墓じまいの費用は金額でなく条件で決まる|内訳・離檀料・誰が払うか

電卓とペン
  • 実家の墓をしまうと、全部でいくらになるのか見当がつかない
  • 何にお金がかかるのか、内訳を項目ごとに知りたい
  • お寺から離檀料を言われたら、言われた額を払うしかないのか
  • 業者の見積が高いのか安いのか、比べる物差しがない
  • 新しい納骨先のお金は、墓じまいとは別にかかるのか
  • 兄弟の誰が払うのか、どう分けるのかで話が止まっている
  • 親の預金から出していいのか分からない
  • 手元にまとまったお金がなく、先延ばしにしている
  • 今の墓を残したほうが、結局は負担が軽いのではないか

上記のような悩みに答えます。

墓じまいの費用を調べると「相場◯万円」という数字がすぐに出てきますが、どれも業者ごとの価格で、国や自治体がまとめた公的な統計はありません。上位に並ぶのは石材店や霊園、供養や代行の事業者の解説で、自社の価格表をもとにした金額が中心です。一方で、費用が何によって上下するのか、離檀料に法律の決まりがあるのか、誰が払うことになっているのか、見積書のどこを見ればいいのか、墓を残した場合と比べてどうかは、薄くなりがちです。そこで、金額の数字ではなく「費用の決まり方」で答えることにしました。費用の内訳と見積の比べ方、離檀料の扱いという基本を押さえたうえで、誰が払うかの決め方、お金がないときの進め方、墓じまいをしないほうが負担の軽い条件まで、墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)・民法の条文、公営墓地の条例、国民生活センターの公開情報で確かめながら整理しています。

先に答え

墓じまいの費用に、公的に決まった金額や統計はありません。墓石の撤去と区画の返還、お寺での供養と離檀、改葬許可の書類、新しい納骨先の4つが積み上がり、墓の場所や広さ、墓地の種類、納骨先の選び方で変わります。離檀料にも誰が払うかにも法律の決まりは見当たらず、見積と話し合いで決めることになります。

2026年10月時点の制度で確かめています

目次

墓じまいの費用は何で決まるか

電卓とペン

墓じまいの総額は、墓そのものの条件と、遺骨をどこへ移すかの選び方で決まります。同じ「墓じまい」という言葉でも、払う相手も払う項目も家ごとに違うので、一つの金額で答えられる性質のものではありません。

金額が一つに定まらない理由は、費用の出どころが一か所ではないからです。墓石を片付ける工事は業者に、儀式のお礼は寺に、書類は市区町村や墓地の管理者に、新しい納骨先の費用は受け入れ先に払います。それぞれが別の物差しで値段を付けるので、合計はその組み合わせで動きます。

総額を左右する条件は、次の5つに分けて考えると見通しが立ちます。

  • 墓の広さと墓石の量(区画の面積、石の数や大きさ、外柵があるか)
  • 墓の場所(車や重機が入れるか、通路が狭いか、階段を上るか)
  • 墓地の種類(公営・寺院・民営で、返すときの決まりと相手が違う)
  • 新しい納骨先の種類(別の墓・納骨堂・永代供養や樹木葬の名前の墓地など)
  • 寺院とのこれまでの関係(檀家かどうか、儀式をどう進めるか)

たとえば、区画の大きさが同じでも、山の斜面にある寺の墓地で人の手で石を運び下ろす墓と、平らな霊園で作業車が区画の横まで入れる墓とでは、工事の手間がまったく違います。さらに、遺骨を新しく建てる墓に移すのか、管理を任せられる納骨堂に移すのかで、墓じまい後のお金のかかり方も変わります。

編集部の整理では、最初にやるべきことは「相場を探す」ことではなく、自分の家の墓について上の5つを書き出すことです。この一覧があれば、業者にも寺にも同じ前提で相談でき、見積を比べるときの物差しにもなります。

費用の内訳を4つに分ける

墓じまいの費用は、墓石の撤去と区画の返還、お寺での供養と離檀、改葬許可などの書類、新しい納骨先の4つの山でできています。まずこの4つに分けてから、それぞれの山がどの条件で大きくなるかを見ます。

4つに分けるのは、払う相手と、金額を確かめる方法が山ごとに違うからです。工事は見積書で、寺へのお礼や離檀に関するお金は寺との話し合いで、書類の手数料は市区町村の案内で、納骨先の費用は契約の書類で確かめることになります。どの山の話をしているのかを分けておかないと、見積を並べても何が高いのかが分かりません。

費用の山 払う相手 金額が変わる要素
墓石の撤去と区画の返還 工事の業者(墓地の管理者が業者を指定している場合もある) 区画の広さ、墓石の量、重機が入るか、運び出しの距離、元に戻す範囲
お寺での供養と離檀 寺院 儀式をするかどうか、その進め方、寺との関係、規約の定め
改葬許可などの書類 市区町村、今の墓地の管理者 手数料がかかる市区町村かどうか、証明書の発行に手数料があるか
新しい納骨先 受け入れ先の墓地・寺・納骨堂 納骨先の種類、個別に納める期間、管理料の有無、遺骨の数で金額が変わるか
墓じまいの費用は4つの山が積み上がる
  1. 1墓石の撤去と区画の返還工事の業者へ。墓の場所と広さで変わる
  2. 2お寺での供養と離檀寺院へ。儀式の進め方と寺との関係で変わる
  3. 3改葬許可などの書類市区町村と墓地の管理者へ。手数料の有無は自治体で違う
  4. 4新しい納骨先受け入れ先へ。納骨先の種類で変わる

書類の山は小さく見えますが、二つの手数料が別にあることに気を付けてください。一つは市区町村が出す改葬許可の手数料で、かかるかどうかも額も市区町村で違います。もう一つは、今の墓地の管理者が「ここに遺骨が埋蔵されている」と証明する書面の発行手数料で、市の手数料が無料でも、こちらは費用がかかる場合があると案内している市もあります。

※改葬許可の手数料や、埋蔵(収蔵)証明の発行手数料は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。申請先は遺骨が今ある墓の市区町村なので、墓が遠方にあるときは墓のある市区町村で確認してください。

このほか、現地に通う交通費や、書類の郵送・取り寄せの費用も家族の負担として出てくることがあります。遠方の墓では、この「4つの山の外側」のお金が増えることがあります。迷ったら、4つの山のどれにも入らない出費を別の行に書き出しておくと、あとで「思ったより多かった」と感じにくくなります。

墓石の撤去と区画の返還の費用

墓石を撤去して区画を返す費用は、墓地の種類によって「返すときの決まり」がどこに書かれているかが違い、それに応じて工事の範囲が変わります。公営墓地なら条例、寺院や民営の墓地なら使用の規約が出発点です。

公営墓地は、自治体の許可を受けて使う仕組みです。条例には、使用をやめるときは届け出て、区画を原状に戻して返すと定めているところがあります。ただし、特別な事情があると認められれば原状回復を求めない、という例外を置いている条例もあり、例外の扱いも自治体ごとに違います。原状に戻す範囲や費用の負担は、条例に書かれていないこともあるので、担当課に確かめる必要があります。

墓地の費用で見落とされやすいのが、墓地は「買った土地」ではないという点です。東京都の消費生活相談のFAQは、墓地を買うというのは永代使用料を払って土地を使う権利を得ることで、所有するわけではないため、売ることも貸すこともできず、権利を返しても支払った永代使用料は戻らないのが普通といわれている、と説明しています。公営墓地の条例にも、使用する権利を他の人に譲ることを認めない定めがあります。つまり、区画を返しても、そのお金を墓じまいの費用に充てられるとは考えないほうが無難です。

墓地の種類 返すときの決まりがある場所 先に確かめる相手
公営墓地 自治体の条例・使用の案内 墓地を管理する自治体の担当課
寺院の墓地 寺の規約・これまでの取り決め 住職・寺の事務
民営の霊園 霊園の使用規則・契約書 霊園の管理事務所

たとえば、公営墓地の区画を返す家なら、まず担当課に「どこまで元に戻せばよいか」と「撤去する業者に条件があるか」を聞きます。寺院の墓地なら、撤去を頼める石材店を寺が決めているかどうかで、見積を何社から取れるかが変わります。業者が決まっている墓地では、複数の見積で比べる方法が使えないので、その業者に項目ごとの内訳を出してもらうことが比べる代わりになります。

迷ったときの軸は、工事の見積を取る前に「返すときの決まり」を書面で手に入れることです。条例や規約の写し、管理者の説明をメモしたものを業者に渡せば、元に戻す範囲を業者ごとにばらばらに解釈されるのを防げます。

※公営墓地の返還の決まり(原状回復の範囲・例外・使用料の扱い)は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

離檀料とお布施に決まりはあるか

離檀料について、法律で金額や支払いを定めた規定は見当たりません。お布施は、何に対するお金か、額をどう考えればよいかを寺に確かめたうえで判断します。

一方で、離檀料をめぐる相談は公的な窓口に実際に寄せられています。国民生活センターのPIO-NETに登録された「墓」に関する相談は、2025年度に1,077件ありました(消費生活センター等からの経由相談は含まない件数で、墓全般の相談であり離檀料だけの件数ではありません)。同センターが掲げる最近の相談事例には、菩提寺に墓じまいを頼んだところ高額な離檀料を求められ、支払える額ではないうえ規約の定めもなく請求の根拠が分からない、という申し出があります。これは相談者の申し出をまとめたもので、寺院側が不当と判断されたものではありません。

離檀料やお布施の話が出たときは、次の順で確かめていくと、言われるままにも、感情的な対立にもなりにくくなります。

  1. 何に対するお金なのか(儀式のお礼か、離檀に関するお金か、墓地の使用に関わる精算か)を聞く
  2. 金額と内訳を書面で出してもらう
  3. 寺の規約や、入檀したときの取り決めに定めがあるかを確かめる
  4. 家族で書面を見比べ、その場では返事をしない
  5. 納得できないときは、お住まいの消費生活センターや弁護士に、書面を持って相談する

「離檀料は払わなくてよい」「離檀料の請求は違法」と言い切る解説も見かけますが、法律に金額の定めが見当たらないことと、支払いの義務があるかどうかは別の話です。何に対するお金なのかによって、話の性質も変わります。まずは事情を説明し、金額の根拠を一緒に確かめる姿勢で臨み、義務の有無で迷ったら消費生活センターや弁護士に相談します。

たとえば、長く檀家として付き合ってきた寺で、継ぐ人がいないことを伝えたうえで儀式のお礼を相談する場合と、付き合いの薄い寺から突然まとまった額を求められた場合とでは、確かめるべき点が違います。前者は儀式の進め方とお礼の考え方を聞く場面で、後者は書面で根拠を確かめ、必要なら第三者に相談する場面です。

編集部としては、離檀料を「交渉で下げるもの」と構えるより、「中身を確かめるもの」と考えることをすすめます。中身が分かれば、払うかどうか、いくらなら納得できるかを家族で判断できます。法的に争うかどうかの判断が必要になったら、そこから先は弁護士の領分です。

新しい納骨先で総額が変わる

障子の続く和室

墓じまいの総額は、撤去の工事に加えて、遺骨をどこへ移すかの選び方でも変わります。新しい納骨先の費用は墓じまいとは別の契約で、選ぶ形によって最初に払うお金も、その後に続くお金も変わります。

納骨先を決めるのが先か、墓じまいを寺に切り出すのが先か、と迷う人がいますが、手続きの面では、行き先が先です。改葬許可の申請書には「改葬の場所」を書く欄があり(墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条1項)、行き先が決まらないと申請に進めません。さらに、改葬先の受入証明書や使用許可証の写しを添えるよう求める市区町村もあります。法律の条文に受入証明書という名前は出てきませんが、市町村長が特に必要と認める書類として求める運用です(同条2項3号)。

納骨先の候補ごとに、契約の前に確かめておきたい点は次のとおりです。

  • 最初に払うお金に、何が含まれているか(納骨の作業、銘板、儀式など)
  • 毎年の管理料がかかるか、かかるなら誰がいつまで払うのか
  • 個別に納める期間があるか、その後はほかの遺骨と一緒に納められるのか
  • 納める遺骨の数で金額が変わるか
  • あとから遺骨を取り出せるか
  • 改葬許可の申請に要る受入証明書などを出してもらえるか

永代供養や樹木葬は、同じ名前でも中身が施設ごとに違うことがあります。名前で比べると、一方は管理料込み、もう一方は別払い、といった違いが見えません。上の項目を同じ表に並べて比べると、見かけの金額の差がどこから来ているのかが分かります。

たとえば、実家の墓に祖父母と両親の遺骨が納められている家では、遺骨の数で金額が変わる納骨先かどうかを、契約の前に確かめておきたいところです。また、子の代まで管理料を払い続ける形の墓に移すと、墓じまいをしても毎年の出費が残ります。継ぐ人がいないことが墓じまいの理由なら、その後の管理料がかからない形を候補に入れるのが筋です。

迷ったら、「最初に払うお金」と「その後に毎年かかるお金」を分けて、何年分かを並べて比べてみてください。たとえば親の代、自分の代、子の代と区切って書き出すと分かりやすくなります。最初の額だけで選ぶと、後から続く出費を見落とします。

※改葬先の受入証明書の要否や様式は自治体によって違います。墓のある市区町村で確認してください。

墓じまいの見積の取り方と見方

墓じまいの見積は、同じ条件を伝えて複数取り、項目ごとに並べて比べるのが確かな方法です。業者ごとの価格で公的な物差しがない以上、自分で比べる表を作ることが、そのまま相場の代わりになります。

見積が比べにくくなる原因は、業者ごとに「一式」の中身が違うことです。ある見積では運び出しや処分が含まれ、別の見積では別料金になっている、ということが起きます。同じ条件を伝え、同じ項目で答えてもらえば、この食い違いを減らせます。

見積を取るときは、次の順で進めると、取り直しになりにくくなります。

  1. 墓地の管理者に、撤去を頼める業者に決まりがあるか、元に戻す範囲はどこまでかを聞く
  2. 墓の条件(区画の広さ、墓石と外柵、遺骨の数、車が入れるか)を一枚のメモにまとめる
  3. 同じメモを渡して、複数の業者に見積を頼む
  4. 返ってきた見積を、撤去・運び出し・処分・整地・遺骨の取り出しといった項目ごとに表に並べる
  5. 「一式」と書かれた項目は、何が含まれているかを質問して書面で答えてもらう
  6. 追加料金が出る条件(地中から基礎が出てきた場合など)を、契約の前に書面で確かめる

見積書の読み方で大事なのは、合計額より先に「含まれていないもの」を探すことです。安く見える見積が、処分費や整地を別料金にしているだけ、ということもあります。逆に高く見える見積が、遺骨の取り出しや区画の清掃まで含んでいることもあります。

墓が遠方にあって立ち会えない家は、見積の段階で「立ち会わない場合にどう進めるか」を聞いておきます。現地の確認に何回来てもらう必要があるか、作業の前後の様子を写真で報告してもらえるか、遺骨の受け渡しをどうするか、といった点です。立ち会えないことを前提にした進め方を最初から決めておけば、現地に行く回数そのものを減らせます。

編集部の整理では、見積を取る段階で家族の誰か一人を窓口に決めておくと、業者ごとに違う説明を受けて混乱することが減ります。見積の表は、そのまま次の「誰が払うか」の話し合いの資料にもなります。

費用は誰が払うか・兄弟の分け方

書類に記入する手元

墓じまいの費用を誰が払うかについて、この記事で確かめた法律の条文には定めが見当たりません。祭祀を継ぐ人と兄弟で話し合い、決めた内容を書面に残すのが、あとで揉めないための進め方です。

民法897条は、墓(墳墓)の所有権を、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき人が引き継ぎ、亡くなった人の指定があればその人が引き継ぐと定めています。慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が定めます。この条文は「誰が墓を引き継ぐか」を定めたもので、墓じまいの費用を誰が負担するかまでは書かれていません。墓を継いだ人が全部払う、という決まりがあるわけではないということです。

兄弟で話し合うときに使える分け方には、次のような型があります。

  • 墓を継いだ人が中心になって負担し、ほかの兄弟は手続きや付き添いで分担する
  • 4つの山ごとに担当を決める(撤去は誰、納骨先は誰、と項目で分ける)
  • 総額を人数で割る
  • 新しい納骨先を参りやすい場所に選んだ人が、その分を多めに持つ

どの型を選んでも、決めたことは日付と金額の範囲を書いたメモにして、全員が目を通しておきます。口約束のままだと、見積が想定より高くなったときに「そこまで出すとは言っていない」という話になりやすいからです。見積が出る前に「この範囲までなら、この割合で」と上限を決めておくと、話し合いをやり直さずに済みます。

親の預金から費用を出すかどうかは、相続の方向が決まってから考えます。相続放棄を考えている人が親の財産を処分すると、単純承認(すべて引き継ぐこと)をしたとみなされることがあります(民法921条1号。保存行為などは除かれます)。親の預金を墓じまいに使ってよいかは、払う前に弁護士・司法書士に確かめてください。費用が相続税の計算でどう扱われるかは、税理士に聞く話です。

たとえば、長男が墓を継ぎ、妹二人は遠方に住んでいる家なら、寺とのやりとりと業者の手配は長男、新しい納骨先の費用は三人で分ける、という分け方が考えられます。費用の分担で話がつかず、誰が墓を継ぐのかという点まで争いになったときは、ここから先は弁護士へ相談してください。慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が祭祀を継ぐ人を定める仕組みもあります(民法897条)。

費用が足りないときの選び方

まとまったお金がないときは、墓じまいを一度に全部進める必要はありません。費用をかける前の準備だけを先に進め、工事や納骨先の選び方などは、時期や進め方を調整できます。

お金がかかるのは4つの山のどれもです。決める人を確かめる、墓地の規約や条例を手に入れる、親族に相談する、見積を取って比べる、といった準備は、工事や契約の前でも進められます。費用の目処が立つまで、ここまでを進めておけば、いざ動くときに慌てずに済みます。

墓じまいに使える補助があるかどうかは、この記事では確かめられていません。補助の有無や条件は市区町村ごとに違う可能性があるので、墓のある市区町村と、自分が住んでいる市区町村の両方に問い合わせてください。問い合わせるときは、墓の場所と墓地の種類、移す先の候補を伝えると話が早く進みます。

費用を抑える方向で考えるなら、見直す順番は、見積や契約書で中身を確かめやすいところからです。新しい納骨先の形を見直す、遺骨の数で金額が変わるかを確かめる、撤去の見積を同じ条件で取り直す、兄弟の分担を決め直す、という順に検討してみてください。

墓を放置した場合にどうなるかは、墓地の使用規則や管理料の扱いで変わり、何年で撤去されるといった一律の答えはありません。管理料が払えなくなりそうなときは、滞る前に管理者に相談し、規則でどうなっているかを聞いておくことが先決です。黙って払わなくなると、規則によっては、残すかしまうかを自分たちで選べなくなるおそれがあります。

たとえば、親が亡くなった直後で葬儀や相続の出費が重なっている家なら、墓じまいは準備だけにとどめ、相続の手続きが落ち着いてから工事に入る、という順番が考えられます。お金がないことを理由に急いで安い業者に決めるより、時間をかけて比べるほうが、結果として負担が軽くなることもあります。

墓じまいをしない場合の条件

墓じまいをするかどうかは、費用の面からも考えておく価値があります。墓じまいには撤去や供養、書類、納骨先の費用が一度にかかり、その後も新しい納骨先の管理料が続く場合があるため、今の墓を残すほうが負担の軽い家もあります。

比べるときは、今の墓を残した場合に毎年かかる管理料と参る交通費、墓じまいした場合の一時的な費用とその後の管理料を、同じ年数で並べます。新しい納骨先にも毎年の管理料がかかる形を選ぶなら、墓じまいをしても毎年の出費は残り、差は一時的な費用の分だけ大きくなります。

残すか、しまうかは、年数で並べて比べる
今の墓を残す

  • 毎年の管理料と、参る交通費が続く
  • 継ぐ人がいれば、その人が引き継ぐ
墓じまいする

  • 撤去・供養・書類・納骨先の費用が一度にかかる
  • 納骨先によっては管理料が続く

次のような条件に当たるなら、急いで墓じまいをしなくてかまいません。

  • 墓を継ぐ人がいて、管理料を払い続けられる見込みがある
  • 親族が今も参っていて、墓がなくなることを望んでいない
  • 墓じまいの費用を払うために、借り入れや無理な取り崩しが要る
  • 移す先にも管理料がかかり、毎年の負担があまり変わらない
  • 誰が決めるのか(墓地の使用者・祭祀を継ぐ人)がまだはっきりしない

墓じまいを勧める立場の事業者は、「しない」という選択を書きにくい立場にあります。けれども、費用の面から見れば、残すことが合理的な家は確かにあります。注意したいのは、管理料を払える見込みがなくなったのに、何も決めずに放置してしまうことです。

たとえば、親が元気で墓を守っていて、子の一人が近くに住んでいる家なら、今は墓じまいの見積を取っておく程度にとどめ、親の意向を聞いたうえで、継ぐ人が決まらなくなった段階で動く、という考え方ができます。逆に、継ぐ人がおらず管理料の負担がこの先続かない家なら、費用がかかっても早めに準備を始めたほうが、後の負担は小さくなります。

墓じまいの手順と実家・相続との関係

墓じまいの費用の話は、手続きの順番と切り離せません。費用を払うタイミングは手順のどこで何が決まるかで決まり、実家の片付けや相続の手続きとも時期が重なります。

手順そのもの(誰が決めるか、親族への話し方、改葬許可の書類と出し先)は、姉妹記事で番号順に整理しています。

墓じまいのやり方、何から始める?|決める人・改葬許可・順番の見取り図

お金の面で押さえておきたいのは、相続との前後関係です。墓は祭祀を継ぐ人が引き継ぐもので、預金や実家のような相続財産の分け方とは別の枠です(民法897条)。ただ、費用を親の預金から出すかどうかは相続の方向に関わり、相続放棄を考えているなら、前の項目で見たとおり処分にあたるおそれがあります。実家を相続する場合は、相続登記の申請に、自分のために相続が始まったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内という義務があります(不動産登記法76条の2。遺産分割が後から成立した場合はその日から3年以内)。

たとえば、実家を売るかどうかが決まっていない家では、相続の方向と実家の片付けを先に進め、墓じまいの費用は相続の方向が決まってから誰がどこから出すかを決める、という順番が考えられます。実家を売る場合は、売れた後に費用の分担を決め直す家もあるでしょう。いずれにしても、墓じまいの支払いを相続の話し合いより先に済ませてしまうと、後から分担を決め直すのが難しくなることがあります。

遺品整理は相続を決めてから|先に探す物と進め方

相続登記の期限と手順|実家の名義を移す前に

家族葬の費用の考え方

亡くなったあと|期限の順番

墓じまいの次は、実家をどうするかの番です。

実家をどうする|実家が空き家になりそうな人へ

実家を売るときの空き家の特例の要件

よくある質問

墓じまいの費用は、全部でいくらかかりますか?

業者ごとの価格で、公的な統計がないため、この記事では金額を示していません。墓石の撤去と区画の返還、お寺での供養と離檀、書類、新しい納骨先の4つに分け、墓の広さや場所、納骨先の種類で変わります。同じ条件で複数の見積を取り、項目ごとに比べるのが確かな方法です。

離檀料は払わないといけませんか?

法律で離檀料の金額や支払いを定めた規定は見当たりません。ただ、何に対するお金かによって話の性質が変わるので、払う・払わないをこの記事では判断しません。金額と内訳を書面で出してもらい、納得できなければ消費生活センターや弁護士に相談してください。

墓じまいの費用は、誰が払うのですか?

この記事で確かめた法律の条文には、負担する人の定めは見当たりません。民法897条は墓を誰が引き継ぐかを定めた条文で、費用の負担までは書かれていません。祭祀を継ぐ人と兄弟で話し合い、分け方と上限を書面に残しておくと揉めにくくなります。

墓じまいに使える補助金はありますか?

補助があるかどうかは、この記事では確かめられていません。墓のある市区町村と、住んでいる市区町村の窓口に問い合わせてください。墓の場所や移す先の候補を伝えると、話が早く進みます。

墓を放置していたら、撤去されてしまいますか?

何年で撤去されるかは、墓地の使用規則や管理料の扱いで変わり、一律には言えません。管理料が払えなくなりそうなときは、滞る前に管理者に相談して規則を確かめてください。そのうえで、墓じまいするか残すかを家族で話し始めるのが先です。

墓じまいの費用を、親の預金から出してもいいですか?

相続放棄を考えている場合、親の財産を使うと単純承認とみなされることがあります(民法921条1号)。払う前に弁護士・司法書士に確かめてください。相続税の計算での扱いは、税理士に相談する内容です。

順番のおさらい

  1. 費用の決まり方:公的な相場や統計はなく、墓の広さ・場所・墓地の種類・納骨先・寺との関係で決まる
  2. 内訳:墓石の撤去と区画の返還、お寺での供養と離檀、改葬許可などの書類、新しい納骨先の4つの山に分ける
  3. 撤去と返還:公営は条例、寺院・民営は規約が出発点。墓地は使う権利で、返しても使用料が戻るとは考えない
  4. 離檀料とお布施:法律に金額の定めは見当たらない。何のお金かを聞き、金額と内訳を書面で確かめる
  5. 新しい納骨先:総額が変わる。最初のお金とその後のお金を分けて比べる
  6. 見積:同じ条件で複数取り、項目ごとに並べる。「一式」と追加料金は書面で確かめる
  7. 誰が払うか:確かめた条文に定めは見当たらない。祭祀を継ぐ人と兄弟で話し合い、分け方と上限を書面に残す
  8. お金がないとき:お金のかからない準備を先に。補助の有無は市区町村に問い合わせる
  9. しない場合の条件:継ぐ人がいて管理料を払えるなら、残すほうが負担の軽い家もある
  10. 相続との関係:親の預金から出すかは相続の方向が決まってから。手順は姉妹記事で確かめる

墓じまいの費用で家族が困るのは、金額そのものよりも、何にいくら払うのかが見えないまま話が進むことです。費用を4つの山に分け、自分の家の墓の条件を書き出し、同じ条件で見積を取る。誰が払うかは見積の前に話し合って書面に残す。この順番を守れば、業者や寺に言われるままになることも、兄弟で後から揉めることも避けやすくなります。迷っているうちは、残すという選択肢も手元に置いたまま、お金のかからない準備から始めてください。

出典:国民生活センター「墓・葬儀サービス」/東京都霊園条例/広島市墓地及び納骨堂条例/東京くらしWEB 消費生活相談FAQ(墓の解約)/船橋市「改葬許可の手続き」/墓地、埋葬等に関する法律5条(e-Gov法令API)/墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条(e-Gov法令API)/民法897条(e-Gov法令API)/民法921条(e-Gov法令API)/不動産登記法76条の2(e-Gov法令API)

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この記事を書いた人

親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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