- 親が要介護2になった。介護保険で月いくらまでサービスを使えるのか知りたい
- 「限度額」と聞いて、それが毎月払うお金のことだと思っていた
- 限度額を超えたら、全部が自費になるのか
- 1割負担だと、実際に払うのはいくらになるのか
- 住んでいる地域で金額が違う、という話は本当か
- デイサービスを増やしたら枠を超えてしまうのか
- 介護ベッドのレンタルや手すりの工事も、限度額の中に入るのか
- 「負担限度額認定」という言葉も出てきて、同じものなのか分からない
- ケアマネジャーに「もう枠がいっぱいです」と言われ、次にどうすればいいのか迷っている
上記のような悩みに答えます。
介護保険の限度額は、要介護度ごとに「1か月にここまでは保険でサービスを使える」と決められた枠で、正式には区分支給限度基準額といいます。検索すると要介護度別の一覧表はすぐに見つかりますが、同じ「限度額」という言葉で、施設の食費・居住費を軽くする負担限度額認定の話も並んで出てくるため、いま読んでいるのがどちらの話なのか分かりにくくなります。また、一覧の金額は1単位10円で換算した目安で、地域とサービスの種類によって1単位の円が変わることや、枠を超えそうなときにケアマネジャーと何を話せばよいかは、見た範囲では詳しく書かれていないものもありました。そこで、要介護度別の上限・自己負担の割合・超えたときの扱いという基本を押さえたうえで、2つの「限度額」の見分け方、地域による1単位の単価の違い、枠の中と外に入るもの、超えそうなときの相談の仕方、枠いっぱいまで使わない方がよい場合まで、厚生労働省の告示と介護保険法の条文で確かめながら整理しました。
介護保険で使えるサービスの上限(区分支給限度額)は、要介護度ごとに単位で決まっていて、要介護1は16,765単位、要介護5は36,217単位です。1単位10円の地域なら月167,650円〜362,170円が目安で、この中で使った分の1〜3割が自己負担、超えた分は全額自己負担になります。
2026年10月時点の制度で確かめています
親の要介護度と負担割合から、月の自己負担の目安を自分で確かめたいときは、計算ツールが使えます。
上限は要介護度ごとの単位で決まる
介護保険で1か月に使えるサービスの上限は、要介護度ごとに「単位」という点数で決まっています。要支援1の5,032単位から要介護5の36,217単位まで、要介護度が重いほど枠が大きくなります。
この単位数は、厚生労働大臣が定めた告示に書かれています(要介護1〜5は介護保険法43条2項、要支援1・2は予防給付の別の条にもとづく告示)。よく見かける「要介護1は月167,650円」のような円の一覧は、単位数に10円を掛けて換算した目安です。決まり方の本体は単位のほうで、円はそこから計算した数字だと考えてください。
| 要介護度 | 1か月の上限(単位) | 1単位10円で計算した目安 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 50,320円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 105,310円 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 167,650円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 197,050円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 270,480円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 309,380円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 362,170円 |
出典:厚生労働省 告示「居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額」/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
表の円の列を読むときに気をつけたいのは、これが「毎月払う額」ではないことです。限度額は、保険を使ってサービスを受けられる量の上限です。たとえば要介護2なら、197,050円分(1単位10円の目安)までのサービスを、その1〜3割を払って使える、という意味になります。払う額の話は、下の「自己負担は枠の中の1〜3割」で計算します。
たとえば、親が要介護1から要介護2に変わると、枠は16,765単位から19,705単位に広がります。要介護3になると27,048単位です。要介護度が変わると、あと何単位まで足せるかの余白が変わります。反対に、状態が落ち着いて要介護度が軽くなった場合は枠が狭くなり、これまでと同じ計画のままでは枠からはみ出すことがあります。認定の結果が出るたびに、表のどの行に当たるのかを確かめ直してください。
編集部の整理では、親の限度額はまず単位で覚えておくのが近道です。円の額は地域とサービスで動きますが、単位の枠は全国で同じなので、要介護度が変わったときや、別の地域に住むきょうだいと話すときにも比べやすくなります。ケアマネジャーとの相談でも「親の枠は何単位で、いまの計画は何単位か」とたずねると、話がかみ合いやすくなります。
1単位が何円かは地域で変わる

1単位は10円が基準ですが、住んでいる地域の区分と、使うサービスの種類によって、10.00円から11.40円まで変わります。同じ要介護度でも、円にしたときの枠の大きさは地域によって違います。
1単位の単価は、厚生労働省の告示で「10円に、地域区分とサービスの種類に応じた割合を掛けた額」と決められています。地域区分は1級地から7級地と「その他」の8区分で、市町村ごとにどれに当たるかが決まっています。サービスは、地域による差の付き方で3つのグループと、どの地域でも10.00円のグループに分かれています。
| サービスの例 | 1級地 | その他の地域 |
|---|---|---|
| 訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・居宅介護支援など | 11.40円 | 10.00円 |
| 短期入所生活介護・訪問リハビリ・通所リハビリ・小規模多機能など | 11.10円 | 10.00円 |
| 通所介護(デイサービス)・短期入所療養介護・特定施設など | 10.90円 | 10.00円 |
| 福祉用具貸与・居宅療養管理指導 | 10.00円 | 10.00円 |
2級地から7級地は、それぞれのグループで1級地とその他の間の単価になります。地域区分が「その他」の市町村では、どのサービスも1単位10.00円です。
たとえば要介護2の枠19,705単位を、仮にすべて1級地の訪問介護(11.40円)で使ったとすると、円にした枠は224,637円になります。その他の地域(10.00円)なら197,050円なので、同じ要介護2でも27,587円の開きが出ます。実際にはデイサービスや福祉用具のレンタルなど単価の違うサービスを組み合わせるので、円にした枠はこの2つの間に収まります。単位の上限は全国で同じで、円の額だけが地域とサービスで動く、という関係です。
なお、事業所が請求するときは、単位数に単価を掛けて1円未満を切り捨てます。
親が住む市町村がどの級地に当たるかは、市区町村ごとに決まっています。ケアマネジャーに「この地域の訪問介護とデイサービスは1単位いくらか」と聞けば、計画の見積もりを円で出してもらうときの前提がそろいます。
※お住まいの市区町村で確認してください。
自己負担は枠の中の1〜3割
枠の中で使ったサービスは、原則としてその1割を自己負担します。所得が一定以上の人は2割または3割です。枠いっぱいまで使ったときの自己負担は、1単位10円の地域なら次の表のとおりです。
| 要介護度 | 1割 | 2割 | 3割 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
| 要支援2 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
| 要介護1 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
| 要介護2 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
| 要介護3 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
| 要介護4 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
| 要介護5 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
この表は「枠を使い切った月」の上の端です。使った単位が枠より少なければ、払う額もそのぶん少なくなります。1単位が10円より高い地域では、同じ単位でも円の額が少し上がります。
割合は、本人の所得で決まります。2割になるのは、合計所得金額が160万円以上で、かつ年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身で280万円以上(2人以上世帯の場合は346万円以上)の人です。3割になるのは、合計所得金額が220万円以上で、かつ同じ合計が単身で340万円以上(2人以上世帯の場合は463万円以上)の人です。
判定は、合計所得金額と、年金収入とその他の合計所得金額の合計の2段で見ます。片方だけ基準を超えていても、もう片方が届かなければ割合は上がりません。親の所得が境目に近いときは、自分で計算して「たぶん2割」と決めず、市区町村の介護保険の窓口で、親がいま何割の扱いになっているかを確かめてください。
たとえば、要介護2で1割負担の親が枠いっぱいまで使うと、自己負担は月19,705円です。同じ使い方で2割なら39,410円、3割なら59,115円になります。割合が1段上がるだけで、同じサービスでも払う額は1割のときの2倍、3倍になるので、家計の見通しは「要介護度」と「割合」の2つを並べて立ててください。要介護4・5で3割の人は、枠いっぱいだと月92,814円・108,651円になりますが、自己負担の合計には別に上限の仕組みがあります(下の「似た名前の負担限度額とは別もの」で整理します)。
編集部の整理として、ここで押さえておきたいのは、限度額と自己負担は別の数字だということです。要介護2の限度額が197,050円でも、1割負担の人が枠いっぱいまで使ったときに払うのは、その1割にあたる額です(上の表の要介護2の行)。「限度額=払う額」と受け取っていると、必要なサービスを控えすぎることになりかねません。
要介護3で2割負担の場合に、月の自己負担がどこで止まるかを細かく追った記事もあります。
枠を超えた分は全額自己負担
枠を超えて使ったサービスには保険が出ません。厚生労働省の介護サービス情報公表システムは、限度額を超えて利用した場合は超えた分が全額自己負担になる、と説明しています。
条文の側から見ると、介護保険法43条1項は、1か月に保険から支給する居宅介護サービス費などの総額が、区分支給限度基準額をもとに計算した額を超えることができない、と定めています。保険から出るお金に上限がかかっているので、上限の外で使った分は、保険の支給がないまま利用者が払う形になります。
- 要介護1・1割負担の親が、ある月に19,705単位分のサービスを使った(1単位10円の地域)
- 枠の中の16,765単位:16,765単位 × 10円 × 1割 = 16,765円
- 枠を超えた2,940単位:2,940単位 × 10円 = 29,400円(全額)
- その月の自己負担:16,765円 + 29,400円 = 46,165円
出典:介護保険法43条(e-Gov法令API)/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
この例で、もし同じ19,705単位がすべて枠の中に収まっていたら、1割の自己負担は19,705円でした。枠を超えたのは2,940単位だけでも、その部分は10割で払うため、月の支払いは46,165円と倍以上になります。
1単位が10円より高い地域では、超えた分の全額もそのぶん高くなります。たとえば上の2,940単位を1級地の訪問介護で使った分だとすると、2,940単位 × 11.40円で33,516円です。
枠を超えるかどうかは、月ごとの合計で決まります。ふだんは枠に収まっている家でも、退院直後でサービスを一時的に増やした月や、家族の用事でショートステイを入れた月に、はみ出すことがあります。ケアプランの見直しのときに「この月は枠の何単位まで使う計画か」「はみ出す月はあるか」をケアマネジャーに確かめておくと、請求が来てから驚かずに済みます。超えそうな月の相談の仕方は、下の「超えそうなときにケアマネと話すこと」にまとめました。
似た名前の「負担限度額」とは別もの

「介護保険の限度額」で調べると、区分支給限度額のほかに、負担限度額認定と、高額介護サービス費の上限額が出てきます。名前は似ていますが、何に上限をかける制度なのかがそれぞれ違います。
| 区分支給限度額 | 負担限度額認定 | 高額介護サービス費 | |
|---|---|---|---|
| 何の上限か | 保険で使えるサービスの量(1か月) | 施設やショートステイの食費・居住費(滞在費)の負担 | 1か月の自己負担(1〜3割の分)の合計 |
| 何で決まるか | 要介護度(単位) | 申請して受ける認定(要件は下の記事) | 世帯の所得の区分 |
| 手続き | 要介護認定で決まる | 市区町村への申請 | 市区町村への申請 |
区分支給限度額は、ここまでに書いてきた「サービスを使える量の枠」です。負担限度額認定は、ショートステイや施設の食費・滞在費のように、介護保険の給付の対象から外されている費用の負担を、認定を受けた人について軽くする仕組みです。ショートステイなどの食費・滞在費が保険の対象から除かれていることは、介護保険法41条1項に書かれています。要件や申請の流れは、別の記事で扱っています。
高額介護サービス費は、1か月の自己負担の合計に、世帯の所得に応じた上限をかける制度です。上限は、課税所得690万円以上の世帯で140,100円、380万円以上690万円未満で93,000円、課税世帯で課税所得380万円未満なら44,400円、市町村民税世帯非課税なら24,600円です。世帯非課税のうち、公的年金等収入金額とその他の合計所得金額の合計が82.65万円以下の人は、個人で15,000円になります。
出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.997/介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)/介護保険法41条(e-Gov法令API)
ここで迷いやすいのが、「区分支給限度額を超えた分も、高額介護サービス費で戻るのか」という点です。高額介護サービス費は、介護保険法施行令22条の2の2で、保険から支給された居宅介護サービス費などをもとに計算する形になっています。一方、区分支給限度額を超えた分は保険の対象外です。超えた分の扱いがどうなるかは、市区町村かケアマネジャーに確認してください。なお、福祉用具の購入費や住宅改修費、食費・居住費などは、高額介護サービス費の対象から除かれています。
出典:介護保険法施行令22条の2の2(e-Gov法令API)
たとえば、在宅でデイサービスと訪問介護を使っている親の場合、関わるのは区分支給限度額(どこまで使えるか)と高額介護サービス費(自己負担がどこで止まるか)の2つです。同じ親がショートステイを使い始めると、そこに食費・滞在費が加わり、負担限度額認定が関係してくる可能性が出てきます。調べるときは、知りたいのが「使える量」「食費・居住費」「自己負担の天井」のどれかを先に決めると、別の制度の説明に迷い込みません。
枠に入るもの・入らないもの
訪問介護やデイサービスのような在宅のサービスは、合わせて1つの枠の中で数えます。一方で、福祉用具の購入や住宅改修は月の枠とは別の上限で管理され、一部のサービスや加算は枠の計算から外れています。
- 福祉用具貸与(レンタル):枠の中。ほかの介護サービスと合わせて数える。1単位はどの地域でも10.00円
- 特定福祉用具の購入:月の枠とは別。年度(4月〜翌3月)ごとに原則10万円が上限
- 住宅改修(手すり・段差の解消など):月の枠とは別。ひとり生涯20万円が上限で、要介護状態区分が3段階上がったときと転居したときは再び設定される
- ショートステイ・デイサービスなどの食費・滞在費:保険の給付の対象外で、枠とは別に払う(介護保険法41条1項)
- 介護職員等処遇改善加算:枠の計算から除かれる。ただし加算の分の1〜3割は自己負担に含まれる
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護:介護保険法43条1項で枠の対象から除かれている
出典:介護サービス情報公表システム「福祉用具貸与」(厚生労働省)/厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会資料「福祉用具・住宅改修」/厚生労働省「介護保険における住宅改修」/厚生労働省 老健局長通知(介護職員等処遇改善加算・令和8年度分)
福祉用具の購入と住宅改修が月の枠と別になっているので、住宅改修で手すりを付けた月でも、訪問介護やデイサービスに使える単位は減りません。購入と改修は、期間の単位も違います。購入は年度ごと、住宅改修は生涯の枠です。
ほかにも、枠の計算から外れるサービスや加算があります。ただ、どれが当たるかは使うサービスと算定のしかたで変わるので、ここでは一覧にしていません。親の計画に入っているサービスが枠の中か外かは、ケアマネジャーに確認してください。
たとえば、退院した親のために介護ベッドを借り、トイレの壁に手すりを工事で取り付ける、という準備を同じ月にしたとします。この2つのうち、月の枠を使うのは介護ベッドのレンタルだけです。工事で付ける手すりは住宅改修の枠で数えます。ベッドのレンタルを入れたぶん、その月のデイサービスや訪問介護に回せる単位は少なくなるので、退院直後の計画を立てるときは、レンタルの単位も含めて枠の残りを見てください。
超えそうなときにケアマネと話すこと
枠を超えそうなときは、ケアマネジャーと、いまの計画の単位・組み直し・枠の外のものへの置き換え・要介護度の見直しの4つを順に話します。「超えるなら自費で」と決める前に、確かめられることがあります。
- 1いまの計画の単位枠まであと何単位か
- 2組み直し同じ目的を別の組み方で
- 3枠の外・別枠購入・住宅改修に置き換え
- 4区分の見直し状態が変わったなら申請
まず、いまの計画が何単位で、枠まであと何単位残っているかを聞きます。次に、同じ目的を別のサービスの組み合わせで果たせないかを相談します。たとえば、入浴の手助けを訪問で受けるか、デイサービスの中で受けるかで、使う単位は変わります。デイ・ヘルパー・ショートステイの組み合わせ方は、別の記事にまとめています。
3つ目に、枠の外や別枠で済ませられるものがないかを見ます。レンタルしている用具の中に購入の対象になるものがないか、段差の解消など住宅改修で手間が減らせないか、といった確かめ方です。
4つ目が、要介護度の見直しです。認定の有効期間の途中でも、介護の必要の程度が変わったときは、要介護の人は要介護状態区分の変更(介護保険法29条)、要支援の人は要支援状態区分の変更(同33条の2)の認定を市町村に申請できます。どの区分になるかは認定で決まり、家族が選べるものではありません。結果が出るまでの日数も、市町村に確かめてください。要介護状態区分の変更の申請は、地域包括支援センターや、要件を満たす居宅介護支援事業者などに代わって行ってもらうこともできます(同29条2項で準用する27条1項)。
出典:介護保険法29条(e-Gov法令API)/介護保険法33条の2(e-Gov法令API)/介護保険法27条(e-Gov法令API)
あわせて知っておきたいのが、市町村ごとの決まりです。介護保険法43条3項で、市町村は条例を定めて、国の区分支給限度基準額を超える額をその市町村の限度額にすることができます。同じ条の4項・5項では、特定のサービスの種類ごとに、市町村が上限を設けることもできるとされています。どちらも市町村が「できる」と定められた仕組みで、親の住む市町村がそうした決まりを置いているかどうかは、市町村ごとに違います。
※お住まいの市区町村で確認してください。
たとえば、要介護2の親が入院をきっかけに一人で移動しにくくなり、デイサービスと訪問介護を増やすと19,705単位の枠を超えそうだ、という場面を考えます。まず組み直しで収まるかを見て、収まらないなら、状態の変化として区分の見直しを申請するかをケアマネジャーと相談します。見直しで要介護3になれば枠は27,048単位ですが、結果が同じ要介護2のままになることもあります。その場合でも、どのサービスを優先し、どこを家族で受け持つかを決め直すための材料になります。
ケアマネジャーがまだ決まっていない段階や、誰に相談すればいいか分からないときは、親の住む地域の地域包括支援センターに相談する方法があります。地域包括支援センターは市町村が設置する(運営を委託している場合もある)施設で、暮らしの実態の把握や関係機関との連絡調整を含む総合的な相談を受け持っています(介護保険法115条の45・115条の46)。相談に行くときは、認定の結果の通知や、いまのケアプラン、ここ数か月の請求書が手元にあれば持っていくと、枠の使い方を具体的に話せます。名称と担当区域は市区町村によって違います。
※お住まいの市区町村で確認してください。
出典:介護保険法115条の46(e-Gov法令API)/介護保険法115条の45(e-Gov法令API)
枠いっぱいまで使わない方がよい場合
限度額は「保険で使ってよい上限」で、使う量の目標ではありません。自己負担は使った単位に応じて決まるので、使い切らなかったからといって払う額が増えることはありません。次のような家では、枠いっぱいまで使わない計画のほうが合っていることがあります。
- 家族や近所の見守りで日中が回っていて、サービスを足しても親の暮らしが変わらない
- 親が、家に人が出入りすることや外出の回数が増えることを負担に感じている
- 親の年金で自己負担を払い続けると、預金を取り崩す月が続く計算になる
- 退院や家族の用事でショートステイが必要になる月に備えて、枠に余白を残しておきたい
- 食費・滞在費など、枠の外の出費が別にかかる月がある
枠に余白を残しておくと、急にサービスを増やす必要が出た月にも、保険の範囲で受けられる余地が残ります。逆に、ふだんから枠いっぱいで組んでいると、少し増やしただけで上の「枠を超えた分は全額自己負担」の形になります。
たとえば、要介護3・2割負担の親が枠いっぱいまで使うと、自己負担は月54,096円(1単位10円の目安)です。週末は家族が実家で過ごせる家で、平日の日中だけをサービスで受け持つ組み方にすれば、使う単位も自己負担も下がり、ショートステイを入れる月のための余白も残ります。ただし、家族が週末に通えなくなった、親の状態が変わって夜間の見守りが要るようになった、という変化があれば、余白を使ってサービスを増やす時期です。
一方で、使わない方がよいのは、家族の負担と親の安全が保たれている場合に限られます。介護する家族が仕事や体調で限界に近いのに、費用を気にしてサービスを控えるのは、別の問題を先送りすることになりかねません。親の年金と預金で月いくらまで出せるかを先に並べてから、枠のどこまで使うかを決めると、迷いが減ります。親の介護費用を家計の側から出す方法は、別の記事で扱っています。
足りなくなったら在宅か施設かを考える

組み直しても、区分の見直しをしても、在宅のサービスが枠の中に収まらない月が続くなら、在宅か施設かを考え始める時期です。特養などの介護保険施設に入ると、区分支給限度額の枠ではなく、施設の費用の仕組みで月額を考えることになります。有料老人ホームなどの居室は在宅のサービスを使う「居宅」に含まれることがあり(介護保険法8条2項)、その場合は外から受けるサービスをこの枠の中で数えるので、入る前にケアマネジャーか施設に確かめてください。
区分支給限度額は、介護保険法43条1項で、居宅サービスと地域密着型サービスを対象にした枠として定められています。在宅で暮らしながら、サービスの量をこの枠の中でやりくりする、という考え方です。施設での暮らしになると、費用の見方は介護サービス費と食費・居住費などの組み合わせに変わり、在宅の月額と同じ物差しでは比べられません。
たとえば、要介護4や5で在宅の枠いっぱいまで使い、それでも夜間や休日を家族が埋めきれない、という家では、枠を超えて自費で足すか、施設を検討するかの分かれ道に来ています。どちらが合うかは、親の希望、家族の手、月にいくら出せるかで変わります。施設を考え始めたら、種類ごとの費用の違いと、在宅を続けられる条件を並べて見るところから始めてください。
要介護認定とお金の全体の流れは、次のページから順にたどれます。
よくある質問
介護保険の利用限度額はいくらですか?
1か月の上限は要介護度ごとに単位で決まっていて、要支援1は5,032単位、要介護1は16,765単位、要介護5は36,217単位です。1単位10円の地域で計算した目安は、要支援1で50,320円、要介護5で362,170円です。実際の円の額は、地域とサービスの種類で1単位が10.00円〜11.40円の間で変わります。
介護保険負担限度額認定の要件は?
負担限度額認定は、施設やショートステイの食費・居住費(滞在費)の負担を軽くするための認定で、区分支給限度額とは別の制度です。要件と申請の流れは、上の「似た名前の負担限度額とは別もの」からリンクしている記事で確かめてください。
月の途中で要介護度が変わったら、その月の枠はどうなりますか?
区分の変更や更新で月の途中に要介護度が変わったときの枠の扱いは、ここでは確かめきれていません。変わった月の計画をどう組むかは、担当のケアマネジャーか市区町村の介護保険の窓口に確認してください。
ショートステイも限度額の中ですか?
ショートステイ(短期入所)は居宅サービスの一つなので、介護サービスの部分は在宅のサービスと合わせて月の枠の中で数えます。一方、ショートステイの食費・滞在費は保険の給付の対象外で、枠とは別に払います(介護保険法41条1項)。ショートステイを入れる月は、枠の残りと食費・滞在費の両方をケアマネジャーに確かめてください。
要支援でも考え方は同じですか?
要支援の人も、要支援1は5,032単位、要支援2は10,531単位という月の枠があり、その中で使った分の1〜3割を払う形は同じです。枠を超えた分が全額自己負担になる点も変わりません。要介護の人より枠が小さいので、福祉用具のレンタルなどを入れると残りが少なくなりやすい点に気をつけてください。
限度額を超えた分は、高額介護サービス費で戻りますか?
高額介護サービス費は、保険から支給された分の自己負担をもとに計算する仕組みです。区分支給限度額を超えた分は保険の対象外なので、超えた分が戻るかどうかは、市区町村かケアマネジャーに確認してください。超えた分を当てにせず、まず枠の中に収まるかを相談するところから始めてください。
順番のおさらい
- 上限:要介護度ごとに単位で決まる。要支援1の5,032単位から要介護5の36,217単位まで。円は1単位10円で計算した目安
- 1単位の円:地域区分とサービスの種類で10.00円〜11.40円。単位の上限は同じで、円の額だけが動く
- 自己負担:枠の中で使った分の1割(所得により2割・3割)。限度額と払う額は別の数字
- 超えたとき:超えた分は全額自己負担。少しのはみ出しでも、その部分は10割で払う
- 似た名前の制度:負担限度額認定は食費・居住費、高額介護サービス費は自己負担の天井。区分支給限度額とは別もの
- 枠の中と外:福祉用具のレンタルは枠の中。購入と住宅改修は別枠。食費・滞在費は保険の外。ほかに外れるものはケアマネに確認
- 超えそうなとき:いまの単位を聞く → 組み直す → 枠の外・別枠に置き換える → 状態が変わったなら区分の見直しを申請する。市町村の上乗せの有無も確かめる
- 使い切らない選択:家族の手と親の安全が保たれているあいだは、余白を残す組み方もある
- 次に来ること:枠に収まらない月が続くなら、在宅か施設かを考え始める
限度額の表を見て不安になるのは、円の数字を「払う額」として読んでいるときや、どこまでが枠でどこからが別の制度なのかが見えていないときです。親の要介護度から単位の枠を決め、地域の単価と負担割合を掛け、枠の外のものを分けて見る。この順で並べれば、ケアマネジャーとの相談でも「あと何単位使えて、超えたらいくらか」を自分の言葉で確かめられます。
1単位の単価(地域区分)と、市町村の限度額の上乗せの有無は、自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

