見て「思ったより少ない」と安心すると、二回目の税を見落とすことになります。
次の例は、二次相続の見え方を示すための単純な計算です。
前提:配偶者+子2人で遺産1億円、配偶者が5,000万円を取得し、その配偶者が後に亡くなり自分の財産なし・子2人が相続する場合(2回目の財産が増減しない前提の単純な例。ほかの前提は早見表と同じ)
- 1回目(配偶者+子2人・1億円):315万円
- 2回目(子2人のみ・5,000万円):80万円
- 合計 395万円
実際には、母の財産がそれまでの暮らしで減ったり、母自身の財産があったりして、2回目の額は変わります。母が受け取る額を多くするか少なくするかで1回目と2回目の配分も動きますが、どの分け方がよいかは、母の今後の暮らしに要るお金や、実家に誰が住むかとも絡むので、税額だけで決めるものではありません。
たとえば、母が実家に住み続ける予定で、実家と預金の一部を母が受け取る家を考えてみてください。母の暮らしを守るための分け方が先にあり、そのうえで2回目の税がどうなるかを確かめる、という順番が自然です。税の見え方だけで分け方を決めると、母の手元にお金が残らないといった別の困りごとが出ます。
二次相続まで見通したいときは、一次相続の申告を税理士に頼む段階で「母が亡くなったときの見込みも出してほしい」と伝えてください。分け方の案を2つか3つ持って行くと、比べやすくなります。分け方そのものでもめているなら、それは弁護士に相談する領分です。
相続税の申告と納税は10か月以内
相続税の申告と納税の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。納税の期限も同じ日で、期限の日が土日祝日なら翌日になります。
この期限は、基礎控除を超える家に関係します。基礎控除以下で特例も使わない家は、申告も納税も要りません。一方、基礎控除を超えていれば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って納める額が0になる場合も、申告は必要です。両方の特例とも、申告書で適用を受ける形になっているからです。
10か月は長く見えますが、その間に、相続人の確定、財産と借入の洗い出し、土地の評価、分け方の話し合いが入ります。亡くなったあとの手続きは、相続放棄の期限や準確定申告の期限が先に来るので、相続税の準備はそれらと並行して進めることになります。
たとえば、父が亡くなった日から数えて半年を過ぎても分け方が決まっていない家は、配偶者の軽減や小規模宅地等の特例が「申告期限までに分けていること」を原則の条件にしている点に注意してください。決まらないときの手続き(分割見込書)もありますが、どう進めるかは税理士か税務署に早めに聞くと、選べる道が残ります。
自分の家の期限の日付は、亡くなった日を入れて確かめておくと見通しが立ちます。
相続税を税理士に頼むかの分かれ目

正味の遺産額が基礎控除以下で、特例も使わない家は、税理士に頼まなくても足ります。基礎控除を超える、土地がある、特例を使う、分け方でもめている、のどれかに当てはまるなら、税理士に相談するのが安全です。
税理士への相談が要るかどうかを、作業の量ではなく判断の量で見ると分かりやすくなります。基礎控除以下の家は、そもそも申告がないので判断することが残りません。基礎控除を超える家は、土地の評価、特例を使えるかどうか、分け方による各人の負担といった、家ごとに答えが違う判断が続きます。個別の税額の計算は税理士や税務署に確かめることで、この記事でも、読者の家の税額を出すことはしていません。
- 正味の遺産額が基礎控除以下
- 特例を使わない
- 相続人がそろっていて分け方も決まっている
- 基礎控除を超える
- 実家の土地があり特例を使いたい
- 分け方が決まらない・兄弟姉妹やおい・めいが受け取る
ここからは税理士へ、という線は、「表を見て、かかりそうだと分かったところ」です。かかるかどうかを判定するまでは家族でできますが、かかると分かった先の評価や特例の当てはめは、税理士に任せたほうが申告の誤りを避けられます。分け方の落としどころ、つまり誰がいくら受け取るべきかは税理士ではなく弁護士の領分で、この記事では扱いません。
まず聞きたいときは、国税庁の電話相談センターがあります。所轄の税務署に電話すると、相談の窓口へ案内されます。電話でどこまで答えてもらえるかは聞く中身によるので、聞きたいことを先に書き出し、財産の一覧を手元に置いてからかけると話が進みます。
たとえば、預金が中心で正味の遺産額が基礎控除をわずかに超えそうな家なら、まず申告要否判定コーナーで判定し、超えると出たら税務署の電話相談で手順を聞いてから、税理士に頼むかを決める、という段取りが取れます。実家の土地が遺産の中心になる家なら、最初から税理士に、特例を使えるかどうかを聞いてください。
相談に行くときは、次のものをそろえておくと話が早く進みます。
- 亡くなった人の戸籍(出生から亡くなるまで)と、相続人の戸籍
- 預金の残高が分かるもの(通帳や残高証明書)
- 実家の土地と建物の資料(固定資産税の納税通知書、登記事項証明書)
- 生命保険の証券、借入金の明細、葬式費用の領収書
- 亡くなる前に受けた贈与の記録と、分け方の案(決まっていればその内容)
税額が見えたら、次は実家のこと
相続税の見通しが立ったら、次は実家をどうするかです。住む、貸す、売る、しばらく置いておく、のどれを選ぶかで、相続登記や片付け、税の手続きが変わります。
実家を売る場合の空き家の3,000万円控除は、売ったときの所得税(譲渡所得)の特例で、相続税とは別の話です。相続税の申告と前後して、実家を売るかどうかの判断が必要になる家もあるので、続けて確かめておくと慌てずに済みます。
出典:国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
空き家の3,000万円控除の要件(売るときの所得税の話で、相続税とは別)
ほかに、亡くなったあとのお金の話として、葬儀の費用や、生前の財産管理の方法を確かめておきたい人は、次の記事も参考にしてください。
よくある質問
兄弟が相続するときの早見表はありますか?
兄弟姉妹が相続人になるのは、亡くなった人に子も父母などの直系尊属もいないときです。法定相続分や基礎控除の人数が子の場合と違い、さらに兄弟姉妹が受け取った分の税額には2割が加算されます。この記事の早見表は子が相続する前提なので、そのまま当てはめると実際の額とずれます。税理士か税務署で確かめてください。
早見表に無い遺産額のときは、どう見ればいいですか?
表の上下2つの行のあいだに入る、と読んでください。税率は取得金額ごとに段階的に上がるので、2つの行を直線で割った額は正確な値になりません。おおよその額を知りたいなら、上の「早見表の相続税が出るまでの手順」をなぞるか、税理士・税務署で確かめてください。
亡くなる前に預金を下ろすとどうなりますか?
口座から下ろしても、手元に残っている現金は、亡くなった人の財産として遺産の総額に入れて考えます。誰かに渡していた場合は生前の贈与の扱いになることがあり、加算の対象になる贈与は正味の遺産額に足し戻されます。下ろしたお金を何に使ったかの記録と領収書を残しておくと、あとで財産の一覧を作るときに説明しやすくなります。
遺産が6,000万円のとき、相続税はいくらですか?
早見表の前提(法定相続分どおりに分ける・特例を使わないなど)で計算した目安は次のとおりです。
前提:早見表と同じ(正味の遺産額・法定相続分どおり・配偶者は税額軽減で0・特例や加算は使わない)
- 配偶者+子1人:90万円/配偶者+子2人:60万円/配偶者+子3人:30万円
- 子1人のみ:310万円/子2人のみ:180万円/子3人のみ:120万円
実家の土地の評価や特例で額は変わるので、申告の前に税理士か税務署で確かめてください。
基礎控除以下なら、何もしなくていいですか?
正味の遺産額が基礎控除の範囲内なら、相続税の申告も納税も要りません。ただし、基礎控除を超えていて、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って納める額が0になる場合は、申告が必要です。預金だけでなく実家の土地も含めて判定してください。
生命保険金も遺産に含まれますか?
亡くなった人が保険料を負担していた死亡保険金などは、相続税の計算に入ることがあり、非課税の限度額があります。その限度額の計算にも、放棄した人を含めた法定相続人の数を使います。どの保険金が対象になるかは、国税庁のページか税務署で確かめてください。
順番のおさらい
- 判定:正味の遺産額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかを先に見る。超えなければ申告も納税も要らない
- 早見表:基礎控除を超える家は、相続人の組み合わせの列で目安をつかむ。表は前提つきの目安
- 手順:総額は法定相続分で分けたと仮定して計算し、各人の負担は実際に受け取った割合で決まる
- 配偶者:1億6,000万円と法定相続分相当額のどちらか多い額まで税はかからないが、申告が必要
- 兄弟や孫:兄弟姉妹・おい・めい・孫養子(代襲を除く)は2割加算。表の前提の外
- ずれる理由:土地の評価・小規模宅地等の特例・差し引く費用・足し戻す贈与・分け方で動く
- 二次相続:母が亡くなるときは配偶者の軽減が使えない。一次と二次を続けて見る
- 期限:亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納税
- 頼む目安:基礎控除以下で特例も使わないなら自分で足りる。超える・土地がある・特例を使う・もめているなら税理士へ
相続税は、表の金額を覚えるより、自分の家が表のどこに入るかを順番に絞っていくほうが役に立ちます。まず正味の遺産額を基礎控除と比べ、超えるなら早見表で幅をつかみ、そこから先の土地や特例の当てはめは税理士か税務署に渡す。この線を引いておけば、表の数字に振り回されずに、10か月の期限の中で次の手を選べます。

