- 親が亡くなったが、何から手を付ければいいのか分からない
- 死亡届は誰が、いつまでに出せばいいのか
- 年金を止めるのが遅れたら、あとで返すことになるのか
- 親の口座が使えなくなったら、葬儀の支払いはどうするのか
- 「相続の3か月ルール」と聞いたが、何の期限なのか
- 親に借金があったかもしれず、調べ方が分からない
- 役所には何回行けばいいのか、仕事をどれだけ休めばいいのか
- 兄弟の誰が何をやるのか、まだ決まっていない
上記のような悩みに答えます。
親が亡くなったあとの手続きは、死亡届から相続登記まで普段は触れることのない手続きが続き、葬儀の準備と重なる時期に期限だけが進みます。期限別の手続き一覧を載せたページはありますが、この記事では、どれが法律で期限の決まっている手続きで、どれが後でよいのかの区別、先にやってはいけない行動、残された親の手続き、兄弟の分担まで、1本の順番として整理します。そこで、死亡届・役所の届け・相続放棄・税金・登記という基本の期限を押さえたうえで、期限の有無での分け方、やってはいけない順番、自分でやる場合の条件まで、戸籍法・民法などの条文と、国税庁・日本年金機構・法務省の案内で確かめながら整理しました。
親が亡くなったらすることは、期限が法律で決まっているものと、決まっていないものに分けると順番が見えます。期限が決まっているものは、死亡届が7日以内、相続放棄の判断が3か月、準確定申告が4か月、相続税の申告が10か月、相続登記が3年です。遺産の処分と、封印のある遺言書を勝手に開けることは先にやってはいけないので、この2つを避けたうえで、期限の近いものから順に進めます。
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親が亡くなったら、まず期限の有無で分ける

亡くなったあとの手続きは、法律で期限が決まっているものと、決まっていないものの2つに分かれます。先に手を付けるのは前者で、銀行口座の手続きや公共料金・携帯電話の解約、契約の名義変更は、法律の期限が無いので後に回せます。
分けて考えるのは、期限のある手続きの中に、遅れたときの扱いが法律に書かれているものがあるからです。たとえば、相続放棄も限定承認もしないまま3か月が過ぎると、すべてを引き継ぐ単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。相続登記の申請を正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。一方で、口座の解約や電話の名義変更が遅れても、法律上の期限切れにはなりません。
期限のある手続きを一覧にすると、次のとおりです。起算点(いつから数えるか)が手続きごとに違うので、「亡くなった日から」と一括りにせず、表の言い方のまま押さえてください。
| 手続き | 期限 | 根拠 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 死亡届 | 死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなったときは知った日から3か月以内) | 戸籍法86条1項 | 市区町村 |
| 年金受給権者死亡届 | 国民年金の規則では14日以内。日本年金機構の案内は「すみやかに」(省略できる場合あり) | 国民年金法施行規則24条1項 | 日本年金機構 |
| 介護保険の資格喪失届 | 14日以内 | 介護保険法施行規則32条 | 市区町村 |
| 後期高齢者医療の資格喪失届 | 14日以内 | 高齢者医療確保法施行規則26条 | 市区町村の窓口 |
| 世帯変更届(残る世帯員が2人以上のとき) | 変更があった日から14日以内 | 住民基本台帳法25条 | 市区町村 |
| 相続放棄・限定承認 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内 | 民法915条1項 | 親の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 準確定申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 | 国税庁 No.2022 | 税務署 |
| 相続税の申告・納付(基礎控除額を超える場合) | 死亡したことを知った日の翌日から10か月以内 | 国税庁 No.4205 | 税務署 |
| 相続登記 | 相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内 | 不動産登記法76条の2 | 法務局 |
- 1死亡届を出す7日以内。火葬の許可もここから
- 2役所の届けをまとめる14日以内のものを一度に
- 3財産と借金を調べる知った時から3か月以内に相続するか決める
- 4税金の申告準確定申告は4か月、相続税は10か月
- 5名義を移す相続登記は3年以内
期限が短い順に並べると上の表になりますが、実際に動く順番は、死亡届、役所の届け、財産と借金の調べ、税金、名義の順で考えると迷いにくくなります。死亡届が出ないと火葬に進めず、財産と借金が分からないと相続するかどうかを決められません。
たとえば、葬儀が終わって一息ついたところで、手元に届いた郵便物から親の借入先らしい会社名が見つかった場合は、口座の解約や家の片付けより先に、3か月の期限に向けて財産と借金を調べるほうを優先します。逆に、親の財産が年金の口座と実家だけで借金の心当たりも無い家なら、14日以内の役所の届けを済ませたあとは、ほかの手続きも期限の近い順に並行して進めます。
迷ったときは、まず期限の日付を紙1枚に書き出し、法律の期限がある行に印を付けてから、ほかの手続きを空いた日に入れていくと、取りこぼしが見えます。亡くなった日を上の計算ツールに入れると、自分の家の日付で一覧を出せます。亡くなったことを知った日が亡くなった日と違うときは、表の起算点の書き方のとおりに数えてください。
出典:戸籍法86条(e-Gov法令API)/民法915条(e-Gov法令API)/国税庁 No.2022/国税庁 No.4205/不動産登記法76条の2(e-Gov法令API)/不動産登記法164条(e-Gov法令API)
死亡届と火葬の許可は7日以内に
最初の期限は死亡届です。死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなったときは、知った日から3か月以内)に届け出ます(戸籍法86条1項)。届書には、医師の死亡診断書か死体検案書を添えます(同条2項)。
死亡届を先に出すのは、火葬の許可がこの届けとつながっているからです。埋葬や火葬をするには市町村長の許可が要り、その許可は死亡届を受理した市町村長が出します(墓地、埋葬等に関する法律5条)。死亡届が出ないと火葬許可も出ません。また、通常の死亡では、亡くなってから24時間を経過した後でなければ火葬できません(同法3条。他の法令に別段の定めがある場合を除く)。
最初の7日で動くことは、次のとおりです。
- 医師から死亡診断書または死体検案書を受け取る
- 死亡届を出し、火葬の許可を受ける
- 葬儀の日取りと、親族・親の勤め先や知人への連絡
- 親の健康保険証・介護保険証・年金の書類を、一か所にまとめておく
届書には、死亡診断書か死体検案書のどちらかを添えます。受け取った書類をそのまま死亡届に添えてください。離れて暮らしていて亡くなったことを後から知った場合は、7日は知った日から数えます。
この時期は、手続きまで考えられないのが自然です。最初の7日で法律の期限が決まっている手続きは死亡届で、火葬の許可もこの届けと一緒に動きます。ほかの書類は、まず「捨てずに一か所に集める」ところから始めてください。
出典:戸籍法86条(e-Gov法令API)/墓地、埋葬等に関する法律5条(e-Gov法令API)/同3条(e-Gov法令API)
14日以内が目安の役所の届け
葬儀が終わったら、14日以内が目安の届けをまとめて済ませます。年金・介護保険・後期高齢者医療・世帯の変更の4つで、どれも親の状況によって要るかどうかが変わります。
年金は、国民年金法施行規則では老齢基礎年金の受給権者の死亡届を14日以内に出すことになっており(24条1項)、日本年金機構の案内は「すみやかに」です。届けが遅れると年金を多く受け取りすぎることになり、後で返すことになる場合がある、と機構は案内しています。ただし、機構にマイナンバーが収録されている人は、原則として死亡届を省略できる場合があります(死亡の日から7日以内に戸籍法の死亡届を出していることなど、条件があります)。省略できるかどうかは、日本年金機構に確かめてください。
介護保険は、被保険者証の交付を受けていた人が資格を失ったときに、14日以内に市町村へ届書を出すことになっています(介護保険法施行規則32条)。届書は家族が代わりに届け出ます。被保険者証は速やかに返します(介護保険法12条4項)。後期高齢者医療も、資格を失ったときは14日以内に届書を出します(高齢者医療確保法施行規則26条)。
世帯の変更は、親が世帯主で、残る世帯員が2人以上いる場合に、変更があった日から14日以内に届けます(住民基本台帳法25条)。残る世帯員が1人になる場合のその人は、届けが要りません(住民基本台帳法施行令25条)。
※介護保険・後期高齢者医療の届けの様式や窓口、世帯変更届の持ち物は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
たとえば、両親だけで暮らしていて父が亡くなり、母が1人で残る場合は、母について世帯変更届は要りません。一方、父・母・同居の子の世帯で父が世帯主だった場合は、残る母と子のどちらが世帯主になるかを決めて届けます。親が一人暮らしだった場合の世帯の扱いは、市区町村の窓口に確かめてください。年金や介護保険の届けが要るかどうかは、上の説明のとおり別に確かめます。
役所に行く回数を減らすには、事前に市区町村に電話して、持ち物と同じ日に回れる窓口を聞いておくのが近道です。仕事を休める日数は勤め先の決まりによるので、ここでは示しません。そのかわり、出かける前に、何を持っていけばよいかを窓口に確かめ、死亡診断書の写しや親の保険証類など手元にある書類をまとめておいてください。
出典:国民年金法施行規則24条(e-Gov法令API)/日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」/介護保険法施行規則32条(e-Gov法令API)/介護保険法12条(e-Gov法令API)/高齢者医療確保法施行規則26条(e-Gov法令API)/住民基本台帳法25条(e-Gov法令API)/住民基本台帳法施行令25条(e-Gov法令API)
先にやってはいけないこと
亡くなった直後に避けたいのは、遺産を処分することと、封印のある遺言書を家庭裁判所の外で開けることの2つです。どちらも、結果が法律に定められています。
遺産の処分を避けるのは、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認(財産も借金もすべて引き継ぐこと)をしたものとみなされるからです(民法921条1号。保存行為などのただし書があります)。親に借金があって相続放棄を考えていても、先に処分していると放棄が認められないことがあります。何が処分にあたるかは、物や事情によって判断が分かれるので、迷う行動をする前に弁護士・司法書士か、親の最後の住所地の家庭裁判所に確かめてください。
遺言書は、自宅などで保管されていた自筆の遺言書を見つけたら、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求します(民法1004条1項)。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できません(同条3項)。検認を怠ったり、家庭裁判所の外で開封したりすると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。公正証書遺言と、法務局の保管制度で保管されている遺言書は、検認が要りません(民法1004条2項・遺言書保管法11条)。
- 処分にあたるか迷う行動(財産を売る・捨てるなど)
- 封印のある遺言書を開ける
- 放棄を考えているのに確かめずに払い戻しを受ける
- 通帳や郵便物を探して一か所に集める
- 遺言書の種類を確かめ、家庭裁判所に検認を請求する
- 残高と引き落としの記録を書き出す
口座については、「亡くなったら凍結されて一切下ろせない」と思い込む必要はありません。遺産分割の前でも、相続人は他の相続人の同意がなくても単独で、預貯金の一部の払い戻しを金融機関に求められます。払い戻せる額は口座ごとに「相続開始時の預貯金の額×3分の1×払い戻しを求める相続人の法定相続分」で、同一の金融機関に対しては150万円が上限です。
計算例:預金600万円の口座で、法定相続分が2分の1の子が払い戻しを求める場合は、600万円×3分の1×2分の1=100万円です。
たとえば、葬儀の支払いに親の預金を充てたいと考えたときは、上の式で口座ごとの額を出し、その範囲で払い戻しを求めることになります。ただし、相続放棄を少しでも考えているなら、払い戻しを受ける前に弁護士・司法書士に確かめてください。払い戻しを受けることが相続の判断とどう関わるかは、事情によって判断が分かれるからです。払い戻しの手続きと必要書類は、口座のある金融機関で確認できます。
最初の数週間は「探して記録する、まだ動かさない」と決めておくと、迷う場面が減ります。
出典:民法921条(e-Gov法令API)/民法1004条(e-Gov法令API)/民法1005条(e-Gov法令API)/遺言書保管法11条(e-Gov法令API)/法務省「相続された預貯金債権の払戻しを認める制度について」
3か月の間に財産と借金を調べて決める
「相続の3か月ルール」は、相続を引き継ぐか、放棄するか(または限定承認するか)を決める期限のことです。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に決め、放棄するなら親の最後の住所地の家庭裁判所に申述します(民法915条1項・938条)。
この3か月の間に、財産と借金を調べることができます(民法915条2項)。調べた結果をもとに、引き継ぐか放棄するかを決める、という順番です。期間内に放棄も限定承認もしないと、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。期間内に決められないときは、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が期間を伸長できます(民法915条1項ただし書)。
財産と借金の手がかりは、次のところから集めます。
- 親あての郵便物(金融機関・カード会社・借入先からの通知)
- 通帳と、口座からの引き落としの記録
- 権利証や固定資産税の納税通知書(不動産の手がかり)
- 契約書の控え(保証人になっていないか)
- 親のスマートフォンやパソコンに届く取引の通知
たとえば、親が年金で暮らし、通帳に返済の引き落としも見当たらない家でも、郵便物や契約書の控えまで確かめてから次の手続きに入ります。反対に、親が商売をしていた、保証人になっていたと聞いたことがある家は、調べた先と日付を記録しながら進め、間に合わなければ伸長の申立てを考えます。
相続放棄は、相続人がそれぞれ申述する手続きです。兄の放棄で弟の分が済むことはありません。放棄するかどうかの判断そのものは、家庭裁判所・弁護士・司法書士に相談してください。そのときに、上で集めた郵便物や通帳の記録を持っていくと、残りの期間で何ができるかを具体的に聞けます。
出典:民法915条(e-Gov法令API)/民法938条(e-Gov法令API)/裁判所「相続の放棄の申述」
4か月と10か月は税金の期限

税金の期限は2つあります。亡くなった親のその年の所得についての準確定申告が、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(国税庁 No.2022)。相続税の申告と納付は、死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205)。
準確定申告は、亡くなった親のその年の所得について、相続人が代わりに申告する手続きです。申告が要るかどうかは、税務署か税理士に確かめてください。
相続税の申告が要るのは、相続財産などの合計額が基礎控除額を超える場合で、基礎控除額の範囲内なら申告も納税も要りません(国税庁 No.4205・No.4102)。基礎控除額は、次の式で出します(国税庁 No.4152)。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
注意したいのは、比べる合計額には預貯金や実家だけでなく、相続時精算課税を使った贈与や、亡くなる前の一定期間の贈与なども含まれる点です。
たとえば、預貯金だけを見て「基礎控除の範囲内だろう」と考えていても、生前に受けた贈与を足すと超える、ということがありえます。申告が要るかどうか、いくらかかるかは、この記事では判断しません。国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」でおおよその見当をつけ、超えそうなら早めに税理士に相談してください。通帳の写し、固定資産税の納税通知書、生前の贈与の記録があれば、そろえておいてください。
3か月の調べ物で作った財産と借金の一覧は、そのまま税理士との相談にも使えます。
出典:国税庁 No.2022/国税庁 No.4205/国税庁 No.4102/国税庁 No.4152
期限は無いが早めに済ませたい手続き
銀行口座・公共料金・携帯電話・クレジットカードなどの名義変更や解約は、法律の期限がありません。ただし、放っておくと引き落としが続くことがあるので、役所の届けが済んだら順に片付けます。
一方で、家の名義を移す相続登記には期限があります。相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請します(不動産登記法76条の2)。2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、まだ登記していないものも対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。
期限の無い手続きは、次の順に当たると漏れが少なくなります。
- 通帳の引き落とし記録から、公共料金・携帯電話・サブスクリプションの契約先を書き出す
- 実家に誰も住まないなら、電気・ガス・水道の止め方を契約先に聞く
- クレジットカード会社に連絡し、カードの利用を止める
- 口座の手続きは、相続の方向が決まってから金融機関に相談する
- 電話などの名義変更は、引き継ぐ人が決まってから行う
たとえば、実家に母が住み続けるなら、電気や水道は止めずに契約の名義を移す相談をし、誰も住まなくなるなら、止める時期を兄弟で決めておきます。
登記がすぐにできない事情があるときは、相続人申告登記という手続きもあります。申出をした相続人は、相続登記の申請義務を果たしたものとみなされます(法務省)。ただし、みなされるのは申出をした人だけで、売却などには別に相続登記が要ります。
出典:不動産登記法76条の2(e-Gov法令API)/法務省「相続登記の申請義務化について」
請求しないと受け取れないお金
亡くなったあとに受け取れるお金には、自分から請求しないと受け取れないものがあります。代表的なのは、健康保険の埋葬料、国民健康保険・後期高齢者医療の葬祭費、未支給年金の3つです。
埋葬料は、会社員などの健康保険の被保険者が亡くなったときに、その人に生計を維持されていて埋葬を行う人に5万円が支給されます(健康保険法100条1項・同法施行令35条)。被扶養者が亡くなったときは、被保険者に家族埋葬料5万円が支給されます(協会けんぽ)。国民健康保険や後期高齢者医療に入っていた親の場合は、葬祭費になり、額は市区町村や広域連合の条例で決まっているので全国一律ではありません(国民健康保険法58条1項・高齢者医療確保法86条1項)。
どちらも、受け取る権利は、行使することができる時から2年で時効により消えます(健康保険法193条1項・国民健康保険法110条1項・高齢者医療確保法160条1項)。期限ぎりぎりまで待たず、早めに請求してください。
未支給年金は、親が受け取るはずだった年金のうち、亡くなったために受け取れなかった分です。請求できるのは、親が亡くなった当時に親と生計を同じくしていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・それ以外の3親等内の親族で、順位もこの順です(国民年金法19条1項)。同居しているかではなく、生計を同じくしていたかが要件なので、別居の子が請求できるかは、日本年金機構に事情を伝えて確かめてください。
| お金 | 対象 | 請求先 |
|---|---|---|
| 埋葬料 | 健康保険の被保険者が亡くなったとき(5万円) | 加入していた健康保険 |
| 葬祭費(国民健康保険) | 国民健康保険の被保険者が亡くなったとき(額は条例) | 市区町村 |
| 葬祭費(後期高齢者医療) | 後期高齢者医療の被保険者が亡くなったとき(額は条例) | 市区町村の窓口 |
| 未支給年金 | 生計を同じくしていた遺族 | 日本年金機構 |
※葬祭費の額と申請の窓口は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
たとえば、父が後期高齢者医療に入っていた場合は、健康保険の埋葬料ではなく、後期高齢者医療の葬祭費を市区町村の窓口で申請します。14日以内の届けで市区町村に行くときに、同じ窓口で葬祭費の申請ができるかも聞いておくと、行く回数を減らせます。
出典:健康保険法(厚生労働省 法令等データベース)/国民健康保険法(厚生労働省 法令等データベース)/高齢者の医療の確保に関する法律(厚生労働省 法令等データベース)/国民年金法19条(e-Gov法令API)
残された親の年金と暮らしの手続き
父か母の一方が亡くなり、もう一方が残る場合は、亡くなった親の手続きと同じ時期に、残された親の手続きも動きます。年金・世帯・住まいの3つが中心です。
残された親が配偶者として親と生計を同じくしていたなら、未支給年金を請求できる順位の最初に来ます(国民年金法19条1項)。また、亡くなった親の年金の加入歴によっては、残された親が遺族年金を受け取れる場合があります。遺族年金を受け取れるかどうか、自分の年金とどう組み合わさるかは、加入歴と残された親の状況で変わるので、日本年金機構の窓口で確かめてください。
世帯の届けは、残る世帯員が残された親1人だけなら要りません(住民基本台帳法施行令25条)。子と同居していて2人以上が残る場合は、新しい世帯主を決めて14日以内に届けます(住民基本台帳法25条)。
たとえば、父が亡くなって母が一人暮らしになる場合、届けの手間は少なくても、収入が父の年金に頼っていたなら、母の暮らしの見通しが大きく変わります。年金の窓口に行くときは、持ち物を日本年金機構に確かめたうえで、母がこれから受け取れる年金の見込みまで聞いておくと、実家に住み続けるかどうかの判断材料にもなります。
編集部の整理では、年金の窓口に行く日を「父の手続きの日」ではなく「母の暮らしを確かめる日」と位置づけると、聞き漏らしが減ります。
士業に頼まない場合の条件と頼む目安
亡くなったあとの手続きは、すべてを専門家に頼まなければならないものではありません。条件がそろえば、家族で進められる範囲は広くあります。
自分たちで進めやすいのは、次の条件がそろう場合です。
- 相続人が誰か、戸籍ではっきりしていて、話し合いがまとまっている
- 借金の手がかりが見当たらず、相続放棄を考える必要がない
- 国税庁の申告要否判定コーナーで見ても、基礎控除額を明らかに下回る
- 不動産が実家1つで、誰が引き継ぐかが決まっている
- 平日に役所や法務局、金融機関に出向く時間が取れる
反対に、専門家に頼むほうがよいのは、借金があるかもしれず放棄を考えている、兄弟の意見が分かれている、相続税がかかりそうだ、不動産が複数ある、遺言書の内容に納得できない人がいる、といった場合です。頼む先は、相続放棄の書類や相続登記なら司法書士、兄弟との争いや借入先との交渉なら弁護士、準確定申告や相続税なら税理士が窓口になります。
放棄するかどうか、遺産をどう分けるか、税金がいくらかは、事情によって答えが変わる部分です。報酬の額は事務所によって違うので、相談の最初に、どこまで頼むといくらかかるかを見積もってもらってください。
たとえば、相続人が母と子どもたちで、財産は年金の口座と実家だけ、借金の心当たりも無い家なら、役所の届けと口座の手続きは家族で進め、相続登記だけ司法書士に頼む、という分け方ができます。逆に、親の郵便物から複数の借入先が見つかった家は、3か月の期限があるので、早いうちに司法書士か弁護士に相談します。
相談に行くときは、亡くなった日と、それを知った日が分かるもの、戸籍謄本、財産と借金の一覧、すでにした行動のメモを持っていくと、残りの期限の中で何を頼めばよいかを具体的に聞けます。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
期限のある手続きを、銀行・役所・法務局とそれぞれ自分で回すのが難しい(遠方に住んでいる・平日に休めない・相続人が多い)なら、相続の手続きをまとめて任せられるサービスもあります。相続税の申告まで要るかで料金が大きく変わるので、頼む前に何が含まれるかを確かめてください。
兄弟で分担を決める、遠方の場合は
兄弟がいる場合は、手続きの窓口役と、お金の立て替えの扱いを、早いうちに決めておきます。誰か1人に任せきりにせず、期限のある手続きの担当を分けておきます。
手続きには、「1人がまとめてできるもの」と「1人ずつしかできないもの」があります。相続放棄は相続人ごとに申述し(費用も申述人1人につき)、兄が放棄しても弟の分は済みません。未支給年金は、同じ順位の人が複数いるときは1名が代表して請求します(日本年金機構)。役所の届けは、窓口に行きやすい人が担当する分け方があります。
| 役割 | 向いている人 | やること |
|---|---|---|
| 役所と年金の窓口 | 実家の近くに住む人 | 死亡届・14日以内の届け・葬祭費の申請 |
| お金の記録 | 数字の管理が得意な人 | 立て替えた費用と領収書の一覧、口座の記録 |
| 財産と借金の調べ | 平日に時間が取れる人 | 郵便物・通帳から手がかりを集め、問い合わせる |
| 専門家との連絡 | 遠方に住む人でもできる | 司法書士・税理士との電話やメールの窓口 |
たとえば、長男が遠方で長女が実家の近くなら、長女が役所の窓口を、長男が専門家との連絡と財産の一覧づくりを受け持つ、という分け方ができます。郵送で受け付けている手続きがあるかは、それぞれの窓口に問い合わせてください。
葬儀代や役所の手数料を誰かが立て替えたときは、領収書を残し、日付・金額・何に使ったかを一覧にしておきます。遺産をどう分けるかの話し合いそのものは、この記事では扱いません。意見が分かれそうなら、早めに弁護士に相談してください。
実家が残るなら次に来ること

期限のある手続きが一段落すると、次は実家をどうするかです。親が持ち家に住んでいたなら、誰が住むのか、売るのか、空き家として残すのかを決め、あわせて遺品の片付けを進めることになります。
実家については、片付けと名義と住む人をあわせて考えます。売却などには別に相続登記が要り、相続登記には3年の期限があります。相続した実家を売る場合に使える特例にも、期限と要件があります。
遺品の片付けは、相続の方向が決まってから本格的に始めます。先に家財を処分すると、上の「先にやってはいけないこと」で書いた処分の問題が出てくることがあるからです。方向が決まったら、兄弟で残す物と手放す物を決め、量と距離と時間を見て、自分たちで片付けるか業者に頼むかを決めます。
たとえば、兄弟の誰も実家に戻る予定がなく、いずれ売ると決めている家なら、遺品の片付けと並行して特例の要件を確かめておくと、売る時期を逃しにくくなります。いずれ誰かが住むかもしれないなら、片付けを急がず、使う物を残したまま管理の分担を決めるほうが自然です。
よくある質問
親が亡くなったら、まず何をすればいいですか?
最初は、医師から死亡診断書か死体検案書を受け取り、死亡届を出して火葬の許可を受けることです。死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に出します(戸籍法86条1項)。それ以外の書類は、捨てずに一か所に集めておいてください。
親が死んだら、やってはいけないことは何ですか?
遺産を処分することと、封印のある遺言書を家庭裁判所の外で開けることです。処分をすると単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)。封印のある遺言書の開封は、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとで行います(民法1004条3項)。
相続の3か月ルールとは何ですか?
相続を引き継ぐか、放棄するかを決める期限のことで、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条1項)。期間内に放棄も限定承認もしないと、単純承認とみなされます。期間内に決められないときは、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が期間を伸長できます。
親が死亡したら、銀行口座はどうなりますか?
口座がどう扱われるかは金融機関に確かめる必要がありますが、「凍結されたら一切下ろせない」とは限りません。遺産分割の前でも、相続人は単独で預貯金の一部の払い戻しを求められ、同一の金融機関に対しては150万円が上限です。相続放棄を考えているなら、払い戻しを受ける前に弁護士・司法書士に確かめてください。
相続の手続きを司法書士に頼んだら、いくらかかりますか?
報酬は事務所や頼む範囲によって違うので、この記事では金額を示していません。相談の最初に、どこまで頼むといくらかかるかの見積を出してもらい、複数の事務所で比べてください。役所の届けなど家族でできる部分を自分たちで進めると、頼む範囲を絞れます。
遺言書が見つかったら、開けてもいいですか?
自宅などで保管されていた自筆の遺言書は、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求します(民法1004条1項)。封印のあるものは、家庭裁判所の外で開けると5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。公正証書遺言と法務局で保管されている遺言書は、検認が要りません。
順番のおさらい
- 期限の有無で分ける:法律の期限がある手続きを先に、口座や名義変更は後に
- 7日以内:死亡届を出し、火葬の許可を受ける
- 14日以内:年金・介護保険・後期高齢者医療・世帯変更のうち要るものをまとめて
- 先にしないこと:遺産の処分と、封印のある遺言書の開封
- 3か月:財産と借金を調べ、相続するか決める。間に合わなければ伸長を請求
- 4か月と10か月:準確定申告と、基礎控除額を超える場合の相続税
- 期限は無いが早めに:口座・公共料金・携帯電話。相続登記は3年以内
- 請求するお金:埋葬料・葬祭費は2年で時効。未支給年金も忘れずに
- 残された親:年金と世帯の届けを同じ時期に確かめる
- 頼まない場合の条件:相続人が明らかで借金が無く、基礎控除を下回るなら家族で進めやすい
- 兄弟の分担:窓口役とお金の記録係を決め、立て替えは領収書で残す
- 次は実家:遺品の片付けは相続の方向が決まってから
親が亡くなったあとの手続きは数が多く見えますが、法律の期限がある手続きは限られています。期限の日付を紙1枚に書き出し、財産はまだ動かさずに手がかりを集め、兄弟で窓口役を決める。この3つを先にしておくと、残りの手続きを順に進めやすくなります。相続放棄ができるかどうかは家庭裁判所・弁護士・司法書士に、相続税がかかるかどうかは税理士に確かめてください。

