地域包括支援センターがひどい・頼りないと感じたら|担当の変え方・他の相談先・伝え方

書類に記入する手元
  • 親のことで相談したのに、「様子を見ましょう」で話が終わった
  • 「それはうちではない」と言われて、どこに頼めばいいのか分からなくなった
  • 電話の折り返しが遅く、急いでいるのに何も進まない
  • 担当者の言い方が上から目線に感じて、次の電話がおっくうになった
  • 担当を変えてほしいけれど、言い出しにくい
  • 苦情を言ったら、親が後回しにされるのではないかと不安になる
  • 自分の頼み方が悪かったのか、それとも相手が悪いのかが分からない
  • 包括以外に、どこへ相談すればいいのかを知らない
  • 遠くに住んでいて、電話でしかやりとりできない

上記のような悩みに答えます。

地域包括支援センター(以下、包括)は、高齢の親のことで家族が最初に相談しやすい公的な窓口です。ただ、窓口の名前から「介護のことなら何でも引き受けてくれる所」と受け取ると、実際の対応との差に驚くことになります。検索すると、包括が「ひどい」と言われる理由として人手の少なさや忙しさの説明、体験談、ほかの相談先の一覧が並びますが、家族の側が何をどう頼めば話が進むのか、どこまでが包括の仕事でどこからが別の窓口なのかを、制度に沿って切り分けたものは見当たりません。そこで、包括の役割・ほかの相談先・苦情の窓口という基本を押さえたうえで、頼み方を一枚にまとめる方法、担当と合わないときに話を上げていく順番、認定を受けたあとはケアマネジャーの事業所を家族が選べることまで、介護保険法と運営基準の条文で確かめながら整理しました。特定のセンターや職員の良し悪しは扱いません。

先に答え

地域包括支援センターが頼りないと感じたら、まず「いつから・何が起きていて・家族は何をしてほしいのか・いつまでに」を1枚にまとめて伝え直してください。包括が受け持つのは相談・権利を守る支援・ケアマネジメントの後方支援などで、医療の判断や認定の結果、サービスの中身は別の窓口が受け持ちます。担当と合わないときはセンターの責任者、その先は市町村の担当課へ順に伝え、認定を受けたあとはケアマネの事業所を家族が選べます。

2026年10月時点の制度で確かめています

目次

まず、頼んだことを1枚にまとめ直す

頼りないと感じたときの最初の一手は、担当者を責めることでも、別の窓口を探すことでもなく、家族が「何を頼んだのか」を紙1枚に書き直すことです。書き出してみると、頼んだつもりで伝わっていなかったことと、そもそも包括の仕事ではなかったことが見えてきます。

順番を先に並べておきます。

  1. いままでに包括へ伝えたこと、言われたことを、日付と一緒に書き出す
  2. 「いつから・何が起きていて・家族は何をしてほしいのか・いつまでに」の形に整える
  3. 頼みたいことが包括の仕事か、別の窓口の仕事かを下の表で確かめる
  4. 包括の仕事なら、整えた内容で伝え直す。別の窓口なら、そちらに持っていく
  5. それでも合わないと感じたら、担当者本人、センターの責任者、市町村の担当課の順に話を上げる

この順番にしているのは、窓口とのすれ違いの中に、伝え方で埋められる部分と、窓口の役割で決まっている部分が混ざっているからです。「様子を見ましょう」と言われたとき、相手が手を抜いたのか、家族が急いでいる理由が伝わらなかったのか、急ぐ話ではないと判断されたのかは、電話の記憶だけでは区別できません。書き出して並べると、どこで話がずれたかを家族の側で確かめられます。

たとえば、遠方に住む子が「最近、親が物忘れをする。心配なので見てほしい」と電話し、「様子を見ましょう」と返されたとします。この伝え方には、いつから、どんな場面で、家族は何をしてほしいのか(訪問してほしいのか、受診のつなぎ方を相談したいのか、介護保険の申請を手伝ってほしいのか)が入っていません。同じ子が「先月から、同じ話を一日に何度も電話でするようになった。冷蔵庫に同じ食品が増えている。次の帰省は来月なので、それまでに一度、家を訪ねて様子を見てもらえるか相談したい」と伝え直せば、包括の側も、できることとできないことをはっきり答えやすくなります。できないと言われたとしても、それなら誰に頼めばいいかを聞く次の会話につながります。

迷ったときの軸は、「相手を変える前に、頼み方を一度だけ変えてみる」です。伝え直しても話が進まないなら、そのときは頼み方の問題ではないと判断できるので、下の「担当と合わないときの順番」に進んでかまいません。書き出したメモは、その先で責任者や市町村に話すときにも、そのまま使えます。

地域包括支援センターの仕事と、ほかの窓口

書類に記入する手元

「それはうちではない」と言われるのは、頼んだことが包括の仕事の外にあるときが考えられます。包括の役割は条文で決まっていて、医療の判断・認定の審査・サービスの提供そのものは、それぞれ別の窓口が受け持ちます。

介護保険法115条の46で、包括は、地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行う施設とされています。中心になる事業は、介護保険法115条の45第2項の1号から3号に書かれた三つです。一つ目は総合相談支援で、暮らしの実情を把握し、制度の情報を伝え、関係機関との連絡調整をすること。二つ目は権利擁護で、虐待の防止や早期発見など、本人の権利を守るための援助。三つ目は包括的・継続的ケアマネジメント支援で、ケアマネジャーが作るケアプランの検証や協議を通じて後ろから支えることです。つまり包括は、困りごとを受け止めて、適した窓口や支援につなぐ役で、要介護の人のケアプランを作ったり、介護サービスを直接届けたりする所ではありません(要介護の人のケアプランを作るのは居宅介護支援事業所、いわゆるケアマネ事業所です)。

困りごと 受け持つ窓口 家族が持っていく情報
体調の変化・病気かどうかの判断 かかりつけ医・医療機関 いつから、どんな場面で、何が変わったか
介護保険の認定の申請と結果 市町村の介護保険の窓口(申請の手続きは包括などに代わって行わせることもできる) 親の住所・困っている場面のメモ
サービスの中身・回数・事業所の対応 担当のケアマネジャー・サービス事業所 困った日と内容、誰とのやりとりか
お金の管理や契約への不安 包括(総合相談)に相談し、社会福祉協議会など適した窓口を案内してもらえるか聞く 気になる出費や郵便物、通帳の様子
虐待が疑われる 市町村(相談・通報先) 見たこと・聞いたことと日付
どこに相談すればいいか分からない 包括(総合相談) 上の「1枚」のメモ

表の最後の行が、包括が本来受け持つ仕事です。どこに持っていけばいいか分からない困りごとを受け止め、ほかの窓口との連絡調整をするのは、総合相談支援として条文に書かれた役割です。逆に、表の上の行のことを包括だけに頼むと、「それは医師に」「それは市町村の窓口で」と返されることがあります。突き放されたように感じても、役割のうえでは別の窓口を案内されたことになります。

たとえば、「認定の申請を手伝ってほしかったのに、市役所に行ってと言われた」という場面を考えます。認定の申請先は市町村です。介護保険法27条1項は、申請の手続きを地域包括支援センターなどに代わって行わせることができると定めています。引き受けてもらえるかはセンターに確かめることになりますが、断られた場合でも、申請に何が要るか、親の状態をどう伝えればいいかを聞くことはできます。「申請を代わりにしてもらえないなら、申請の前に何を準備すればいいかを教えてほしい」と頼み方を変えると、同じ窓口から得られるものが変わります。

編集部の整理では、包括を「何でも引き受けてくれる所」ではなく「どこへ持っていけばいいかを一緒に決めてくれる所」と捉え直すと、すれ違いが減ります。相談の最後に「この件は、ほかにどこへ持っていけばいいですか」と一言添えるだけで、案内された窓口の名前が手元に残ります。

※包括の名称(「高齢者あんしんセンター」など)や、社会福祉協議会などの窓口がどんな相談を受けているかは自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

出典:介護保険法115条の46(e-Gov法令API)/介護保険法115条の45(e-Gov法令API)

動いてもらいやすい伝え方

包括に動いてもらいやすいのは、「いつから・何が・家族の希望・期限と連絡方法」の4つがそろった伝え方です。この4つが欠けていると、相手に急ぐ話かどうかも、家族が何を求めているかも伝わりません。

伝え直すときは、この順で話す
  1. 1いつから気づいた時期と、きっかけ
  2. 2何が起きているか見たこと・聞いたことをそのまま
  3. 3家族の希望訪問・受診のつなぎ方・申請の相談など
  4. 4期限と連絡方法いつまでに、誰に、どう連絡するか

電話の相談では、家族は不安な気持ちを先に話しがちです。「心配で」「どうしたらいいか分からなくて」という言葉は本心ですが、それだけでは相手が次に何をすればいいかが決まりません。包括の職員にとって判断の材料になるのは、起きていることの具体と、家族が何を求めているかです。気持ちは最後に添えれば十分で、先に事実を渡すほうが相手に伝わりやすくなります。

  • いつから:「先月の帰省のころから」「夏に一度転んでから」のように、時期ときっかけで言う
  • 何が起きているか:「同じ話を何度もする」「郵便物が開けられずにたまっている」など、見たことをそのまま言う。病名や原因の見立ては言わない
  • 家族の希望:「家を訪ねて様子を見てほしい」「受診の勧め方を相談したい」「介護保険の申請を考えている」と、してほしいことを一つに絞る
  • 期限:「次の帰省は来月」「親が来週退院する」など、いつまでに何が要るかを言う
  • 連絡方法:家族の誰に、どの時間帯に、電話かメールかを決めて伝える

折り返しが遅いと感じるときは、最後の「連絡方法」が抜けていないかを見直してください。家族の誰に連絡すればいいのか、何時ごろならつながるのかが分からないと、折り返しの電話がすれ違い続けることがあります。

たとえば、遠方に住む長女と、近くに住む長男がいる家を考えます。二人がそれぞれ思いついたときに包括へ電話していると、話の内容が少しずつ違い、職員はどちらの希望に沿えばいいか分からなくなります。この場合、連絡の窓口を一人に決め、「連絡はこの番号の長女に、平日の夕方なら出られる。訪問の日程は近くに住む長男が立ち会う」と最初に伝えておけば、折り返しの行き先がはっきりします。遠方で電話しかできない家ほど、この一行が効きます。

「自分の頼み方が悪かったのか」と悩んだとしても、自分を責める必要はありません。頼み方は、窓口の仕事の範囲を知らないと組み立てられないからです。上の4つをメモにしてから電話をかけ、話した内容と日付をその下に書き足していけば、次に責任者や市町村に相談するときの記録にもなります。

担当と合わないときの順番

カップを持つ手

伝え直しても担当者と合わないときは、担当者本人、センターの責任者、市町村の包括の担当課の順に話を上げていきます。手前の段階で解決できる余地を残すほうが、親の支援を止めずに済みます。

話を上げていく順番
  1. 1担当者本人希望と困っている点を伝える
  2. 2センターの責任者担当者で解決しないとき
  3. 3市町村の担当課センターで解決しないとき

最初に知っておきたいのは、包括の担当者を家族が指名して変えられる、と書かれた条文は確かめられていない、ということです。介護保険法施行規則140条の66第1号では、国の基準として、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(またはそれぞれに準ずる者)の3職種を、原則として専任の常勤職員で置くことになっています。配置の目安は65歳以上の被保険者の数でおおむね決まり、人口が少ない地域などには別の定めがあります。市町村はこの基準をもとに条例を定めます。どの職員が担当になるかを家族が決められると定めた条文は確かめられていないので、「担当を変えてください」と求めても応じてもらえるとは限りません。

そのうえで、包括の運営には点検の仕組みがあります。介護保険法115条の46では、包括の設置者は自らの事業の質を評価して向上を図らなければならず、市町村は包括の事業の実施状況を定期的に評価し、必要があれば方針の変更などの措置を講じることになっています。市町村は事業内容や運営状況の公表に努めることになっています。また、施行規則140条の66第2号では、運営は地域包括支援センター運営協議会の意見を踏まえて、適切・公正かつ中立に行うものとされています。市町村は包括を置き、評価する立場にあるので、センターの中で解決しないときの相談先として考えられます。

  • 担当者本人には、「何に困っているか」と「どうしてほしいか」を伝える。人柄の評価は口にしない
  • センターの責任者には、上の「1枚」のメモと、担当者とのやりとりの日付を見せる
  • 市町村の担当課には、センターの責任者に相談した日と、その返答も添える
  • どの段階でも、親の支援で急いでいることを最初に言う

たとえば、担当者の言い方が上から目線に感じた、という場合です。まず担当者に「説明を聞いても分からないところがあるので、もう少し具体的に教えてほしい」と、言い方ではなく困っている点を伝えます。それでも変わらなければ、センターの責任者に「担当の方とうまく話が進まない。家族としてはこういう支援を相談したい」と、メモを見せながら相談します。担当がしょっちゅう変わって話が引き継がれないと感じるときも、同じ順番で、引き継ぎの状況を責任者に確かめてください。

編集部の整理では、話を上げるときの目的は「担当者を替えさせること」ではなく「親の支援を前に進めること」に置くと、こじれにくくなります。担当が替わることを約束する仕組みはありません。責任者や市町村には、困っている事実と求めている支援を伝え、どう対応するかは相手に委ねるほうが、話が早くまとまります。

※包括が市町村の直営か、社会福祉法人などへの委託か、担当課の名称は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

出典:介護保険法施行規則140条の66(e-Gov法令API)

要支援と要介護で窓口が変わる

介護保険の認定を受けたあとは、ケアプランを作る窓口が、要支援か要介護かで変わります。要介護の認定を受けたら、ケアマネジャーの事業所(居宅介護支援事業所)を家族が選んで契約するので、包括が頼りないと感じていた悩みの一部は、ここで形が変わります。

認定のあと、ケアプランの相談相手
要支援

  • 包括が担当する
  • 指定を受けたケアマネ事業所の場合もある
  • 事業所の有無は市町村に聞く
要介護

  • 家族が選んだケアマネ事業所が担当する
  • 契約の前に説明を受けて同意する
  • 別の事業所を希望すると書類が渡される

要支援の人のケアプラン(介護予防サービス計画)は、これまで包括が担当してきました。2024年4月からは、市町村長の指定を受けた居宅介護支援事業所も、要支援の人の介護予防支援を行えるようになっています(介護保険法115条の22第1項)。ただし、指定を受けた事業所が地域にあるか、引き受けてもらえるかは自治体と事業所ごとに違います。

要介護の人のケアプランは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作ります。運営基準では、事業所は契約の前に重要事項を記した文書を渡して説明し、同意を得ることになっています(指定居宅介護支援等基準4条1項)。そのとき、利用者は複数のサービス事業者の紹介を求められることも説明されます(同条2項)。ケアマネジャーの仕事は、利用者の選択に基づき、特定の種類や事業者に不当に偏らないよう公正中立に行うことが基本方針とされています(同1条の2)。

別の事業所に移りたいと思ったときの定めもあります。利用者が他の居宅介護支援事業者の利用を希望する場合などには、いまの事業所は直近のケアプランとその実施状況に関する書類を渡さなければならない、とされています(同15条)。新しい事業所が書類をもとに引き継げる形が用意されているということです。新しい事業所が引き受けるとまでは書かれていないので、移りたいときは、新しい事業所に受け入れてもらえるかも確かめておいてください。

たとえば、要支援2の親について「包括の担当者と話がかみ合わない」と悩んでいる家なら、市町村に、要支援の人を担当する指定を受けた居宅介護支援事業所が近くにあるかを聞いてみる手があります。一方、親が要介護の認定を受けたあとで、ケアマネジャーとの相性に悩んでいるなら、事業所に要望を伝え、それでも合わなければ別の事業所を探して、上の書類の受け渡しを頼む流れになります。

※指定を受けた居宅介護支援事業所の有無は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

出典:厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1260/指定居宅介護支援等基準4条(e-Gov法令API)/同15条(e-Gov法令API)

地域包括支援センター以外の相談先

包括以外にも、困りごとの中身によって相談先があります。包括と並べて使える窓口を知っておくと、包括だけに頼ってこじれることを避けられます。

困りごとの中身が分かっているなら、受け持つ窓口に直接相談したほうが早い場合もあります。中身がはっきりしないうちは、包括で整理してから持っていくほうが二度手間になりません。

相談先 相談できること 確かめること
市町村の介護保険の窓口 認定の申請・結果・区分の変更の申請 申請に要るものと、結果が出るまでの日数
市町村の包括の担当課 包括の運営・対応についての相談 担当課の名称と連絡先
かかりつけ医・医療機関 体調の変化・受診・医療の判断 家族から状況を伝えてよいか
認知症疾患医療センター 物忘れなどの専門的な相談 地域の指定先と受診の方法
居宅介護支援事業所 要介護の人のケアプラン・サービスの調整 受け入れの可否と契約の流れ
市町村(虐待の相談・通報) 虐待が疑われるときの相談・通報先は市町村 窓口となる部署

認知症疾患医療センターは、都道府県や指定都市が指定する病院または診療所です。物忘れが気になるときは、包括に地域の指定先を聞くことができます。国の要綱では、複数の専門職が自宅を訪ねて、観察・評価や家族支援などの初期の支援を集中的に行う仕組みも設けられていて、その名称や窓口は地域で違うため、包括に聞いてください。

たとえば、親の物忘れが気になって包括に相談したが「様子を見ましょう」と言われた場合でも、かかりつけ医がいれば、次の通院に付き添って家族から見たことを伝える道があります。受診のつなぎ方は下の記事にまとめています。

親の物忘れが気になったとき、最初にすること

編集部の整理では、相談先を一つに決めつけないことが、窓口とのこじれを防ぐ近道です。包括で話が進まない間も、医療の窓口、市町村の窓口に並行して相談することは、包括を飛ばすことにはなりません。それぞれの窓口で聞いたことを上の「1枚」のメモに書き足していけば、全体の進み具合が家族の手元で見えるようになります。

※初期の支援を集中的に行う仕組みの名称・窓口、認知症疾患医療センターの所在地、虐待の相談窓口となる部署は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

出典:高齢者虐待防止法7条(e-Gov法令API)/厚生労働省 認知症初期集中支援推進事業の要綱/認知症疾患医療センター運営事業の通知(厚生労働省の通知を掲載した日本精神科病院協会のページ)

苦情を出すなら、どこへ何を

苦情を正式に出すルートは、相手が誰かで変わります。ケアマネジャーやサービス事業所についてなら、事業所、市町村、お住まいの都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)へ。包括そのものへの不満は、センターの責任者と、市町村の包括の担当課に伝えます。

ケアマネ事業所については、運営基準に苦情の扱いがはっきり書かれています。指定居宅介護支援等基準26条では、事業所は利用者や家族からの苦情に迅速かつ適切に対応し、その内容を記録すること、市町村の調査に協力して指導や助言を受けたら必要な改善を行うことが定められています。さらに、サービス事業所への苦情を国保連に申し立てるときに必要な援助をすること、国保連の調査に協力して改善することも、事業所の義務です。国保連は、介護保険法176条1項3号にもとづき、居宅サービスや居宅介護支援などの質の向上に関する調査と、事業者への指導・助言を行います。

一方、包括そのものへの苦情を国保連が受けると書かれた条文は確かめられていません。包括は市町村が置き、評価する立場にあります。包括の対応に納得できないときは、センターの責任者に伝え、その先は市町村の包括の担当課に相談することが考えられます。ただし、包括への苦情の受付先を定めた条文は確かめられていません。

不満の相手 最初に伝える先 その先の相談先
ケアマネジャー(居宅介護支援事業所) 事業所の苦情窓口・管理者 市町村/都道府県の国保連
訪問介護・デイサービスなどの事業所 事業所の苦情窓口 市町村/都道府県の国保連
地域包括支援センター センターの責任者 市町村の包括の担当課

苦情を出すときに役立つのは、記録です。いつ、誰と、何を話し、どう返されたかを、日付つきで残しておいてください。上の「1枚」のメモに書き足していく形で十分です。記録があれば、感じ方の違いで言い合うのではなく、事実を並べて相談できます。

「苦情を言ったら親が後回しにされないか」という不安を持つのは自然なことです。運営基準は、ケアマネ事業所に苦情への迅速かつ適切な対応と記録を求めていますが、苦情を出したあとの扱いを家族に約束するものではありません。だからこそ、感情ではなく、困っている事実と求めている支援を記録に沿って伝えることが、親の支援を止めないための現実的な方法です。

たとえば、訪問介護の事業所の対応に困っている場合は、まず事業所の苦情窓口に伝え、改善されなければ担当のケアマネジャーに相談し、それでも解決しなければ市町村か国保連に相談する、という順になります。国保連に申し立てるときは、ケアマネ事業所に手伝ってもらうことができます。申し立てたから担当が変わる、事業所が処分されると決まっているわけではない点は、知っておいてください。

※国保連の苦情の受付方法や連絡先は都道府県ごとに違います。お住まいの都道府県の国民健康保険団体連合会で確認してください。

出典:指定居宅介護支援等基準26条(e-Gov法令API)/介護保険法176条(e-Gov法令API)

地域包括支援センターを通さずに進める場合

包括は相談の入り口として便利な窓口ですが、包括を通さなければ何も進められないわけではありません。すでに認定があって担当のケアマネジャーがいる、かかりつけ医が相談に乗ってくれる、といった条件がそろっているなら、包括に頼らずに進める選択もあります。

包括の総合相談は、持っていく先が分からない困りごとを受け止めて、関係機関との連絡調整をする仕事です。持っていく先がすでに分かっていて、その窓口とつながっているなら、包括を経由する必要は薄くなります。要介護の認定を受けて担当のケアマネジャーがいる家では、サービスの相談はケアマネジャーが受け持ちます。体調の変化は医療の窓口が受け持ちます。

  • すでに要介護の認定があり、担当のケアマネジャーとやりとりできている
  • かかりつけ医がいて、家族から状況を伝えられる関係がある
  • 困りごとの中身がはっきりしていて、受け持つ窓口が分かっている
  • 認定の区分の変更など、市町村に直接申請できる手続きである

認定の有効期間の途中でも、介護の必要の程度が変わったときは、要介護の人は要介護状態区分の変更(介護保険法29条)、要支援の人は要支援状態区分の変更(同33条の2)を市町村に申請できます。この申請は市町村が窓口なので、包括を通さずに進められます。結果が出るまでの日数は市町村に確かめてください。急な体調の変化は、包括ではなく、かかりつけ医などの医療の窓口に連絡するのが先です。

たとえば、親本人が「包括の人は来なくていい」と訪問を断った場合を考えます。本人が訪問を断っている場合でも、家族だけで包括に相談することはできます。このとき、親にかかりつけ医がいて通院を続けているなら、次の通院に付き添い、家族から暮らしの変化を伝えるほうが、本人も受け入れやすい場合があります。包括とは家族だけで連絡を保ち、本人の気持ちが変わったときに改めて訪問を頼む、という使い分けもできます。

逆に、困りごとの中身がはっきりしない、どの窓口に相談すればいいか分からない、という段階では、包括を外すと相談先が見つからなくなります。包括に頼らないのは、ほかの窓口とすでにつながっている場合に限る、と考えておくと判断を誤りません。離れて暮らしていて急な連絡に備えたい家は、下の記事も参考にしてください。

遠距離介護で何かあったとき、最初の連絡先と動き方

出典:介護保険法33条の2(e-Gov法令API)

次は認定の申請

和室の廊下

包括とのすれ違いを越えたあとに来るのは、介護保険の認定の申請です。認定を受けると、ケアプランの窓口がはっきりし、要介護ならケアマネジャーの事業所を家族が選べるようになります。

認定の申請先は市町村です。介護保険法27条11項では、申請に対する処分は、申請のあった日から30日以内にしなければならないとされています。ただし同項のただし書きで、特別な理由がある場合は、30日以内に、処理にかかる見込みの期間とその理由を通知して延ばすことができます。実際にかかる日数は自治体によって違うので、申請のときに市町村の窓口で目安を聞いておいてください。

包括に「申請を手伝ってほしい」と頼んで話が進まなかった家も、市町村の窓口に直接問い合わせれば、申請に何が要るかを聞けます。

たとえば、包括に相談しても動きが遅いと感じていた家が、申請を済ませて要介護の認定を受ければ、その先の相談相手は自分たちで選んだケアマネジャーになります。要支援なら、包括か、地域によっては指定を受けた居宅介護支援事業所が相談相手になります。

認定が出たら月にいくらまで使えるのか、親の負担はどのくらいかを先に知っておくと、ケアマネジャーとの最初の打ち合わせで聞くことがはっきりします。

認定・お金|要介護認定が出て、月にいくら出ていくか

兄弟がいない、相談できる家族が自分だけ、という場合の進め方は、下の記事で整理しています。

一人っ子の親の介護、ひとりで抱えないための段取り

出典:介護保険法27条(e-Gov法令API)

よくある質問

地域包括支援センターは、なぜ評判が悪いと言われるのですか?

特定のセンターの良し悪しはここでは判断しません。ただ、不満の中には、頼んだことが包括の仕事の範囲外だったためのすれ違いが含まれます。医療の判断や認定の審査、サービスの提供そのものは別の窓口が受け持つので、上の表で頼みたいことの窓口を確かめると、すれ違いを減らせます。

地域包括支援センターは、どんな人が利用できますか?

包括は、地域住民の心身の健康の保持と生活の安定のために必要な援助を行う施設と条文で定められていて、高齢の親のことで家族が相談することもできます。どのセンターが親の地域を担当しているかは、市町村の窓口か公式サイトで確かめてください。

地域包括支援センターの職員は公務員ですか?

センターが市町村の直営か、社会福祉法人・医療法人などへの委託かで違います。どちらの形かは市町村ごとに違うので、お住まいの市区町村で確認してください。国の基準では、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(またはそれぞれに準ずる者)を原則として置くことになっています。

苦情を言ったら、親が不利に扱われませんか?

苦情を出したあとの扱いを家族に約束する条文は確かめられていません。ケアマネ事業所には苦情に迅速かつ適切に対応し記録する義務があるので、感情ではなく、日付つきの記録に沿って困っている事実を伝えてください。包括そのものへの不満は、センターの責任者、その先は市町村の担当課に伝えます。

隣の地区の地域包括支援センターに変えられますか?

担当区域は市町村が案内しているので、市町村の窓口か公式サイトで確かめてください。担当のセンターを家族が選び直せると書かれた条文は確かめられていません。担当者と合わないときは、センターの責任者、市町村の担当課の順に相談してください。

親本人が「来なくていい」と言って訪問を断ります。

本人が拒んでいるときも、家族だけで包括と連絡を保つことはできます。かかりつけ医がいれば通院に付き添って家族から状況を伝える道もあります。虐待が疑われるような場合は、相談・通報先は市町村です。

順番のおさらい

  1. 1枚にまとめる:これまでに頼んだこと・言われたことを日付つきで書き出す
  2. 窓口の切り分け:包括は相談とつなぎの窓口。医療・認定・サービスの中身は別の窓口
  3. 伝え方:いつから・何が・家族の希望・期限と連絡方法。連絡の窓口は家族で一人に
  4. 担当と合わないとき:担当者本人、センターの責任者、市町村の担当課の順に話を上げる
  5. 要支援と要介護:要介護ならケアマネ事業所を家族が選び、別の事業所を希望したときは書類が渡される
  6. ほかの相談先:医療・市町村・認知症疾患医療センターなどに並行して相談してよい
  7. 苦情:ケアマネ・事業所なら事業所、市町村、都道府県の国保連。包括なら責任者と市町村。記録を残す
  8. 包括を通さない選択:ほかの窓口とすでにつながっている場合に限る
  9. 次に来ること:認定の申請は市町村へ。サービスを使う決心とは別

包括が頼りないと感じたとき、家族の手元で変えられるのは、窓口の人柄ではなく、頼み方と相談先の組み合わせです。頼んだことを1枚にまとめ、それが誰の仕事かを確かめ、合わなければ順番に話を上げる。そうしておけば、窓口とこじれて親のことが止まる時間を短くできます。親の介護の全体の進め方は、下のページから順にたどれます。

親の介護、何から始める?/親が外出しなくなったときの相談先/親が段差でつまずく。受診を嫌がるときの相談先と促し方

包括の名称や担当区域、直営か委託か、担当課の名称は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

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この記事を書いた人

親の介護と相続の手引き編集部です。親の介護と相続の手続きについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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