- 親が家の中で歩きにくくなってきた。介護保険で何が借りられるのか知りたい
- 要支援1と言われた。要支援や要介護1でも借りられる物はあるのか
- ベッドや車いすは、軽い認定だと借りられないと聞いた
- レンタル料は月いくらなのか。業者によって違うのか
- ケアマネジャーがまだいない。どこに頼めば借りられるのか
- 歩行器や杖は、借りるのと買うのとどちらがいいのか
- ポータブルトイレやお風呂の椅子も借りられるのか
- 手すりは工事で付けるのと、置くだけの物を借りるのと、どう違うのか
上記のような悩みに答えます。
介護保険の福祉用具レンタル(法律の語では「福祉用具貸与」)は、国の告示で決まった13種目の用具を、自己負担1〜3割で借りられる仕組みです。ところが、見た範囲では、レンタル事業者のページは自社で扱う商品の前後から話が始まっていて、「軽い認定では原則として借りられない物がある」「レンタル料は国が決めた額ではなく事業所が決める額で、商品ごとに上限がある」という制度の側の話は断片的にしか出てきません。そこで、借りられる種目・要介護度による線引き・借りる手順という基本を押さえたうえで、軽度でも借りられる例外の条件、料金の決まり方、購入や住宅改修とどう分けるかまで、厚生労働省の告示と資料で確かめながら整理しました。
介護保険でレンタル(貸与)できる福祉用具は、車いす、特殊寝台(介護ベッド)、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえなど13種目です。要支援1・2と要介護1の人は、車いすや特殊寝台など9種目(自動排泄処理装置を含む)が原則として対象外になります。料金は事業所が決めた額の1〜3割で、商品ごとに上限があります。
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福祉用具レンタルは13種目

介護保険で借りられる福祉用具は、厚生労働大臣が告示で決めた13種目です。カタログに載っている物なら何でも借りられるわけではなく、この13種目のどれかに当たる用具だけが保険の対象になります。
告示は種目の名前だけでなく、その種目に当たる用具の条件も書いています。たとえば特殊寝台は、サイドレールが付いているか付けられる物で、背中や脚の角度を変えられるか、床板の高さを無段階に変えられる物です。手すりは、取り付けに工事を伴わない物に限られます。同じ「ベッド」「手すり」という呼び名でも、告示の条件に当たらない物は対象になりません。
| 種目 | 告示などで確かめた条件 |
|---|---|
| 車いす | ― |
| 車いす付属品 | ― |
| 特殊寝台 | サイドレール付き(または取付け可)で、背・脚の角度か床板の高さを調整できるベッド |
| 特殊寝台付属品 | マットレス・サイドレールなど、特殊寝台と一体で使う物 |
| 床ずれ防止用具 | ― |
| 体位変換器 | ― |
| 手すり | 取付けに工事を伴わない物 |
| スロープ | 取付けに工事を伴わない物 |
| 歩行器 | ― |
| 歩行補助つえ | ― |
| 認知症老人徘徊感知機器 | 屋外へ出ようとしたときなどにセンサーで感知し、家族や隣人などへ通報する物 |
| 移動用リフト | つり具の部分を除く |
| 自動排泄処理装置 | 尿のみを自動的に吸引する物と、それ以外で要介護度の線引きが違う(次の項) |
出典:厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(厚生省告示第93号)
一方で、ポータブルトイレ(腰掛便座)や入浴用の椅子は、この13種目に入っていません。こちらは「借りる」ではなく「買う」側(特定福祉用具販売)の種目で、下の「借りずに買う物」の項で分けて書きます。階段昇降機や介護用の椅子のように、13種目の名前に無い物もあります。名前が無い物は、介護保険の貸与の対象には含まれません。ただし、ある機器が13種目のどれか(たとえば移動用リフト)に当たるかどうかは機種ごとの判断になるので、気になる物があるときはケアマネジャーか福祉用具の事業所に「これは13種目のどれに当たりますか」と聞いてください。
たとえば、親が「立ち上がるときに支えが欲しい」と言っているなら、置くだけの手すり、特殊寝台の高さ調整、歩行器のどれで解くかで種目が変わります。困りごとを先に決めてから種目を当てはめると、カタログの商品名に引っ張られずに済みます。特殊寝台の細かい条件と、ベッドを借りるときの手順は、別のページにまとめています。
編集部の整理では、最初に確かめるのは「親が何に困っているか」と「その用具が13種目のどれか」の2点です。種目が決まれば、次の項の「要介護度で借りられるか」に進めます。
要介護度で借りられない物
13種目のうち9種目(自動排泄処理装置を含む)は、要支援1・2と要介護1の人には原則として保険が使えません。自動排泄処理装置は、さらに要介護2・3の人も原則対象外です。認定を受けたのに「ベッドは借りられない」と言われたときは、この線引きに当たっていることが考えられます。
厚生労働省の資料では、軽度の人(要支援1・2、要介護1)について、次の種目を原則として給付の対象外としています。要介護1の人については、介護報酬の算定基準(告示)が、これらの種目を貸与した場合は福祉用具貸与費を算定しない、と書いています。
| 種目 | 要支援1・2、要介護1 | 要介護2・3 | 要介護4・5 |
|---|---|---|---|
| 手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ | 対象 | 対象 | 対象 |
| 車いす・車いす付属品 | 原則対象外 | 対象 | 対象 |
| 特殊寝台・特殊寝台付属品 | 原則対象外 | 対象 | 対象 |
| 床ずれ防止用具・体位変換器 | 原則対象外 | 対象 | 対象 |
| 認知症老人徘徊感知機器 | 原則対象外 | 対象 | 対象 |
| 移動用リフト(つり具を除く) | 原則対象外 | 対象 | 対象 |
| 自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引するものを除く) | 原則対象外 | 原則対象外 | 対象 |
出典:厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」/指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(告示・福祉用具貸与費の注6)
表の上の段の4種目(手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ)は、軽度の人でも対象です。要支援1の親でも、歩行器や置き型の手すりなら、ほかの条件がそろえば介護保険で借りられます。「要支援だから何も借りられない」と考える必要はありません。
ここで大切なのは「原則」という言葉です。原則対象外の種目でも、親の状態によっては例外として借りられる場合があり、その条件は次の項で書きます。ただし例外には決まった判断の手順があり、家族が「欲しい」と言うだけで当てはまるものではありません。
たとえば、要介護1の父が「起き上がるのがつらいからベッドが欲しい」と言っている場合、特殊寝台は原則対象外の種目なので、「欲しい」というだけでは保険で借りられません。一方で、同じ父が「廊下を歩くときにふらつく」なら、歩行器や置き型の手すりは要介護1でも対象です。困りごとが同じ「起き上がり」でも、手すりで支えるのか、ベッドの機能で支えるのかで、原則の扱いが分かれます。ただし、認定調査で日常的に起き上がりが困難とされている場合などは、特殊寝台も例外で借りられることがあります(次の項)。
この線引きは厚労省の資料に拠るもので、資料の作成時点は資料の上では分かりません。最新の扱いは、担当のケアマネジャーか市区町村の介護保険の窓口で確かめてください。※お住まいの市区町村で確認してください。
軽度でも借りられる例外
原則対象外の種目でも、例外として借りられる道は2つあります。1つは要介護認定の基本調査の結果で当てはまる場合、もう1つは基本調査では当てはまらなくても、医師の医学的な所見などをもとに市町村が必要と判断した場合です。
1つめの道は、認定のときの調査の結果で決まります。種目ごとに、当てはまる人の状態が告示と厚労省の資料で決まっています。
| 種目 | 例外として対象になる人の状態 |
|---|---|
| 車いす・付属品 | 日常的に歩行が困難な人、日常生活範囲で移動の支援が特に必要と認められる人 |
| 特殊寝台・付属品 | 日常的に起き上がりが困難な人、または日常的に寝返りが困難な人 |
| 床ずれ防止用具・体位変換器 | 日常的に寝返りが困難な人 |
| 認知症老人徘徊感知機器 | 意見の伝達や記憶・理解に支障があり、かつ移動に全介助を必要としない人 |
| 移動用リフト | 日常的に立ち上がりが困難な人、移乗に一部介助か全介助が必要な人、生活環境で段差の解消が必要と認められる人 |
| 自動排泄処理装置 | 排便に全介助が必要で、かつ移乗に全介助が必要な人 |
出典:厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」
たとえば特殊寝台なら、認定調査の「起き上がり」か「寝返り」の項目で「できない」とされていることが、基本調査で当てはまる目安になります。認知症老人徘徊感知機器は、認知症の症状があり、移動に全介助が要らない人が、認定調査の結果などから例外的に対象になることがあります。どの項目に当たるかは家族が自分で判定するものではなく、ケアマネジャーが認定調査の結果などをもとに判断します。
2つめの道は、基本調査では当てはまらない人のためにあります。次の手順がすべてそろったときに、市町村が書面などで確認して、貸与が必要かどうかを判断します。
- 次のどれかに当たることが、医師の医学的な所見にもとづいて判断されている:状態が変わりやすく、日や時間帯によって対象の状態になる(例:パーキンソン病のON・OFF現象)/状態が急速に悪化し、短い期間で対象になることが確実に見込まれる(例:がん末期)/体への重大な危険や症状の重篤化を避けるため、医学的な判断から対象になる(例:ぜんそく発作など)
- サービス担当者会議などを通じたケアマネジメントで、福祉用具の貸与が特に必要と判断されている
- 市町村が書面などで確認し、要否を判断する
ここを「医師が書けば借りられる」と縮めて理解すると、話がずれます。医師の所見は1つめの条件にすぎず、ケアマネジメントでの判断と、市町村の確認がそろって初めて例外になります。最後に判断するのは市町村です。
たとえば、パーキンソン病で薬が効いている時間は自分で起き上がれるが、効きが切れる時間帯は寝返りもできない、という親の場合は、日によって調査の結果が変わり得るので、1つめの道では当てはまらないことがあります。そういうときに2つめの道があります。主治医に、時間帯で状態がどう変わるかを伝えたうえで、ケアマネジャーに例外の手続きを相談してください。
相談のときは、困っている場面(いつ・何ができないか)を書き出したメモと、主治医の名前・医療機関を伝えられるようにしておくと、ケアマネジャーが手続きを組み立てやすくなります。市町村の確認のしかたや必要な書類は、市町村ごとに違います。※お住まいの市区町村で確認してください。
月の料金の決まり方
レンタル料の自己負担は、事業所が決めた月のレンタル料に、親の負担割合(1〜3割)を掛けた額です。ほかの介護サービスのように国が単位数を決めているのではなく、事業所ごとに額が違います。ただし、貸与件数が月平均100件以上の商品には商品ごとに上限があり、それを超える額で貸与した分は保険給付の対象になりません。
介護報酬の算定基準では、福祉用具貸与費は「現に要した費用の額」を1単位の単価で割った単位数で請求する、と書かれています。つまり、事業所が決めたレンタル料がそのまま単位に換算される形です。福祉用具貸与の1単位の単価は、地域区分に関係なく全地域で10円です。訪問介護やデイサービスのように住んでいる地域で単価が変わることはありません。
出典:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(告示・福祉用具貸与費)/厚生労働大臣が定める一単位の単価(告示)
上限は、貸与件数が月平均100件以上の商品について、「全国平均の貸与価格に、ばらつきの分を足した額」として国が設けています。上限を超える額で貸与した場合、その分は保険給付の対象になりません。全国平均の貸与価格と上限は厚生労働省が公表していて、年に1回程度見直されます。また、福祉用具専門相談員は、商品の特徴と貸与価格、全国平均の貸与価格を説明し、機能や価格帯の違う複数の商品を示すことになっています。
出典:厚生労働省 介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 資料(貸与価格の上限)
この仕組みから、「車いすは月いくら」と1つの金額で答えることはできません。同じ種目でも商品によって額が違い、同じ商品でも事業所によって額が違うからです。比べるときは、相談員に「この商品の全国平均の貸与価格はいくらで、この事業所の額はいくらか」を聞くと、自分の家の額が高いのか低いのかが分かります。搬入や引き取りの費用は貸与の費用に含まれ、個別には評価しない扱いです(特別な地域の事業所には交通費の加算があります)。細かい扱いは契約前に事業所の料金表で確かめてください。
もう1つ見落としやすいのが、要介護度ごとの区分支給限度基準額との関係です。福祉用具貸与は居宅サービスの1つなので、訪問介護やデイサービスと同じ月の枠の中で使います。たとえば要介護1なら、枠は1か月167,650円(1単位10円の地域の目安)で、デイサービスとレンタルの合計がこの枠に収まるようにケアプランを組みます。枠を超えた分は保険給付の対象外で、全額が自己負担になります。
負担割合は原則1割で、合計所得金額160万円以上などの条件に当たる人は2割、合計所得金額220万円以上などの条件に当たる人は3割になります。親の割合は、担当のケアマネジャーか市区町村の介護保険の窓口で確かめてください。編集部の整理では、料金を見るときの順番は「商品の額と全国平均の額」→「親の負担割合」→「月の枠の残り」の3つです。この順に聞けば、レンタルを足した月の自己負担の見当がつきます。
借りる手順

介護保険で福祉用具を借りるには、要介護認定を受けたうえで、ケアマネジャー(要支援の人は地域包括支援センターなど)に相談し、福祉用具専門相談員が用具を選んで計画を作り、ケアプランに入れてから納品、という順に進みます。
- 1要介護認定を受ける申請は市区町村の窓口へ
- 2ケアマネに相談する要支援は地域包括支援センターなど
- 3相談員が用具を選ぶ複数の商品と価格の説明を受ける
- 4計画とケアプランに入れる説明を受けて同意する
- 5納品と点検対象の用具は使い始めてからも確認がある
- 要介護認定を受ける:まだなら市区町村の窓口に申請します。申請の手続きは、地域包括支援センターなどに代わって行ってもらうこともできます
- ケアマネジャーに相談する:要介護の人は居宅介護支援事業所のケアマネジャー、要支援の人は地域包括支援センター(市町村の指定を受けたケアマネ事業所が担当する場合もあります)
- 福祉用具専門相談員が用具を選ぶ:家の様子と親の体の状態を見て、種目と商品を提案します。機能や価格帯の違う複数の商品が示されます
- 福祉用具貸与計画とケアプランに入れる:相談員は、目標やサービスの内容を書いた福祉用具貸与計画を作り、本人・家族に説明して同意を得て、本人とケアマネジャーに渡します。ケアマネジャーは、ケアプランに貸与を位置付けるとき、利用が妥当かを検討し、必要な理由をプランに書きます
- 納品と点検:用具が届いて使い始めたあとも、対象の用具については、相談員が使い方や状態を確認し、結果をケアマネジャーに伝える仕組みです
出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(福祉用具貸与計画)/指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
手順の中心にケアマネジャーがいるのは、介護保険法の作りと関係があります。介護保険法は、事業者に保険分を直接払う形(自己負担分だけを払えばよい形)を、ケアマネジャーの支援を受けることを市町村に届け出ている場合などに限っています。ですから、ケアマネジャーがケアプランに位置付けて手配するのが、通常の流れになります。なお、ケアプランを作ってもらうこと(居宅介護支援)には利用者の自己負担はありません。
たとえば、親が退院して家に戻る日が決まっているのに、まだ認定の結果が出ていない場合は、病院の相談員と地域包括支援センターに、退院日と必要そうな用具(ベッド・車いす・手すりなど)を早めに伝えてください。要介護認定は申請した日にさかのぼって効力が生じるので、申請を先に済ませておくことが出発点になります。結果が見込みより軽い区分だった場合は、上の「借りられない物」の線引きにかかることもあるので、どの種目が要るかをケアマネジャーと先に話しておくと慌てずに済みます。
相談に行くときは、介護保険の被保険者証、困っている場面のメモ(どこで・いつ・何ができないか)、家の間取りや段差の写真があると話が早く進みます。
借りずに買う物
腰掛便座(ポータブルトイレなど)や入浴用の椅子は、レンタルではなく購入の対象です。介護保険の「特定福祉用具販売」として、同じ年度(4月〜翌3月)に10万円までの購入費が保険の対象になります。
購入の対象になる種目も、告示で決まっています。
- 腰掛便座(ポータブルトイレ、便器の上に置いて高さを補う物、立ち上がりを補助する物など)
- 入浴補助用具(入浴用椅子・浴槽用手すり・浴槽内椅子・入浴台・浴室内すのこ・浴槽内すのこ・入浴用介助ベルト)
- 簡易浴槽(取水・排水に工事を伴わない物)・移動用リフトのつり具の部分
- 自動排泄処理装置の交換可能部品・排泄予測支援機器
- スロープ・歩行器・歩行補助つえ(告示で決まった物。次の項の「選べる物」)
出典:特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第94号)
購入は、払い方がレンタルと違います。原則は償還払いで、いったん全額を払ったあと、費用の9割(負担割合が2割・3割の人は8割・7割)が介護保険から払い戻されます。市町村によっては、最初から自己負担分だけを払えばよい受領委任払いを導入しているところもあります。どちらになるかは市町村で違います。※お住まいの市区町村で確認してください。
出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「特定福祉用具販売」
注意したいのは、どこで買っても対象になるわけではない点です。保険の対象になるのは、都道府県などの指定を受けた特定福祉用具販売の事業者から、告示の種目の物を買った場合だけです。ホームセンターや通販で買ったポータブルトイレは、同じような物でも対象にならないことがあります。また、10万円の枠は月の区分支給限度基準額とは別枠なので、購入したからといってデイサービスやレンタルに使える月の枠が減ることはありません。
たとえば、退院に合わせてポータブルトイレと入浴用の椅子をそろえる場合、2つとも購入の種目です。指定の事業者から買い、年度の10万円の枠の中なら、負担割合を除いた分が払い戻されます。同じ時期に特殊寝台や車いすを借りるなら、そちらはレンタルとして月の枠の中で考えます。買う物と借りる物を混ぜてケアマネジャーに伝えるときは、「これは買う物、これは借りる物」と分けて聞くと、払うお金の流れが整理できます。
借りるか買うか選べる物
2024年4月から、一部の福祉用具は、レンタルと購入のどちらかを選べるようになりました(選択制)。対象は、スロープ・歩行器・歩行補助つえのうち、告示と通知で決まった物です。
選択制の対象は、レンタルの13種目と購入の種目の両方に当たる物で、通知(介護保険最新情報Vol.1213、令和6年3月15日)では次のように書かれています。
- スロープ:主に敷居などの小さい段差の解消に使い、頻繁な持ち運びを要しない物(可搬型は除く)
- 歩行器:脚部がすべて杖先ゴムなどの形状の、固定式または交互式の物(車輪・キャスターの付いた歩行車は除く)
- 歩行補助つえ:カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ、多点杖
出典(下の説明と提案の義務の根拠):指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準199条(e-Gov法令API)
福祉用具専門相談員には、選択制の対象の用具を提供するとき、レンタルと購入のどちらも選べることを十分に説明し、必要な情報を出したうえで、医師やリハビリの専門職、ケアマネジャーなどの意見と本人の体の状態を踏まえて提案する義務があります。「選べる」であって、どちらかに決められる制度ではありません。
- 月々のレンタル料の1〜3割を払う
- 月の区分支給限度基準額の枠の中
- 見直しや返却の扱いは契約の内容による
- 原則いったん全額を払い、あとで払い戻される
- 同じ年度に10万円までの別枠
- 自分の物になる
どちらが得かは、使う期間と品目で変わるので、一律には言えません。体の状態が変わりやすい時期や、どれくらいの期間使うか分からないときは、レンタルで始めて様子を見る考え方もあります。見直しや返却の扱いは事業所との契約の内容によるので、契約前に確かめてください。長く同じ物を使う見込みがはっきりしているなら、購入も選べます。
たとえば、膝の手術のあとで、しばらく多点杖を使う父の場合、回復の具合で杖が要らなくなるかもしれないなら、レンタルで始めて様子を見るという考え方があります。反対に、何年も同じ杖で歩いている母が新しい物を探しているなら、購入も候補になります。迷ったら相談員に「レンタルと購入それぞれの自己負担と、見直しのしかた」を並べて説明してもらい、ケアマネジャーとも相談して決めてください。
手すりは工事かレンタルか
手すりは、工事を伴うかどうかで制度が分かれます。壁に取り付けるなど工事を伴う手すりは住宅改修、置くだけ・突っ張るだけで工事を伴わない手すりはレンタル(福祉用具貸与)です。
住宅改修は、手すりの取付け、段差の解消、床や通路の材料の変更、引き戸などへの扉の取替え、洋式便器などへの取替えと、それに付帯する工事の6種類が対象です。支給限度基準額は、ひとり生涯20万円です(要介護状態区分が3段階上がったときと、転居したときは、あらためて設定されます)。期間の単位が、レンタルの月の枠や購入の年度の枠とは違います。
出典:厚生労働省「介護保険における住宅改修」/居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類(平成11年厚生省告示第95号)
住宅改修で手すりを付けるときは、工事の前の申請が原則です。申請書、見積り、住宅改修が必要な理由書、改修後の状態が分かるものなどを先に出し、工事が終わったら領収書などを出します。やむを得ない事情があるときは工事の後の申請も認められますが、例外の扱いです。払い方は購入と同じく償還払いが原則で、市町村によっては受領委任払いを使えます。申請の書類と手順は市町村ごとに違います。※お住まいの市区町村で確認してください。
スロープも同じ考え方で、工事を伴わない物はレンタル(または選択制で購入)、工事を伴う物は住宅改修の「段差の解消」になります。
たとえば、玄関の上がり框で親がつまずくようになった家なら、まずは工事を伴わない置き型の手すりや段差用のスロープをレンタルで試し、使い勝手が分かってから、必要なら壁に手すりを付ける住宅改修を考える、という順もあります。賃貸住宅で壁に穴を開けられない家なら、工事を伴わない手すりのレンタルが先の候補になります。どちらに当たるかの具体的な判断は、事業所やケアマネジャー、市区町村に確かめてください。
福祉用具レンタルが合わないとき

福祉用具のレンタルを選ばないほうが合う場合もあります。腰掛便座や入浴用品は購入、工事で付ける手すりは住宅改修、13種目に無い物は貸与の対象外、と制度の側で分かれているので、困りごとによってはレンタル以外の道を先に考えます。
レンタルにしない条件を並べると、次のとおりです。
- 腰掛便座や入浴用品を使いたい:購入(特定福祉用具販売)
- 壁に固定した手すりや、段差そのものをなくす工事が要る:住宅改修
- 選択制の杖・歩行器・スロープを長く同じ物で使う見込み:購入も選べる
- 13種目に無い物(階段昇降機・介護用の椅子など)が欲しい:介護保険の貸与の対象に含まれない(種目に無い)ので、貸与以外の道を考える。個別の扱いはケアマネジャーか事業所に確認する
- 用具をそろえても、日中や夜間に一人で過ごすのが難しい:用具ではなく、サービスの組み直しか住まいの検討
最後の点は、用具だけでは解けない困りごとです。介護保険法は、保険給付の内容と水準について、要介護状態になっても可能な限り居宅で、その人の能力に応じて自立した日常生活を営めるように配慮する、と定めています。用具はその手段の1つで、用具を足しても在宅の暮らしが回らないときは、サービスの組み合わせや、住まいそのものを見直す段階に入ります。
見守りの用具を考えている家では、認知症老人徘徊感知機器(センサーで感知して家族などへ通報する物)とカメラの違いも押さえておいてください。国の定義はセンサーで感知して通報する機器で、映像で様子を見るカメラがこれに当たるとは定義からは読み取れません。対象かどうかは機種ごとに違うので、ケアマネジャーか福祉用具の事業所に確かめてください。
たとえば、要介護2の母がベッドと車いすを借りて在宅で暮らしているが、夜中にトイレへ行く途中で転ぶことが増えた場合、ポータブルトイレの購入や手すりの追加で解けることがあります。それでも夜間に一人で動く場面の不安が消えないなら、用具の追加より、夜間のサービスや住まいを含めて考える段階に入っています。
次は在宅か施設かを考える
福祉用具をそろえて家の中の動きが楽になると、在宅の介護はしばらく回ります。ただ、要介護度が上がって用具が増えたり、用具を使っても家族の介護が追いつかなくなったりしたときは、「このまま在宅で続けるか、施設を考えるか」の問いに行き当たります。
在宅で続けるなら、レンタル・購入・住宅改修とサービスを、月の枠と年度・生涯の枠の中で組み直すことが中心になります。施設を考えるなら、施設の種類ごとに入る条件と月の費用を比べます。施設に移ることになったら、借りている用具をどうするかを、事業所とケアマネジャーに早めに相談してください。
介護のお金の全体像(認定から自己負担の上限まで)は、次のページで見渡せます。
在宅か施設かの判断の進め方と、施設の種類ごとの費用は、次のページにまとめています。
よくある質問
福祉用具をレンタルするにはケアマネジャーは必要ですか?
介護保険で借りて自己負担分だけを払う形は、ケアマネジャーの支援を受けることを市町村に届け出ている場合などが前提になっています。そのため、ケアマネジャーがケアプランに位置付けて手配するのが通常の流れです。ケアプランを作ってもらうことに自己負担はありません。
福祉用具をレンタルするにはどうすればいいですか?
要介護認定を受け、ケアマネジャー(要支援の人は地域包括支援センターなど)に相談します。福祉用具専門相談員が用具を選んで福祉用具貸与計画を作り、ケアプランに入れてから納品されます。まだ認定を受けていないなら、市区町村の窓口か地域包括支援センターで申請から始めてください。
要支援1で借りられるものは何ですか?
手すり(工事を伴わない物)・スロープ・歩行器・歩行補助つえは、要支援1でも対象です。車いすや特殊寝台など9種目(自動排泄処理装置を含む)は原則として対象外ですが、認定調査の結果や、医師の医学的な所見・ケアマネジメント・市町村の確認による例外があります。
ケアマネジャーがいない場合はどうすればいいですか?
要介護の認定が出ているなら、居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)と契約します。要支援なら、地域包括支援センターに相談します。どこに頼めばいいか分からないときは、市区町村の介護保険の窓口か地域包括支援センターに、近くの事業所を聞いてください。
借りた用具が合わなかったら替えられますか?
合わないと感じたら、まず福祉用具専門相談員とケアマネジャーに、どの場面でどう合わないかを伝えて、計画の見直しを相談してください。相談員は、対象の用具について使い始めてからも使い方や状態を確認し、結果をケアマネジャーに伝える仕組みになっています。替えられるかどうかや手続きは、事業所との契約の内容によるので、契約書と重要事項の説明で確かめてください。
福祉用具のレンタル料は医療費控除になりますか?
国税庁の案内では、福祉用具貸与は医療費控除の対象外の居宅サービスに入っています。訪問看護などの医療系サービスの自己負担とは扱いが違うので、確定申告のときは領収証の区分で確かめてください(国税庁 タックスアンサーNo.1127)。
順番のおさらい
- 借りられる物:告示で決まった13種目だけ。腰掛便座や入浴用品など種目に無い物は入らない
- 要介護度の線引き:要支援1・2と要介護1は車いす・特殊寝台など9種目(自動排泄処理装置を含む)が原則対象外。自動排泄処理装置は要介護2・3も原則対象外
- 例外:認定調査の結果で当てはまる道と、医師の所見・ケアマネジメント・市町村の確認がそろう道の2つ
- 料金:事業所が決めた額×1〜3割。商品ごとに上限があり、月の区分支給限度基準額の枠の中で使う
- 借りる手順:認定→ケアマネジャー→相談員の選定と計画→ケアプラン→納品と点検
- 買う物:腰掛便座や入浴用品は購入。同じ年度に10万円まで、原則は償還払い
- 選べる物:選択制のスロープ・歩行器・歩行補助つえは、説明と提案を受けてからレンタルか購入かを選ぶ
- 手すり:工事を伴うなら住宅改修(生涯20万円・事前申請)、伴わないならレンタル
- 合わないとき:用具で解けない困りごとは、サービスの組み直しや住まいの検討へ
- 次の段階:在宅で続けるか、施設を考えるかを比べる
福祉用具のレンタルで迷う家は、カタログの商品から考え始めていることがあります。先に決めるのは、親が何に困っているかと、それが13種目のどれに当たるか、そして親の要介護度でその種目が使えるかの3つです。そこまで決まれば、料金は相談員に全国平均の額と事業所の額を並べて聞き、借りるか買うか工事にするかは制度の枠ごとに分けて考えられます。
例外給付の判断・購入と住宅改修の払い方と申請の書類は、自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

