- 電話で聞くと、最近はほとんど家から出ていないらしい
- これは歳のせいなのか、様子を見ていていいのか分からない
- 本人は「別に困ってない」と言うだけで、話が続かない
- 買い物や食事をどうしているのか、実はよく知らない
- 病院に行こうと言うと、機嫌が悪くなる
- 地域包括支援センターという名前は聞くが、何をする所なのか知らない
- 本人を連れて行かないと相談できないのではないか
- 遠くに住んでいて、たまにしか帰れない
- 兄弟は「大丈夫でしょ」と言って取り合ってくれない
- 何かあってからでは遅い、ということだけは分かっている
上記のような悩みに答えます。
親が外出しなくなったことに気づいたときは、介護の手前の、まだ誰も何も決めていない段階にいます。検索すると、閉じこもりの説明や原因の一覧、外に連れ出す声かけのコツが多く出てきますが、どれも本人に働きかける前提で書かれていて、「本人が困っていないと言う」「子が離れて暮らしている」という家族の側の事情には、あまり触れていません。そこで、外に出ない理由の考え方・相談先・外出のきっかけという基本を押さえたうえで、家族だけで使える公的な窓口の使い方、受診の話を誰から出すかの段取り、様子見を選ぶときの条件まで、介護保険法の条文で確かめながら整理しました。病名や薬のことは医師に聞く話なので、ここでは扱いません。
外に連れ出す説得や受診の説得より先に、家族だけで地域包括支援センターに相談してください。相談は無料の場合が一般的で、本人を連れて行かなくても家族だけで相談できることが多いです。電話で受け付けているセンターも多く、相談したからといって介護が始まるわけでもありません。ただし、急に食事がとれなくなった、転んだ、急に動けなくなったなど、ここ数日で様子が急に変わった場合は、先にかかりつけ医に連絡してください。
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親が外出しなくなったら、まず家族だけで相談
最初の一手は、親を説得することではなく、家族が地域包括支援センターに電話することです。そのうえで、外に出ない理由の見当をつけ、離れているなら変化に気づける仕組みを整えていきます。
順番を先に並べておきます。
- 親の住む地域の地域包括支援センターに、家族だけで電話してみる(相談は無料が一般的・本人の同席がなくても相談できることが多い)
- 帰省と電話で、外に出ない理由の見当をつける(体・転ぶ不安・気持ち・物忘れ)
- センターと相談しながら、受診や外出のきっかけを誰からどう出すかを決める
- 離れて暮らしているなら、暮らしの変化に気づける見守りを入れる
- 1地域包括に電話まず家族だけで
- 2理由の見当をつける帰省と電話で
- 3誰から話すか決めるセンターと相談
- 4見守りを入れる離れて暮らすなら
説得を後回しにするのは、外出しなくなった親に「もっと外に出て」と言っても、たいていは逆の効果になるからです。本人にしてみれば、出ないのには出ないなりの理由があり、それを子から指摘されると「まだそこまで弱っていない」と示したくなります。言い合いになれば、次の電話も帰省も気まずくなり、様子を知る機会そのものが減っていきます。家族以外の窓口を先に持っておくと、子が正面から説得する以外の進め方を一緒に考えてもらえます。
たとえば、久しぶりの帰省で親がほとんど外に出ていないと知り、その場で「散歩くらいしたら」「病院で診てもらったら」と重ねて言ってしまった場面を思い浮かべてください。親は黙り込み、その後の電話でも外出の話題を避けるようになります。同じ状況で、帰省の前か直後にセンターへ電話して「外出が減っている。本人は困っていないと言う。家族として何から始めればいいか」と伝えておけば、次の帰省で何を見てくればいいか、本人に話すならどんな入り口がありそうかを、家族以外の人と一緒に考えられます。
迷ったときは、「親を動かすこと」と「家族の段取りを作ること」を分けて考えてください。上の順番のうち、本人の同意がなくても今日できるのは、センターへの電話と、帰省・電話での様子の確認です。ここから手を付ければ、親子の関係を崩さずに一歩目を踏めます。
なお、急に食事がとれなくなった、転んで動けない、呼びかけへの反応がいつもと違う、といった様子があるなら、この順番を待たずに医療機関や救急に連絡してください。
外出しない理由を帰省と電話で見当づける

外に出ない理由は一つではなく、理由によって家族が打つ手が変わります。原因を決めるのは医師ですが、「どんな場面で出なくなったのか」の見当は、帰省と電話で家族がつけられます。
外出が減る背景として考えられるのは、大きく分けて四つです。体の面では、足腰が弱って歩くのがつらい、目や耳が不自由になって外が億劫になる、といったことがあります。転ぶ不安の面では、一度転びかけた経験から、外の段差や人混みを避けるようになることがあります。気持ちの面では、親しい友人が亡くなった、長く続けた役割を終えたなどで、出かける理由そのものが減ることがあります。物忘れの面では、道順や予定が覚えにくくなり、出かけるのを避けるようになることもあります。どれか一つとは限らず、いくつかが重なっていることも少なくありません。
家族にできるのは、診断ではなく観察です。次のような点を、帰省の日と電話で少しずつ確かめておくと、センターや医師に伝えるときの材料になります。
| 見ること・聞くこと | どこで確かめるか | 気づいたときの見当 |
|---|---|---|
| 家の中での歩き方、立ち上がり方 | 帰省の日 | 体の面・転ぶ不安 |
| 玄関まわりや外の段差を避けていないか | 帰省の日 | 転ぶ不安 |
| 冷蔵庫の中身、買い物をどこでしているか | 帰省の日・電話 | 暮らしが回っているか |
| 以前よく会っていた人の話が出るか | 電話 | 気持ちの面 |
| 同じ話の繰り返し、予定の取り違え | 電話 | 物忘れの面 |
聞き方にも工夫が要ります。「最近ずっと家にいるの?」と問い詰める形にすると、本人は「別に困ってない」と返して終わりがちです。「この前話していた集まり、最近はどう?」「買い物はどこまで行ってるの?」と、暮らしの中身を尋ねるほうが、自然に様子が見えてきます。
たとえば、電話では元気そうに話すのに、帰省すると冷蔵庫がほとんど空で、買い置きの食品ばかりだったという場合は、外出が減ったことが食事にまで影響しているかもしれません。反対に、冷蔵庫はそれなりに整っていて、宅配や近所の人の手助けで暮らしが回っているなら、急ぐ度合いは少し違ってきます。同じ「外に出ない」でも、暮らしが回っているかどうかで、次に取る行動の速さが変わります。
見たことは、日付と一緒に家族のメッセージのやり取りに残しておくだけで十分です。記録があると、兄弟と話すときにも、センターに電話するときにも、「なんとなく心配」ではなく具体的な話ができます。
「歳のせい」で片づけないほうがいい理由
歳のせいかどうかを家族が判定する必要はありません。ただ、「歳だから仕方ない」とまとめてしまうと、手を打てる理由まで見過ごしてしまいます。
外に出る機会が減ると、歩く量が減り、体力が落ちて、さらに外に出るのがつらくなる、という悪い循環に入りやすくなります。人と話す機会が減ることで、気持ちが沈みやすくなることもあります。「外出しない高齢者はどうなるのか」と心配になるのは自然なことですが、ここで大事なのは、将来の悪い姿を思い描いて焦ることではなく、循環に入る前か入り始めの段階で、打てる手を打つことです。
前の項目で見たように、理由が転ぶ不安なら家の中や外出の道筋を整える話になり、気持ちの面なら出かける先や人とのつながりの話になり、体の面や物忘れが心配なら受診の話になります。「歳のせい」で止めてしまうと、このどれにも手が付かないまま時間がたちます。
一方で、家族が原因を言い当てようとするのは避けてください。心配のあまり「認知症じゃないの」「うつかもしれない」と口にすると、本人は身構え、話し合いそのものを拒むようになりがちです。見立ては医療の仕事で、家族の役目は次の二つに絞れます。
- どんな場面で外出が減ったのかを見ておき、相談先や医師に伝えること
- 家族以外の人が関われる入り口を、相談先と一緒に探すこと
たとえば、親が「足が痛いから出ない」と言っている場合と、「行っても知っている人がいないから」と言っている場合では、同じ外出の減り方でも、打つ手の順番が変わります。前者なら受診や家の中の環境を整える話が先に来て、後者なら出かける先や人とのつながりを探す話が先に来ます。どちらの場合も、本人の言葉をそのまま記録しておくと、相談のときに役立ちます。
「自分の考えすぎかもしれない」と思うなら、それこそ相談窓口を使ってください。考えすぎかどうかを一緒に見てもらうのも、窓口の役目のうちです。心配しすぎだと分かれば、それはそれで安心して様子を見守れます。
地域包括支援センターに家族だけで相談する
地域包括支援センターは、介護保険法に根拠のある公的な相談窓口です。相談は無料の場合が一般的で、本人を連れて行かなくても家族だけで相談できることが多いです。電話で受け付けているセンターも多いので、まず電話で聞いてみてください。介護保険を使うかどうか決まっていない段階でも相談できるのが一般的です。
センターの根拠は介護保険法115条の46にあります。条文では、介護予防の支援と包括的支援事業を行い、地域の住民の心身の健康の保持と生活の安定のために必要な援助を行う施設とされ、市町村が設置できると定められています。要するに、高齢者の健康・暮らし・介護の困りごとをまとめて受け付ける、市町村が置く窓口です。市町村が自ら設置する場合のほか、市町村から委託を受けた社会福祉法人などが届け出て設置する場合があります。条文では、市町村が設置できる公的な施設とされています。
相談前に知っておきたいことを並べます。
- 本人の同席がなくても、家族だけで相談できるのが一般的です
- 電話で受け付けているところが多いので、まず電話で聞いてみてください
- 相談は無料が一般的です。費用がかかるかどうかも最初の電話で確かめておくと安心です
- 相談したからといって、介護サービスを使うことが決まるわけではありません
- 相談先は自分の住所ではなく、親が住んでいる地域を担当するセンターです
親の住所を担当するセンターが分からなければ、親の住む市区町村の介護保険の窓口に電話して「この住所を担当する地域包括支援センターはどこか」と聞けば教えてもらえます。
電話では、前の項目の観察をもとに、いま分かっていることをそのまま話せば足ります。いつごろから外出が減ったのか、買い物や食事はどうしているのか、本人は何と言っているのか、かかりつけ医はいるか、親は一人暮らしか、自分はどのくらいの間隔で帰れるか。これをメモにしておけば、話が早く進みます。
「相談したら、無理やり介護にされるのでは」と心配する人もいますが、相談は情報を集めるためのもので、何かを決める場ではありません。家族の話を聞いたうえで、本人が受け入れやすい健康チェックや介護予防の教室、地域の集まりなど、家族以外が関われる入り口を提案されることがあります。どんな対応ができるかは地域と状況で違うので、親の了解が得られそうなら、家を訪ねてもらえるかどうかも含めて聞いてみてください。
物忘れが気になっている場合は、センターから認知症の相談を専門に受ける支援につないでもらえることがあります。名称や窓口は自治体によって違うので、まずセンターに「物忘れも少し気になる」と伝えて、どこに相談すればいいかを聞くのが確実です。
編集部の整理では、この段階でいちばん損が大きいのは、「まだ早い」と考えて電話を先送りすることです。相談しても何かが決まるわけではないので、失うものはありません。「いまは様子見でいい」と言われたなら、それも一つの答えになり、次に動く目安をもらえることもあります。
※地域包括支援センターは市町村が設置するか、市町村から委託を受けた社会福祉法人などが届け出て設置するため、名称(「高齢者あんしんセンター」など)と担当区域は自治体によって違います。認知症の相談につなぐ支援の仕組みの名称と窓口、地域の介護予防の教室や通いの場の有無も自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
受診の話は誰から、どう切り出すか
受診の話は、家族がいきなり本人に切り出すのではなく、センターやかかりつけ医に状況を伝えたうえで、誰から話を出すかを決めてから進めます。一度の帰省で決着をつけようとしないことも大切です。
親が受診を嫌がるのは、多くの場合、「自分はまだ大丈夫」と思っていたい気持ちからです。子から言われるほど、それを否定したくなります。先に本人へ話してこじれてしまうと、家族の手元に次の打つ手が残りません。話を出す人と経路を先に決めておくのは、そのためです。
- 帰省の日に子が一気に説得する
- 病名を口にして不安をあおる
- 一度で決めようとする
- 先にセンターに状況を伝えておく
- 見たことだけを短く伝える
- 断られたら日を改める
「何科に行けばいいのか」で迷う場合、いちばん現実的なのは、いま通っているかかりつけ医です。血圧や持病で定期的にかかっている医師がいれば、次の通院に付き添い、家族から見たことを伝えます。どの診療科が合うかは医師が判断することなので、家族が先回りして専門の病院を探す必要はありません。かかりつけ医がいない場合は、どこに受診すればよいかをセンターに相談してください。
付き添うときは、帰省と電話で記録したメモを持って行きます。診察室では本人が「特に困っていない」と話すことが多く、家族が見ている暮らしの変化が伝わらないまま終わりがちです。「最近は買い物にも行かなくなった」「以前通っていた集まりに行かなくなった」と、見たことを短く添えれば、医師にとって判断の材料になります。
たとえば、家族から受診を勧めて断られた場合は、その場で押し切らないでください。その日は話題を変え、後日センターに「本人に話したが断られた」と伝えて、次の段取りを相談します。センターの職員やかかりつけ医から話を出してもらえるかどうかは地域と状況で違いますが、家族以外の人の言葉なら受け入れられる、ということはよくあります。
本人に話すときは、「心配だから」と子の気持ちを主語にすると、責められている感じが薄れます。「最近出かけていないから検査しよう」ではなく、「電話で元気がなさそうに聞こえて気になっている。次の通院のとき、一緒に行ってもいいかな」という形です。受診そのものより、付き添いの了解を取るところから始めると、本人が身構えにくくなります。
外に出るきっかけを、説得以外で作る

外に出たがらない親を動かすには、「外に出て」と言うより、出かける理由を暮らしの中に用意するほうが近道です。本人を操作するのではなく、選べる場を増やすという考え方です。
説得が効きにくいのは、出ない理由が本人の中にあるからです。転ぶのが怖い人に散歩を勧めても不安は消えず、会う人がいなくなった人に「出かけたら」と言っても行き先がありません。理由に合ったきっかけを用意すれば、本人が自分で出かけることを選びやすくなります。
理由ごとに考えられるきっかけを並べます。
- 転ぶ不安がある:家の中や玄関まわりの段差を整え、付き添える日に近所へ一緒に出る
- 行き先がない:地域の集まりや介護予防の教室、趣味の会など、顔見知りができる場を探す
- 役割がなくなった:買い物の頼みごとや、近所とのやり取りなど、本人が役に立てる用事を作る
- 体がつらい:受診や相談で体の状態を確かめ、無理のない外出の形を考える
地域の集まりや介護予防の教室がどこにあるかは、センターに聞くのがいちばん早い方法です。家族が調べて本人に勧めるより、センターの職員から「こんな集まりがありますよ」と紹介されるほうが、受け入れやすいこともあります。
デイサービスを勧めて嫌がられた、という相談もよくあります。デイサービスは介護保険のサービスなので、使うには原則、要介護・要支援の認定などの手続きが要り、本人にとっても「介護を受ける場所に行く」という抵抗感が出やすいものです。その場合は、介護保険の手前にある地域の集まりや教室のように、「介護」と名の付かない場から始めるほうが、本人の気持ちに沿いやすくなります。
たとえば、長年の友人を亡くしてから外出が減った親なら、以前の趣味に近い集まりがないかをセンターに聞いてみる価値があります。一方で、膝の痛みで外に出なくなった親に集まりを勧めても、行く道中がつらければ続きません。その場合は、まず受診と家の中の環境を整えることが先に来ます。
きっかけは一度で当たるとは限りません。一つ試して合わなければ別の場を探す、くらいの構えで十分です。本人が断ったことを責めず、「また別のを探してみるね」と引いておくと、次の提案がしやすくなります。
離れて暮らす親の変化に気づく見守り
離れて暮らしている場合の見守りは、外出させるための道具ではなく、暮らしの変化に「気づくのが遅れない」ための道具として選びます。
たまにしか帰れない子にとって、外出が減った親のいちばんの心配は、家の中で何かが起きても気づけないことです。電話に出ないのが、出かけているからなのか、寝ているのか、動けなくなっているのか分からない。見守りを入れる目的は、この「分からない時間」を短くすることにあります。
見守りの道具は、何を知りたいかで向き不向きが分かれます。
| 型 | 分かること | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| センサー型(人感・ドアの開閉) | 生活のリズムが崩れていないか | 外出したかどうかまでは分かりにくい |
| カメラ型 | 家の中の様子を目で確かめられる | 本人が嫌がりやすい |
| 家電型(ポット・照明など) | いつも通り家電を使っているか | 異変に気づくのが遅れることがある |
| 緊急通報ボタン | 本人が助けを呼べる | 意識を失うと押せない |
「見守りカメラは嫌がられそう」と感じるなら、その感覚はたいてい当たっています。外出が減っている親ほど、家の中まで見られることに抵抗を感じやすいものです。その場合は、センサー型や家電型のように「見られている感じ」が薄いものから始めるのが現実的です。本人に話すときは、「見張る」ではなく「電話に出なかったとき、こちらが慌てないため」と、子の側の都合として伝えると、本人が身構えにくくなります。
たとえば、一人暮らしで外出がほとんどなくなり、夜間が心配という親なら、トイレや冷蔵庫のドアの開け閉めを知らせるセンサー型が候補になります。朝になっても一度も開いていなければ、電話をかける、近所の人やセンターに様子を見てもらう、という動きにつなげられます。逆に、本人がまだ自分で動ける元気さを保っているなら、緊急通報ボタンが役に立つ場面もありますが、ボタンだけで安心しきらないことが大切です。
まずは、親の家の通信環境や、よく使う家電、生活の流れを帰省のときに確かめておいてください。それが分かれば、どの型が合うかの見当がつきます。見守りの道具は後から替えられますが、気づけなかった時間は取り戻せません。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
外に出なくなった親の様子を、電話の声だけで判断するのは難しいものです。部屋での過ごし方がわかる見守りカメラやセンサーを置くと、次に帰省するまでの変化に気づけます。置く前に、親に何が見えるのかを説明しておくと揉めにくくなります。
様子見にするなら「動く合図」を決めておく
いますぐ相談や受診に進まない、という選択もありえます。その選択をするなら、「こうなったら動く」という合図を家族で先に決めておくことが条件です。
兄弟が「大丈夫でしょ」と言う、本人も困っていないと言う、自分も仕事で手が回らない。そうした事情で様子見を選ぶこと自体は、無責任ではありません。ただ、合図のない様子見は、何かが起きるまで何も決まらないのと変わりません。合図を言葉にしておけば、様子見は「何もしない」ではなく「決めた条件を待つ」選択になります。
家族で言葉にしておく合図の例です。
- 食事や買い物がうまくできていない様子が見えた
- 家の中で転んだ、または転びかけたと聞いた
- 電話で話がかみ合わない日が増えてきた
- 郵便物がたまる、部屋が荒れるなど、暮らしの様子が変わった
- 本人から「体がつらい」「出かけるのが怖い」という言葉が出た
合図を決めたら、兄弟や家族とも共有しておきます。誰かが「まだ早い」と言っても、合図に当たったら動く、と決めておけば、後になって「なぜもっと早く動かなかったのか」と責め合うことを避けられます。合図に当たったとき誰がセンターに電話するかまで決めておくと、いざというときに押し付け合いになりません。
たとえば、近くに住む姉は「元気だから様子見でいい」と言い、遠くに住む弟は心配している、という家を考えてみます。この場合、様子見に反対するより、「買い物に行けていないと分かったら姉がセンターに電話する」と役割と合図を決めるほうが、姉にとっても負担が少なく、弟の心配も行き場を持ちます。意見を一つにそろえるより、合図と担当をそろえるほうが、家族の間ではまとまりやすいのです。
自分の考えすぎかもしれない、と迷う気持ちが残るなら、様子見を選んだ場合でも、センターへの一度の相談だけは済ませておくことを勧めます。相談しておけば、合図に当たったときに「前に相談した者です」と話を始められ、動き出しが速くなります。何かあってからでは遅いと感じているなら、その感覚を、合図という形で家族の共通の約束に変えておくのが、様子見を選ぶときの備えになります。
次に来るのは認定の話
外出が減り、暮らしの手助けが必要になってきたら、次は介護保険の要介護認定の話になります。
いま「介護保険の申請はまだ早いのでは」と感じるのは自然なことです。申請したからといって、すぐにサービスを使わなければならないわけではありません。申請が早すぎるかどうかも、センターで一緒に確かめられます。
この段階で先に知っておくと慌てないのは、次のようなことです。
- 要介護認定は誰が申請でき、結果はいつごろ出るのか
- 認定が出たとき、どんなサービスがいくらで使えるのか
- 親の負担はどう決まるのか
介護保険法27条では、認定の申請に対する処分は申請のあった日から原則30日以内にしなければならないとされています。ただし同じ条で、調査に時間がかかるなど特別な理由があるときは、見込みの期間と理由を通知したうえで延ばせるとされており、実際にかかる日数は自治体や状況によって違います。
家の中の段差に手すりを付けるといった住宅改修も、介護保険で使うには認定が先に要ります。住宅改修費の支給限度基準額は、原則としてひとり20万円です。要介護度が3段階以上重くなったときや転居したときは、もう一度20万円の枠が設定されます。外出のきっかけとして玄関まわりを整えたいと考えているなら、認定の仕組みを先に知っておくと、工事の順番を間違えずに済みます。
※認定の実際の処理日数と、住宅改修の上乗せ助成は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。
認定とお金の流れは、次の記事で順番にまとめています。
認定・お金|要介護認定が出て、月にいくら出ていくか/要介護3・2割負担の月額はいくら?
同じ「ちょっと心配」の段階で、つまずきや受診の拒否が気になるなら、こちらも参考になります。
親が段差でつまずく。受診を嫌がるときの相談先と促し方/親の介護、何から始める?
よくある質問
外出しない高齢者はどうなるのですか?
外に出る機会が減ると、歩く量が減って体力が落ち、さらに外に出にくくなる、という循環に入りやすくなります。人と話す機会が減ることも、気持ちの面に影響することがあります。先の姿を思い描いて焦るより、理由の見当をつけ、センターに相談するところから始めてください。
何科を受診すればいいですか?
いちばん現実的なのは、いま通っているかかりつけ医です。どの診療科が合うかは医師が判断するので、家族が先回りして探す必要はありません。かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターに受診先を相談してください。
地域包括支援センターに相談したら、介護を始めさせられますか?
いいえ。相談は情報を集め、進め方を一緒に考えるためのもので、何かが決まる場ではありません。相談は無料の場合が一般的で、家族だけでも相談できることが多く、電話で受け付けているセンターも多くあります。相談先は、親の住む地域を担当するセンターです。
外に出たがらない親をどうしたらいいですか?
「外に出て」と説得するより、出ない理由に合ったきっかけを用意するほうが近道です。転ぶ不安なら家の中や道筋を整え、行き先がないなら地域の集まりや教室を探します。どんな場があるかは、センターに聞くのが早い方法です。
見守りカメラを嫌がられたらどうすればいいですか?
センサー型や家電型のように、見られている感じが薄い見守りから始めるのが現実的です。本人には「見張る」ではなく「電話に出なかったとき、こちらが慌てないため」と、子の都合として伝えると、本人が身構えにくくなります。
介護保険の申請はまだ早いでしょうか?
早いかどうかは、親の暮らしぶりと状態で変わります。申請してもサービスを使い始めることが決まるわけではないので、迷ったらセンターで一緒に確かめてください。手すりの工事などを介護保険で使いたいなら、認定が先に要ることだけは覚えておいてください。
順番のおさらい
- まず家族だけで:地域包括支援センターに電話する(相談は無料が一般的・家族だけでも相談できることが多い・相談=介護開始ではない)
- 理由の見当:体・転ぶ不安・気持ち・物忘れのどれが近いかを、帰省と電話で観察して記録する
- 歳のせいにしない:悪い循環に入る前に手を打つ。見立ては医師、家族は場面を伝える役
- 受診の段取り:センターやかかりつけ医に先に伝え、誰から話を出すかを決めてから進める
- 外出のきっかけ:説得ではなく、理由に合った場を用意する。場所はセンターに聞く
- 見守り:外出させる道具ではなく、変化に「気づくのが遅れない」ために入れる
- 様子見:家族で「動く合図」と、合図に当たったときの担当を先に決めておく
- 次に来ること:認定の申請は、サービスを使う決心とは別。仕組みだけ先に知っておく
親が外出しなくなったとき、家族が最初に向き合うのは、親をどう動かすかではなく、家族の側で何を決めておくかです。センターへの電話と、帰省や電話での観察は、本人の気持ちを待たずに始められます。そこまで済ませておけば、暮らしに変化があったときも、誰に連絡して何を伝えればいいかが、もう家族の手元にあります。
センターの名称や窓口、地域の集まりや教室の有無は自治体によって違います。お住まいの市区町村で確認してください。

